■かれんだー■
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31      
<<前月 2022年10月 次月>>
■直近記事 20 ■
■コメント■
■カテゴリー■
■アーカイブ■
■2001-2004年の記録■
■ぶろぐ主宰者■
■ぷろぐらむ拝借■
BLOGNPLUS(ぶろぐん+)
■その他■
 
■あどみん■
ADMIN ID:
ADMIN PW:
 

蘭英旅行 その5
9月11日 日曜日

朝7時前に起きだして朝食を買い出しに行く。
ユースホステルから1マイルほどのところにホークスヘッドの集落があり、そこにもCOOPがあることを確認していた。
しかも営業開始は7時からと早い。

宿の前庭から周囲を見回すと朝もやがかかっている。
静かな朝。
羊たちが緑の丘の上にいる。
夜の間も厩舎に入ることなく、羊たちは外で寝ているのだろうか?

朝もや
[やっぱりイギリスは夜明けが遅い]

集落への1マイル、朝食を買いに行くだけだからキャリーバッグは引きずる必要がない。
ショルダーバッグだけなので足取りも軽い。
昨日歩いてきた道をさらに北上するが、朝早いこともあって、車もほとんど走って来ない。
農家の人たちは早起きだといわれるけれど、このあたりでよく見かける農家は、まだみんな眠っているように静かなままで、ひと気を感じさせない。
もっとも専業農家と言うよりも、牧畜もするがペンションのような民泊もしていて、今のシーズンは観光客を泊める方がメインになっているのかもしれない。

朝の羊
[静かな朝]

今回の旅行に出る前から懸念していたことは、天気が良くないのではないかということ。
ネットの天気予報を見るとブリテン島の西側に低気圧があって、台風のように渦を巻いている図が示されていた。
オランダでは少し雨に降られたけれど、イギリスに渡った昨日からは雨はまだ降って来ない。
しかし、宿の人によると、今日は雨が降るらしい。
徒歩で移動をする身には雨は大敵。
特に今日はこれまでで一番長い距離を歩かなくてはならない。
ここからウィンダミアのユースホステルまで15kmの距離がある。
もし、雨がひどかったらば、ホークスヘッドの集落からウィンダミア行きのバスに乗るのも致し方ないかと考えていた。
でも、いまのところ朝もやの切れ目から見上げると、青空ものぞいている。

ホークスヘッドへの道
[こんな道をジョギングしても楽しそう]

ホークスヘッドの集落へは30分とかからず到着できた。
小さな学校があり、小さなレストランがあり、小さな土産物屋と宿屋がある。
でも、まだみんな起きだしてこないのか、集落の真ん中でも誰も歩いていない。
まぁ、日曜日の朝だからこんなものかもしれない。

ホークスヘッドの集落
[集落の中心部]

この集落も景観を守るための規制があるのか、建物はチューダー様式というのだろうか、白い壁に木の柱がアクセントになっている建物が並んでいる。派手な看板などもなく、どぎつい感じの観光地色は見られない。
それでも、観光客で集落の経済が回っているのだろうし、店のほとんどかが観光客相手の商売をしている。
土産物屋には大きなショーウィンドーがあって、ピーターラビット関連のグッズを売っている。

土産物屋
[ここへ来たら土産にほしくなるんだろな]

この集落の生協は、ウィンダミアの生協がスレート石組みの建物であったのに対して、白い壁の民屋風。
COOPの看板も小さく目立たず、たぶん狭い入り口扉の前に買い物カートが置かれていなければ、ここがスーパーだとは気が付かないだろう。
まだ眠っているようなホークスヘッドの集落の中で、生協の中では当然ながらレジに係が立って働いていた。
買い物客もやってくる。
昨晩ユースホステルのキッチンの様子を見ていたので、どんな調理器具があるかよく解った。
調味料を持たないので、やはり冷凍食品に頼るしかない。

ホークスヘッドの生協
[店の前に買い物カートがあるのでここがスーパーだとわかる]

その冷凍食品の中でも、なるべくコストパフォーマンスのよさそうなものを物色する。
いろいろな商品を長い時間かけて比較検討する。
カレーのようなものもある。
これは日本のカレーではなくインド風だろう。
カレーも食べたいが、ちょっと予算オーバー。
最後に見つけ出したのがポロネーズ風のソースがかかったペンネ。
つまりイタリアパスタの冷食。
これが特盛とも言うべき400グラム入り。
お値段3.50ポンド。
安いかどうかはよくわからないが、バンコクのスーパーで冷凍のパスタを買ったことはないが、たぶんこれより高いのではないかと思う。
さらに野菜不足にならないようにカット野菜の詰め合わせ、1.05ポンド。
併せて4.55ポンドを現金で支払う。
今回の旅行に際して、イギリスポンドは5,000バーツ分を両替して持ってきたが、節約が徹底していることと、現金払いができる機会が少ないので、なかなか減らない。

朝からポロネーズのパスタと言うのもこってりし過ぎだけれど、これを買ってしまった動機の裏にはコスパ以外に、昨晩のキッチンで捨てられていたスパゲティーのミートソースが恨めしかったこともあったと思う。
宿へ戻ってキッチンの電子レンジでチンする。
タイから持ってきていた緑茶のティーパックでお茶も入れる。
今回の旅行で、お茶など熱い飲み物をこれが最初となる。

朝からこってり飯
[ホステルへ戻って朝食]

ポロネーズのペンネは実にボリュームが満点以上だった。
ソースにはたっぷりとチーズが含まれているし、日本やタイでも冷食をほとんど食べたことがないので、比較するのは間違っていそうだけれど、パスタのボリュームと比較してソースの量が多い。
味も良い。
欲を言えばタイ料理でバカになっている私の舌にはチリパウダーを振りかけたいところだ。
30年前に母と湖水地方へ来た時、夕食にイタリアン飯屋に入った。
その時も料理は旨く、値段も手ごろだった。
イギリスではイタリア風の食べ物のコスパが良いのかもしれない。

ソースが余ったので、まだ手持ちで持っていたパンにソースを擦り付けて食べたが、これもやっぱりうまい。
ガチガチと硬いくらいのパンにソースか染み込んで、すこし柔らかくなっった感じが面白い。
でも、やっぱり朝から食べ過ぎてしまったようで、ちょっと苦しくなった。

10時半に宿をチェックアウトしてウィンダミアへ向かって歩き始める。
途中までは昨日歩いた道と重複する。
おんなじ景色の中を歩くのだけれど、午前と午後とでは太陽の向きも違うから、おんなじ道を歩いてもやっぱり感動がある。
いい景色だなと思って写真を撮ったりするが、あとで見てみると前日にも同じ場所で撮った写真があったりする。

エストウェイト
[静かにたたずむ湖]

違うのは光の加減だけではない。
ニアソーリーのヒルトップ農場には観光客の姿がたくさんあった。
みんなお目当てはポターの博物館。
私は入場料を払ってまで入ろうとは思っていないが、近くまで行ったら誘導係に「予約はしてあるか」と聞かれた。
ここは人気が高いので、内部見学するには事前に予約をしなければならないそうだ。
むかしに来たことがあるが、その時の記憶では、ポターがかつて住んでいた農家を改装したような民屋で、確かに内部は狭くて、観光客が押し寄せるには無理があったように思われる。

ベアトリクスポター博物館
[博物館となっているポターの家]

ヒルトップ農場
[観光客の姿がちらほらと]

ヒルトップを過ぎて、渡し船乗り場への丘を登り始めたところで、かわいらしい道路標識を見つけた。
赤く縁どられた三角の注意を促す標識の真ん中にウサギのシルエット。
たぶん、ウサギの飛び出し注意の標識なのだろう。
ウサギの構図は、後ろ足日本で立ち、前足は空を泳がせていて、ピーターラビットの絵本に出てくるウサギにそっくりである。
いや、当然意識してそっくりに描いたのだろう。
でも、絵本のウサギは確か空色のジャケットを着ていた記憶があるが、このシルエットにはジャケットは確認できなかった。

野兎の飛び出し注意
[かわいらしい交通標識]

牧場の真ん中に教会がある。
今日は日曜日だけど、中では礼拝が行われているのだろうか、それとも地元の人は観光客のお世話で忙しくて教会へはオフシーズンしかやって来れないのだろうか?
教会の周りにはあんまり車は止まっていなかったけれど、周りの牧草地にはたくさんの羊が散らばっていた。
この教会の前の牧草地も、30年前に歩いた記憶があり、その時のビデオも残っている。
カラーで撮影した8ミリのアナログビデオだったけれど、何年か前に再生してみたら、色は抜けて白黒ビデオのようになっていた。

丘の上の教会
[30年前、ここを歩いていた]

12時ちょうどにウィンダミア湖畔、フェリー乗り場に到達。
空に雲は多めだけれど、いまのところまだ雨は降りだしそうにない。フェリーは対岸に渡っており、しばらく荷物を下ろして休憩。

荷物
[町中ならいざ知らず、こんなところでこんな荷物の旅行者なんて私以外にいなかった]

対岸に渡ってからは、舗装していない小道だけれど、トレイルを少し歩いてみたり、墓地の中を抜けたりしてみる。
そしてウィンダミア湖の遊覧船乗り場へ出てくる。
ここらへんはニアソーリーなどとは違って、ずばり観光地らしい派手派手さがある。
群れ集まってくる観光客や駐車場に入ろうとする車。
次々に発着する湖上遊覧の観光船。
遊歩道は鮮やかな花の鉢植えが飾られているが、花の色が少し毒々しいくらいに感じられる。
ここは箱根の芦ノ湖みたいな感じだろうか。

遊覧船乗り場前
[奥にオールドイングランドホテル、昔はこんなに派手派手ではなかった]

今晩の宿、ウィンダミア・ユースホステルは、名前こそウィンダミアとなっているが、所在地はウィンダミア駅の北西5キロほどのトラウトベックというところにあり、だいぶ静かなところらしい。
ウィンダミアの繁華街を通っていくこともできるが、私は最短ルートとなる湖に近いルートを選んだ。
オールドイングランドホテルの裏側へ回り込み、路地裏のようなところを少し歩いて、二級国道か県道かと言った感じの2車線道路に出る。
昨日からずっと車線もないような細い道をのんびり歩いてきたけれど、この道は車の交通量も多く、乗用車だけではなく、大型バスやトラックもひっきりなしに行きかっている。

別荘の庭先
[イギリスはガーデニングの国だと思う]

歩き始めは別荘地のような感じであったけれど、だんだんと木立の中へと入っていき、湖畔からはなれて坂道が多くなる。
道幅は広くなったが、歩道の方はお粗末で、片側にしかなかったり、歩道の路面がガタガタだったりしてキャリーバッグを引くのに苦労する。

こちら側は景観条例が厳しくないのか、観光客向けの大きな看板が目立つようになる。
蒸気船博物館とか、ベアトリクスポターランド(?)とか、、、
走り抜けていく車にアピールするための看板だからサイズも大きい。
やっぱり、私のように歩いて旅を楽しむ者には、湖の対岸のような環境の方が快適だ。
坂道を登り切ったところにビューポイントと書かれたところがあり、駐車場があってたくさんの車が止まっている。
丘の上に登ってきたわけだし、ここから湖などを眺められるようになっているのだけれど、木立の奥に湖があり、さらにその奥に山並みが見えるといった景色だった。
たぶん、それなりにきれいな景色なのだろうけれど、昨日から今朝にかけて、あまりにもきれいな景観の中を歩いてきたので、この程度のビューポイントでは退屈してしまう。

ビューポイント
[この程度の景観では面白くなくなっている]

午後2時少し前、トラウトベックへの入り口に差し掛かる。
そこにはガソリンスタンドに併設された小さなスーパーがあった。
スーパーの名前はSPA。
そこに立ち寄って、今晩の夕食の食材などを物色してみる。
買ったものは3品。
KO-LEEというブランドの即席ヌードル、カレーフレーバー
5個パックで1.50ポンド
1個当たりで0.30ボンド、15バーツほどなので許容範囲。
しかし、見たことのないブランドなので、製造国をパッケージに探したら、"Produced in Asia"と実に大雑把なことが書かれている。
そして、これもカレー風味だけれど冷凍のチキンカレー。
値段は2.09ポンド。
SHARWOODSというイギリスにあるインド食品メーカーのもの。
これはライス付と言うのが目に留まった。
そろそろ小麦粉製品以外のものを食べたくなっている。
あとはニンジン。
ピーターラビットの絵本でピーターが畑でいたずらをして引き抜いたニンジンの絵があるが、その絵に出てくるような細くて貧弱なニンジンが袋詰めにされて売られていた。
値段は0.49ポンドとお手頃価格。

橋の下で作品制作中
[橋の下に男性一人と犬一匹]

ガソリンスタンドのすぐ先に小川が流れていて、橋が架かっている。
その橋から下を眺めてみたら、河原で石を積み重ねている男性がいる。
犬を連れてきていて、一人で黙々と河原の石を積み重ねている。
それもとても芸術的かつバランスをとりながらアクロバット的に石が積み上げられている。

黙々と石を積み上げる
[黙々と石を積み上げる]

イギリスには変わった趣味の人が多いというけれど、この人の趣味は、ひとりでコツコツと石を積み重ねることなのだろう。
大勢の人の注目を集めたいという欲望もなく、ただ無心に石を積んでいるのだけれど、しかし、たぶん心の中のどこかには誰かに見つけてもらいたいという気持ちもあるのだろう。
だから、こんな橋のすぐ下で黙々と石を積んでいるのだと思う。
しかし、橋を歩いて渡る人など、いったい1日に何人いるというのだろうか。

作品
[彼は毎週ここで石を積み上げているのだろうか]

車が行きかう通りから、トラウトベックへの細い道に入ったら、ふたたび静かで、美しい世界に戻ることができた。
ここから約1マイルほど奥に入ったところに今夜の宿があることになっている。
そこまではずっと緩やかな坂道になっている。
景観はソーリー村周辺と似ているが、道の右手側は少し谷になっており、左手側は開けた牧場で、やはり羊がいる。
車の往来は少なく、歩いていて気持ちが良い。

宿への道
[トラウトベックへ続く道]

2時半過ぎにユースホステルの入り口が見えてくる。
歩き始めて4時間ほどで15kmの道のりを歩き切ったことになる。
朝食を食べ過ぎたので、今時間になってもまだ空腹を覚えない。

ユースの入り口
[やっと到着]

ユースホステルの建物は、こちらもしっかりした建物で、なんとなく田舎の図書館のような建物であった。
チェックインをしようと思ったが、なにやら今日はこのホステルでイベントが開催され、庭ではパーティーのようなものが行われていた。

ホステルの建物
[なかなか堂々たる建物]

私もクッキーとブラウニーのおすそ分けにあずかった。
そのため部屋の準備が遅れていて、部屋に入れるのは夕方になるという。
別にこんな時間から部屋に入っていても仕方がないので、キャリーバッグだけを預けて、周辺の散策をしてみることにした。

クッキーやケーキ
[サロンにはお菓子が並んでいた]

散策で向かった先は、今まで歩いてきた道の先にあるトラウトベックの集落。
そこまでずっと丘陵地に細い道が続いており、歩きやすい。
歩いていて目についたのは、木々の小枝に赤い実を付けたものが多いということ。
桑の実のようなものもあれば、ナンテンのような実もある。
どれが食べられ、どれが食べられないのかよくわからないが、このあたりはもう秋なのだろう。
赤いといえば、赤いシャクナゲのような花も咲いている。
濃い緑の葉に、赤い花や実で、なんだかクリスマスみたいでもある。
日本なら彼岸花が咲いていそうな雰囲気。

赤い実1
[桑の実に似ている]

赤い実2
[なんだかおいしそう]

赤い花1
[赤いシャクナゲ?]

赤い花2
[イヤリングのような、踊っているような赤い花はフクシアと言うそうだ]

このトラウトベックへ続く小道も、両側がスレート石を積み重ねた塀になっている
塀だけではなく、朽ちかけた古民家のような家があり、それもやはりスレート石を積み重ねて作られていた

スレートの古い建物
[倉庫にでもしているのか、古い建物があった]

トラウトベックの集落は、今朝買い物に出かけたホークスヘッドと比べてもずっと小さな集落で、商店のようなものもほとんどなかった。
民泊をさせるペンションなどは何軒かあったが、観光客相手に土産物を売ったり、食事をさせるような店は見当たらなかった。

トラウトベック
[トラウトベックは谷に面した斜面に集まる小さな村]

散策自体は気分よく歩いてきたけれど、今夜の飲み物も調達しておきたかったので、商店がないトラウトベックの集落に留まる意味合いがなかった。
集落を徘徊するといっても、家並は100メートルも歩けば尽きてしまう。
いったん引き返し、そのまま昼に立ち寄ったガソリンスタンドのスーパーまで戻ってみることにした。
こんどはずっと下り坂。
上りと下りではまた見えてくるものも少し違っていて、林の中になぜかモアイ像が立っているのを見つけた。
歩いている途中、ときどき小雨がぱらついたりする。

モアイ像
[どうしてこんなところでモアイ像?]

本日2度目の再訪となったSPAには、アルコール飲料のブースが充実していた。
ワインの貯蔵施設のように、しっかりと低温に温度管理された部屋があり、そこにたくさんの種類のアルコール飲料が並べられていた。
イギリスと言えばスコッチウイスキーの本場であるけれど、ウイスキーなどの洋酒は随分と値段が高い。
たぶん日本の酒屋よりも高いのではないだろうか。
ワインもたくさんあるがオランダほど安くはない。
結局、この中で一番安いアルコール飲料を探したらシードルに行きついた。
シードルなんて発泡果実酒なんて、ふだんは甘ったるくて飲もうとも思わないが、桃のシードルと言うのが、なんだかとても美味しそうに見えて、買うことにした。
値段は1.29ポンド。
この金額は缶ビールとほぼ同じくらい。

宿に戻ったら、午後5時で、もう部屋に入れるという。
2段ベッドが向かい合わせに並んだ4人部屋だけれど、貸し切りということになっている。
シャワーやトイレは共同。
まだ、外は明るいので、表に出てさっき買ったシードルを飲んでみる。
味の方だけど、これがすっきりしていて旨い。
なんとなくスパークリングワインのような芳醇さもある。
シードルって、いままでサワーみたいで敬遠していたけど、思っていたものよりずっと旨い。
アルコール度数もたいして高くないので、簡単に一本飲み干してしまった。

今夜の部屋
[明るく居住性の良い部屋だけど、私一人ではもったいない]

さて、今夜の夕食はニンジンとカレーライス。
キッチンは使いやすく、食塩だけは自由に使わせてもらえる調味料となっている。
あとは食材はじめ、みんな自分の名前を書いて置いてある。

キッチン
[こんな本格的なキッチンを自由に使える]

ニンジンは塩ゆでにすることにした。
炒めて食べようにも、油もない。
だから、塩ゆでしか作れない。
が、このシンプルな塩ゆでしたピーターラビットのニンジンがやたらと旨かった。
もともと甘みのあるニンジンらしく、それが塩で茹でることで強調され、ぶつ切りにしたサイズも手ごろで、スナックのように食べられる。
タイではこのような品種のニンジンは見たことがない。
それに安かったこともうれしい。

ピーターラビットのニンジン
[久々に調理されたものを口にした]

冷凍のカレーライスは、なるほどイギリスのインドカレーってのはこんな感じかと思われる味で、日本のカレーとは違うし、タイのカレーのような旨味もない。
辛さもタイのカレーとは比べ物にならないくらいマイルド。
しかし、香辛料はさまざまなものが入っているようで、さわやかさと、深みの両立した味がした。
難点は、この格安航空会社で有料販売している機内食のようなパックでは、1日中歩き回り、しかも昼食も食べていない胃袋には、物足りなかったようだ。
さっそく、追加でKO-LEEの即席ヌードル・カレーフレーバーを作る。
鍋釜が自由に使えるので、袋麺を茹でられて重宝する。
パッケージに書かれた調理方法は、
70グラムを300そそのお湯で3分間茹でたら、粉末調味料を投入。
あとはお好みで、野菜や玉子、肉を入れたら更においしいみたいなことが書かれている。
つまりスープヌードルのようなのだが、パッケージの写真は焼きそば風の汁なし麺。
私は、焼きそば風にお湯を切ってから粉末調味料を振りかけて食べることにした。
なお、ここのユースホステル内では、外部から持ち込んだアルコール飲料は飲んではいけないと決められているようだ。
飲みたければホステル内のバーで買って飲むようにとなっている。
バーのビール は、スーパーで売っているのと比べて、安くないので今晩はちょっと自重する。

万歩計
[今日も良く歩きました]

| https://chiangmaikk.com/blog/index.php?e=222 |
| | 04:46 PM | comments (0) | trackback (0) |
蘭英旅行 その4
9月10日 土曜日

窓のない船室なので、夜が明けて朝になっても気が付かない。
身体の方が自然に目覚めて、時計を見ると午前6時。
すぐに部屋から飛び出して甲板へ出てみる。

海上の夜明け
[船の上で迎える朝はちょっと特別な感じがする]

外はもうだいぶ明るくなってきている。
雲が低く垂れこめている。
グーグルマップで位置を確認してみると、もうハンパー川の河口に入ろうとしているところを示している。
長い防波堤のようなものが伸びてきていて、さらにたくさんの巨大な風力発電の風車が並んでいる。
オランダでも風力発電がたくさん行われていたけれど、イギリスでも風力発電は盛んなようだ。
雲が低くて見られないと思っていた朝日も、水平線と雲の間のわずかな隙間からのぞいてくれた。

朝日
[夏時間だからなのか、夜明けが遅い気がする]

午前8時にハルの港に入港。
下船まで昨晩はバーとして賑わっていたラウンジのソファーに座って待つ。
さほど待たされることなく、下船させてもらう。
たぶん混雑を避けるためなのか、100人くらいを一区切りにして下船させている。
たぶん、99人まで下船の区切りをして、あと一人の枠ができたらしく、「あと一人、すぐ下船できるよ」と係員が声をかけている。
この船には一人旅の人がいないのか、だれもそれに応じる人がいない。
それならばと、前に出て100人目の下船グループに混ぜてもらった。

下船を待つ
[等級によって下船の順番が決まるわけではなさそうだ]

船からローディングブリッジを渡り、ターミナル建物の4階に入り、エスカレーターを乗り継ぎながら1階へ。
ここでイギリスの入国審査。
パスポートを見せ、滞在期間や旅行先に関する質問に答えるだけで、入国カードもなければ入国スタンプも押されなかった。
コロナに関する特別な手続きとかも何もなかった。
入国審査場の脇に、飲料水のサーバーが置かれていたので、空になっていたペットボトルに水を詰めさせてもらう。
スーパーで売っている飲み水は安くない。
もともとアルコール分を含有しない飲み物にお金を払うのが好きではないので、こうして飲料水の補給ができるのは大変うれしい。

ターミナル内
[エスカレーター以外にエレベーターもあるが、エスカレーターの方が面白い]

ターミナルからは8時半前に出ることができた。
今回の旅行の目的地は、イギリス湖水地方。
ハルから湖水地方まで直線距離にしたら200km足らずのようなのだが、交通の便はあんまりよくない。
鉄道を利用して最短で行く方法はハルからマンチェスターを経由していくルートらしいのだけれど、どうもマンチェスター近くで不通区間があるらしく、迂回ルートをとらなくてはならないらしい。
さらに9月になってイギリスでは鉄道職員のストが頻発して、電車が予定通り動かないケースも多いらしい。
前売りの往復切符を買ってあるのだけれど、その切符に記されたスケジュールは次のようになっている。
ハル11:06-12:04リーズ12:18-14:09ランカスター14:21-14:33オクセンホルム・レイクディストリクト14:39-14:55ウィンダミア
ウィンダミアと言うのが湖水地方の入り口となる駅。
乗り継ぎ回数も多いのだけれど、乗り継ぎ時間さほど長くもなく、うまくいけば3時間半で到達できる。
しかしこれがストで運休なんかが一区間でも発生すると、スケジュールがめちゃくちゃになってしまう可能性が高い。
そんなことを想定して、一本でも早い電車に乗り込んでしまうのがリスク回避に役立ちそうだと考えて、ハルの鉄道駅へ向かって歩き始める。

P&Oフェリーターミナル
[敷地の外に出るには外周通路をぐるりと半周させられる]

フェリーターミナルと言うのはどこの国でもそうなのだろうけど、だいたい町の中心部から離れた不便なところにある。
フェリーの利用者そのものが車でやってくるわけだから、町外れでも支障はないのだろうけど、私のような車を利用しないものにとっては、ターミナルまでの行き来が不便である。
ハルのターミナルはロッテルダムと比べればまだ中心部に近いが、それでも直線距離で5キロほどもある。
歩けば1時間少々のはず。
5キロ程度なら毎朝のジョギングと同じ距離なので、たいしたことはないけれど、荷物を持っているのが負担になる。
とんでもなく広いターミナルの敷地外へ出れば路線バスのバス停もあるようなのだけれど、どうもイギリスの路線バスの運賃は安くないらしい。初乗りが2~3ポンドくらいのようだ。
たぶん、日本のバスと比べたら少し高いくらいなのだろうけれど、私が普段利用しているバンコクのバス代と比べると異常に高く感じる。
なので、歩いてバス代を節約。

喪中
[一昨日なくなられたエリザベス女王]

港周辺の道路と言うのは、殺風景で、広い道路をトレーラーが行きかうばかり。
道端には雑草が生えていたり、歩道もガタガタだったりする。
そんな中を30分ほど歩いて、やっと趣のあるレンガ造りの堅牢な建物に出くわす。
あぁ、やっとイギリスらしさを感じられたと思える重厚な建物。
周囲を威圧感のある高い塀が囲んでいるのも、権威を感じさせる。

重厚感のある塀
[やっとイギリスらしい建物が見えてきたと思ったが]

この建物は裁判所だろうか、それとも古いお城だろうか。
ハルの正式な街の名前はキングストン・アポン・ハルと言うそうで、これは「王様の街ハル」という意味らしい。
エドワード1世が13世紀の終わりに命名した町だそうだ。
タイではスコータイ時代の名君、ラムカムヘーン大王が君臨していたころらしい。
そんな歴史を感じさせる建物の正面まで来たら、やはり重厚な門扉があった。
が、その入り口に書かれている英単語を拾い読みしたら、この建物は刑務所のようだった。

刑務所
[刑務所の中はどんな感じか覗いてみたい気もする]

高い壁と威圧感。
たぶん、歴史的な建物かもしれないけれど、この手も施設は町はずれに作られるものらしい。

刑務所を過ぎて歩いていくと、車の部品屋、洗車屋や町工場のようなごちゃごちゃとした地区に入った。
やっぱり、あんなり雰囲気のある所ではない。
しかも土曜日の朝ということもあって、ひと気も全くない。
こんなところはさっさと通り抜けてしまおうと歩いていくと、かわいらしい小型の赤い乗用車が道端に止まっていた。
この小型車は3輪の乗用車。
30年前にイギリスの田舎町の住宅街でトコトコとかわいらしく走っているのを見かけたことがある。
そのころでもクラシックな車だなと感じ、面白そうだと思ったけれど、こうしてまた間近で見てみると、3輪で小型ではあるけれど、とても洗練されたスタイルをしている。
こんな車で街を走ったら楽しいだろう。

3輪乗用車
[クラシックな3輪乗用車]

1時間ほど歩いてハル川にかかる橋の袂までやって来た。
この古い橋も跳ね橋となっているようだ。
現在も跳ね橋として稼働するのかはわからないけれど、橋の手前に遮断機と信号があるので、橋が上がるときもまだあるのかもしれない。
一度見て見たいものだ。

ハル川にかかる橋
[川の対岸は景色が一変する]

この橋を渡ると雰囲気が一変して、ハルの旧市街に入る。
こんどこそ本物のレンガ造りで歴史を感じされる重厚な建物群が道の両側にならんでいる。
建物にはイギリス国旗が半旗で掲げられている。
このあたりが旧市街で、歴史地区にでも指定されているのだろう。
やっとイギリスに来たなと感じられ、こんどこそ裏切られることはなかった。

重厚な建造物
[やっと本当のイギリスらしい街になった]

鉄道駅には10時前に到着。
ここで汽車の切符を受け取らなくてはならない。
インターネットで購入しているのはバウチャーで、実際に汽車に乗るには本物の切符が必要ということだった。
駅構内の切符売り場の窓口に並んで、バウチャーを提示したが、自動券売機のようなものを指さされ、あれで自分で手続きして切符を受け取れといわれる。

ハル中央駅
[この駅はバスターミナルも兼ねている]
この自動券売機の操作方法がよく解らないが、スクリーンに表示される英単語を読んでみると、予約番号を入力して、クレジットカードを入れろと説明されている。
既にカードで支払い済みなのに、またチャージされるのではないかと不安もあったけれど、とりあえず指示に従ってみる。
そうしたら、ちゃんと切符が往復分出てきた。
途中何度も乗り換えがあるのだけれど、乗り換える電車ごとの切符と、ウィンダミアまで通しの乗車券などバラバラとたくさんの切符が出てきた。
ちなみに事前購入した往復切符の代金は 89.10ポンド。
タイバーツに換算して4,000バーツほど。
安くない。
バンコクからチェンマイまで一等寝台で往復するよりも高い。
でもまぁ、日本の新幹線と同じくらいの金額だろうか。
これだから発展途上国の安月給取りがヨーロッパなんかに来ると、お金のことで肝をつぶしてばかりになる。

駅の構内
[櫛形にホームが並んだ典型的な終着駅]

予定よりも1時間も早くハル駅に到着できたので、予定よりも1時間早い電車に乗り込むことにした。
とにかく、ストだとかのリスク回避をするために、乗れる電車があれば、ちょっとでも早く先に進んでおくべき。
このハルから出発する電車は、電化されていないためディーゼルカーでちょっと旧式の車両もあるが、新式のスマートな車体の電車もある。
これも30年前に、場所がハルだったのか、どこかほかのイギリス東海岸沿いだったのか記憶があいまいなのだけれど、荒涼とした海岸線を短い編成のディーゼルカーが走っている風景が記憶に残っている。
まるで北海道のサロベツ平原で海沿いを走るディーゼルカーみたいだと感じたものだ。

私が乗り込もうとした電車は新型で、トランスペインという運行会社の車両。
切符には乗る列車が指定されているが、座席番号は入っていない。
そして、どうやら指定されている以外の電車にも同じ区間なら乗っても問題ないらしい。
しかし、ホームにはたくさんの人が電車に乗り込もうと、ドアが開くのを待っている。
週末なので、どこかへ遊びに出かける人たちなのだろう。

トランスペインの電車
[スマートな電車、ホームで乗車を待つ人が多い]

私も並んでドアが開くのを待つ。
そして、ドアが開き、どっと車内へ流れ込む。
イギリスの電車にも、指定席と言うのがあるようなのだけれど、日本と違い、指定席車と自由席車が分かれていない。
座席に"Reserved"と書かれた札が付いていたら、誰かがその座席を予約しているということらしい。
私もなんとか空席を見つけて座ることができたが、その座った席の背もたれのところに、"Reserved"の札が付いていた。
札に書かれている内容を読んでみると、セルビーと言う駅からさきで誰かがこの席を予約ているらしい。
セルビーがどこなのかよく解らないが、そこで予約者がやってきたらば、当然席を明け渡さなくてはならない。
通路にはたくさんの人が立っていて、下車予定のリーズまでは1時間ほどだから、途中から立って行っても大したことはないはずだけれど、やっぱり座っていけるものなら、座って車窓を楽しみたい。

ハンパー川沿いに電車は走る。
私の記憶にあったのは、海岸ではなくハンパー川だったのかもしれない。
ハンパー川はとても川幅が広いので、まるで入り江のようにも見える。
そしてハンパー川にかかる巨大な吊り橋が見えてくる。

ハンパー川
[ハンパー川、電車のスピードが速く、どんどん遠ざかって小さくなっているが吊り橋が見える]

セルビーはなんとハルの次の停車駅だった。
私は荷物をまとめて電車から降りてしまう。
満員の電車の通路に立つよりも、このあと来るだろう電車にはあるかもしれない空席に賭けてみることにした。
それに、新型の電車ではなく、旧式のディーゼルカーの各駅停車なんかに乗れたらば、それも情緒があって楽しいだろう。
セルビーは田舎の駅で、ホームのベンチに座って後続の電車を待つ。
後続は、間もなくやって来た。
どうやら期待した各駅停車ではないようだけれど、電車の外観はさっきよりもだいぶ野暮ったい。
この野暮ったさは、タイの国鉄で使われているスプリンターと呼ばれる特急車両によく似ている。
あれも今から30年ほど前にイギリスから輸入したことになっているから、今から乗る電車も30年ものなのかもしれない。

スプリンターのような外観
[セルビーで乗り換えた電車、下膨れした外観が特徴的]

しかし、乗り込んだ車内は、タイの特急のようなオンボロさはなく、とてもスマートで明るかった。
ほぼ満席に近い乗車率であったけれど、空席を見つけることができた。
車内にはやはり行楽に出かけるグループがたくさん乗り合わせており、午前中と言うのにもうお酒が入っている女性たちもいた。

車内の様子
[イギリス女性は濃いめの化粧が一般的らしい]

11時半前、リーズに到着。
ここでランカスター行きの電車に乗り換える。
いままでリーズと言うイギリスの街の名前は耳にしたことがあったけれど、それがどんな街であるのか全く印象がなかった。
ヨークシャームーアにある田舎町だろうくらいにしか思っていなかったけれど、電車がリーズの街に差し掛かって、車窓に見えてきた街の景色は、ゴシック風の大きな建物があったりして、中世的な雰囲気の残る趣たっぷりの街であった。
ここからランカスター行の電車の出発時間までは30分ほどあり、そのかんちょっと街歩きをしてみたいと思ったのだけれど、ハルやセルビーの駅には見かけなかった改札口がリーズの駅にはあった。
つまり駅の出入りには改札口を抜けなくてはならないが、私の切符は途中下車が認められるものなのかがわからない。改札を出たとたんに切符を回収されたら大事になる。
そこで街歩きは断念し、駅のホームでちょっと早めのランチにすることにした。

ランチと言っても持参のパンと菜ッぱ、そしてイワシの缶詰。
冷たいランチであるが、イワシの缶詰は、チーズ以外では久々の動物タンパクでもある。
つまり、私にとっては御馳走のようなもの、
丸いパンをかじり、菜っ葉にイワシのトマト煮を包んで食べる。
こんなモノでも美味しいと感じられるのは、やっぱり幸せなんだろう。
今の世の中には美食があふれ、飽食だの、フードロスだの言われているけれど、こんな素食を口にして、美味しい、食べられて幸せだと感じられることは良かったと思う。

ランチ
[キャリーバッグは食卓にもなる]

パンをかじっている最中にもリーズの駅には次々と電車が発着している。
交通の要所うというのか、電車の発着ぶりや、人の流れを見ていると新宿駅のように感じられてくる。
新宿は東京でももっとも混雑する駅の一つだけれど、リーズは首都ロンドンから遠く離れた、地方都市である。
にもかかわらず、こうしてたくさんの人が乗降し、電車が出入りしているというのは、イギリスでは鉄道が交通機関としてまだまだ王道を走っていることを示しているのかもしれない。
出入りする電車は、通勤電車風から先鋭的な特急まである。
そのな特急を見ていたら、AZUMAと車体に書かれた特急も入ってくる。
うる覚えだけど、数年前に日本の日立がイギリスに売り込んだ特急だと思う。
こんなところで日本製の電車に出会えるとは思わなかった。

日本製特急アズマ
[日本製特急アズマ]

ハルを1時間早い電車で出発したものの、けっきょくリーズからは予定通り、12:18発の電車に乗ることになった。
これもディーゼルカー。
ローカル線を走る各駅停車のようだけれど、車内はここまで乗ってきた電車と比べて遜色ない。
ランカスターまでの約2時間。
ヨークシャームーアの丘陵地帯をのんびりと走る。
ヨークシャームーアでは季節になるとヒースと呼ばれる丘を覆うように茂る低木に紫色をした花が咲いて、一面が紫色に染まりとても美しいと聞いたことがあるが、まだこの目で実際に見たことがない。
一度見てみたいと思っている。
きっとこのランカスターへ向かうローカル線の車窓からもそんな景観が楽しめるのではないだろうか。

ローカル線の車窓
[ヨークシャームーアの荒涼とした土地にも集落が見える]

ヨークシャームーアではもう一つ、ブロンテの「嵐が丘」の舞台ということでも記憶がある。
実は嵐が丘の小説そのものを読んだことさえないのだけれど、ヨークシャームーアの荒涼とした土地が嵐が丘の小説の舞台であることは聞き知っていた。
母はこの嵐が丘の小説を若いころに読んでいたそうで、この小説の中で描かれているヨークシャームーアの荒涼としたイメージは恐ろしいほどだったと話して聞かせてくれたことがある。
また作中の人物たちの人間関係もヨークシャームーアの情景に劣らないくらい荒涼としたもの、そしてその底流に愛憎が流れていることなどを話してくれたことがある。

ランカスターでは10分ほどの待ち合わせで、電車を乗り換えることになっている。
ランカスターの駅に北側から入る手前に、川が流れており、そこにかかる橋から眺めたランカスターの街はとても情緒があった。
丘の上には、大聖堂がそびえ、川沿いにはグレーの屋根とレンガ色の濃淡でシックな街並みで中世的景観が広がっていた。
このランカスターもちょっと歩いて回ってみたいと感じさせたが、10分の乗り継ぎでは時間が足りない。

しかし、定刻通りにランカスターに到着したものの、乗り継ぎする先の電車はストで運休と電光掲示板に表示されていた。
この電車はロンドンからスコットランドへ向かう全席指定の特急列車であったけれど、運休となっては指定席も意味がない。
さて、どうしたものかと呆然としていると、しばらくして別の特急列車が隣りのホームにホームに入ってきた。
アナウンスに耳を傾けてみると、グラスゴーへ向かう特急らしい。
ということは、私が乗れなかった特急と同じ方向へ向かう後続列車らしい。
大慌てで跨線橋を渡り、出発しようとしている特急のホームで駅員を探す。
しかし、ホームに駅員の姿は見えない。
ならば運転手に聞いてみるまでと、荷物を抱えてホームの先端まで走る。
が、しかし私が乗って行きたかったオクセンホルム・レイクディストリクトには停車しないそうであった。
オクセンホルム・レイクディストリクトへ行く次の電車は3時少し前だそうだ。
そうするとしばらく時間があるので、駅の外へ出てみる。
この駅にはリーズのような改札口がないので出入り自由のようだ。

ランカスターの教会
[ランカスター駅裏の丘にそびえる大聖堂]

駅のすぐ裏の丘の上には、大きな教会があり、観光名所にもなっているらしい。
石造りにゴシック風の建物に入るには入場料もかかるようだけれど、外から眺めるだけでも満足できる。
それから丘を下り旧市街の街へ入る。

丘からの眺め
[なんとなく中世風の趣のある街並み]

旧市街の奥には教会の尖塔も見えるし、土曜日だからか、石畳の道ではなにか催事で見やっているのかテントが張られ、横断幕や旗がかかっていた。なんとなく誘われる雰囲気もあるが、電車に乗り遅れては困るので、駅へと戻る。
わずかな時間ではあったけれど、ランカスターと言う町の散歩も面白かった。
だいたい今まで、ランカスターと言う町がイギリスのどこにあるのかさえ知らなかった。
バンコクで通勤する途中に数年前、ランカスターと言う名前のホテルがオープンしていたのでランカスターという名前は身近に感じていた。
スクンビット通りのランドマークホテルと同系列のホテルで、ランドマークホテルもイギリス風の印象が強いホテル。
ビールのグラスもパイントとなっていたりする。

中世のお城のイメージ
[丘の上の教会へ通じる門]

ランカスターからの特急はたったひと区間だけの利用。
乗車時間も10分ほどと短い。
車両は"Avanti"と書かれた高速列車で、車内は新幹線のようだ。
新幹線よりも、もっとゆったりした雰囲気がありのは、大きなテーブルを挟んだ席があったり、シートもゆったりしているからかもしれない。
しかし、座席は固定式のため私は10分ほど進行方向に対して背中を向けていることになった。

Avantiの車内
[特急Avantiの車内]

ハルをスタートしたのは、予定よりも1時間早かったけれど、オクセンホルム・レイクディストリクトへ到着したのは午後3時過ぎ。
予定よりも30分遅れている。
このあと最後の行程となりウィンダミアへ行く電車は、ローカル線なので1時間に一本あるかないかで、次の出発は3時半過ぎと時刻表にある。
つまり、予定より1時間の遅れが出ることになる。
しかも悪いことに、電光掲示板には運休と表示されている。
これもストの影響らしい。
駅の係員に相談したら、3時半過ぎに代行バスが来るから、それに乗れという。
ほんとうはこの湖水地方へ向かう電車に乗るのを楽しみにしていたので、バスよりも電車に乗りたかったが、電車は5時過ぎまで来ないそうだ。

オクセンホルム・レイクディストリクト
[予定より30分遅れてオクセンホルム・レイクディストリクト駅へ到着]

30年前に母と湖水地方へ行った時も、この駅で電車を乗り換えた。
ロンドンからのHSTという特急列車でやって来て、ここからはレールバスのようなかわいらしいディーゼルカーにコトコトと揺られた。
それがとても情緒があってよかった。

ウインダミア行きのホームは30年前と変わっていないようで、いまにも小さなディーゼルカーが丘の向こうから弧を描いて入ってきそうな気がするが、ストで運休。
駅裏で代行バスを待つ。

15:40にバスは来た。
他にも湖水地方へ向かう乗客を乗せる。
そして、ウインダミアへ直行するのではなく、集落ごとに街道を外れてはもともとの電車の駅のある方へ回り込んで乗客を乗り降りさせるので時間がかかる。
そして大きなバスが走るには集落の中の道は細すぎるようだ。
道路の両脇はこのあたりの土地に多いのだと思われるスレート風の石が積まれた壁になっている。
もっとも、スーっと走り抜けてしまう電車と比べて、バスは集落の中をウロウロするので、窓から外を眺めている分には十分に面白い。

代行バス
[ウィンダミアへの代行バス]

16:20、当初予定より1時間半遅れでウィンダミア駅前に到着。
駅舎はBoothsというドラッグストアのチェーンになってしまっているが、なんとなく懐かしい。
ここから今夜の宿、ホークスヘッドのユースホステルまで歩く。
距離にして約10km。
途中でウインダミア湖をフェリーで渡るが、順調に歩けば日没までには宿へ到着できそう。
それにしても、直線距離200kmほどなのに、丸1日がかりの移動になるとは、これも旅の楽しみ。

丘の上にあるウィンダミア駅から坂を下るように観光地らしい町並みを歩いていく。
ペンションやレストラン、土産物屋などが道の両側に続く。
そこを歩く人も観光客と一目でわかるような人たち。
ここは日本の軽井沢みたいな感じなのだろうか。
30年前に母と来た時は、見栄もあってウインダミア湖の湖畔にあるオールドイングランドホテルという古い石造りのホテルに泊まった。
しかし、今回は一人旅だし、なにより節約旅行を楽しんでいるので、少しでも宿賃や交通費、食費を節約するべく、ここ湖水地方ではユースホステルに泊まることにした。
イギリスのユースホステルの嬉しいことは、安いだけではなくキッチンがあって自炊することが可能らしいということ。
鍋や食器類はキッチンにあり、宿泊者が自由に使えるらしい。
ならば究極の節約で自炊するのが一番だけれど、残念ながら自炊するには食材、それも調味料の調達が必要となる。
結論として、冷凍食品を持ち込むことを考えた。

湖畔へとダラダラと続く道を歩いていく途中に、COOPがあった。
つまり生協。
生協会員でなければ利用できないのではないかと思ったが、だれでも買い物ができるらしい。
この生協で、今夜の夕食をそろえることにする。
電子レンジもあることだろうから、久しぶりに温かい食べ物も食べられそうだ。

ウィンダミアの生協
[コンビニと同レベルの生協だけど、周囲の景観に配慮している]

イギリスの生協はオランダのJUMBOより値段が高いのだろうか?
それともここは観光地料金ということなのだろうか?
期待した冷凍食品も、思っていたより値段が高い。
5ポンドとか平気で表示されている。
結局買えたのは、小さなCOOPピザ2枚。
小さいだけではなく、とても貧弱だけど、1枚が0.90ポンドで冷凍食品の中では群を抜いて安い。
フォスターの缶ビール4本セット。
フォスターと言ったらオーストラリアのビールのイメージだったが、イギリスでもメジャーらしい。
これは1パイントの缶ビールで4本が4.25ポンドだから、タイのチャーンビール並みで嬉しい。
最後にパンをひとつ。
細いフランスパンみたいなもので、JUMBOがもう懐かしくなる。
〆て6.50ポンド。

この湖水地方へ来るのは今回が3回目。
しかし、ウィンダミアの駅から湖畔まで歩くのは今回が初めて。
以前はバスやタクシーを使っていた。
湖畔ならフェリー乗り場までは何度か歩いたことがあり、歩いてもたいした距離ではなかった記憶があるのだけれど、今回感じたのは、湖畔からフェリー乗り場が記憶に反して意外と遠いということ。
たぶん駅から湖畔まではほんどどが緩やかな下り坂だったので、距離があっても楽だったのに対して、湖畔ではアップダウンがあり、しかも荷物を持っているので、歩いても歩いても、あれへんだな、まだ着かないぞ、フェリー乗り場が移転したのかと訝りながら歩いたためだろう。

オールドイングランドホテル
[以前宿泊したオールドイングランドホテル、左手にそっけない新館を増築していた]

そのフェリー乗り場へは5時少し過ぎに到着。
ちょうど
対岸へ渡るフェリーが出たばかりであった。
このフェリーは20分間隔で運行しており、乗り場でしばし待つ。
フェリー乗り場の近くにはヨットハーバーがありたくさんのヨットが係留されていた。
こんなところにヨットを持っているなんて、このあたりにはお金持ちの別荘がたくさんあるのだろう。

ヨットハーバー
[ここはお金持ちの避暑地なんだろう]

フェリーには車も自転車も乗り込む。
これも軽井沢と似ていて、この町にはレンタサイクルもあるようで、駅前でも自転車を貸していたけれど、どうして自転車を借りるのにこんなに高いのかと思うほどレンタル料が高かった。
スコータイのレンタサイクルほど安い必要はないが、手ごろな金額なら借り出そうと思ったけれど、1日の借り賃で日本ならママチャリの一台も買えてしまいそうなくらい高かったのであきらめた。
対岸までの乗船料は1ポンド。チャオプラヤ川の渡し船が最近値上げをしたけれど、ここのフェリーと比べると1/4の金額。
そして、支払いは現金不可とのことで、たった1ポンドだけれどクレジットカードで支払う。
タイならばたいてい200バーツ以下はカード利用不可とかなのに、こちらでは少額でもカードがあたり前のようだ。

フェリーボート
[対岸から戻ってきた渡し船]

このフェリーはケーブル式と言う推進装置で、スクリューを使わない。
対岸との間にケーブルが伸びていて、そのケーブルを手繰り寄せるようにして前へ進むタイプだそうだ。
乗船客の船室、と言っても壁際にベンチがあるだけだけれども、それが船体の片側に寄っている。
そして、その上に操舵室がある。
船の説明書きが書かれているので読んでみたら、この渡し船は30年以上前から使われているそうだ。
つまり前回来た時もこの船に乗っていたことになる。
そういえば、あの時もこんな船だった記憶がうっすらわいてくる。

船内の様子
[こんなベンチに母と並んで座った記憶がある]

対岸へ渡ったところにトイレがあった。
しかも無料。
こちらへ来て、トイレがほとんど有料なので、いつも無料のトイレを探している。
電車に乗っているときは電車のトイレが無料で使えるので問題ないが、駅のトイレは有料が多い。
運よくこれまでのところトイレにお金を払うことなくここまでこれた。

対岸に渡ってからが長い道中となる。
最初の丘を越えてピーターラビットのふるさとソーリー村。
さらに進んでまた丘を越えるとエストウェイトウォーターと言うウインダミア湖より小さな湖になり、その南岸を回り込んで西側へ回り北上したところで今夜の宿があるホークスヘッドに至る。
時刻は5時半を回っており、まだまだ日照時間が長いので日没の心配はないが、歩く距離としてはまだ半分も来ていない。

湖水地方はなだらかな丘の連続
[湖水地方はなだらかな丘の連続]

ウインダミアの旧軽井沢的な雑踏は対岸にはなく、なだらかな丘陵は牧場となっており、羊が飼われていたりする。店とかも少なく、その代わり農家がある。
ちょっと華やかな建物があったりすると、だいたいがペンションのような宿屋だったりする。
丘の上には教会がある。
30年前は牧場の中を歩いたものだった。
牧場や緑の丘にはトレイルがあり、散策できるようになっている。
こんなところをトレッキングしたら気持ちよさそうだけれど、こちらはキャスター付きの荷物を引きずっているので未舗装の土の道や牧草の上は歩けない。
舗装された細い自動車が行きかう道を歩くことになる。

宿屋
[INNと書かれたペンション風の宿屋]

30分ほど歩いてソーリー村。
ピーターラビットを書いたベアトリクスポターの家があったヒルトップ農場に至る。
ここは第一級の観光地であるのだけれど、ポターが推奨したナショナルトラスト運動が定着しているのか、もともとの景観を崩すような宣伝物などはまったくない。
土産物屋なども見当たらない。
ここには花の咲く鉢植えで飾られたペンションがあり、ポターの博物館がある。

ソーリー村
[ソーリー村、どこも美しすぎる]

30年前も母とここまで歩いてきた。
もう午後も遅い時間だったけれど、まだ昼食も食べていなかった。
小さなペンションに入って、何か食べるものはないかと尋ねたら、ちょうどお茶の時間だというので、今でいうアフターヌーンティーのようなものをいただいた。
母はスコーンと言うものを始めて食べたが、美味しいねぇと言っていた。
私はこんなものじゃ少しも胃にたまらないなと感じながら食べた。
あの頃と風景は変わっていないようだけれど、観光客の姿は今の方が何倍も多い。
観光客と反比例して、以前はよく見かけた野兎を、今回は一匹も見かけていない。

ソーリー村のペンション
[あの時入ったペンションがどれだったのかはっきりしない]

そろそろ太陽も西の方に沈みかけてきて、木立ちとかの影がだいぶ長くなってきた。
エストウェイトウォーターからホークスヘッドまでの道はメンテナンスが今一つなのか、舗装がガタガタなところが多い。
路面が滑らかでないとキャリーバックを引っ張るのに要する労力が何倍にもなるので、少しでも路面の良い側へと、小道を左右に揺れるようにして歩く。
車はほとんど走って来ない。

湖水地方の道
[どうして、どこもかしこも綺麗なんだろう?]

7時少し前。
なんとかギリギリ日没前にユースホステルに到着。
ここはBooking.comというホテル予約サイトから予約したのだけれど、ここと明日のウィンダミア・ユースホステルの2泊分でタイバーツで2,342バーツであった。
それぞれの宿がいくらずつだったかはまとめてカードを切ったのではっきりしないが、明日の宿は個室で、今夜はドミトリーと呼ばれる相部屋だから、今夜の宿は一泊当たり700バーツくらいではないかと思う。
つまり今回の旅行で一番安い宿ということになる。

YHA Howkshead
[ホークスヘッドのユースホテスル入り口]

しかし、まるで地方の郵便局みたいなしっかりした建物で、庭も広い。
庭ではキャンプをしている人たちもいる。
今夜の部屋は8人くらい収容できる部屋で、すでにいくつかのベッドには荷物が置かれていたが、みんなまだ外へ出ているのか部屋の中には誰もいなかった。

ユースホステルの宿泊棟
[レセプションのある宿泊棟以外にキッチンやラウンジは別棟にあり、キャンプ場もある]

さて、今日はたっぷり歩いたので、まずは街で買った缶ビールで乾杯とする。
冷蔵庫で冷やしていないけれど、気温が高いわけではないし、それにこの常温で飲むフォスタービール、なかなか美味しい。
ビール本来の味や香りを感じられというほどのビール通ではないけれど、タイでは絶対に感じられない常温ビールのうまさを感じた。

フォスタービール
[ファスタービールで乾杯]

ビールを飲んだら続いて夕食。
キッチンへ行ってみると、たくさんの人でごった返していた。
みんな食材や調味料持参で、料理をしている。
サロン風のところでは盛大に食べて、飲んでいる。
ユースホステルなんかに泊まるのは、高校生の時以来だから40年ぶりということになるが、このキッチンで調理をしている人たちは、ほとんど40歳以上と見受けられる。
若者と言える人は子供を除いてほとんどいない。
それに日本のユースホステルも今は昔のように飲酒禁止とは違うかもしれないが、ここではみんな盛大にビールを飲んだりワインをつぎあったりしている。

そんな中で、私一人、電子レンジで質素なピザを温めて食べる。
ビールも飲む。パンもかじる。
久しぶりに温かいものを口にした。
しかし、周りの本格的なテーブルと比べて、なんてささやかな夕食なのだろう。
周りと比較できてしまうというのは、人生の幸せを奪うことになるのかもしれない。

使った皿を洗っていると、スパゲティーのミートソースが入った鍋の中身をゴミ箱へ惜しげもなく捨てている女性がいた。
きっと食べきれなかったのだろう。とても美味しそうな匂いをキッチンの中にまき散らしていたが、こうして捨ててしまうとはもったいない。
捨ててしまうのなら、私が鍋を洗うから食べ残しを分けてほしいと言いたいくらいだった。
しかし、どのように英語で伝えたらいいのか、頭の中で構文を考えているうちにゴミ箱のふたは閉じられてしまった。

夜9時、外に出てみると丸い月が山の稜線から登ってくるところだった。
やっと念願の湖水地方へたどり着けた。
月に向かって手を合わせて感謝する。

月夜
[今宵は十五夜、お月見の晩であった]

| https://chiangmaikk.com/blog/index.php?e=221 |
| | 06:35 PM | comments (0) | trackback (0) |
蘭英旅行 その3
9月9日 金曜日

午前5時くらいには目を覚ます。
まだ外は真っ暗。
そして少し雨も降っているようだ。
今日は夜の船に乗るので、夕方には船着き場に向かう予定。
それまで、ブリーレの街の見学などして過ごすつもり。

そして、朝一番に行うべきことは、夕方乗ろうと思っているバスの確認。
船着き場はユーロポートと言うとんでもなく大きな港の一角にあり、そこまでの公共交通機関がない。
一番近い街がブリーレだけれど、それでも20キロメートルほどある。
船会社の方で専用のシャトルバスを運行しているとのことだったけれど、船会社のウェブページから乗船券を買わないと予約ができない仕組みになっているのか、私が船の予約にかかったダイレクト・フェリーのサイトでは予約は電話での予約が必要で、しかりシャトルの利用料金が70ユーロととても高いことを言われ、シャトルの予約を断念した経緯がある。
では、どうやって船着き場へ行くかだけれど、調べてみたら船着き場から6キロほどのところにあるBP石油会社前と言うバス停までバスがあることが調べていた。
そのバス停から6キロくらいなら歩いて行ける自信がある。
ただこのルート903というバスがちょっと変わっている。
平日の朝夕しか運行していない。
たぶん港湾地区で働く人のための通勤用バスなのだろう。
それは日本でもよくあることだけれど、バス会社のホームページに書かれた注意書きでは、事前予約が必要となっている。
ちょっとよくわからないけれど、一応メールで予約をお願いしておいた。
が、もう一つ気がかりなことがある。
支払いは現金ではダメで、オランダの交通系スマートカードだけのようなことが書いてある。
そんなカードは持っていないし、どうしたらよいかよく解らないので、早朝のバスをつかまえて、バスの運転手さんに相談してみることにした。

そんなわけで朝6時過ぎには宿を出て、903番バスの始発となるBusstation Ruggeというところへ出かけてみた。
真っ暗な夜明け前の道を昨日買ったパンを咬みちぎり、ブルーチーズを齧りながら歩く。
この時間はまだ町は眠っていて、見かけるのは清掃車くらいであった。
Busstation Ruggeまでは1キロほどで、ほどなくして到着。
そして903番のバスが止まっていた。
小型のバスで、ハンドルを握っているのは黒人男性だった。
とても親切な人で、やさしい英語で、ゆっくりと説明してくれた。
バス代の支払いはクレジットカードでできること、私の予約したバスは最終の一本前だから、乗り遅れないように早めにバス停にくることなど教えてくれた。
さらに「たぶん自分がそのバスを担当すると思うよ、だからそれまでもう一眠りして大丈夫だよ」と笑わせてくれた。

早朝の903番バス
[あと10分ほどで7時、ようやく白み始めた。朝が少し遅いようだ]

これで安心。
でも、宿へ戻ってきたらば、もう外は明るくなっておりもう一眠りなどするのはもったいない。
部屋で一休みしたら小雨は降っているけれど、外へ出かけてみる。
昨日は風車を見に出かけたりしてブリーレの街はまだ何も見ていない。
宿のある場所はブリーレの中心にあり、また城壁に囲まれたブリーレそのものもそれほど大きな町ではないようだ。
城壁には12の防塁が飛び出しており、全体としては楕円形をしている。
城壁や防塁の感じは函館の五稜郭にも似ている。
ただ、街の中心部まで運河が入り込んでいる。
運河にはヨットなどが係留されており、また運河にかかる橋は跳ね橋となっている。

城内の運河
[橋の欄干だけでなく、あちこちに花の鉢がある]

中心部にはゴシック風の大きな聖堂かあり、街に‐鐘の音を響かせている。
1時間ごとに‐なるのかと思ったら、15分間隔くらいで鐘の音が聞こえてきた。
こうした鐘の音が響くのもヨーロッパに来ているといった印象を強くさせる。
日本でもお寺の鐘がゴーンとなったりすると、情緒を感じさせるが、タイのお寺ではあんまり鐘をついたりしないようで、タイに住んでいてもお寺の鐘の音を聴いた覚えがないような気がする。

大聖堂
[街の中心には教会、ヨーロッパらしい]

大聖堂の近くに貴族の館風の建物があった。
大きな立派な建物で、説明文はオランダ語なのでチンプンカンプン。
花壇のある広くて綺麗な庭が開放されていたので入らせてもらう。
ベンチが置かれ、バラの花が咲き、ちょっと腰を下ろしたいところだけれど、雨が降っているので、傘をさして歩き続ける。
庭にはフランス革命の絵に出てくる自由の女神のような銅像が立ったおり雨に打たれていた。

自由の女神
[雨の庭園に立つ自由の女神像]

このブリーレの街に関する知識が何もないので、どこに何があるんかもわからず、歩き回る。
街全体が観光用に保存されているように、昔風の街並みが続いている。
建物のほとんどは二階建てで、屋根にも窓が飛び出しているので、屋根裏部屋があるのだろう。
教会のトンガリ屋根も見える。
道はレンガを敷き詰めたもので、雨は降っているけれど水たまりはできていない、レンガの道は情緒はあるけどキャスター付きのキャリーバックを転がすには不便だし、車が走ると騒音も響く。
それにオランダに多い自転車だとスリップもしそう。
歩いて見て歩くための観光用として街並み保存の一環なのだろうか。

レンガ舗装
[こういう道をレンガ舗装とでも呼ぶのだろうか]

宿をチェックアウトしたのちも荷物は宿に預けたままなので、手ぶらで歩けるのだからよいけれど、雨が降っているので傘は手放せない。
傘をさしながら12ある防塁を結ぶように、城壁の内側を歩いてみる。
舗装はされていないけれど、散歩道のような感じで歩道が整備されている。
犬の散歩をしている人が多い。
日本でも犬の散歩をする人をよく見かけるけれど、私が住んでいるタイでは犬の散歩などほとんど見たことがない。
だいたい犬はリードにつながれず放し飼い状態。

壁に埋め込まれたエンブレム
[左はユニコーン、右は犬だろうか、それとも中年男性?]

ブリーレにも風車があった。
もともと風車はブリーレにあったそうだけれど、現在あるものは最近復元したものだそうだ。
つまりこれも観光用の風車ということなのだろう。
少し雨が小降りとなったので、風車の近くにあったベンチに腰掛けて昼食にする。
昼食は、昨日からずっと同じようにパン。
ブルーチーズをかじり、ネギ風味のバターを塗りつけて食べる。
3食連続してくると、飽きてくる。
それに雨に濡れて寒いから、温かい食べ物を食べたくなってくる。
でも我慢我慢。
ブリーレの風車は、首の部分に風格がない。
なんとなく巨大な扇風機のような形をしている。

扇風機風の風車
[わざわざ復元するのだから外国人たけの観光用だろうか]

パンを食べた後も、防塁を結びながら歩き続ける。
時々雨も降り肌寒い。
相変わらず犬の散歩には良く出会う。
そして、城壁とお濠との間の草地には羊が放牧されている。
羊も雨に濡れてぐっしょりしている。
ウールが水を吸って重たいんだろうと、羊に同情してしまう。

防塁からの眺め
[防塁には大砲もおかれている]

あんまりに寒いのでいったん宿へ戻って預けた荷物から防寒用のジャンパーを取り出してくることにする。
城壁側から街の中心部に戻る途中で、DIY用品の大型店舗があった。
今回の旅行で忘れ物をしていた。
こちらヨーロッパのコンセントに差し込むプラグの先を変換するアダプターを持って来るのを忘れていた。
イギリス用は持ってきている。
ずっと以前にマレーシアへ行ったとき、コンセントがイギリス仕様で、持参していたパソコンが使えず地元のスーパーで買ったものである。
しかし、ヨーロッパ仕様のものには思いが至っていなかった。
タイではいろいろなプラグが使われている。
イギリス仕様こそないが、日本や米国の様式、ヨーロッパ様式、細棒、太棒とマルチに対応するコンセントが一般的なので、ヨーロッパ仕様のことをすっかり失念していた。
携帯の充電器も、ノートパソコンも日本式のプラグでホテルの部屋の電源にはそのまま差し込めなかった。
ホテルでは運よく変換アダプターを貸してくれたが、今晩の船の中がどうなっているのかわからない。
そこてこのホームセンターみたいな店でアダプターを探してみたのだけれど、売っていないようだった。
携帯電話のアダプターは売っていたが、日本やタイのアダプターと違って、プラグの部分が大きいこともあり、やたらとゴツイ作りになっていた。
そして値段も高かった。
まぁ、どうにかなるだろうとそのまま店を出る。

ブリーレの地図
[ブリーレは楕円形をして周囲に12の防塁を配置]

ジャンパーは息子のお古。
古いのでゴムの部分が溶け出してベトベトしているが、仕方ない。
しかし、このジャンパーだけではまだ寒いので、ビニールでできたポンチョ型ののレインコートもかぶる。
マスクも着用する。
南国のタイから来たので、冷たい雨には震えてしまう。
しかし、行きかう人たちは私のような寒がりではないようだ。
半袖で平気な顔して歩いている人もいる。
しかも傘などさしていない人の方が多い。
レインコートだって着ていない。
寒さに強いのか、温度に関する感覚がマヒしているのがわからない。

宿の前
[宿の脇は広場になっており、ビールやコーヒーを屋外で楽しめるようになっているが、外は雨]

ふたたび城壁に沿って防塁を結んで歩く。
まだ時間はたっぷりあるし、急ぐ必要もない。
時間つぶしで歩いているようなもの。
カフェとかに入る趣味もないし、そんなところでお金も使いたくない。
城壁巡りはブリーレの街の北側からスタートし、すでに3分の2ほど回って、南西側に至っている。
この南西側は、古い街並みではなく、普通の住宅が立っている。
学校もあって下校時刻なのか子供たちも三々五々歩いている。
一戸建ての家もアパートもあるが、裕福そうに見える。
城壁の外側は牧草地が広がっている。

城壁の外側
[城壁の外側の景色]

ブリーレの城壁を一周したところで時刻は2時になる。
雨はまだ降ったりやんだり。
街の中心部側へまた回り込み、目的もなく路地を歩いたりする。
やはりブリーレは観光保存されている街なのか、ウォーキングツアーのグループを見かける。
ガイドが案内して回っている集団がいた。
参加者は年配の西洋人たち。
タイではあんまりこの手のガイドツアーはないようだ。
少なくとも日本人相手では聞いたことがない。
史跡などを案内するスキルを持ち合わせているガイドもいないし、第一に歩きたがらない。
そして、関心もあまりない。
写真撮って終わり、でもその写真はその後どうなっているのだろう。
昔のようにアルバムに記念写真として貼ったりなんかしないだろうし。

古い建物
[古そうな建物には、きっと歴史があって、解説聴きながら歩いたら面白いだろう]

城壁を回り始める前に立ち寄った貴族の館風の建物のところへ戻ってきた。
そこでタイでは見かけないものを発見。
黄色地に耳の垂れた西洋犬の顔がシルエットになった絵の描かれた箱が電柱に取り付けられている。
そして、その箱からは赤いビニール袋状のものが見えている。
イメージとして日本のスーパーなどで雨の日によく置かれている雨傘を入れるビニールのようだけれど、屋外にあるのは少し変。

フン始末袋
[緑の電柱に取り付けられた緑の箱]

よくよく観察してみると、犬の散歩時に使うフン袋のようである。
犬の散歩でフン袋など各自が用意すべきと思うけど、こんなに手厚く犬の飼い主のためにサービスしているから犬を飼う人が多いのかもしれない。
日本では犬の飼い主も飼われている犬も少し肩身の狭い思いをしているのではないだろうか。
タイでは「犬にフンをさせるな」の看板などを公園で見かけるけど、フン処理は飼い主の責任とは書かれていなかった気がする。
そして犬たちはもともとつながれていないので、どこへでも立ち入り、勝手にフンをする。
犬は看板に書かれたタイ文字が読めない。

船員クラブ
[貴族の館風建物も、現代で言う船員クラブといったところだろうか]

貴族の館風と書いたが、あとで調べてみたら"Asyl voor Oude en Gebrekkige Zeelieden"と言って、船員たちの施設だったそうだ。
そして自由の女神風の像は、確かに自由の女神であり、スペインからの独立を記念するもののようだ。

自由の女神とネコ
[なんだかドラクロワのフランス革命の構図に似ている]

で、ここで三毛猫を見つける。
庭園で遊んでいるが、ひとなつこくて中腰になって呼んだらば寄ってきた。
一般的なタイのネコと比べると体格が立派で、二回りくらい大きい。
動作も風格を感じさせる。
しかし、やっぱりネコなので愛嬌のあるしぐさをする。

三毛猫
[オランダの三毛猫]

4時前、ブリーレ滞在3回目のJumboスーパーへ。
今晩これから乗る船の中での食料買い出し。
もとろん船の中にはレストランなども充実しているらしいが、私の懐は充実していない。
節約するためには、スーパーで税金の安い食料品を買い込んでおくのが一番。

JUMBO
[JUMBOが私の生命線]

買ったものは、まず野菜が食べたかったので、カット野菜の入ったサラダ。
そして、オランダはチーズの国でもあるので、カマンベールのようなチーズと
パンももちろん買う。
クロワッサンや丸くて固いパン以外にフランスパンのように長いパンも。
昨日よりお気に入りの特売4つで1ユーロのパンと比べて、フランスパン風のはちょっと高くて、一本で1ユーロ以上の値段。
飲み物は1リットルの紙パックに入った赤ワイン。
これが安くてたったの2ユーロ。
あと、プリンみたいなものが食べたかった。
いろいろと迷って冷蔵ガラスケースから取り出したカップに入ったプリンらしきもの。
これがなんだかよくわからない。
イチゴみたいな絵も描かれている。
一番懸念したのはヨーグルトみたいなものではないかということ。
このところヨーグルトのような乳製品を食べるとよくお腹を壊す。
しかし、書かれているのはオランダ語ばかりで、手に取ったプリンカップみたいなものが何なのかよく解らない。
ひとめでヨーグルトとわかるカップと見比べてみたりする。
そして、意を決して買い物かごに投入。
買い物は全部で6.39ユーロ。

スーパーを出てからすぐに、プリンらしきものをベンチに座って食べてみる。
懸念していたヨーグルトではなかったが、期待したプリンでもなかった。
どうやらイチゴ風味のババロアのようなものであった。
ババロアなんて小学校の給食で食べて以来の気がする。
嫌いではなかったが、財布を開いてまで食べたいと思うものでもなかったので、半世紀近くも縁がなかった。
で、久々に食べてみたが感想としては「退屈な味」と言った感じだった。

広場に立っていた銅像[広場に立っていた銅像、このひとはどんな人?]

宿へ荷物を取りに戻り、16:55発の903番バスに乗るために出発。
雨も上がって、これなら港まで歩くのに支障はなさそう。
ブリーレの石畳の道をキャリーバックをガタガタ言わせながら歩く。
街の中でもいろいろな自転車を見かける。
日本のママチャリのような自転車は見かけない。
いずれもしっかりとした頑丈そうな自転車ばかり。
重そうにも見えるけど、町中をビュンビュンと快走している。
オランダ人は脚力があるのだろう。
そして、二人乗りの人転車も見かけるが、自転車の前にダンプカーの荷台を小さくしたようなものを取り付けた自転車もある。
この荷台に荷物を載せたり、人が乗っていたりする。
前輪は二輪で、なんとなくベトナムのシクロにも似ている。

ダンプカー風自転車
[重量があってペダルが重そう、坂道は無理だね]

4時半にはバス停に到着。
まだバスは来ていないようだ。
ミニバンタイプのタクシーが一台止まっているだけ。
時々バスは入ってくるが私が乗ろうとする903番はやって来ない。
903番はこのバス停が始発なのだけれど、私以外にバスを待つ人の姿も見えない。
朝、「早く行って待っておくべきだ」とアドバイスをバスの運転手からもらっていたけれど、そんな早く来る必要もなかったのかもしれない。
16:45になったら、朝のバス運転手が赤い小型バスを運転してやった来た。
やれうれしや、これで安心。
運転者も「ちゃんと来ていたか」といった感じに手を上げて応えてくれる。
が、バスの運転手はドアを開けて私を招じ入れてくれることなく、バス停に止まっていたタクシーの運転手と話し始めた。
そして、私にもわかるような英語で説明してくれたところによると、「16:55のバスにお客はお前さん一人しかいない、だからバスは走らない。そこのタクシーが代わりに運んでくれるよ」という。
タクシー料金ではなくバスの代行をタクシーがするだけなので、運賃はバス代と一緒らしいので安心する。
もちろんバス代行なので、バスの運行区間までしか行ってくれず、その先の港まで乗り続けるとしたらタクシー代を払わなくてはならないのだろう。

バスの出発時刻を待たずに私がタクシーに乗り込んだらすぐに出発。
田園の中のハイウェイを快調に飛ばして、ものの10分ほどでユーロポート地区のBP石油事務所前のバス停まで運んでくれた。
もちろん、バスの代行での運行なので運賃メーターも倒すことはなかった。
さて、運賃の支払いをクレジットカードでしようとしたところタクシードライバーは、「クレジットカード、、、運賃はいらないよ」と言う。
交通系カード用のスキャナーは車内にあるようだけど、クレジットカードが使えないということなのだろうか。
しからば現金で払うからいくらかと聞いたらば、「いいよ、フリーだ」と言う。
これはいったいどういうからくりなのかよく解らないが、運転者たちの親切に感謝。

タクシー
[バス代行タクシーをBP石油前で降りる]

かつての東京湾埋立地のように草が茂るだけの荒涼とした中に続くハイウェイをとぼとぼ歩く。
自転車用の道も付いているが自転車はほとんど走って来ない。
ときどき自転車道をスクーターが走り抜けていく。
霧雨のような雨が降ったり止んだりするので、レインコートを着て、雨か降ると傘をさす。
車道は大型トレーラーばかりがひっきりなしに走っている。
高圧線がハイウェイを横切ったり、並行したりする。
とにかく、船着き場まで歩くしかない。

港への道
[ハイウェイに歩道はなく、自転車道を歩く]

船着き場まで、直線距離にしたら2キロくらいしかないかもしれないが、その間には大きな運河があり、橋もかかっていないので、橋のある所まで大きく迂回しなくてはならない。
歩き始めて30分ほどで運河にかかる橋を渡る。
橋の下を大きな船も航行するのだろうか、橋が水面から随分高いところを通っている。
つまりそこまで登って、そこから下らなくてはならない。
上りはいいは直線であったが、下りは半径数百メートルもありそうなループになっている。
相当な距離を回り込んで、橋の直下へ降りてくるわけ。
階段でもあれば一気にショートカットできそうでけれど、もともと歩行者のいない道なので階段も梯子もない。
草地になっている崖を下ろうかとも考えたが、こんなところで転んでも面白くないので、素直にループを回り込む。
そうして歩いているうちに雨が本降りになってきた。
風も強まってきた。

港への道2
[ずっと先にある橋を渡る]

これから乗る船はとにかく巨大なので、まだ何キロも先にあるのに、その船体が見える。
大型トレーラーが疾走していくと、疾風とともに水しぶきも上がる。
歩くだけならいくらでも歩けるが、もう靴もびしょびしょ。
ズボンも濡れて重くなってきた。

歩くこと1時間15分。
ようやくP&Oフェリー乗り場へ到着。
青い色をしたターミナルはディスに‐ランドのようにやたらと広い駐車場の先にあった。
チェックインカウンターには数組の乗船客が並んでいた。
これから乗る船にどのくらい乗客が乗るのか知らないけれど、船の大きさの割にはチェックインカウンターが少ないように感じた。
もともとカーフェリーだから、ほとんどの乗船客は車専用のゲートか何かで手続きをしているのかもしれない。

P&Oフェリーターミナル
[P&Oフェリーターミナル ]

しばらく待って、私の手続きの順番になった。
Direct Ferryというサイトからプリントアウトしたバウチャーを見せたら、乗船券と紙でできたルームキーを渡された。
受付の女性スタッフに数日後にまた船でここへ戻ってくるけれど、この港から街までのシャトルバスに乗せてもらえないかと聞いたところ、OKだという。
ロッテルダムとアムステルダムまで行くバスがあるがどっちがイイかと言うので、アムステルダムまでのバスにする。
バス代は12ユーロであった。
この金額なら何キロも歩き、バスや地下鉄、電車と乗り継いでいくより断然安上がり。
「もう乗船できるよ」と言われたので、オランダの出国審査を簡単に受けてターミナル4階に上り、そこからそのまま長いブリッジを渡って船内に入った。

プライドオブロッテルダム
[巨大な船だ]

入ったところが船の8階になっていて、インフォメーションなどがある。
乗船券を見せたら私の部屋への行き方を説明してくれた。
同じ8階で、左手に行くとバーがあるから、その先に部屋があるとのことだった。
私の買ったチケットは一番安いインサイド二人部屋というタイプのもので、部屋は巨大な船の中ほどに位置しており部屋に窓がない2段ベッドの部屋。
自分の部屋まで迷路のような廊下を歩いてたどり着き、今夜のルームメイトが先に入っているかもしれないと、まずはドアをノックしてみる。
反応なし。
しばらく待って、もう一度。
どうもまだ誰も入っていないようだ。

船室
[今夜のねぐら]

ビジネスホテルのシングルルームの様な広さと設備の部屋。
2段ベッドだけれど、上の段のベッドは折り畳み式で壁に収容されているので、見た目は全くのシングルベッド。
日本でもカーフェリーに何度も乗ったが、安いクラスはだいたいがカーペットで雑魚寝が一般的だったので、二人部屋とはいえベッドで寝れるとは嬉しい。
しかも、日本だったら一等船室でもないことが多い、シャワールームも船室内にある。

パスルーム
[上質なタオルとかも用意されてる]

出港までまだ2時間もあるので、同室者がこれから来るだろうけど、私は先住権ということで下の段のベッドを使わせてもらうことらする。
そして、雨に濡れて冷え切った体を熱いシャワーを浴びて温める。

大きめのシャワー
[大きめのシャワーからは熱い湯がたっぶり噴き出す]

船内探検。
そもそもこの船は、イギリスの大手海運会社P&Oのフェリーで、8,850トンのプライドオブロッテルダムという。
250台の車と410ものトレーラーを積み込めそうだ。
40フィートのコンテナで20~30トンくらいあり、それが410本となると、10,000トンくらいを一晩で運んでしまうわけで、これは貨物列車にしたら20本分くらいボリュームに相当しそうだから、日本の青函トンネルでの輸送量に匹敵するのではないだろうか。
私がこれまでに乗ってきた船の中で最大だったのが北欧でのシリアライン。
それもでかくてすごかったけれど、この船はさらに倍近い。
日本郵船の飛鳥も家族で乗って、おおきい船だと思ったけど、その3倍ほど。

船の概要

エレベーターは12階まであり、まずは最上階へ上がってみる。
12階にあるのはスカイラウンジ。
すでに広いラウンジに置かれたソファーではアルコール飲料を楽しんでいる先客が散見される。
豪華な作りのラウンジでグラスも高級そう。
飲み物の値段はチェックしなくても高そうだと一目でわかる。
いや、国際航路で免税価格だから、市中よりも安いかもしれないが、私には2ユーロで買った1リットル入りのワインが船室で待っている。

エレベーター
[下の方の階は車両甲板のようだ]

ラウンジの先にデッキがあった。
このデッキにもスタンドバーがあり、ビール片手にデッキに出ている人がいる。
船が沖に出てしまったらインターネットにつながらにまなってしまうだろうから、デッキの隅のベンチに腰掛けてパソコンを開いて少しお仕事。
バーのボーイさんが飲み物の注文を取りに来たけれど、なにも注文しなくても追い出されることはなかった。

屋外のデッキ
[最後部にあるデッキ、雨に濡れてて座れない]

一区切りつけて、船室に戻ってみるが、まだ同室者は来ていなかった。
この船、レストランやバー、免税店など何軒もあり、設備が充実しているのだけれど、ただ一つ日本のフェリーが勝っているのは、日本の船なら貧相でもだいたいある無料で弁当を広げられるスペースが、この船にはない。
どこもかしこも値札付きの空間ばかり。
後部のデッキは無料開放されているものの、船全体の大きさからみたらお話にならないくらい狭い。
そんなわけで、窓のない船室のベッドに腰掛けてパンをかじることにする。
菜っ葉とチーズ、そしてワイン。
ワインはとても軽いワインだけれど、飲み口がイイ。
飲みやすい。
ワインとチーズと固いパン。
タイであこがれた食事を楽しむ。

出港時刻となったが、とうとう同室者は現れなかった。
つまり今晩は二人部屋の船室が個室になるということらしい。
安いワインで祝杯を挙げる。

再び後部デッキへ出てみる。
ちょうど船が岸壁を離れたところで、時刻は夜8時半。
少し小雨が吹き付けてきたりするが、デッキに出てきている人は多い。
雨も気にしていないみたいだ。
港の中の巨大な水路を進んでいく。
後部デッキなので、前方に何があるのか、どっちへ進んでいくのかはわからないが、すっかり日が暮れて暗くなっても、船の後ろに白く引いた航跡ははっきり見える。
30分ほど航行して港の外へ出たようだ。
つまりヨーロッパを離れたということだろう。

出港
[日本のように「蛍の光」は流れてこなかった、原曲は目的地ハルに近いスコットランド民謡だったと思うけど]

大きなレストランはバイキングになっているようで、ほかにもトラックドライバー専用のレストランやバーもあった。
一般乗客より安い値段で飲食できるようになっているのかもしれない。
ドライバー専用のバーの周りではビールの小瓶を手にした大男たちが立ち話をしていた。

これであとは寝るだけ。
低気圧で海は時化ているかかもしれないけれど、大きな船なのでほとんど揺れも振動も感じない。
快適に眠れそう。

ベッド
[リネン類が白いのがうれしい]

| https://chiangmaikk.com/blog/index.php?e=220 |
| | 05:05 PM | comments (0) | trackback (0) |
PAGE TOP ↑