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蘭英旅行 その7
9月13日 火曜日

朝7時に起床。
ロッテルダム港到着予定は8時半。
毎度同じことを書くけど窓がないので、時計を見ないと朝になったかどうかがわからない。
後部甲板へ出てみると、やっぱり夜明けが遅いみたいで、やっと空が明るくなってきたところ。
少し雲はあるけれど、まずまずのお天気のようだ。
そして空にはたくさんの飛行機雲。
空に定規でやたらと線を引いたように飛行機雲が走っている。

飛行機雲
[飛行機雲と朝焼け]

部屋に戻って朝食。
いつもの通りパンをかじるが、今朝はプラムのデザート付き。
甘酸っぱくておいしい。今日の予定はロッテルダムの港から船会社のバスでアムステルダムへ入り、隣町のハーレムの宿に落ち着くことになっている。
アムステルダムまでのバスはすでに先日予約済みで切符も買ってある。
その後、ハーレムまでどうやって行くかで少し悩んだ。
便利さよりも金額を重視。
オランダは電車賃が高いようだけど、バスなどはフリーパスなどが充実していることがわかった。
ブログなどをのぞいても、アムステルダムの中は市電やバスが自由に乗り降りできるパスが便利でお得だと書いてある。
確かにパスがあれば、宿までの移動だけでなく、観光巡りにも使えて便利そう。
しかし、調べてみるとパスはアムステルダム市内でしか使えず、ハーレムまではカバーしていないことがわかる。
結局、電車で行くのが一番早くて安いようだ。

定刻に下船ができた。
オランダへの入国審査も簡単で「これからどこへ行く?」との質問に対して「ハーレム」と答えただけ。

ターミナル前にはすでにバスが迎えに来ていた。
アムステルダム行きは大型バスで下船してきた乗客が続々と乗り込んでいる。
同様にロッテルダム行きのバス停もあるのだけれど、こちらはバスがまだ来ておらず、乗客はバスを待っている。
私はさっさと下船してしまったけれど、まだ下船してくる人はいるようで、ターミナルからバス停へと歩いてくる人がちらほら。
バスの運転手は乗客名簿を持っており、乗る人を一人ずつチェックしている。

P&Oフェリーのバス
[このバスを待つ人たち以外の大半の乗船客は車で海を渡ったのだろう]

バスが出発したのは09:15。
私の座った席の前には、若い女性とその母親と思われる初老の女性が座っていた。
どうやらオランダは初めての様子で、いろいろと調べ物などしているのがわかる。
この若い女性、髪型や化粧がなんとなくダイアナ皇太子妃に似ていた。
ダイアナ皇太子妃と言えば、むかしロンドンのトラファルガー広場に人だかりがすごくて、何かのお祭りでもしているのかと思ったら、「もうすぐレディー・ダイアナが来るんだ」と教えられた。
ダイアナ皇太子妃がイギリス国民を熱狂させるのを見て、日本の皇室メンバーの場合、目立つのは警護ばかりではないだろうかと思ったことを思い出した。
そのダイアナ皇太子妃もゴシップが原因で事故死してしまい、エリザベス女王も逝去されてしまった。
再婚されたチャールズ新国王の王妃、カミラ王妃はどのくらいイギリス国民に支持されているのだろうか?

ダイアナ妃似
[前の座席はダイアナ妃似の母子]

バスの運転手は黒人で、アムステルダムまでは1時間くらいで到着するよと陽気に車内アナウンスをしていたが、港から高速道路へ入ったとたんに大渋滞に巻き込まれる。
高速道路は洋上コンテナを積んだトレーラーでいっぱい。
高速道路の脇には鉄道線路もあり、旅客用ではなく貨物線のようで、こちらもコンテナ列車が行き来している。
ヤードがあって凸型をした小型のディーゼル機関車が入れ替え作業なんかをしているのが見れて、私なりに渋滞を楽しむことができた。

港湾地区
[渋滞もまた楽し]

ロッテルダムを過ぎたらば渋滞も解消して、バスはスムースに走るようになった。
オランダに着いた最初の日に見た景色と同じ感じで、緑の牧場が続いている。
そのうちに空港が見えて、だんだんと市街地に入って、2時間後にアムステルダム中央駅の裏側に到着した。

裏口からまっすぐ駅に入ってしまえば簡単に電車に乗れるのだけれど、東京駅のモデルとなったというアムステルダムの駅舎を正面から見てみたいと思い、キャリーバックを引っ張って歩き出す。
駅周辺は古い建物が多く、レンガ色をした建物の屋根は尖がり帽子だったりドームだったりする。
十字架を載せた屋根の建物は教会なのだろうか。
どの建物も、日本やタイへ持って来たら、観光客を集められそうに思う。
新しい建物もあるが、古い建物と調和がとれるような設計になっている。
建物だけでなく、運河も入り込んでいて、大きな運河から細い運河まであり、そうした運河には跳ね橋がかかっている。
バンコクにもパクロン花市場側から暁の寺側へ渡るプッタヨファー橋が跳ね橋で、王宮前の海軍本部へ軍艦が入れるようにするため跳ね橋としたようだ。
また、王宮近くにあるロープクルン運河には、このアムステルダムの細い運河にかかっている跳ね橋と似た構造の跳ね橋、サパンホックがある。
このロープクロン運河は、ほかにもいくつも橋が架かっているけれど、跳ね橋はこれだけなので、本気で運河を航行する船のために跳ね橋構造にしたとは俄かに信じがたい。

跳ね橋
[小さな跳ね橋]

一方、アムステルダムの跳ね橋はどうやら現役でもあるようで、駅前からはたくさんの運河めぐりの遊覧船が発着している。
東京駅の丸の内側バスターミナルのようなところに運河が入ってて、そこをボートが行きかっているのだから、面白い。
アムステルダム中央駅は確かに東京駅がモデルとしただけあって、全体的にはよく似たスタイルをしているが、もっと彫刻類などの装飾が多くて、豪華で華やかな印象を受ける。
駅前は一般の自動車は入って来ないが、3両編成の市電が走っている。
バスもやって来れば、自転車も来る。
なかなかにぎやか。

アムステルダム中央駅
[鉄道駅と言うより水の駅のようだ]

さて、実は尿意をもよおしている。
駅の中へ飛び込めばトイレくらいあるだろうと考えたが、正面から入ってもトイレが見つからない。
探しているうちに、裏口へまた出てしまった。
そして、トイレを見つけたが、嫌なことに有料。
駅のトイレでも、切符を買ってホームの方へ行けば、無料のトイレがあるのではないかと考えて、アプリを使ってハーレムまでの切符を買う。
ハーレムまで4.70ユーロ。
たくさんあるホームの中から、ハーレムの方向へいく電車を探すが、トイレも探す。
トイレは正面側のホームに面してちゃんとあった。
しかし、これも有料。
しからば、電車の中のトイレなら絶対無料のはずと確信して、黄色い2階建ての電車に乗り込む。
トイレを無事に無料で済ますことができて一安心。
イギリスの電車はどれも綺麗だったけれど、このトイレを借りた電車は通勤電車なのか、あまりきれいではなかった。
トイレの掃除がされてなくて汚いのではなく、落書きがいっぱいで、備品もなくなっていたりして、あんまり大切にされていないイメージ。

黄色い電車
[電車にはトイレがあってよかった]

駅舎は東京駅に似ているが、構内はバンコク中央駅にも似て、天井が蒲鉾型になっている。
ここもやはり次々に電車が発着している。
黄色い2階建て電車が多いけれど、ドイツ国鉄から乗り入れている新幹線なんかも見える。
陸続きのヨーロッパは国境を越える鉄道網が発達しているのがよく解る。

ドイツ新幹線
[ドイツの新幹線]

ハーレムへ行く電車も黄色い2階建て。
しかし、最初は2階建て電車に喜んだのだけど、2階建てと言うのは、荷物の多い旅行者には不便だということがわかった。
免税店で買った24本の缶ビールが重いので、狭い電車の階段の上り下りは大儀になる。
ドアの周辺だけ階段を使わなくてよいスペースになっているので、そこに座る。
缶ビールで階段を断念するような私以外にも、このスペースは自転車を持ち込む乗客に利用させているようだ。
オランダは自転車が多いところだけれど、自転車ごと電車に乗るのも一般化しているようだ。
特別に自転車持ち込み用の車両があるわけでもない。

ハーレム駅
[ハーレム駅到着]

アムステルダムからハーレムまではすぐだった。
駅から宿までは1キロほど。
宿は旧市街の真ん中にある大きな教会に面しているらしく、名前をカリロンという。
予約サイトを調べていて、ここが一番安かったので、ここを予約した。
値段は40.85ユーロであったけれど、チェックイン時に市税として5ユーロを払えとなっていた。

ハーレムの旧市街もブリーレ同様におとぎ話に出てきそうなかわいらしい町並みをしていた。
街の規模はブリーレよりも断然大きくて、にぎやかでもある。
そして、ちょっとエスニックなところもあって、タイ料理の店、インドネシア料理の店、日本料理の店が並んでいたりする。

ハーレムの街
[駅から宿への道]

イギリスではフィッシュ&チップスをイギリス名物大衆食として味わったが、オランダではコロッケを食べておきたいと思っている。
どこかにコロッケを売っていないものかと宿までの道をキョロキョロと探してみたが見つけられなかった。

宿は聖バフォ教会という古くて大きな教会の隣に位置していた。
教会周辺は旧肉市場広場と呼ばれる広場になっており、周囲にはテラス席を出したレストランやカフェが取り巻いている。
今夜の宿カリロンもそんなレストランの2階より上の部分に位置していた。
レストランの帳場でチェックインをしたが、東洋系で利発そうな顔立ちのスタッフは大変に親切であった。
ここでも電源に差し込むプラグがないかと聞いてみたのだけれどないとのこと。
しかし、スマホを充電したいなら、この帳場でできると言ってスマホ用のケーブルを貸してくれた。
これで当座はOK。

カリロンホテル

部屋は4階に位置していて、屋根裏部屋。
たぶん、もともとホテルとして作った建物ではないからなのかもしれないが、階段が急で、しかも狭いものだから、荷物を運びあげるのに2往復もしなくてはならなかった。
部屋は3畳間くらいで、洗面台はあるけれど、トイレやシャワーは部屋の外で共用。
しかし、部屋には2面に窓があり、教会が見えるし、窓から外を見れば広場も見えるという好立地。

屋根裏部屋
[屋根裏部屋でも部屋からの眺めは一級品]

さっそくハーレムの街歩きに挑戦。
ハーレムの旧市街も一般の自動車は進入禁止となっているのか、石畳の道はどこも歩行者天国のようになっているけれど、自転車だけはたくさんやってくる。
それも結構スピードを出してやってくるのでヒヤリとさせられる。
日本のママチャリなんかとは違って、重量級の自転車が多い。

ハーレムの路地
[こんな道を進んでいく]

北東方向へ歩いていき、運河に突き当たったところに風車があった。
オランダ的な風景にマッチする風車だと思ったのだけれど、これは昔からずったあったものではなく、最近観光用に復元したものらしい。
この風車を眺めながら、運河べりのベンチに座ってパンをかじる。
キャベツも千切って食べる。
運河には遊覧船も行きかうし、自家用のボートも係留されている。
自家用ボートはどれも趣味で保有しているものだろうけど、ずいぶんと贅沢な趣味だと思う。
ここら辺の人にとっては、これらのボートってのは別荘のようなものなのだろうか。

ハーレムの風車
[オランダと言ったらやっぱり風車なんだろう]

Mさんからハーレムには世界最古の薬屋があり、その薬屋のシンボルは口を開けたムーア人の顔で、店の入り口のところからニョッキリと飛び出していると教えてもらった。
そして、Mさんたちがオランダにいたころはその顔の色は黒かったけれど、その後黒いムーア人は人種差別的だということで、色を青く塗り替えたのだそうだ。
ムーア人は北アフリカの人たちだから、黒と言うより茶色い肌だろうけど、肌の色のことで差別とか言っている方が、変なコンプレックスや心の底の差別意識の表れのような気がするけど、今の世の中では、まだ触れない方が無難なのだろう。

さまざまなムーア人
[窓に並んだ様々な肌の色をしたムーア人]

そんな最古の薬局も見てきた。
ムーア人は確かに青い顔をしていたが、なんだか病的な感じも受ける。
黒い方が元気になれそうに感じるのだけれど。
自分自身で体調の悪いところもないので、薬は必要なくて、薬局の中には入らずにムーア人の写真だけを撮ってまた歩き出す。

青い顔したムーア人
[これが薬屋のムーア人]

次に向かったのはMさんご推奨のクラフトビール工房。
オランダもベルギー同様に地ビールは盛んなようで、修道院ビールなんてものもあるらしい。
ベルギーではそうしたビールを飲んだことがあり、ピンク色とか果物味のビールとか口にしたけれど、私としては普通のビールの方がすっきりしてて美味しいという印象が残っていた。
しかし、これも名物。
そして今はクラフトビールが人気らしい。
ハーレムでMさんはJopenというビール工房がお気に入りだったそうで、私もそこへ向かってみる。
Jopenのビール工房は、古い廃墟となった修道院を改装したものだそうだけれど、ビール工房としての歴史は古くなく、まだ開業して10年ほどらしい。
しかし、ビールの作り方自体は、14世紀頃のレシピを参考にして作っているそうで、現代のビールとは風味が全く違うのだそうだ。
とくに14世紀はまだビールにホップを使ってなかったそうで、ホップ以外のハーブ類などで風味付けをしたものらしい。

Jopen`k
[ハーレムのクラフトビールJopen]

Jopenは古い修道院を改修したそうだけれど、まったく新しい建物のように感じる。
スタイルは修道院だけれど、古さは感じない。
建物の前にもテラス席があって、食事をしている人がいる。
店内に入ると銅色の大きな蒸留器が聳えている。店内にもテーブル席があり、カウンター席もある。
私はカウンター席に座って周りを見回してみる。
常連さんが多いのか、カウンターのスタッフと談笑している人もいる。

jopen`k
[蒸留釜を見ながらビールが飲める]

この店に関する下調べとしてブログなどを読んでみたら、3種類のテイスティングセットがあり初心者にはお勧めとあった。
素直にお勧めに従い「テイスティングセット」と注文した。
ところが「どれをテイスティングしたいんだ」と聞かれてしまった。
こっちはもともと3種類のテイスティングセットという定番があるものと認識していたので面食らってしまう。
「いや、あの、ええと、だから3種類のテイスティングを、、、」と言うと、
「で、どれと、どれと、どれをテイスティングしたいんですか」と畳みかけてくる。
カウンターの前には20種類もの「本日のビール」見たいのが掲げられており、アルコール度数や特徴などが表示されている。
そんなの見ても、チンプンカンプン。
「お勧めの3種で頼みます」と注文をなんとか済ませる。

3種類のテイスティング
[Jopenのビールは缶入りもあってスーパーでも売られているらしい]

出てきたビールは150ccくらいのグラス入りで、色がそれぞれ異なっている。
一番左の色が薄いのが、ADRIAAN WITと言うそうで、アルコール分5%
お値段2.90ユーロ
真ん中は、MOOIE NEL IPAで、アルコール分6.5% 3.10ユーロ
右側の色が濃いのがJOHANNIETERで、アルコール分9% 3.50ユーロ

ビールの種類
[各ビールの説明はあるのだけれど]

で、味の違いとか、香とかはよくわからない。
普段飲みつけているビールとはまるで風味が違うことはよくわかるけど、それより値段の方がもっと気になってしまう。
クラフトビールと言うのも趣味の世界のものなのだろう。
私はテイスティングだけで退散する。
宿に戻れば愛しいフォスターが待っているんだから。
ここでのお会計、9.50ユーロ也。

クラフトビールの次はコロッケ。
あちこち歩き回って見つけたのが聖バフォ教会の裏にある小さな店。
観光客向けの立ち食い屋みたいな店で、店の前で観光客たちが大口開けて食べている。
もっとも、食べているのはコロッケではなく、ほとんどの人がフレンチフライを食べている。
フレンチフライにはマヨネーズのようなものをべっとりとかけてある。
コロッケは1個2ユーロ。
安くない。
観光地だからだろうか、それともこれが一般的なのだろうか。
バーツ換算で70バーツくらいもする。

コロッケ屋
[コロッケよりフレンチフライが名物らしい]

コロッケは俵型で、クリームコロッケかと思ったけれど、中はしっかりジャガイモが詰まっていた。
これにソースではなくマスタードを付けて食べる。
味の方は、普通にコロッケであった。

コロッケ
[本場?オランダのコロッケ]

コロッケ
[マスタードで食べるのも旨い]

コロッケを食べていたら、そのままビールが飲みたくなり、部屋へビールを取りに戻り、教会前の広場に腰掛けてビールを飲み始める。
飲んでるうちに、何か食べたくなりスーパーJUMBOへ行く。
お惣菜を買おうかと迷ったけれど、惣菜類は概して高かった。
そんななかで、あれれと思ったのが総菜売り場にあった餃子。
日本風の焼き餃子なのだけれど、ラベルにはSUSHI寿司と書かれている。
一応値札のところにはGYOZAと書かれてはいたけれど、オランダでは日本風の惣菜の総称としてSUSHIが使われているのかもしれない。
ちなみに5個入りで4.50ユーロ。

寿司と書かれた餃子
[餃子も寿司も市民権を得ているようだ]

このスーパーで買ったものはイワシのトマト煮缶詰 1.56ユーロ
サンポーランというチーズ 1.00ユーロ
そして、JUMBOと言ったら詰め合わせて1ユーロのパン。
しかし、いざレジで精算してみると、3.70ユーロで私の計算より若干高くなっている。
私の計算だと3.56ユーロなのに、変だなぁと思いながらまた教会前へ行って、イワシをパンに挟んでかじり、ビールを飲んではチーズを齧りしながら、レシートをチェックしてみた。
わかったことは、私の計算ミスではなく、レジのミスでもなく、ただ私の買い物が下手だったことが判明した。
JUMBOのパンは4種類詰め合わせて1ユーロなのに、私はパンを3つしか買っていなかった。
なので、パン一つずつで計算されて、4つ買うより高くなっていたことが判明。

旧食肉市広場
[ヨーロッパの人はこうした屋外のテーブルが好きみたいだ]

たっぷりある缶ビールをプシュ、プシュと開けながら、ノドに流し込む。
バンコクではなかなかチーズなんて食べられないので、とても幸せに感じる。
私がビールを゜飲んでいる横では、恋人同士なのだろうか、男女が抱き合ったままずっと動かない。

黒猫ポシェット
[今回の旅行に同行してもらった黒猫さん]

これで、今回の旅行はお終いとなるわけで、明日の朝は空港へ向かわなてはならない。
ハーレムからもスキポール空港へ行くバスがあるようなのだが、Google Mapで時間を調べようと思ったら、ストライキで運休と表示される。
ここへきてまたストなのかよ、、しかし、念のために確認しておこうとハーレムの駅前にあるバスターミナルへ行ってみた。
そして、わかったことは、「もうストは終わってるから、明日もバスは走るよ」ということであった。
アムステルダムのバスもクレジットカードで乗れるということなので、これで一安心。

日が陰ってきたら、急に寒くなってきて、ビールの続きは部屋に戻ってからということにした。
夜9時を過ぎても教会前の広場からは人の声が聞こえてきたし、教会の鐘の音も聞こえてきた。

窓からの夜景

[部屋の窓から見える夜景も一級品]

<hr>
9月14日 水曜日
スキポール空港を11時に出る飛行機に乗るために、朝7時過ぎに宿を出発しようとした。
チェックアウトをして、部屋の鍵を返さなくてはならないが、スタッフが誰もいない。
レストラン側の扉も鍵が閉まったまま。
しかたなく、カギは部屋の中のテーブルの上に置いてきた。

カギはテーブルに置いた
[カギはテーブルに置いたとメッセージを残しておいた]

空港方面行のバスはすぐにやって来た。
赤い連接バスで、ほぼ満席だったけれど、運よく空席があった。
どこをどう走っているのかわからないが、航空会社のスタッフのような制服を着た人が次々に乗り込んでくるから空港へ行ってくれるのは間違えなさそう。
郊外を30分ばかり走って、空港が見えてきた。
バスから降りてターミナルへ歩くが、到着した時もそうだったけれど、空港と駅が完全に融合していて、どこからが空の旅用で、どこからが汽車の旅用の施設なのかよく解らない。

スキポール空港
[空港前は歩道と車道の区分もあいまいみたいだ]

それでも、表示を確認しながら航空会社のカウンターまで行く。
カウンター前は長蛇の列ができている。
私はプレミアレーンを使わせてもらったので、ほとんど並ばずにチェックインできたが、出国審査は大変だった。
カウンター近くの出国審査場は定員オーバーで閉鎖され、隣のターミナルまで歩かなくてはならなかった。
そして、そちらの出国審査場も長い行列ができている。

チェックインカウンター前
[チェックインカウンター前の行列]

空港に到着したのが8時だったのに、出国審査を終えてKLMのラウンジにたどり着いたのは9時を回っていた。
KLMのラウンジも混雑しており、座れる席を探すのにちょっと苦労する。
ラウンジ内は朝食時だからか、朝食用の食べ物ばかりしか見当たらなかった。
ビールはハイネッケンの生ビールサーバーが置かれていた。
サーバーで生ビールをグラスに注ぐなんてやったことがない、初体験である。
恐々とチビチビとレバーを引いたら泡しか出てこない。
見かねた次の人が、「こんなもん、スピードで注げばいいんだぜ」と教えてくれて、思いっきりレバーを引いたらば、今度は泡がグラスの半分程度で収まってくれた。
まぁ、半分でも構わない。
何杯飲んだっていいんだから。
しかし、オランダでオランダを代表する世界ブランドのハイネケンビールを飲むのが、帰りの空港が初めてとなるとは思ってもいなかった。

ハイネケンの生ビール
[やっと上手にグラスへ注げるようになった]

生ビールも2杯目、3杯目とスキルが上達して、いい具合に告げるようになってきた。
少し離れたところにチーズのコーナーがあり、いろんなチーズが並んでいた。
ゴーダもあれば、エダムもある。
先月医者からは悪玉コレステロールの値が高すぎるから、パンやチーズなんかは控えるように言われているけれど、やっぱり、ここではチーズが美味しい。

ワインのコーナーもあって、冷蔵庫にはスペインの発泡ワイン、カヴァがあった。
辛口のカヴァは大好きなので、これもグラスに注いでいただく。
こちらは生ビールと違って、チビチビと注いだ方が泡だらけにならない。
飛行機に乗る前、朝からいい気分になってしまった。

CAVAもある
[カヴァなんて飲むのは何年ぶりだろう]

搭乗時間が近付き、搭乗ゲートまで延々と歩く。
大きな空港なので、歩く距離も長くなる。ゲート前もたくさんの人でいっぱい。
飛行機に乗り込んだら、やっぱり満席。
だいぶ飲んでいて、トイレが近くなっているから通路席が確保できていて良かった。

機内食ではタイのグリーンカレーが出た。
久々のタイ料理。
味の方は機内食としては、なかり本格的な味付けで美味しかった。
スプーンやフォークは環境に配慮してか木製であった。
使いやすいかどうかは別として、意気込みは感じられる。

グリーンカレー
[1週間ぶりのタイ料理]

もともとは窓側の席を予約していたのだけれど、往路で予想外の満席となったことに肝を冷やし、もし通路側でなかったらトイレを我慢しなくてはならないとの不安からこちらに到着した後に座席を変更しておいて正解だった。
窓側に席を取っていたのは、窓から黒海やクリミア半島が見えるかもしれないと思ったからだったけれど、いざ飛び立ってしまったらすべての窓のブラインドが下げさせられ、窓から外を眺めることなどもともと無理だったことがわかった。

黒海上空
[エアショウでは黒海上空を飛行していることを示していた]

<hr>

9月15日木曜日の早朝、14時間のフライトで台北に到着し、またラウンジでお好み弁当風のものを食べてバンコク行きに乗り継ぐ。

お弁当
[今度はベジタリアンではなく、お肉が入っていた]

2年半も延期になっていた今回の旅行も無事完了することができた。


| https://chiangmaikk.com/blog/index.php?e=224 |
| | 03:48 PM | comments (0) | trackback (0) |
蘭英旅行 その6
9月12日 月曜日

本日の予定はウィンダミアより鉄道でハルへ出て、そして再びオランダへ戻る夜のフェリーに乗ること。
こちらに来るときは、鉄道員のストなどで随分と時間がかかってしまった。
そのロスタイムも、予定外の寄り道をしたりして楽しかったので、結果オーライ。
しかし、本日は船の時間があるので、あんまりスケジュールが乱れてほしくない。

曇り空
[天気は曇り、霧雨も]

朝6時過ぎに起床。
今回の旅行のために買った靴の底がすり減って穴が開いてしまった。
もともと安い靴ばかり履いているので、靴の消耗が激しい。
だいたい4か月で履きつぶすのだけれど、今回はまだ1か月しかたっていない。
いつもはLEOと言うブランドの靴を買っていたが、4か月でダメになってしまうのでも早すぎると思ったので、今回はMashareと言うブランドの靴にしてみた。
スタイルも値段もおんなじで、半年くらい持てばよいなと思っていたのだけれど、買うときに靴屋の店員が、「この靴は底が薄いよ」と忠告してくれていた。
それを素直に聞かず、「なぁに、そんなことはないだろう」と楽観していたが、忠告は真実だったようだ。

靴底に穴
[靴底に穴が開くと、雨が大敵となる]

朝食にはパンとニンジン。
また、汽車の中で食べようと即席麺も茹でる。
これは汁気を切って焼きそば風する。
もともとカレー風味なので、弁当にも適していそうだ。
これにバターを絡めて癒着防止とする。

朝8時にユースホステルを出発。
ちょっと小雨交じりで、雲が垂れ込んでいる。
傘をさすほどではない。
昨日から何度か歩いた道を下っていく。
その途中で、三毛猫発見。
ちょっと大柄のネコで、ペンションのような建物の庭にいた。
ネコも私に気づいて、尻尾をおったてて近付いてきた。
私の経験からしてネコが尻尾を立てて近付いてくるのは、ネコが嬉しかったりワクワクしているときに見られる姿態だと思っている。
「おぅ、おぅ、なんか変な奴がやって来たぞ、ちょっとかまってやるか」みたいなことをネコは考えているのかもしれない。

イギリスの三毛猫
[ネコに出会うとうれしい]

すり寄ってくるのだけれど、庭の周囲には網が張り廻られれていて、ネコはこちらまで出てこれない。
私もネコへ手を伸ばすことができない。
ネコは金網に身体をスリスリしている。
そこへ私は網目から指を突っ込んで、ネコに触れてみる。
毛並みの良いネコだ。
イギリスではネコが外へ出ることを禁止しているのだろうか。
ネコの安全のためには、良いことと思うけど、ネコも完全な人間の管理下に置かれて、退屈しているのではないかと思う。

金網越し
[金網越しにスリスリ]

月曜日ということもあり、学校へ向かう生徒の姿を見かける。
制服を着用しているが、私立の学校なのだろうか、制服も明るい色でデザインもあか抜けている。
歩いている生徒もいるけれど、自転車の生徒もいた。

ウインダミアの街まで1時間ほどで到着。
どこにも立ち寄らずまっすぐ駅に向かう。
ここから乗る電車は09:56発のランカスター行きなので、まだしばらく時間がある。
駅のベンチに腰掛けて待つ。

ウィンダミア駅
[いかにもローカル線の終着駅]

ウィンダミアの駅は片面のホームが一つあるだけ。
そして、側線が一本引き込まれているけれど、現在は使われていないのか、レールとしての役割を果たせそうにないくらい朽ちている。
いや、これはもともと側線でもレールでもなく、ただのイミテーションなのかもしれない。

ウインダミアへ来るときは、ストの影響か、乗れなかった電車にやっと乗ることができる。
これから乗る電車は、ちゃんと走ってくれるようで、ホームには電車を待つ人の姿が多くなってきた。
ほとんどが観光客のような恰好をしている。
そして、折り返しとなる電車がホームへ入ってきた。
ローカル線の電車とは思えないほどスマートな電車だ。
3両編成で、ピカピカの車体。
30年前に乗った時の古いレールバスのような面影はどこにもない。

新型車両
[新型のディーゼルカー]

車内も明るく、清潔感があり、特急列車かと思うほどだ。
ホームにたくさんの人がいたので、乗り切れるだろうかと思ったけれど、いざ乗り込んでみたら、車内は空席が目立ち、ゆったりと車窓を楽しめる環境となっていた。
緑の丘が続く中を快調に走る。
ディーゼルカー特有のエンジン音や振動もほとんど感じない。
さらにオクセンホルム・レイクディストリクトから本線に入ると、スピードも上がり、窓の外の景色が飛ぶように流れていく。

車内の様子
[ローカル線の車内とは思えないほどスタイリッシュ]

再び川を渡り、中世風でシックな街並みが見えたところで、ランカスターに到着。
ものの30分少々で来れてしまった。
ここでの乗り継ぎ時間は14分ほどで、こんどはリーズ行きの電車へ乗る。
どんよりとした天気のもとランカスターの街をもう少し歩いてみたい気もするけれど、跨線橋を渡って、駅のはずれのホームへ回る。

ランカスター
[この橋からの眺めが印象的だった]

リーズ行きの電車はしばらくさっき走ってきた本線と並行して北上する。
そして、さっきの電車では止まらなかったカーントフォースという駅に止まった。
すぐ横の本線側にはホームがないみたいなので、この駅はこのローカル線専用なのかもしれない。
ちょうど熱海の先にある伊東線の来宮駅とその横を通過する東海道線のような関係なのかもしれない。
このイギリスの来宮駅にはたくさんの古い車両が集められていた。
もう廃車済みと思われる機関車や客車がたくさん係留されていた。
チョコレート色した、ぼってりとした機関車が並んでいて、なんだか鉄道博物館みたいな雰囲気だった。

古い機関車
[私の印象に残っているのは、以前はこんな機関車ばかりだった]

来るときにも乗った路線で、ヨークシャームーアの丘の連なりの中をのんびりと走っていく。
2度目なので、ちょっと車窓の景色も飽きてきてしまったので、持参のカレー風味焼きそば弁当もどきを食べることにする。
電車の窓は開けられない構造で、こんな車内で食べ始めたらカレーの臭いが車内に充満してしまうのではないかと気を使ってしまう。
即席麺を2つで作ったもので、少し朝にも食べてきたのだけれど、ちょっとボリュームがありすぎたようで、食べ終わると胃もたれを感じる。

ヨークシャームーア
[曇よりした天気と適度な揺れは眠気を誘う]

居眠りなんかもする。
別に窓から見えるのが牧場ばかりで、羊を数えていたわけではないけれど、単調な景色の中を揺られていると眠気がやってくる。

リーズでまた乗り換え。
こんどもハル行きに16分の乗り継ぎ時間と好接続。
その16分の待ち時間の間にも、リーズの駅を発着する電車の多いことには驚いた。
次々に入ってきては、出発していく。
よく見てみると、長いホームを3つくらいに分割して使っている。
つまりホーム前方、中ほど、後方と、一本のホームに3種類の電車が並んでいる。
鉄道駅と言うよりバスターミナルのような運営をしているようだ。

リーズ発着電車電光掲示
[リーズ駅の発着案内、過密ダイヤだ、、そして喪中]

リーズからハルまでの電車も空席が多かった。
電車に乗り込んでから去年までタイに住んでいて、ピサヌロークへ何度も来てくれていたMさんへLINEメッセージを送ってみた。
ちょうど、会社のメールをチェックしていたらロンドン支店のスタッフが一斉発信したメールがあり、そのスタッフの名前がMさんと同姓同名(漢字は違う)だったので、思い出してメッセージを送った。
Mさんはタイに来るまでイギリスとオランダにいたそうで、たまたま私が若いころに仕事で出入りしていた銀行本店に勤務されていらしたので、とても親しみを感じていた。
そのMさんからすぐに返信が来て、Mさんもロンドンからアムステルダムへ転勤となるとき、ハルからロッテルダムまでフェリーで行ったそうだ。
また、ちょうどご主人がいまロンドンへ出張するところなんだそうで、ニアミス。
それから、Mさんへ私がオランダではハーレムに宿をとっていることを伝えところ、ハーレムではクラフトビールを飲みに行くように勧められた。

さて、約一時間の乗車でハルが近付いてきた。
ハンパー川が迫ってきて、大きな吊り橋が見える。
30年前にイギリスへのスケッチ旅行の企画をして、同行してきたはずなのだから、そのとき廻ったイギリスの田舎町、名前を憶えているものもあれば、思い出せないものもある。
一昨日分のブログにも書いたけれど、あのときもハルに来ていたような気がする。
その時、画家の先生から、色鉛筆で書かれたスケッチをプレゼントされた。
その絵は、どうもこのハンパー川にかかる吊り橋によく似ていた気がする。
あの絵は、今どうなっているのだろうか、それもよくわからなくなってしまった。
こんど東京へ帰ったら、探してみたいと思う。

ハンパー川の吊り橋
[ハンパー川の吊り橋]

午後2時、ハルに到着。
ウィンダミアを出発して4時間で到着できた。
今夜の船が出る港まで、歩くと遠いのだけれど、それでもまだ時間がたっぷりある。
イギリスに来て、イギリスの名物と言われるものをまだ口にしていない。
パブにも入っていなければ、ギネスのビールだって飲んでいない。
しかし、なんにもないというのも寂しいので、フィッシュ&チップスを食べてみることにする。
昼に焼きそば弁当を食べて、胃もたれを感じているので、揚げ物を食べたいという気分ではないけれど、食べておきたいと言う気はする。
バンコクでもフィッシュ&チップスを食べされる店は多い。
白身魚のフライなんて、どこでも食べられるものなのだろう。
しかし、バンコクのはタラではなく、淡水魚ドーリーと呼ばれるナマズの一種が使われていることが多い。
この魚も美味しいのだけれど、やっぱりタラを食べたい。
タイではタラは高級魚。

イギリス滞在3日目になるわけだけれど、イギリス名物とか庶民の食べ物などと言われている割には、町中でフィッシュチップスをあんまり見た記憶がない。
レストランに入ればメニューにあるのかもしれないが、私のイメージにあるのは、立ち売りのフィッシュチップスで、簡単な包装紙か何かにフレンチフライト一緒に包んだもの。

ハルの鉄道駅で、Google Mapを使ってフィッシュ&チップスの店を検索してみる。
すると、駅の南東側に数軒あるらしい。
私はこの手の軽飲食店はフランチャイズでチェーン展開しているのだろうと思ったけれど、ハルに関してGoogle Mapで表示されるフィッシュ&チップスの店はほとんど小さな個人商店のような店ばかりのようだ。

駅北側の一角は旧市街と言った感じで、重厚で威厳のある建物が並んでいたり、銅像や彫刻があったりしたが、南側はちょっと場末感がある。
なんとなく活気がない裏町のような感じも受けたが、そこを過ぎると今度は公団住宅のようなアパートが並んでいる。
アパート群の中は静かで、生活感はあるけれど、歩いていてワクワクは感じない。

アパート群のはずれで一軒のフィッシュ&チップスの店を発見。
これが1店舗目。
まずこの店の価格をチェックする。
スモールと言うのが3.60ポンドと表示されている。
タイバーツ換算で150バーツほど。
私の財布には安くない。
とりあえず、さらに先に歩いていくと、こんどは下町の商店街と言った感じの場所に出くわす。
下町と言っても、東京の下町ではなく、移民街みたいな感じの下町で、歩いている人もアングロサクソンが多数派ではなく、アラブ系やアフリカ系、アジア系の肌の色をした人の比率が増してくる。
言い方は悪いが、低所得者の生活圏と言った感じで、私の財布にも優しそうではないかと期待がかかる。
ここでも、フィッシュ&チップスの店を見つけたけれど、残念ながら私が期待したほどの価格ではなかった。

フィッシュチップス屋
[イギリスの物価が高いんではなく、私が発展途上国から来ただけなんだな]

せっかく来たのだし、船の中で食べる食料を調達しようとスーパーへ入ってみる。
アラビア系のスーパーらしく、店内はアラブやインド系の食品が並んでいる。
これは面白いぞと、陳列棚を覗きながら奥へ入っていったらば、警備員に捕まった。
このスーパーではカバンを店内へ持ち込むことは禁止されているそうだ。
カバンは入り口に預けるようにと言われる。
私はキャリーバックを引っ張っていたので、目に留まったのだろう。
しかし、荷物を預けてまで見物をしようとは思わないので、そのままスーパーを出てしまう。
次にまたスーパーを見つけた。
アイスランドと言う名前のスーパーで、ここではキャリーバッグのお咎めはなかったけれど、売っているものは冷凍食品ばかり。
ユースホステルへ泊まるならレンジが使えるので冷凍食品を買っておきたいけれど、今夜はフェリーなのでレンジはなく、ここもちょっと眺めただけで退散する。

ハルの下町
[移民の多い下町のようなところ]

小さなミニスーパーと言った感じの個人経営的な店も並んでいる。
ミニスーパーと言うより昔ながらの食料品店と言った感じ。
そんな店先にプラムが売られていた。
3つで1ポンド。
こちらに来てから果物など食べる機会がなかった。
いや、果物とか高いので、贅沢に感じて買うのを避けてきたが、こうして商店の店先に並んでいるのを見ていたら生唾が出てきて、買うことにした。
まだポンドは財布に残っている。
ちょっとくらいの贅沢で、価値はその何倍もあるだろう幸福感を得られそうだ。
狭い店内には雑多なものが売られており、その中にキャベツもあった。
そうだ、カット野菜より、丸のままのキャベツの方がお得なはずと思い、小さなキャベツもひとつ購入。
これが0.65ポンド。

キャベツとプラム
[これは船に乗船後に撮影したもの]

結局フィッシュ&チップスは公団アパートのはずれにあった店で買うことにした。
注文の仕方がよく解らなかったが、塩コショウとチリを少し振りかけてもらい、紙に包んでもらった。
私がテイクアウトの順番待ちをしている間にも、何人かが買いに来ていたので、このあたりでは人気の店なのかもしれない。
このフィッシュ&チップスは旧市街まで行って、そこのベンチにでも腰かけて食べることにした。

店を出て歩き始めるとちょうど学校の下校時刻なのか、たくさんの低学年くらいの子供たちが保護者と歩いていた。
アフリカ系の子供たちが多いようだ。
アジア系も少しいる。
制服ではなく、色遣いはカラフルな服装をしているが、雑多な色遣いで、いかにも庶民階級と言った感じ。
このあたりでも登下校は保護者の付き添いが必要ということは、家庭の主婦たちは日本のようにパートに出たりしにくいのではないかと思うが、うまく両立できるようなシステムがイギリスには定着しているのかもしれない。
さっきのフィッシュ&チップスの店でも、働いているのは主婦のパートみたいな女性たちだったし、スーパーのレジ係もそうだった。

旧市街ビクトリア女王像前広場
[キャリーバッグの上の包みがフィッシュ&チップス]

午後4時前、ビクトリア女王の銅像がある広場まで来て、そこでフィッシュ&チップスの包みを開いてみる。
ミニとなっていたけれど、入っていたのは巨大な白身魚のフライとフレンチフライ。
包まれ方も無造作で、いかにも大衆向けのB級メニューと言った感じ。
それを重厚で威厳ある建物に囲まれたビクトリア女王のお膝元でかじる。
旨いかって言われれば、まずくないとしか答えられないが、たぶん空腹だったなら、胃袋が喜んだことだろう。
そして、ボリュームがあるので、半分だけ食べて、残りは船に乗ってから夕食として食べることにした。

フィッシュ&チップス
[見た目からしてB級感がいっぱい]

30年前に立ち寄ったのがハルだったかどうか、まだ思い出せないが、その時に街の中でホコ天のようなところがあり、観光客がたくさんいて、蚤の市みたいなものがあったり、コーヒー屋はエスプレッソを入れるのにシューっと盛大に蒸気を噴き上げていたのを思い出すが、そんな感じのところは、今回ちっとも見かけなかったので、あれはハルではなかったのかもしれない。
そう、もう少し北にあるスカボローだったんではないかと思われてきた。
でも、スカボローに吊り橋なんかあったかな、記憶が混乱しているようだ。

古い教会
[旧市街にあった古くて大きな教会]

さて、ハルの街自体はもうこの程度として港へ向かって歩き始めるが、途中に大きなスーパーがあったことを覚えているので、そこへ寄って買い物をしていくことにした。

スーパーの名前はLiDL。
ここはオランダのJUMBOと似たような大型スーパー。
郊外にあるので広い駐車場がある。
別にわざわざ郊外の大型スーパーに来なければ買えないようなものを買うわけではなく、とにかく安く胃袋を満足させればよいだけのことだけれども、こうして異国に来てスーパーへ入るというのはワクワクする。
ワクワクはするけど、でも別に何も買うようなものはない。
このLiDLで買ったものは、3.99ポンドのスペイン産の赤ワインと0.79ポンドのTiger Loafと名前の付いた丸くて固いパン。

スーパーLiDL
[イギリスのスーパーはデカデカの看板広告を出さないようだ]

キャベツもあるしパンもある、赤ワインもあるので、今夜の夕食はこれでOK。
ビールも買おうかと思ったけれど、来るときに船内の免税店を覗いたらビールがとても安く売られていたので、ビールは船内の免税店で買うことにした。

スーパーから港までは徒歩で約一時間。
来るときと同じように刑務所の横を通り過ぎる。
5時半にフェリーターミナル到着。
出港は夜8時半なのでまだ時間もたっぷりあるけれど、乗船手続きを済ませて船に乗り込む。
こんどの船室は10階となっていた。
出国審査などなく、パスポートすらチェックされることなくそのまま乗船。
なお、形だけのイミグレーションの隅でで往路と同様に空いたペットボトルに飲料水を詰めさせてもらう。

フェリーターミナル
[歩いて、歩いて、目的地に着くと、達成感を感じる]

今夜の船室も2段ベッドの二人部屋だけれども、先客はまだ来ていない。
さっさと下段のベッドを占領させてもらうが、上の段のベッドは壁の方に収納されたままになっているから、見た目はシングルルームのような感じになる。
熱いシャワーを浴びさせてもらい、真っ白いバスタオルで身体を拭く。
タイの安宿ばかり泊まっているので、熱いシャワーを浴びただけで幸せになれる。
タオルが白いなんて、感動もの。
畏れ多くて、きれいにたたまれたバスタオルを使ってよいものかと躊躇したくらいだ。

最後尾のデッキへ出てみる。
ロッテルダムの港では周辺に何隻もの貨物船が見られたけれど、ハルのこの港にはこのフェリーしか係留されていないようだ。
港のすぐ横に、風力発電で使われると思われる巨大なプロペラが並んでいるのが見える。
羽の長さがゆうに100メートルはありそうだ。
こんな巨大なものを海岸沿いへ無数に設置して、いったいどれくらいの電力を得ているのだろうか。
遠くにハンパー川にかかる吊り橋が見える。

風力発電のプロペラ
[こんな巨大なものをどうやって組み立てるのだろう]

今夜のルームメイトはどんな人だろうか、いや、そもそも同室者は来るのだろうか。
同室者が来てしまってからでは、狭い船室内で一人勝手に食事をとりにくくなるだろうから、船室に戻ってパンとキャベツの夕食とする。
ワインも飲む。
食べ残していたフィッシュ&チップスも食べる。
ポテトが冷えてしまって、少しぐしゃっとした感じになっているけど、それはそれで美味しくいただく。
港まで歩いたので、さっきよりはお腹もすいてきており、何よりワインを飲みながらだから、この手のものが美味しく感じる。
丸のまんま買ったキャベツは、葉っぱを1枚1枚剥がしながらかじる。
見た目は緑色をして、春キャベツのような柔らかそうなキャベツだと思ったが、葉を剥がすときも、途中で千切れるようなことがないくらいしっかりしたキャベツで、味も濃い。
つまり、日本やタイのキャベツよりずっと青臭く感じる、
生のブロッコリーの芯を齧ったら、こんな感じの味がするんではないかと思える。
青臭くて、ちょっとほろ苦いのも、食べ慣れてくると、美味しく感じる。
こうして丸かじりも良いけど、炒めたり、茹でたりしたら、甘みが出てもっと美味しくなりそうな気がする。

7時半、そろそろ日没時刻と思い再び甲板へ出てみる。
果たして低く垂れこめていた雲が赤紫色に染まっている。
まだ出港まで1時間ほどある。
船内のバーではだいぶ盛況を呈しているようだ。
デッキにも飲み物を手にした人を見かける。

夕焼け
[私も何か飲みたいところだが、持ち込み飲料は禁止らしい]

本日は出港準備が早めにできたのか、8時過ぎには出港した。
まだ西の空には赤みが残っている。
北半球もこのあたりまで来ると、日の出も日没ものんびりしているようだ。
タイでは夕焼けだと思ったらすぐに真っ暗になってしまうし、朝日が昇ると思ったら、すぐ強烈な日差しがさしてくる。

ハル出港
[まだ空に赤みが残っている中、静かに出港]

さて、同室者はどうなっているだろうかと船室へ戻ってみたが、誰もいない。
帰りの船も一人で船室を独占できるようだ。
どうもシステム的によくわからないのだが、もともと相部屋制ではなく、個室扱いなのだろうか?
それとも、乗船客が多くなかったので、一部屋割り振られたのだろうか。
どちらにしても、一人部屋と言うのは同室者に気兼ねしなくて済むので楽で良い。

免税店へビールを買いに行く。
ふつう免税店では高級洋酒が中心で、あまりビールなんて売られてないようだけど、ここではビールがたくさん売られている。
一番安いのはフォスターで、次がサンミゲル。
どうもイギリスらしさがあまり感じないラインナップだけど、フォスターは一昨日から飲んでおり、常温で飲んでも旨かったので気に入っていた。
パイント缶の24本入りで24ポンドと安い。
しかし、24本など免税範囲と言うものがないのだろうかと不思議に思ったが、免税店の壁に免税範囲についての張り紙があった。
それによると、この航路の場合、アルコール度数22%以上のものなら4リットルまでとなっている。日本は洋酒3本までだから、大差はない。
しかし、アルコール22%以下なら9リットルとなっている。
どんな酒が22%以下のアルコールなのか見当もつかないが、ただワインやビールはまた別枠がある。
ワインなら18リットル。
ビンに換算したら20本以上になる。
とても手荷物の範囲じゃない。
たぶん、フェリーなので車で来る人がまとめ買いをするのだろう。
さらにビールに至っては42リットルまでとなっている。
ビア樽でも売っているのかと思ってしまう。
私は一番安いフォスター24缶入りを買おうとレジに並んだら、男性店員から「もうひとケース買ったら割引になって、44ポンドだよ」とささやかれたけれど、48本ものビールなんて買っても持ち歩けない。

軽いビールなので水代わりに飲もうと思っていたのだけれど、お金を払ってもその場ではビールを渡してもらえなかった。
領収書だけ渡されて、明日の朝ビールを受け取りに来るようにとのこと。
今晩はビールを思いっきり飲もうと思っていたが、泡と消えてしまった。

夜の航海
[船は夜の航海でも手足伸ばして寝ていけるのがうれしい]

さて、明日は再びオランダ。
早めに就寝することにした。

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