タイはますます暑い日が続いている。
ピサヌロークからバンコクへ拠点を戻して半年が過ぎたけれど、バンコクでの職場環境になれない。
お客さん的な居心地で、仕事に対するやる気が起きてこない。
やるべきことが見つからないなんてわけではなく、やるべきことはわかっているし、大して難しいことでもないけれど、気力が湧いてこない。
休みの日などは、もっと気力がなく、1日の大半をベッドに寝転んで過ごしている。
外は暑くて、外出する気にもならないし、早く夕方になってビールを飲みたいと思うだけ。
つまり、生活に対して張り合いがない。
そもそも元気がない。
毎日楽しくない。
これじゃ、生きてても意味ないなとも感じる。
ときどき、さっさと死んじまって、あの世に先に行ってしまったネコに会いに行きたくもなったりする。
そんな毎日の中で、あちこちで見かけるネコに出会うと、ちょっとは元気が出てくる。
それも、幸せそうにしているネコを見ると、こっちまで嬉しくなってくる。
ネコなりに、環境に順応して、健気に生きている姿を見ると、少しは元気な気分にもなってくる。
そんなわけで、この1か月間に私が出会ってきたネコたちについて、書き留めてみたいと思う。
[足にまとわりつくネコ]
基本的には、だいたい毎日朝6時前から5キロほどをジョギングしている。
以前は30分を目安に走っていたが、だんだんと時間が長くかかるようになってきてしまった。
気力がないから、体力も落ちているのかもしれない。
しかし、少しぐらい走るのが遅くなったって別にどうってことはない。
それに沿道のネコたちにあいさつしながら、時に立ち止まって、ネコをなでたりする方が精神衛生的に良いということを経験的に知っている。
そんなネコの中でも、このところ一番気になっているのがこの黒ネコ。
まだ若いメスで、どうやらこの1か月ほどの間に捨てられた感じのノラである。
[尻尾がすっきりしているところなど、私のネコによく似てる]
私を見かけると、駆け寄ってきてくれる。
毛のツヤも悪くなく、お腹を空かせているわけではないようなので、きっと誰かから常に食べ物がもらえる環境なんだと思う。
駆け寄ってきて、足の周りにまとわりつく。
抱かれるのはあまり好きではないようで、抱き上げると、「降ろせ、降ろせ」とバタバタする。
そのくせ、私がまた走りだそうとすると、走って追いかけてくる。
なので、スズメとかにネコが気を奪われている隙に、そっと立ち去らなくてはならない。
一時は、あんまりに可愛いし、このネコをアパートへ連れ帰って飼おうかとも考えたことがあったけれど、いったん外の生活を覚えたネコを狭いアパートに閉じ込めるのは、かわいそうだとも思うようになった。
[貯水池の近くの空き地が棲家らしい]
そしてそのうちに、ネコの方でも、そんなにべたべたとすり寄ってこなくなった。
きっと最初の頃は、捨てられたばかりで、とにかく人恋しくて必死だっただけかもしれない。
ジョギングでは、ポケットにうちのネコの遺影に供えた後のドライキャットフードを小袋に入れて忍ばせてある。
このきっとフードを毎朝楽しみにしているネコがいる。
[毎朝律儀なネコ]
去年くらいか、ひょっとしたらもう少し前くらいから時々見かけていたメス猫なのだけれど、このところ毎朝おんなじところで、私が走ってくるのを待っている。
しかも、私の姿を見かけると、ニャニャニャニャニャと言いながら小走りでかけてくるようになった。
さっきの黒ネコと異なり、こちらはただ食べ物がもらえるから喜んで寄ってくるようなのだけれど、それでもネコが喜んでいるのを見るのは悪くない。
縁台のようなところで、キャットフードを少し食べさせる。
[食いしん坊なだけかもそれとも本当に空腹なんだろうか]
このネコは、お腹のところに腫瘍でもあるのか、おおきな瘤がぶら下がっている。
触るとほんのりと冷たいのだが、別に痛そうでもない。
以前からずっとコブが目立っていたから、悪性と言うわけでもなさそうだけれど、ちょっと気になるので、獣医のところへ連れて行ってみたいけれど、いちど獣医のところへ連れて行くようなことになったら、また元居た場所へ戻すことができなくなってしまいそうで、躊躇している。
食べ物を待っているネコはほかにもいて、ラマ九世寺に住み着いている黄色いネコも、私を見かけると、何かもらえると思って寄ってくる。
お寺のネコは、だいたいのところお寺から何らかの食べ物をもらっているようで、飢えているようではないのだけれど、たぶんお寺でもらうものより、ドライキャットフードの方がおいしいのだろう。
[お寺の黄色いネコ、目はブルー]
私もネコの背中を撫でながら、
「おしいしかい、これはウチのネコちゃんのご飯なんだよ、おいしいだろ」と声をかけている。
このネコはさっきのネコのように必ず毎朝同じ場所で私を待っているというわけでもないけれど、いるとしたらばだいたいお寺の入り口の門の前でウロウロしていることが多い。
お寺では、猫や犬にも食べ物を与えていることもあってなのか、お寺にネコを捨てていく人も多い。
この黄色いネコは、うまくお寺に住み着くことができているようなのだけれど、ときどき捨てられたばかりと思われる首輪をつけたネコがニャーニャーと鳴いているのを見かける。
しかし、同じネコを3日と続けてみることはなく、姿を消しているので、どこかへさまよって出て行ったのか、何らかの事故に巻き込まれたのではないかと思って心が痛む。
[まだ若いオス、ちょっと気が弱かった]
この子猫は、やはり捨ネコらしかったが、お寺から消え失せてしまうことなく、なんどかお寺の入り口で見かけた。
若いオス。
少しお腹も空いているようで、キャットフードを喜んで食べてくれた。
それでも、力の関係からか黄色いネコがやってくると遠慮して、私の陰に隠れたりする。
また、ときどき黄色いネコに威嚇されたりしていた。
が、しばらく黄色いネコしか見かけない日が続いた。
子猫の方はどうしたんだろうかと思いながら、黄色いネコにキャットフードを分けていたら、寺男に「子猫は犬に噛み殺されたよ」と知らされた。
犬もネコも好きだけれど、しかし、こういう話を聞くと犬が嫌いになってしまう。
それにタイの犬は、一匹の時は尻尾を巻いて逃げ腰なのに、徒党を組むとやたらと吠えかけてきたりして性根が良くない。
[アユタヤへも行きました]
3月下旬に仕事でアユタヤへ行った。
SLの運行日で、その実況をした。
そのアユタヤ駅でネコたちにあった。
[日本ならネコ駅長とかにしてもらえそう]
このネコは駅舎内の切符売り場で見かけた。
この駅で飼われているのかはわからないけれども、どうやらその堂々たる態度から、ここを縄張りにして住み着いているネコらしい。
またホームの方にも別のネコたちがいた。
こちらはケージに入った純白のネコたちばかり。
[伸び伸びネコ]
ネコの入ったケージはいくつもあり、まだ乳ばなれしていない子猫も母ネコと一緒に入っていた。
ケージに入っているから、ここで飼育されているネコで大切にされているのだろうけど、狭いケージの中の世界にいるのは、ネコとしては不憫なんじゃないだろうか。
[この2匹は兄弟だろうか]
無防備に昼寝をしている姿を見る限りにおいては、ネコは不憫なんて感じてなさそうにも思えても来る。
[スラムへの闖入者に興味津々の子猫たち]
ジョギングコース周辺から、運河沿いは、湿地帯で、バラックのような建物が密集したスラムのような環境になっている。
こんな環境にもネコたちは幸せそうに暮らしている。
飼い猫なのか、地域ネコなのか、野良なのかも判然としないけれど、昼下がりに狭くくねった路地を歩くと、何匹ものネコたちに出会うことができる。
[しあわせなんだろな]
ここで生活している人間たちの生活レベルからして、ネコたちも贅沢な食べ物など食べれてはいないと思われるのだけれど、毛のツヤの悪いネコはあまり見かけないし、怪我をしているネコも見かけない。
このあたりはコミュニティーと呼ばれるモスリムの人たちの居住地なので、犬があんまりいないからなのかも知れないし、人ひとりが歩けるくらいの狭い路地奥なので、自動車も走ってこないから、ネコたちも安心して暮らしていられるのかもしれない。
[路地はネコたちの遊び場]
4月の中旬はソンクラーンと言うタイの正月休み。
私は仕事でピサヌロークとウドンタニなどへ飛び回った。
そうした先でもネコたちに出会うことができた。
いつもピサヌロークの定宿はリタイ・ゲストハウスに泊まっていたのだけれど、こんかいぼやぼやしていたら、満室とかで泊まることができなくなってしまった。
しかたなく、ちかくにあるサマイニヨムという1970年代のホテルへ泊まることにした。
たぶん40年前くらいは、それなりの格式あるホテルだったんだろうと思われる作りの宿で、なんとなく部屋の中は3年前にクローズしたアマリンナコンホテルによく似ていた。
ロビーやレセプションの体裁は、ちゃんとしたホテルなのだけれど、そこにいるのはホテルのスタッフではなく、ネコと犬。
[あんまりお客様を歓迎しているといった態度ではありません]
ホテルのオーナー家族は、きっと動物好きなのだろう。
レセプションの奥の部屋から出てきて、私に吠え掛かってきた犬を制止した。
犬数頭とネコもメスが2匹とオスが1匹いるそうだ。
ネコも良くなつくのはオスだけで、メスのうちの1匹はフーフーと威嚇してくるし、もう1匹も警戒心が強い。
[レセプションの台もネコの昼寝場となっている]
たぶん、このネコたち。
生まれたときから、ここで飼われてきたのではなく、元は野良だった時があり、それが拾われてここで飼われるようになったために、威嚇したり、やたら警戒したりする性格が抜けきれていないのではないだろうか。
そうしたネコたちを、こうして自由にホテルの中で飼っているのを見て、
「よかったね、いい人たちに拾われて」とネコたちに祝福の言葉をかけたくなる。
[ビクター蓄音機のマスコット、ニッパーのネコバージョン]
もっとも、宿泊する人たちもみんながみんな動物好きとは限らないようで、ネット上にはひどいコメントも掲載されていたけれど、私はとても気に入りました。
[4月14日、ブンカーン県ワットプートーク山門前にて]
ソンクラーンのタイ正月は水かけ祭りで知られているけれど、新型コロナウイルスの蔓延により2020年から水掛け合いが禁止されている。
今年も禁止されてしまったのだけれど、田舎では禁止されても、やっぱり水掛け合いをしている人たちはいる。
もっとも、ほとんどが子供たちなので、大目に見られているのかもしれない。
娯楽の少ない田舎で、数少ない子供たちの楽しみにしていた祭りなのだから。
[ワットプートーク全景]
ブンカーン県のワットプートークは、例年ソンクラーン期間中の入山を禁止してきていたけれど、今年は禁止されなかった。
ワットプートーク山門前の簡易食堂で昼食を食べていたら、食堂を黒ネコが徘徊していた。
チッチッチッチッと呼び寄せようとしたが、関心は示すものの警戒して近くには寄ってこない。
しかし、ガイヤーンと言う焼き鳥などを盛大に食べている隣のテーブルの下にちょこんと座って動かない。
[きれいな黒ネコ]
どうやら食べ物が欲しいらしい。
しかし、焼き鳥を手にして、呼んでみても、欲しそうに近くまでは来るけれど、けっして手からもらおうとしはない。
床に置いてやると、引っさらうよう咥えて、店の裏へ駆けて行った。
あとを追ってみたらば、店の裏のゴチャゴチャとしたところに3匹ほどの子猫がいた。
この黒ネコはお母さんネコだったようだ。
[子猫は黒ではない]
子育ての真っ盛り。
子猫は食べ盛りなのだろう。
焼き鳥の食べ残しをもらうたびに、店の裏へと飛んで行っている。
ネコとはほんとうに母性愛の強い生き物だと思う。
[ウドンタニ空港でも黒ネコに出会う]
黒ネコと言えば、ウドンタニの空港でも1匹見かけた。
この空港で時々見かけるネコで、去年のシーズンにも見た記憶があるし、今年の1月には写真にも撮っている。
ターミナルの建物から出たところにいて、人に馴れている。
毛のツヤも良さそんなので、食べ物にも苦労はしていないのだろう。
しかし、ここは空港へ出入りする車も多く行きかう場所なので、事故に遭わないだろうかと気にもなる。
だから、こうしてまた会えると
「ちゃんと元気にしててくれたかぁ」と声をかけてしまう。
さて、ネコのことをいっぱい書いたし、私も少し元気出してみるとするか。