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蘭英旅行 その6
9月12日 月曜日

本日の予定はウィンダミアより鉄道でハルへ出て、そして再びオランダへ戻る夜のフェリーに乗ること。
こちらに来るときは、鉄道員のストなどで随分と時間がかかってしまった。
そのロスタイムも、予定外の寄り道をしたりして楽しかったので、結果オーライ。
しかし、本日は船の時間があるので、あんまりスケジュールが乱れてほしくない。

曇り空
[天気は曇り、霧雨も]

朝6時過ぎに起床。
今回の旅行のために買った靴の底がすり減って穴が開いてしまった。
もともと安い靴ばかり履いているので、靴の消耗が激しい。
だいたい4か月で履きつぶすのだけれど、今回はまだ1か月しかたっていない。
いつもはLEOと言うブランドの靴を買っていたが、4か月でダメになってしまうのでも早すぎると思ったので、今回はMashareと言うブランドの靴にしてみた。
スタイルも値段もおんなじで、半年くらい持てばよいなと思っていたのだけれど、買うときに靴屋の店員が、「この靴は底が薄いよ」と忠告してくれていた。
それを素直に聞かず、「なぁに、そんなことはないだろう」と楽観していたが、忠告は真実だったようだ。

靴底に穴
[靴底に穴が開くと、雨が大敵となる]

朝食にはパンとニンジン。
また、汽車の中で食べようと即席麺も茹でる。
これは汁気を切って焼きそば風する。
もともとカレー風味なので、弁当にも適していそうだ。
これにバターを絡めて癒着防止とする。

朝8時にユースホステルを出発。
ちょっと小雨交じりで、雲が垂れ込んでいる。
傘をさすほどではない。
昨日から何度か歩いた道を下っていく。
その途中で、三毛猫発見。
ちょっと大柄のネコで、ペンションのような建物の庭にいた。
ネコも私に気づいて、尻尾をおったてて近付いてきた。
私の経験からしてネコが尻尾を立てて近付いてくるのは、ネコが嬉しかったりワクワクしているときに見られる姿態だと思っている。
「おぅ、おぅ、なんか変な奴がやって来たぞ、ちょっとかまってやるか」みたいなことをネコは考えているのかもしれない。

イギリスの三毛猫
[ネコに出会うとうれしい]

すり寄ってくるのだけれど、庭の周囲には網が張り廻られれていて、ネコはこちらまで出てこれない。
私もネコへ手を伸ばすことができない。
ネコは金網に身体をスリスリしている。
そこへ私は網目から指を突っ込んで、ネコに触れてみる。
毛並みの良いネコだ。
イギリスではネコが外へ出ることを禁止しているのだろうか。
ネコの安全のためには、良いことと思うけど、ネコも完全な人間の管理下に置かれて、退屈しているのではないかと思う。

金網越し
[金網越しにスリスリ]

月曜日ということもあり、学校へ向かう生徒の姿を見かける。
制服を着用しているが、私立の学校なのだろうか、制服も明るい色でデザインもあか抜けている。
歩いている生徒もいるけれど、自転車の生徒もいた。

ウインダミアの街まで1時間ほどで到着。
どこにも立ち寄らずまっすぐ駅に向かう。
ここから乗る電車は09:56発のランカスター行きなので、まだしばらく時間がある。
駅のベンチに腰掛けて待つ。

ウィンダミア駅
[いかにもローカル線の終着駅]

ウィンダミアの駅は片面のホームが一つあるだけ。
そして、側線が一本引き込まれているけれど、現在は使われていないのか、レールとしての役割を果たせそうにないくらい朽ちている。
いや、これはもともと側線でもレールでもなく、ただのイミテーションなのかもしれない。

ウインダミアへ来るときは、ストの影響か、乗れなかった電車にやっと乗ることができる。
これから乗る電車は、ちゃんと走ってくれるようで、ホームには電車を待つ人の姿が多くなってきた。
ほとんどが観光客のような恰好をしている。
そして、折り返しとなる電車がホームへ入ってきた。
ローカル線の電車とは思えないほどスマートな電車だ。
3両編成で、ピカピカの車体。
30年前に乗った時の古いレールバスのような面影はどこにもない。

新型車両
[新型のディーゼルカー]

車内も明るく、清潔感があり、特急列車かと思うほどだ。
ホームにたくさんの人がいたので、乗り切れるだろうかと思ったけれど、いざ乗り込んでみたら、車内は空席が目立ち、ゆったりと車窓を楽しめる環境となっていた。
緑の丘が続く中を快調に走る。
ディーゼルカー特有のエンジン音や振動もほとんど感じない。
さらにオクセンホルム・レイクディストリクトから本線に入ると、スピードも上がり、窓の外の景色が飛ぶように流れていく。

車内の様子
[ローカル線の車内とは思えないほどスタイリッシュ]

再び川を渡り、中世風でシックな街並みが見えたところで、ランカスターに到着。
ものの30分少々で来れてしまった。
ここでの乗り継ぎ時間は14分ほどで、こんどはリーズ行きの電車へ乗る。
どんよりとした天気のもとランカスターの街をもう少し歩いてみたい気もするけれど、跨線橋を渡って、駅のはずれのホームへ回る。

ランカスター
[この橋からの眺めが印象的だった]

リーズ行きの電車はしばらくさっき走ってきた本線と並行して北上する。
そして、さっきの電車では止まらなかったカーントフォースという駅に止まった。
すぐ横の本線側にはホームがないみたいなので、この駅はこのローカル線専用なのかもしれない。
ちょうど熱海の先にある伊東線の来宮駅とその横を通過する東海道線のような関係なのかもしれない。
このイギリスの来宮駅にはたくさんの古い車両が集められていた。
もう廃車済みと思われる機関車や客車がたくさん係留されていた。
チョコレート色した、ぼってりとした機関車が並んでいて、なんだか鉄道博物館みたいな雰囲気だった。

古い機関車
[私の印象に残っているのは、以前はこんな機関車ばかりだった]

来るときにも乗った路線で、ヨークシャームーアの丘の連なりの中をのんびりと走っていく。
2度目なので、ちょっと車窓の景色も飽きてきてしまったので、持参のカレー風味焼きそば弁当もどきを食べることにする。
電車の窓は開けられない構造で、こんな車内で食べ始めたらカレーの臭いが車内に充満してしまうのではないかと気を使ってしまう。
即席麺を2つで作ったもので、少し朝にも食べてきたのだけれど、ちょっとボリュームがありすぎたようで、食べ終わると胃もたれを感じる。

ヨークシャームーア
[曇よりした天気と適度な揺れは眠気を誘う]

居眠りなんかもする。
別に窓から見えるのが牧場ばかりで、羊を数えていたわけではないけれど、単調な景色の中を揺られていると眠気がやってくる。

リーズでまた乗り換え。
こんどもハル行きに16分の乗り継ぎ時間と好接続。
その16分の待ち時間の間にも、リーズの駅を発着する電車の多いことには驚いた。
次々に入ってきては、出発していく。
よく見てみると、長いホームを3つくらいに分割して使っている。
つまりホーム前方、中ほど、後方と、一本のホームに3種類の電車が並んでいる。
鉄道駅と言うよりバスターミナルのような運営をしているようだ。

リーズ発着電車電光掲示
[リーズ駅の発着案内、過密ダイヤだ、、そして喪中]

リーズからハルまでの電車も空席が多かった。
電車に乗り込んでから去年までタイに住んでいて、ピサヌロークへ何度も来てくれていたMさんへLINEメッセージを送ってみた。
ちょうど、会社のメールをチェックしていたらロンドン支店のスタッフが一斉発信したメールがあり、そのスタッフの名前がMさんと同姓同名(漢字は違う)だったので、思い出してメッセージを送った。
Mさんはタイに来るまでイギリスとオランダにいたそうで、たまたま私が若いころに仕事で出入りしていた銀行本店に勤務されていらしたので、とても親しみを感じていた。
そのMさんからすぐに返信が来て、Mさんもロンドンからアムステルダムへ転勤となるとき、ハルからロッテルダムまでフェリーで行ったそうだ。
また、ちょうどご主人がいまロンドンへ出張するところなんだそうで、ニアミス。
それから、Mさんへ私がオランダではハーレムに宿をとっていることを伝えところ、ハーレムではクラフトビールを飲みに行くように勧められた。

さて、約一時間の乗車でハルが近付いてきた。
ハンパー川が迫ってきて、大きな吊り橋が見える。
30年前にイギリスへのスケッチ旅行の企画をして、同行してきたはずなのだから、そのとき廻ったイギリスの田舎町、名前を憶えているものもあれば、思い出せないものもある。
一昨日分のブログにも書いたけれど、あのときもハルに来ていたような気がする。
その時、画家の先生から、色鉛筆で書かれたスケッチをプレゼントされた。
その絵は、どうもこのハンパー川にかかる吊り橋によく似ていた気がする。
あの絵は、今どうなっているのだろうか、それもよくわからなくなってしまった。
こんど東京へ帰ったら、探してみたいと思う。

ハンパー川の吊り橋
[ハンパー川の吊り橋]

午後2時、ハルに到着。
ウィンダミアを出発して4時間で到着できた。
今夜の船が出る港まで、歩くと遠いのだけれど、それでもまだ時間がたっぷりある。
イギリスに来て、イギリスの名物と言われるものをまだ口にしていない。
パブにも入っていなければ、ギネスのビールだって飲んでいない。
しかし、なんにもないというのも寂しいので、フィッシュ&チップスを食べてみることにする。
昼に焼きそば弁当を食べて、胃もたれを感じているので、揚げ物を食べたいという気分ではないけれど、食べておきたいと言う気はする。
バンコクでもフィッシュ&チップスを食べされる店は多い。
白身魚のフライなんて、どこでも食べられるものなのだろう。
しかし、バンコクのはタラではなく、淡水魚ドーリーと呼ばれるナマズの一種が使われていることが多い。
この魚も美味しいのだけれど、やっぱりタラを食べたい。
タイではタラは高級魚。

イギリス滞在3日目になるわけだけれど、イギリス名物とか庶民の食べ物などと言われている割には、町中でフィッシュチップスをあんまり見た記憶がない。
レストランに入ればメニューにあるのかもしれないが、私のイメージにあるのは、立ち売りのフィッシュチップスで、簡単な包装紙か何かにフレンチフライト一緒に包んだもの。

ハルの鉄道駅で、Google Mapを使ってフィッシュ&チップスの店を検索してみる。
すると、駅の南東側に数軒あるらしい。
私はこの手の軽飲食店はフランチャイズでチェーン展開しているのだろうと思ったけれど、ハルに関してGoogle Mapで表示されるフィッシュ&チップスの店はほとんど小さな個人商店のような店ばかりのようだ。

駅北側の一角は旧市街と言った感じで、重厚で威厳のある建物が並んでいたり、銅像や彫刻があったりしたが、南側はちょっと場末感がある。
なんとなく活気がない裏町のような感じも受けたが、そこを過ぎると今度は公団住宅のようなアパートが並んでいる。
アパート群の中は静かで、生活感はあるけれど、歩いていてワクワクは感じない。

アパート群のはずれで一軒のフィッシュ&チップスの店を発見。
これが1店舗目。
まずこの店の価格をチェックする。
スモールと言うのが3.60ポンドと表示されている。
タイバーツ換算で150バーツほど。
私の財布には安くない。
とりあえず、さらに先に歩いていくと、こんどは下町の商店街と言った感じの場所に出くわす。
下町と言っても、東京の下町ではなく、移民街みたいな感じの下町で、歩いている人もアングロサクソンが多数派ではなく、アラブ系やアフリカ系、アジア系の肌の色をした人の比率が増してくる。
言い方は悪いが、低所得者の生活圏と言った感じで、私の財布にも優しそうではないかと期待がかかる。
ここでも、フィッシュ&チップスの店を見つけたけれど、残念ながら私が期待したほどの価格ではなかった。

フィッシュチップス屋
[イギリスの物価が高いんではなく、私が発展途上国から来ただけなんだな]

せっかく来たのだし、船の中で食べる食料を調達しようとスーパーへ入ってみる。
アラビア系のスーパーらしく、店内はアラブやインド系の食品が並んでいる。
これは面白いぞと、陳列棚を覗きながら奥へ入っていったらば、警備員に捕まった。
このスーパーではカバンを店内へ持ち込むことは禁止されているそうだ。
カバンは入り口に預けるようにと言われる。
私はキャリーバックを引っ張っていたので、目に留まったのだろう。
しかし、荷物を預けてまで見物をしようとは思わないので、そのままスーパーを出てしまう。
次にまたスーパーを見つけた。
アイスランドと言う名前のスーパーで、ここではキャリーバッグのお咎めはなかったけれど、売っているものは冷凍食品ばかり。
ユースホステルへ泊まるならレンジが使えるので冷凍食品を買っておきたいけれど、今夜はフェリーなのでレンジはなく、ここもちょっと眺めただけで退散する。

ハルの下町
[移民の多い下町のようなところ]

小さなミニスーパーと言った感じの個人経営的な店も並んでいる。
ミニスーパーと言うより昔ながらの食料品店と言った感じ。
そんな店先にプラムが売られていた。
3つで1ポンド。
こちらに来てから果物など食べる機会がなかった。
いや、果物とか高いので、贅沢に感じて買うのを避けてきたが、こうして商店の店先に並んでいるのを見ていたら生唾が出てきて、買うことにした。
まだポンドは財布に残っている。
ちょっとくらいの贅沢で、価値はその何倍もあるだろう幸福感を得られそうだ。
狭い店内には雑多なものが売られており、その中にキャベツもあった。
そうだ、カット野菜より、丸のままのキャベツの方がお得なはずと思い、小さなキャベツもひとつ購入。
これが0.65ポンド。

キャベツとプラム
[これは船に乗船後に撮影したもの]

結局フィッシュ&チップスは公団アパートのはずれにあった店で買うことにした。
注文の仕方がよく解らなかったが、塩コショウとチリを少し振りかけてもらい、紙に包んでもらった。
私がテイクアウトの順番待ちをしている間にも、何人かが買いに来ていたので、このあたりでは人気の店なのかもしれない。
このフィッシュ&チップスは旧市街まで行って、そこのベンチにでも腰かけて食べることにした。

店を出て歩き始めるとちょうど学校の下校時刻なのか、たくさんの低学年くらいの子供たちが保護者と歩いていた。
アフリカ系の子供たちが多いようだ。
アジア系も少しいる。
制服ではなく、色遣いはカラフルな服装をしているが、雑多な色遣いで、いかにも庶民階級と言った感じ。
このあたりでも登下校は保護者の付き添いが必要ということは、家庭の主婦たちは日本のようにパートに出たりしにくいのではないかと思うが、うまく両立できるようなシステムがイギリスには定着しているのかもしれない。
さっきのフィッシュ&チップスの店でも、働いているのは主婦のパートみたいな女性たちだったし、スーパーのレジ係もそうだった。

旧市街ビクトリア女王像前広場
[キャリーバッグの上の包みがフィッシュ&チップス]

午後4時前、ビクトリア女王の銅像がある広場まで来て、そこでフィッシュ&チップスの包みを開いてみる。
ミニとなっていたけれど、入っていたのは巨大な白身魚のフライとフレンチフライ。
包まれ方も無造作で、いかにも大衆向けのB級メニューと言った感じ。
それを重厚で威厳ある建物に囲まれたビクトリア女王のお膝元でかじる。
旨いかって言われれば、まずくないとしか答えられないが、たぶん空腹だったなら、胃袋が喜んだことだろう。
そして、ボリュームがあるので、半分だけ食べて、残りは船に乗ってから夕食として食べることにした。

フィッシュ&チップス
[見た目からしてB級感がいっぱい]

30年前に立ち寄ったのがハルだったかどうか、まだ思い出せないが、その時に街の中でホコ天のようなところがあり、観光客がたくさんいて、蚤の市みたいなものがあったり、コーヒー屋はエスプレッソを入れるのにシューっと盛大に蒸気を噴き上げていたのを思い出すが、そんな感じのところは、今回ちっとも見かけなかったので、あれはハルではなかったのかもしれない。
そう、もう少し北にあるスカボローだったんではないかと思われてきた。
でも、スカボローに吊り橋なんかあったかな、記憶が混乱しているようだ。

古い教会
[旧市街にあった古くて大きな教会]

さて、ハルの街自体はもうこの程度として港へ向かって歩き始めるが、途中に大きなスーパーがあったことを覚えているので、そこへ寄って買い物をしていくことにした。

スーパーの名前はLiDL。
ここはオランダのJUMBOと似たような大型スーパー。
郊外にあるので広い駐車場がある。
別にわざわざ郊外の大型スーパーに来なければ買えないようなものを買うわけではなく、とにかく安く胃袋を満足させればよいだけのことだけれども、こうして異国に来てスーパーへ入るというのはワクワクする。
ワクワクはするけど、でも別に何も買うようなものはない。
このLiDLで買ったものは、3.99ポンドのスペイン産の赤ワインと0.79ポンドのTiger Loafと名前の付いた丸くて固いパン。

スーパーLiDL
[イギリスのスーパーはデカデカの看板広告を出さないようだ]

キャベツもあるしパンもある、赤ワインもあるので、今夜の夕食はこれでOK。
ビールも買おうかと思ったけれど、来るときに船内の免税店を覗いたらビールがとても安く売られていたので、ビールは船内の免税店で買うことにした。

スーパーから港までは徒歩で約一時間。
来るときと同じように刑務所の横を通り過ぎる。
5時半にフェリーターミナル到着。
出港は夜8時半なのでまだ時間もたっぷりあるけれど、乗船手続きを済ませて船に乗り込む。
こんどの船室は10階となっていた。
出国審査などなく、パスポートすらチェックされることなくそのまま乗船。
なお、形だけのイミグレーションの隅でで往路と同様に空いたペットボトルに飲料水を詰めさせてもらう。

フェリーターミナル
[歩いて、歩いて、目的地に着くと、達成感を感じる]

今夜の船室も2段ベッドの二人部屋だけれども、先客はまだ来ていない。
さっさと下段のベッドを占領させてもらうが、上の段のベッドは壁の方に収納されたままになっているから、見た目はシングルルームのような感じになる。
熱いシャワーを浴びさせてもらい、真っ白いバスタオルで身体を拭く。
タイの安宿ばかり泊まっているので、熱いシャワーを浴びただけで幸せになれる。
タオルが白いなんて、感動もの。
畏れ多くて、きれいにたたまれたバスタオルを使ってよいものかと躊躇したくらいだ。

最後尾のデッキへ出てみる。
ロッテルダムの港では周辺に何隻もの貨物船が見られたけれど、ハルのこの港にはこのフェリーしか係留されていないようだ。
港のすぐ横に、風力発電で使われると思われる巨大なプロペラが並んでいるのが見える。
羽の長さがゆうに100メートルはありそうだ。
こんな巨大なものを海岸沿いへ無数に設置して、いったいどれくらいの電力を得ているのだろうか。
遠くにハンパー川にかかる吊り橋が見える。

風力発電のプロペラ
[こんな巨大なものをどうやって組み立てるのだろう]

今夜のルームメイトはどんな人だろうか、いや、そもそも同室者は来るのだろうか。
同室者が来てしまってからでは、狭い船室内で一人勝手に食事をとりにくくなるだろうから、船室に戻ってパンとキャベツの夕食とする。
ワインも飲む。
食べ残していたフィッシュ&チップスも食べる。
ポテトが冷えてしまって、少しぐしゃっとした感じになっているけど、それはそれで美味しくいただく。
港まで歩いたので、さっきよりはお腹もすいてきており、何よりワインを飲みながらだから、この手のものが美味しく感じる。
丸のまんま買ったキャベツは、葉っぱを1枚1枚剥がしながらかじる。
見た目は緑色をして、春キャベツのような柔らかそうなキャベツだと思ったが、葉を剥がすときも、途中で千切れるようなことがないくらいしっかりしたキャベツで、味も濃い。
つまり、日本やタイのキャベツよりずっと青臭く感じる、
生のブロッコリーの芯を齧ったら、こんな感じの味がするんではないかと思える。
青臭くて、ちょっとほろ苦いのも、食べ慣れてくると、美味しく感じる。
こうして丸かじりも良いけど、炒めたり、茹でたりしたら、甘みが出てもっと美味しくなりそうな気がする。

7時半、そろそろ日没時刻と思い再び甲板へ出てみる。
果たして低く垂れこめていた雲が赤紫色に染まっている。
まだ出港まで1時間ほどある。
船内のバーではだいぶ盛況を呈しているようだ。
デッキにも飲み物を手にした人を見かける。

夕焼け
[私も何か飲みたいところだが、持ち込み飲料は禁止らしい]

本日は出港準備が早めにできたのか、8時過ぎには出港した。
まだ西の空には赤みが残っている。
北半球もこのあたりまで来ると、日の出も日没ものんびりしているようだ。
タイでは夕焼けだと思ったらすぐに真っ暗になってしまうし、朝日が昇ると思ったら、すぐ強烈な日差しがさしてくる。

ハル出港
[まだ空に赤みが残っている中、静かに出港]

さて、同室者はどうなっているだろうかと船室へ戻ってみたが、誰もいない。
帰りの船も一人で船室を独占できるようだ。
どうもシステム的によくわからないのだが、もともと相部屋制ではなく、個室扱いなのだろうか?
それとも、乗船客が多くなかったので、一部屋割り振られたのだろうか。
どちらにしても、一人部屋と言うのは同室者に気兼ねしなくて済むので楽で良い。

免税店へビールを買いに行く。
ふつう免税店では高級洋酒が中心で、あまりビールなんて売られてないようだけど、ここではビールがたくさん売られている。
一番安いのはフォスターで、次がサンミゲル。
どうもイギリスらしさがあまり感じないラインナップだけど、フォスターは一昨日から飲んでおり、常温で飲んでも旨かったので気に入っていた。
パイント缶の24本入りで24ポンドと安い。
しかし、24本など免税範囲と言うものがないのだろうかと不思議に思ったが、免税店の壁に免税範囲についての張り紙があった。
それによると、この航路の場合、アルコール度数22%以上のものなら4リットルまでとなっている。日本は洋酒3本までだから、大差はない。
しかし、アルコール22%以下なら9リットルとなっている。
どんな酒が22%以下のアルコールなのか見当もつかないが、ただワインやビールはまた別枠がある。
ワインなら18リットル。
ビンに換算したら20本以上になる。
とても手荷物の範囲じゃない。
たぶん、フェリーなので車で来る人がまとめ買いをするのだろう。
さらにビールに至っては42リットルまでとなっている。
ビア樽でも売っているのかと思ってしまう。
私は一番安いフォスター24缶入りを買おうとレジに並んだら、男性店員から「もうひとケース買ったら割引になって、44ポンドだよ」とささやかれたけれど、48本ものビールなんて買っても持ち歩けない。

軽いビールなので水代わりに飲もうと思っていたのだけれど、お金を払ってもその場ではビールを渡してもらえなかった。
領収書だけ渡されて、明日の朝ビールを受け取りに来るようにとのこと。
今晩はビールを思いっきり飲もうと思っていたが、泡と消えてしまった。

夜の航海
[船は夜の航海でも手足伸ばして寝ていけるのがうれしい]

さて、明日は再びオランダ。
早めに就寝することにした。

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蘭英旅行 その5
9月11日 日曜日

朝7時前に起きだして朝食を買い出しに行く。
ユースホステルから1マイルほどのところにホークスヘッドの集落があり、そこにもCOOPがあることを確認していた。
しかも営業開始は7時からと早い。

宿の前庭から周囲を見回すと朝もやがかかっている。
静かな朝。
羊たちが緑の丘の上にいる。
夜の間も厩舎に入ることなく、羊たちは外で寝ているのだろうか?

朝もや
[やっぱりイギリスは夜明けが遅い]

集落への1マイル、朝食を買いに行くだけだからキャリーバッグは引きずる必要がない。
ショルダーバッグだけなので足取りも軽い。
昨日歩いてきた道をさらに北上するが、朝早いこともあって、車もほとんど走って来ない。
農家の人たちは早起きだといわれるけれど、このあたりでよく見かける農家は、まだみんな眠っているように静かなままで、ひと気を感じさせない。
もっとも専業農家と言うよりも、牧畜もするがペンションのような民泊もしていて、今のシーズンは観光客を泊める方がメインになっているのかもしれない。

朝の羊
[静かな朝]

今回の旅行に出る前から懸念していたことは、天気が良くないのではないかということ。
ネットの天気予報を見るとブリテン島の西側に低気圧があって、台風のように渦を巻いている図が示されていた。
オランダでは少し雨に降られたけれど、イギリスに渡った昨日からは雨はまだ降って来ない。
しかし、宿の人によると、今日は雨が降るらしい。
徒歩で移動をする身には雨は大敵。
特に今日はこれまでで一番長い距離を歩かなくてはならない。
ここからウィンダミアのユースホステルまで15kmの距離がある。
もし、雨がひどかったらば、ホークスヘッドの集落からウィンダミア行きのバスに乗るのも致し方ないかと考えていた。
でも、いまのところ朝もやの切れ目から見上げると、青空ものぞいている。

ホークスヘッドへの道
[こんな道をジョギングしても楽しそう]

ホークスヘッドの集落へは30分とかからず到着できた。
小さな学校があり、小さなレストランがあり、小さな土産物屋と宿屋がある。
でも、まだみんな起きだしてこないのか、集落の真ん中でも誰も歩いていない。
まぁ、日曜日の朝だからこんなものかもしれない。

ホークスヘッドの集落
[集落の中心部]

この集落も景観を守るための規制があるのか、建物はチューダー様式というのだろうか、白い壁に木の柱がアクセントになっている建物が並んでいる。派手な看板などもなく、どぎつい感じの観光地色は見られない。
それでも、観光客で集落の経済が回っているのだろうし、店のほとんどかが観光客相手の商売をしている。
土産物屋には大きなショーウィンドーがあって、ピーターラビット関連のグッズを売っている。

土産物屋
[ここへ来たら土産にほしくなるんだろな]

この集落の生協は、ウィンダミアの生協がスレート石組みの建物であったのに対して、白い壁の民屋風。
COOPの看板も小さく目立たず、たぶん狭い入り口扉の前に買い物カートが置かれていなければ、ここがスーパーだとは気が付かないだろう。
まだ眠っているようなホークスヘッドの集落の中で、生協の中では当然ながらレジに係が立って働いていた。
買い物客もやってくる。
昨晩ユースホステルのキッチンの様子を見ていたので、どんな調理器具があるかよく解った。
調味料を持たないので、やはり冷凍食品に頼るしかない。

ホークスヘッドの生協
[店の前に買い物カートがあるのでここがスーパーだとわかる]

その冷凍食品の中でも、なるべくコストパフォーマンスのよさそうなものを物色する。
いろいろな商品を長い時間かけて比較検討する。
カレーのようなものもある。
これは日本のカレーではなくインド風だろう。
カレーも食べたいが、ちょっと予算オーバー。
最後に見つけ出したのがポロネーズ風のソースがかかったペンネ。
つまりイタリアパスタの冷食。
これが特盛とも言うべき400グラム入り。
お値段3.50ポンド。
安いかどうかはよくわからないが、バンコクのスーパーで冷凍のパスタを買ったことはないが、たぶんこれより高いのではないかと思う。
さらに野菜不足にならないようにカット野菜の詰め合わせ、1.05ポンド。
併せて4.55ポンドを現金で支払う。
今回の旅行に際して、イギリスポンドは5,000バーツ分を両替して持ってきたが、節約が徹底していることと、現金払いができる機会が少ないので、なかなか減らない。

朝からポロネーズのパスタと言うのもこってりし過ぎだけれど、これを買ってしまった動機の裏にはコスパ以外に、昨晩のキッチンで捨てられていたスパゲティーのミートソースが恨めしかったこともあったと思う。
宿へ戻ってキッチンの電子レンジでチンする。
タイから持ってきていた緑茶のティーパックでお茶も入れる。
今回の旅行で、お茶など熱い飲み物をこれが最初となる。

朝からこってり飯
[ホステルへ戻って朝食]

ポロネーズのペンネは実にボリュームが満点以上だった。
ソースにはたっぷりとチーズが含まれているし、日本やタイでも冷食をほとんど食べたことがないので、比較するのは間違っていそうだけれど、パスタのボリュームと比較してソースの量が多い。
味も良い。
欲を言えばタイ料理でバカになっている私の舌にはチリパウダーを振りかけたいところだ。
30年前に母と湖水地方へ来た時、夕食にイタリアン飯屋に入った。
その時も料理は旨く、値段も手ごろだった。
イギリスではイタリア風の食べ物のコスパが良いのかもしれない。

ソースが余ったので、まだ手持ちで持っていたパンにソースを擦り付けて食べたが、これもやっぱりうまい。
ガチガチと硬いくらいのパンにソースか染み込んで、すこし柔らかくなっった感じが面白い。
でも、やっぱり朝から食べ過ぎてしまったようで、ちょっと苦しくなった。

10時半に宿をチェックアウトしてウィンダミアへ向かって歩き始める。
途中までは昨日歩いた道と重複する。
おんなじ景色の中を歩くのだけれど、午前と午後とでは太陽の向きも違うから、おんなじ道を歩いてもやっぱり感動がある。
いい景色だなと思って写真を撮ったりするが、あとで見てみると前日にも同じ場所で撮った写真があったりする。

エストウェイト
[静かにたたずむ湖]

違うのは光の加減だけではない。
ニアソーリーのヒルトップ農場には観光客の姿がたくさんあった。
みんなお目当てはポターの博物館。
私は入場料を払ってまで入ろうとは思っていないが、近くまで行ったら誘導係に「予約はしてあるか」と聞かれた。
ここは人気が高いので、内部見学するには事前に予約をしなければならないそうだ。
むかしに来たことがあるが、その時の記憶では、ポターがかつて住んでいた農家を改装したような民屋で、確かに内部は狭くて、観光客が押し寄せるには無理があったように思われる。

ベアトリクスポター博物館
[博物館となっているポターの家]

ヒルトップ農場
[観光客の姿がちらほらと]

ヒルトップを過ぎて、渡し船乗り場への丘を登り始めたところで、かわいらしい道路標識を見つけた。
赤く縁どられた三角の注意を促す標識の真ん中にウサギのシルエット。
たぶん、ウサギの飛び出し注意の標識なのだろう。
ウサギの構図は、後ろ足日本で立ち、前足は空を泳がせていて、ピーターラビットの絵本に出てくるウサギにそっくりである。
いや、当然意識してそっくりに描いたのだろう。
でも、絵本のウサギは確か空色のジャケットを着ていた記憶があるが、このシルエットにはジャケットは確認できなかった。

野兎の飛び出し注意
[かわいらしい交通標識]

牧場の真ん中に教会がある。
今日は日曜日だけど、中では礼拝が行われているのだろうか、それとも地元の人は観光客のお世話で忙しくて教会へはオフシーズンしかやって来れないのだろうか?
教会の周りにはあんまり車は止まっていなかったけれど、周りの牧草地にはたくさんの羊が散らばっていた。
この教会の前の牧草地も、30年前に歩いた記憶があり、その時のビデオも残っている。
カラーで撮影した8ミリのアナログビデオだったけれど、何年か前に再生してみたら、色は抜けて白黒ビデオのようになっていた。

丘の上の教会
[30年前、ここを歩いていた]

12時ちょうどにウィンダミア湖畔、フェリー乗り場に到達。
空に雲は多めだけれど、いまのところまだ雨は降りだしそうにない。フェリーは対岸に渡っており、しばらく荷物を下ろして休憩。

荷物
[町中ならいざ知らず、こんなところでこんな荷物の旅行者なんて私以外にいなかった]

対岸に渡ってからは、舗装していない小道だけれど、トレイルを少し歩いてみたり、墓地の中を抜けたりしてみる。
そしてウィンダミア湖の遊覧船乗り場へ出てくる。
ここらへんはニアソーリーなどとは違って、ずばり観光地らしい派手派手さがある。
群れ集まってくる観光客や駐車場に入ろうとする車。
次々に発着する湖上遊覧の観光船。
遊歩道は鮮やかな花の鉢植えが飾られているが、花の色が少し毒々しいくらいに感じられる。
ここは箱根の芦ノ湖みたいな感じだろうか。

遊覧船乗り場前
[奥にオールドイングランドホテル、昔はこんなに派手派手ではなかった]

今晩の宿、ウィンダミア・ユースホステルは、名前こそウィンダミアとなっているが、所在地はウィンダミア駅の北西5キロほどのトラウトベックというところにあり、だいぶ静かなところらしい。
ウィンダミアの繁華街を通っていくこともできるが、私は最短ルートとなる湖に近いルートを選んだ。
オールドイングランドホテルの裏側へ回り込み、路地裏のようなところを少し歩いて、二級国道か県道かと言った感じの2車線道路に出る。
昨日からずっと車線もないような細い道をのんびり歩いてきたけれど、この道は車の交通量も多く、乗用車だけではなく、大型バスやトラックもひっきりなしに行きかっている。

別荘の庭先
[イギリスはガーデニングの国だと思う]

歩き始めは別荘地のような感じであったけれど、だんだんと木立の中へと入っていき、湖畔からはなれて坂道が多くなる。
道幅は広くなったが、歩道の方はお粗末で、片側にしかなかったり、歩道の路面がガタガタだったりしてキャリーバッグを引くのに苦労する。

こちら側は景観条例が厳しくないのか、観光客向けの大きな看板が目立つようになる。
蒸気船博物館とか、ベアトリクスポターランド(?)とか、、、
走り抜けていく車にアピールするための看板だからサイズも大きい。
やっぱり、私のように歩いて旅を楽しむ者には、湖の対岸のような環境の方が快適だ。
坂道を登り切ったところにビューポイントと書かれたところがあり、駐車場があってたくさんの車が止まっている。
丘の上に登ってきたわけだし、ここから湖などを眺められるようになっているのだけれど、木立の奥に湖があり、さらにその奥に山並みが見えるといった景色だった。
たぶん、それなりにきれいな景色なのだろうけれど、昨日から今朝にかけて、あまりにもきれいな景観の中を歩いてきたので、この程度のビューポイントでは退屈してしまう。

ビューポイント
[この程度の景観では面白くなくなっている]

午後2時少し前、トラウトベックへの入り口に差し掛かる。
そこにはガソリンスタンドに併設された小さなスーパーがあった。
スーパーの名前はSPA。
そこに立ち寄って、今晩の夕食の食材などを物色してみる。
買ったものは3品。
KO-LEEというブランドの即席ヌードル、カレーフレーバー
5個パックで1.50ポンド
1個当たりで0.30ボンド、15バーツほどなので許容範囲。
しかし、見たことのないブランドなので、製造国をパッケージに探したら、"Produced in Asia"と実に大雑把なことが書かれている。
そして、これもカレー風味だけれど冷凍のチキンカレー。
値段は2.09ポンド。
SHARWOODSというイギリスにあるインド食品メーカーのもの。
これはライス付と言うのが目に留まった。
そろそろ小麦粉製品以外のものを食べたくなっている。
あとはニンジン。
ピーターラビットの絵本でピーターが畑でいたずらをして引き抜いたニンジンの絵があるが、その絵に出てくるような細くて貧弱なニンジンが袋詰めにされて売られていた。
値段は0.49ポンドとお手頃価格。

橋の下で作品制作中
[橋の下に男性一人と犬一匹]

ガソリンスタンドのすぐ先に小川が流れていて、橋が架かっている。
その橋から下を眺めてみたら、河原で石を積み重ねている男性がいる。
犬を連れてきていて、一人で黙々と河原の石を積み重ねている。
それもとても芸術的かつバランスをとりながらアクロバット的に石が積み上げられている。

黙々と石を積み上げる
[黙々と石を積み上げる]

イギリスには変わった趣味の人が多いというけれど、この人の趣味は、ひとりでコツコツと石を積み重ねることなのだろう。
大勢の人の注目を集めたいという欲望もなく、ただ無心に石を積んでいるのだけれど、しかし、たぶん心の中のどこかには誰かに見つけてもらいたいという気持ちもあるのだろう。
だから、こんな橋のすぐ下で黙々と石を積んでいるのだと思う。
しかし、橋を歩いて渡る人など、いったい1日に何人いるというのだろうか。

作品
[彼は毎週ここで石を積み上げているのだろうか]

車が行きかう通りから、トラウトベックへの細い道に入ったら、ふたたび静かで、美しい世界に戻ることができた。
ここから約1マイルほど奥に入ったところに今夜の宿があることになっている。
そこまではずっと緩やかな坂道になっている。
景観はソーリー村周辺と似ているが、道の右手側は少し谷になっており、左手側は開けた牧場で、やはり羊がいる。
車の往来は少なく、歩いていて気持ちが良い。

宿への道
[トラウトベックへ続く道]

2時半過ぎにユースホステルの入り口が見えてくる。
歩き始めて4時間ほどで15kmの道のりを歩き切ったことになる。
朝食を食べ過ぎたので、今時間になってもまだ空腹を覚えない。

ユースの入り口
[やっと到着]

ユースホステルの建物は、こちらもしっかりした建物で、なんとなく田舎の図書館のような建物であった。
チェックインをしようと思ったが、なにやら今日はこのホステルでイベントが開催され、庭ではパーティーのようなものが行われていた。

ホステルの建物
[なかなか堂々たる建物]

私もクッキーとブラウニーのおすそ分けにあずかった。
そのため部屋の準備が遅れていて、部屋に入れるのは夕方になるという。
別にこんな時間から部屋に入っていても仕方がないので、キャリーバッグだけを預けて、周辺の散策をしてみることにした。

クッキーやケーキ
[サロンにはお菓子が並んでいた]

散策で向かった先は、今まで歩いてきた道の先にあるトラウトベックの集落。
そこまでずっと丘陵地に細い道が続いており、歩きやすい。
歩いていて目についたのは、木々の小枝に赤い実を付けたものが多いということ。
桑の実のようなものもあれば、ナンテンのような実もある。
どれが食べられ、どれが食べられないのかよくわからないが、このあたりはもう秋なのだろう。
赤いといえば、赤いシャクナゲのような花も咲いている。
濃い緑の葉に、赤い花や実で、なんだかクリスマスみたいでもある。
日本なら彼岸花が咲いていそうな雰囲気。

赤い実1
[桑の実に似ている]

赤い実2
[なんだかおいしそう]

赤い花1
[赤いシャクナゲ?]

赤い花2
[イヤリングのような、踊っているような赤い花はフクシアと言うそうだ]

このトラウトベックへ続く小道も、両側がスレート石を積み重ねた塀になっている
塀だけではなく、朽ちかけた古民家のような家があり、それもやはりスレート石を積み重ねて作られていた

スレートの古い建物
[倉庫にでもしているのか、古い建物があった]

トラウトベックの集落は、今朝買い物に出かけたホークスヘッドと比べてもずっと小さな集落で、商店のようなものもほとんどなかった。
民泊をさせるペンションなどは何軒かあったが、観光客相手に土産物を売ったり、食事をさせるような店は見当たらなかった。

トラウトベック
[トラウトベックは谷に面した斜面に集まる小さな村]

散策自体は気分よく歩いてきたけれど、今夜の飲み物も調達しておきたかったので、商店がないトラウトベックの集落に留まる意味合いがなかった。
集落を徘徊するといっても、家並は100メートルも歩けば尽きてしまう。
いったん引き返し、そのまま昼に立ち寄ったガソリンスタンドのスーパーまで戻ってみることにした。
こんどはずっと下り坂。
上りと下りではまた見えてくるものも少し違っていて、林の中になぜかモアイ像が立っているのを見つけた。
歩いている途中、ときどき小雨がぱらついたりする。

モアイ像
[どうしてこんなところでモアイ像?]

本日2度目の再訪となったSPAには、アルコール飲料のブースが充実していた。
ワインの貯蔵施設のように、しっかりと低温に温度管理された部屋があり、そこにたくさんの種類のアルコール飲料が並べられていた。
イギリスと言えばスコッチウイスキーの本場であるけれど、ウイスキーなどの洋酒は随分と値段が高い。
たぶん日本の酒屋よりも高いのではないだろうか。
ワインもたくさんあるがオランダほど安くはない。
結局、この中で一番安いアルコール飲料を探したらシードルに行きついた。
シードルなんて発泡果実酒なんて、ふだんは甘ったるくて飲もうとも思わないが、桃のシードルと言うのが、なんだかとても美味しそうに見えて、買うことにした。
値段は1.29ポンド。
この金額は缶ビールとほぼ同じくらい。

宿に戻ったら、午後5時で、もう部屋に入れるという。
2段ベッドが向かい合わせに並んだ4人部屋だけれど、貸し切りということになっている。
シャワーやトイレは共同。
まだ、外は明るいので、表に出てさっき買ったシードルを飲んでみる。
味の方だけど、これがすっきりしていて旨い。
なんとなくスパークリングワインのような芳醇さもある。
シードルって、いままでサワーみたいで敬遠していたけど、思っていたものよりずっと旨い。
アルコール度数もたいして高くないので、簡単に一本飲み干してしまった。

今夜の部屋
[明るく居住性の良い部屋だけど、私一人ではもったいない]

さて、今夜の夕食はニンジンとカレーライス。
キッチンは使いやすく、食塩だけは自由に使わせてもらえる調味料となっている。
あとは食材はじめ、みんな自分の名前を書いて置いてある。

キッチン
[こんな本格的なキッチンを自由に使える]

ニンジンは塩ゆでにすることにした。
炒めて食べようにも、油もない。
だから、塩ゆでしか作れない。
が、このシンプルな塩ゆでしたピーターラビットのニンジンがやたらと旨かった。
もともと甘みのあるニンジンらしく、それが塩で茹でることで強調され、ぶつ切りにしたサイズも手ごろで、スナックのように食べられる。
タイではこのような品種のニンジンは見たことがない。
それに安かったこともうれしい。

ピーターラビットのニンジン
[久々に調理されたものを口にした]

冷凍のカレーライスは、なるほどイギリスのインドカレーってのはこんな感じかと思われる味で、日本のカレーとは違うし、タイのカレーのような旨味もない。
辛さもタイのカレーとは比べ物にならないくらいマイルド。
しかし、香辛料はさまざまなものが入っているようで、さわやかさと、深みの両立した味がした。
難点は、この格安航空会社で有料販売している機内食のようなパックでは、1日中歩き回り、しかも昼食も食べていない胃袋には、物足りなかったようだ。
さっそく、追加でKO-LEEの即席ヌードル・カレーフレーバーを作る。
鍋釜が自由に使えるので、袋麺を茹でられて重宝する。
パッケージに書かれた調理方法は、
70グラムを300そそのお湯で3分間茹でたら、粉末調味料を投入。
あとはお好みで、野菜や玉子、肉を入れたら更においしいみたいなことが書かれている。
つまりスープヌードルのようなのだが、パッケージの写真は焼きそば風の汁なし麺。
私は、焼きそば風にお湯を切ってから粉末調味料を振りかけて食べることにした。
なお、ここのユースホステル内では、外部から持ち込んだアルコール飲料は飲んではいけないと決められているようだ。
飲みたければホステル内のバーで買って飲むようにとなっている。
バーのビール は、スーパーで売っているのと比べて、安くないので今晩はちょっと自重する。

万歩計
[今日も良く歩きました]

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蘭英旅行 その4
9月10日 土曜日

窓のない船室なので、夜が明けて朝になっても気が付かない。
身体の方が自然に目覚めて、時計を見ると午前6時。
すぐに部屋から飛び出して甲板へ出てみる。

海上の夜明け
[船の上で迎える朝はちょっと特別な感じがする]

外はもうだいぶ明るくなってきている。
雲が低く垂れこめている。
グーグルマップで位置を確認してみると、もうハンパー川の河口に入ろうとしているところを示している。
長い防波堤のようなものが伸びてきていて、さらにたくさんの巨大な風力発電の風車が並んでいる。
オランダでも風力発電がたくさん行われていたけれど、イギリスでも風力発電は盛んなようだ。
雲が低くて見られないと思っていた朝日も、水平線と雲の間のわずかな隙間からのぞいてくれた。

朝日
[夏時間だからなのか、夜明けが遅い気がする]

午前8時にハルの港に入港。
下船まで昨晩はバーとして賑わっていたラウンジのソファーに座って待つ。
さほど待たされることなく、下船させてもらう。
たぶん混雑を避けるためなのか、100人くらいを一区切りにして下船させている。
たぶん、99人まで下船の区切りをして、あと一人の枠ができたらしく、「あと一人、すぐ下船できるよ」と係員が声をかけている。
この船には一人旅の人がいないのか、だれもそれに応じる人がいない。
それならばと、前に出て100人目の下船グループに混ぜてもらった。

下船を待つ
[等級によって下船の順番が決まるわけではなさそうだ]

船からローディングブリッジを渡り、ターミナル建物の4階に入り、エスカレーターを乗り継ぎながら1階へ。
ここでイギリスの入国審査。
パスポートを見せ、滞在期間や旅行先に関する質問に答えるだけで、入国カードもなければ入国スタンプも押されなかった。
コロナに関する特別な手続きとかも何もなかった。
入国審査場の脇に、飲料水のサーバーが置かれていたので、空になっていたペットボトルに水を詰めさせてもらう。
スーパーで売っている飲み水は安くない。
もともとアルコール分を含有しない飲み物にお金を払うのが好きではないので、こうして飲料水の補給ができるのは大変うれしい。

ターミナル内
[エスカレーター以外にエレベーターもあるが、エスカレーターの方が面白い]

ターミナルからは8時半前に出ることができた。
今回の旅行の目的地は、イギリス湖水地方。
ハルから湖水地方まで直線距離にしたら200km足らずのようなのだが、交通の便はあんまりよくない。
鉄道を利用して最短で行く方法はハルからマンチェスターを経由していくルートらしいのだけれど、どうもマンチェスター近くで不通区間があるらしく、迂回ルートをとらなくてはならないらしい。
さらに9月になってイギリスでは鉄道職員のストが頻発して、電車が予定通り動かないケースも多いらしい。
前売りの往復切符を買ってあるのだけれど、その切符に記されたスケジュールは次のようになっている。
ハル11:06-12:04リーズ12:18-14:09ランカスター14:21-14:33オクセンホルム・レイクディストリクト14:39-14:55ウィンダミア
ウィンダミアと言うのが湖水地方の入り口となる駅。
乗り継ぎ回数も多いのだけれど、乗り継ぎ時間さほど長くもなく、うまくいけば3時間半で到達できる。
しかしこれがストで運休なんかが一区間でも発生すると、スケジュールがめちゃくちゃになってしまう可能性が高い。
そんなことを想定して、一本でも早い電車に乗り込んでしまうのがリスク回避に役立ちそうだと考えて、ハルの鉄道駅へ向かって歩き始める。

P&Oフェリーターミナル
[敷地の外に出るには外周通路をぐるりと半周させられる]

フェリーターミナルと言うのはどこの国でもそうなのだろうけど、だいたい町の中心部から離れた不便なところにある。
フェリーの利用者そのものが車でやってくるわけだから、町外れでも支障はないのだろうけど、私のような車を利用しないものにとっては、ターミナルまでの行き来が不便である。
ハルのターミナルはロッテルダムと比べればまだ中心部に近いが、それでも直線距離で5キロほどもある。
歩けば1時間少々のはず。
5キロ程度なら毎朝のジョギングと同じ距離なので、たいしたことはないけれど、荷物を持っているのが負担になる。
とんでもなく広いターミナルの敷地外へ出れば路線バスのバス停もあるようなのだけれど、どうもイギリスの路線バスの運賃は安くないらしい。初乗りが2~3ポンドくらいのようだ。
たぶん、日本のバスと比べたら少し高いくらいなのだろうけれど、私が普段利用しているバンコクのバス代と比べると異常に高く感じる。
なので、歩いてバス代を節約。

喪中
[一昨日なくなられたエリザベス女王]

港周辺の道路と言うのは、殺風景で、広い道路をトレーラーが行きかうばかり。
道端には雑草が生えていたり、歩道もガタガタだったりする。
そんな中を30分ほど歩いて、やっと趣のあるレンガ造りの堅牢な建物に出くわす。
あぁ、やっとイギリスらしさを感じられたと思える重厚な建物。
周囲を威圧感のある高い塀が囲んでいるのも、権威を感じさせる。

重厚感のある塀
[やっとイギリスらしい建物が見えてきたと思ったが]

この建物は裁判所だろうか、それとも古いお城だろうか。
ハルの正式な街の名前はキングストン・アポン・ハルと言うそうで、これは「王様の街ハル」という意味らしい。
エドワード1世が13世紀の終わりに命名した町だそうだ。
タイではスコータイ時代の名君、ラムカムヘーン大王が君臨していたころらしい。
そんな歴史を感じさせる建物の正面まで来たら、やはり重厚な門扉があった。
が、その入り口に書かれている英単語を拾い読みしたら、この建物は刑務所のようだった。

刑務所
[刑務所の中はどんな感じか覗いてみたい気もする]

高い壁と威圧感。
たぶん、歴史的な建物かもしれないけれど、この手も施設は町はずれに作られるものらしい。

刑務所を過ぎて歩いていくと、車の部品屋、洗車屋や町工場のようなごちゃごちゃとした地区に入った。
やっぱり、あんなり雰囲気のある所ではない。
しかも土曜日の朝ということもあって、ひと気も全くない。
こんなところはさっさと通り抜けてしまおうと歩いていくと、かわいらしい小型の赤い乗用車が道端に止まっていた。
この小型車は3輪の乗用車。
30年前にイギリスの田舎町の住宅街でトコトコとかわいらしく走っているのを見かけたことがある。
そのころでもクラシックな車だなと感じ、面白そうだと思ったけれど、こうしてまた間近で見てみると、3輪で小型ではあるけれど、とても洗練されたスタイルをしている。
こんな車で街を走ったら楽しいだろう。

3輪乗用車
[クラシックな3輪乗用車]

1時間ほど歩いてハル川にかかる橋の袂までやって来た。
この古い橋も跳ね橋となっているようだ。
現在も跳ね橋として稼働するのかはわからないけれど、橋の手前に遮断機と信号があるので、橋が上がるときもまだあるのかもしれない。
一度見て見たいものだ。

ハル川にかかる橋
[川の対岸は景色が一変する]

この橋を渡ると雰囲気が一変して、ハルの旧市街に入る。
こんどこそ本物のレンガ造りで歴史を感じされる重厚な建物群が道の両側にならんでいる。
建物にはイギリス国旗が半旗で掲げられている。
このあたりが旧市街で、歴史地区にでも指定されているのだろう。
やっとイギリスに来たなと感じられ、こんどこそ裏切られることはなかった。

重厚な建造物
[やっと本当のイギリスらしい街になった]

鉄道駅には10時前に到着。
ここで汽車の切符を受け取らなくてはならない。
インターネットで購入しているのはバウチャーで、実際に汽車に乗るには本物の切符が必要ということだった。
駅構内の切符売り場の窓口に並んで、バウチャーを提示したが、自動券売機のようなものを指さされ、あれで自分で手続きして切符を受け取れといわれる。

ハル中央駅
[この駅はバスターミナルも兼ねている]
この自動券売機の操作方法がよく解らないが、スクリーンに表示される英単語を読んでみると、予約番号を入力して、クレジットカードを入れろと説明されている。
既にカードで支払い済みなのに、またチャージされるのではないかと不安もあったけれど、とりあえず指示に従ってみる。
そうしたら、ちゃんと切符が往復分出てきた。
途中何度も乗り換えがあるのだけれど、乗り換える電車ごとの切符と、ウィンダミアまで通しの乗車券などバラバラとたくさんの切符が出てきた。
ちなみに事前購入した往復切符の代金は 89.10ポンド。
タイバーツに換算して4,000バーツほど。
安くない。
バンコクからチェンマイまで一等寝台で往復するよりも高い。
でもまぁ、日本の新幹線と同じくらいの金額だろうか。
これだから発展途上国の安月給取りがヨーロッパなんかに来ると、お金のことで肝をつぶしてばかりになる。

駅の構内
[櫛形にホームが並んだ典型的な終着駅]

予定よりも1時間も早くハル駅に到着できたので、予定よりも1時間早い電車に乗り込むことにした。
とにかく、ストだとかのリスク回避をするために、乗れる電車があれば、ちょっとでも早く先に進んでおくべき。
このハルから出発する電車は、電化されていないためディーゼルカーでちょっと旧式の車両もあるが、新式のスマートな車体の電車もある。
これも30年前に、場所がハルだったのか、どこかほかのイギリス東海岸沿いだったのか記憶があいまいなのだけれど、荒涼とした海岸線を短い編成のディーゼルカーが走っている風景が記憶に残っている。
まるで北海道のサロベツ平原で海沿いを走るディーゼルカーみたいだと感じたものだ。

私が乗り込もうとした電車は新型で、トランスペインという運行会社の車両。
切符には乗る列車が指定されているが、座席番号は入っていない。
そして、どうやら指定されている以外の電車にも同じ区間なら乗っても問題ないらしい。
しかし、ホームにはたくさんの人が電車に乗り込もうと、ドアが開くのを待っている。
週末なので、どこかへ遊びに出かける人たちなのだろう。

トランスペインの電車
[スマートな電車、ホームで乗車を待つ人が多い]

私も並んでドアが開くのを待つ。
そして、ドアが開き、どっと車内へ流れ込む。
イギリスの電車にも、指定席と言うのがあるようなのだけれど、日本と違い、指定席車と自由席車が分かれていない。
座席に"Reserved"と書かれた札が付いていたら、誰かがその座席を予約しているということらしい。
私もなんとか空席を見つけて座ることができたが、その座った席の背もたれのところに、"Reserved"の札が付いていた。
札に書かれている内容を読んでみると、セルビーと言う駅からさきで誰かがこの席を予約ているらしい。
セルビーがどこなのかよく解らないが、そこで予約者がやってきたらば、当然席を明け渡さなくてはならない。
通路にはたくさんの人が立っていて、下車予定のリーズまでは1時間ほどだから、途中から立って行っても大したことはないはずだけれど、やっぱり座っていけるものなら、座って車窓を楽しみたい。

ハンパー川沿いに電車は走る。
私の記憶にあったのは、海岸ではなくハンパー川だったのかもしれない。
ハンパー川はとても川幅が広いので、まるで入り江のようにも見える。
そしてハンパー川にかかる巨大な吊り橋が見えてくる。

ハンパー川
[ハンパー川、電車のスピードが速く、どんどん遠ざかって小さくなっているが吊り橋が見える]

セルビーはなんとハルの次の停車駅だった。
私は荷物をまとめて電車から降りてしまう。
満員の電車の通路に立つよりも、このあと来るだろう電車にはあるかもしれない空席に賭けてみることにした。
それに、新型の電車ではなく、旧式のディーゼルカーの各駅停車なんかに乗れたらば、それも情緒があって楽しいだろう。
セルビーは田舎の駅で、ホームのベンチに座って後続の電車を待つ。
後続は、間もなくやって来た。
どうやら期待した各駅停車ではないようだけれど、電車の外観はさっきよりもだいぶ野暮ったい。
この野暮ったさは、タイの国鉄で使われているスプリンターと呼ばれる特急車両によく似ている。
あれも今から30年ほど前にイギリスから輸入したことになっているから、今から乗る電車も30年ものなのかもしれない。

スプリンターのような外観
[セルビーで乗り換えた電車、下膨れした外観が特徴的]

しかし、乗り込んだ車内は、タイの特急のようなオンボロさはなく、とてもスマートで明るかった。
ほぼ満席に近い乗車率であったけれど、空席を見つけることができた。
車内にはやはり行楽に出かけるグループがたくさん乗り合わせており、午前中と言うのにもうお酒が入っている女性たちもいた。

車内の様子
[イギリス女性は濃いめの化粧が一般的らしい]

11時半前、リーズに到着。
ここでランカスター行きの電車に乗り換える。
いままでリーズと言うイギリスの街の名前は耳にしたことがあったけれど、それがどんな街であるのか全く印象がなかった。
ヨークシャームーアにある田舎町だろうくらいにしか思っていなかったけれど、電車がリーズの街に差し掛かって、車窓に見えてきた街の景色は、ゴシック風の大きな建物があったりして、中世的な雰囲気の残る趣たっぷりの街であった。
ここからランカスター行の電車の出発時間までは30分ほどあり、そのかんちょっと街歩きをしてみたいと思ったのだけれど、ハルやセルビーの駅には見かけなかった改札口がリーズの駅にはあった。
つまり駅の出入りには改札口を抜けなくてはならないが、私の切符は途中下車が認められるものなのかがわからない。改札を出たとたんに切符を回収されたら大事になる。
そこで街歩きは断念し、駅のホームでちょっと早めのランチにすることにした。

ランチと言っても持参のパンと菜ッぱ、そしてイワシの缶詰。
冷たいランチであるが、イワシの缶詰は、チーズ以外では久々の動物タンパクでもある。
つまり、私にとっては御馳走のようなもの、
丸いパンをかじり、菜っ葉にイワシのトマト煮を包んで食べる。
こんなモノでも美味しいと感じられるのは、やっぱり幸せなんだろう。
今の世の中には美食があふれ、飽食だの、フードロスだの言われているけれど、こんな素食を口にして、美味しい、食べられて幸せだと感じられることは良かったと思う。

ランチ
[キャリーバッグは食卓にもなる]

パンをかじっている最中にもリーズの駅には次々と電車が発着している。
交通の要所うというのか、電車の発着ぶりや、人の流れを見ていると新宿駅のように感じられてくる。
新宿は東京でももっとも混雑する駅の一つだけれど、リーズは首都ロンドンから遠く離れた、地方都市である。
にもかかわらず、こうしてたくさんの人が乗降し、電車が出入りしているというのは、イギリスでは鉄道が交通機関としてまだまだ王道を走っていることを示しているのかもしれない。
出入りする電車は、通勤電車風から先鋭的な特急まである。
そのな特急を見ていたら、AZUMAと車体に書かれた特急も入ってくる。
うる覚えだけど、数年前に日本の日立がイギリスに売り込んだ特急だと思う。
こんなところで日本製の電車に出会えるとは思わなかった。

日本製特急アズマ
[日本製特急アズマ]

ハルを1時間早い電車で出発したものの、けっきょくリーズからは予定通り、12:18発の電車に乗ることになった。
これもディーゼルカー。
ローカル線を走る各駅停車のようだけれど、車内はここまで乗ってきた電車と比べて遜色ない。
ランカスターまでの約2時間。
ヨークシャームーアの丘陵地帯をのんびりと走る。
ヨークシャームーアでは季節になるとヒースと呼ばれる丘を覆うように茂る低木に紫色をした花が咲いて、一面が紫色に染まりとても美しいと聞いたことがあるが、まだこの目で実際に見たことがない。
一度見てみたいと思っている。
きっとこのランカスターへ向かうローカル線の車窓からもそんな景観が楽しめるのではないだろうか。

ローカル線の車窓
[ヨークシャームーアの荒涼とした土地にも集落が見える]

ヨークシャームーアではもう一つ、ブロンテの「嵐が丘」の舞台ということでも記憶がある。
実は嵐が丘の小説そのものを読んだことさえないのだけれど、ヨークシャームーアの荒涼とした土地が嵐が丘の小説の舞台であることは聞き知っていた。
母はこの嵐が丘の小説を若いころに読んでいたそうで、この小説の中で描かれているヨークシャームーアの荒涼としたイメージは恐ろしいほどだったと話して聞かせてくれたことがある。
また作中の人物たちの人間関係もヨークシャームーアの情景に劣らないくらい荒涼としたもの、そしてその底流に愛憎が流れていることなどを話してくれたことがある。

ランカスターでは10分ほどの待ち合わせで、電車を乗り換えることになっている。
ランカスターの駅に北側から入る手前に、川が流れており、そこにかかる橋から眺めたランカスターの街はとても情緒があった。
丘の上には、大聖堂がそびえ、川沿いにはグレーの屋根とレンガ色の濃淡でシックな街並みで中世的景観が広がっていた。
このランカスターもちょっと歩いて回ってみたいと感じさせたが、10分の乗り継ぎでは時間が足りない。

しかし、定刻通りにランカスターに到着したものの、乗り継ぎする先の電車はストで運休と電光掲示板に表示されていた。
この電車はロンドンからスコットランドへ向かう全席指定の特急列車であったけれど、運休となっては指定席も意味がない。
さて、どうしたものかと呆然としていると、しばらくして別の特急列車が隣りのホームにホームに入ってきた。
アナウンスに耳を傾けてみると、グラスゴーへ向かう特急らしい。
ということは、私が乗れなかった特急と同じ方向へ向かう後続列車らしい。
大慌てで跨線橋を渡り、出発しようとしている特急のホームで駅員を探す。
しかし、ホームに駅員の姿は見えない。
ならば運転手に聞いてみるまでと、荷物を抱えてホームの先端まで走る。
が、しかし私が乗って行きたかったオクセンホルム・レイクディストリクトには停車しないそうであった。
オクセンホルム・レイクディストリクトへ行く次の電車は3時少し前だそうだ。
そうするとしばらく時間があるので、駅の外へ出てみる。
この駅にはリーズのような改札口がないので出入り自由のようだ。

ランカスターの教会
[ランカスター駅裏の丘にそびえる大聖堂]

駅のすぐ裏の丘の上には、大きな教会があり、観光名所にもなっているらしい。
石造りにゴシック風の建物に入るには入場料もかかるようだけれど、外から眺めるだけでも満足できる。
それから丘を下り旧市街の街へ入る。

丘からの眺め
[なんとなく中世風の趣のある街並み]

旧市街の奥には教会の尖塔も見えるし、土曜日だからか、石畳の道ではなにか催事で見やっているのかテントが張られ、横断幕や旗がかかっていた。なんとなく誘われる雰囲気もあるが、電車に乗り遅れては困るので、駅へと戻る。
わずかな時間ではあったけれど、ランカスターと言う町の散歩も面白かった。
だいたい今まで、ランカスターと言う町がイギリスのどこにあるのかさえ知らなかった。
バンコクで通勤する途中に数年前、ランカスターと言う名前のホテルがオープンしていたのでランカスターという名前は身近に感じていた。
スクンビット通りのランドマークホテルと同系列のホテルで、ランドマークホテルもイギリス風の印象が強いホテル。
ビールのグラスもパイントとなっていたりする。

中世のお城のイメージ
[丘の上の教会へ通じる門]

ランカスターからの特急はたったひと区間だけの利用。
乗車時間も10分ほどと短い。
車両は"Avanti"と書かれた高速列車で、車内は新幹線のようだ。
新幹線よりも、もっとゆったりした雰囲気がありのは、大きなテーブルを挟んだ席があったり、シートもゆったりしているからかもしれない。
しかし、座席は固定式のため私は10分ほど進行方向に対して背中を向けていることになった。

Avantiの車内
[特急Avantiの車内]

ハルをスタートしたのは、予定よりも1時間早かったけれど、オクセンホルム・レイクディストリクトへ到着したのは午後3時過ぎ。
予定よりも30分遅れている。
このあと最後の行程となりウィンダミアへ行く電車は、ローカル線なので1時間に一本あるかないかで、次の出発は3時半過ぎと時刻表にある。
つまり、予定より1時間の遅れが出ることになる。
しかも悪いことに、電光掲示板には運休と表示されている。
これもストの影響らしい。
駅の係員に相談したら、3時半過ぎに代行バスが来るから、それに乗れという。
ほんとうはこの湖水地方へ向かう電車に乗るのを楽しみにしていたので、バスよりも電車に乗りたかったが、電車は5時過ぎまで来ないそうだ。

オクセンホルム・レイクディストリクト
[予定より30分遅れてオクセンホルム・レイクディストリクト駅へ到着]

30年前に母と湖水地方へ行った時も、この駅で電車を乗り換えた。
ロンドンからのHSTという特急列車でやって来て、ここからはレールバスのようなかわいらしいディーゼルカーにコトコトと揺られた。
それがとても情緒があってよかった。

ウインダミア行きのホームは30年前と変わっていないようで、いまにも小さなディーゼルカーが丘の向こうから弧を描いて入ってきそうな気がするが、ストで運休。
駅裏で代行バスを待つ。

15:40にバスは来た。
他にも湖水地方へ向かう乗客を乗せる。
そして、ウインダミアへ直行するのではなく、集落ごとに街道を外れてはもともとの電車の駅のある方へ回り込んで乗客を乗り降りさせるので時間がかかる。
そして大きなバスが走るには集落の中の道は細すぎるようだ。
道路の両脇はこのあたりの土地に多いのだと思われるスレート風の石が積まれた壁になっている。
もっとも、スーっと走り抜けてしまう電車と比べて、バスは集落の中をウロウロするので、窓から外を眺めている分には十分に面白い。

代行バス
[ウィンダミアへの代行バス]

16:20、当初予定より1時間半遅れでウィンダミア駅前に到着。
駅舎はBoothsというドラッグストアのチェーンになってしまっているが、なんとなく懐かしい。
ここから今夜の宿、ホークスヘッドのユースホステルまで歩く。
距離にして約10km。
途中でウインダミア湖をフェリーで渡るが、順調に歩けば日没までには宿へ到着できそう。
それにしても、直線距離200kmほどなのに、丸1日がかりの移動になるとは、これも旅の楽しみ。

丘の上にあるウィンダミア駅から坂を下るように観光地らしい町並みを歩いていく。
ペンションやレストラン、土産物屋などが道の両側に続く。
そこを歩く人も観光客と一目でわかるような人たち。
ここは日本の軽井沢みたいな感じなのだろうか。
30年前に母と来た時は、見栄もあってウインダミア湖の湖畔にあるオールドイングランドホテルという古い石造りのホテルに泊まった。
しかし、今回は一人旅だし、なにより節約旅行を楽しんでいるので、少しでも宿賃や交通費、食費を節約するべく、ここ湖水地方ではユースホステルに泊まることにした。
イギリスのユースホステルの嬉しいことは、安いだけではなくキッチンがあって自炊することが可能らしいということ。
鍋や食器類はキッチンにあり、宿泊者が自由に使えるらしい。
ならば究極の節約で自炊するのが一番だけれど、残念ながら自炊するには食材、それも調味料の調達が必要となる。
結論として、冷凍食品を持ち込むことを考えた。

湖畔へとダラダラと続く道を歩いていく途中に、COOPがあった。
つまり生協。
生協会員でなければ利用できないのではないかと思ったが、だれでも買い物ができるらしい。
この生協で、今夜の夕食をそろえることにする。
電子レンジもあることだろうから、久しぶりに温かい食べ物も食べられそうだ。

ウィンダミアの生協
[コンビニと同レベルの生協だけど、周囲の景観に配慮している]

イギリスの生協はオランダのJUMBOより値段が高いのだろうか?
それともここは観光地料金ということなのだろうか?
期待した冷凍食品も、思っていたより値段が高い。
5ポンドとか平気で表示されている。
結局買えたのは、小さなCOOPピザ2枚。
小さいだけではなく、とても貧弱だけど、1枚が0.90ポンドで冷凍食品の中では群を抜いて安い。
フォスターの缶ビール4本セット。
フォスターと言ったらオーストラリアのビールのイメージだったが、イギリスでもメジャーらしい。
これは1パイントの缶ビールで4本が4.25ポンドだから、タイのチャーンビール並みで嬉しい。
最後にパンをひとつ。
細いフランスパンみたいなもので、JUMBOがもう懐かしくなる。
〆て6.50ポンド。

この湖水地方へ来るのは今回が3回目。
しかし、ウィンダミアの駅から湖畔まで歩くのは今回が初めて。
以前はバスやタクシーを使っていた。
湖畔ならフェリー乗り場までは何度か歩いたことがあり、歩いてもたいした距離ではなかった記憶があるのだけれど、今回感じたのは、湖畔からフェリー乗り場が記憶に反して意外と遠いということ。
たぶん駅から湖畔まではほんどどが緩やかな下り坂だったので、距離があっても楽だったのに対して、湖畔ではアップダウンがあり、しかも荷物を持っているので、歩いても歩いても、あれへんだな、まだ着かないぞ、フェリー乗り場が移転したのかと訝りながら歩いたためだろう。

オールドイングランドホテル
[以前宿泊したオールドイングランドホテル、左手にそっけない新館を増築していた]

そのフェリー乗り場へは5時少し過ぎに到着。
ちょうど
対岸へ渡るフェリーが出たばかりであった。
このフェリーは20分間隔で運行しており、乗り場でしばし待つ。
フェリー乗り場の近くにはヨットハーバーがありたくさんのヨットが係留されていた。
こんなところにヨットを持っているなんて、このあたりにはお金持ちの別荘がたくさんあるのだろう。

ヨットハーバー
[ここはお金持ちの避暑地なんだろう]

フェリーには車も自転車も乗り込む。
これも軽井沢と似ていて、この町にはレンタサイクルもあるようで、駅前でも自転車を貸していたけれど、どうして自転車を借りるのにこんなに高いのかと思うほどレンタル料が高かった。
スコータイのレンタサイクルほど安い必要はないが、手ごろな金額なら借り出そうと思ったけれど、1日の借り賃で日本ならママチャリの一台も買えてしまいそうなくらい高かったのであきらめた。
対岸までの乗船料は1ポンド。チャオプラヤ川の渡し船が最近値上げをしたけれど、ここのフェリーと比べると1/4の金額。
そして、支払いは現金不可とのことで、たった1ポンドだけれどクレジットカードで支払う。
タイならばたいてい200バーツ以下はカード利用不可とかなのに、こちらでは少額でもカードがあたり前のようだ。

フェリーボート
[対岸から戻ってきた渡し船]

このフェリーはケーブル式と言う推進装置で、スクリューを使わない。
対岸との間にケーブルが伸びていて、そのケーブルを手繰り寄せるようにして前へ進むタイプだそうだ。
乗船客の船室、と言っても壁際にベンチがあるだけだけれども、それが船体の片側に寄っている。
そして、その上に操舵室がある。
船の説明書きが書かれているので読んでみたら、この渡し船は30年以上前から使われているそうだ。
つまり前回来た時もこの船に乗っていたことになる。
そういえば、あの時もこんな船だった記憶がうっすらわいてくる。

船内の様子
[こんなベンチに母と並んで座った記憶がある]

対岸へ渡ったところにトイレがあった。
しかも無料。
こちらへ来て、トイレがほとんど有料なので、いつも無料のトイレを探している。
電車に乗っているときは電車のトイレが無料で使えるので問題ないが、駅のトイレは有料が多い。
運よくこれまでのところトイレにお金を払うことなくここまでこれた。

対岸に渡ってからが長い道中となる。
最初の丘を越えてピーターラビットのふるさとソーリー村。
さらに進んでまた丘を越えるとエストウェイトウォーターと言うウインダミア湖より小さな湖になり、その南岸を回り込んで西側へ回り北上したところで今夜の宿があるホークスヘッドに至る。
時刻は5時半を回っており、まだまだ日照時間が長いので日没の心配はないが、歩く距離としてはまだ半分も来ていない。

湖水地方はなだらかな丘の連続
[湖水地方はなだらかな丘の連続]

ウインダミアの旧軽井沢的な雑踏は対岸にはなく、なだらかな丘陵は牧場となっており、羊が飼われていたりする。店とかも少なく、その代わり農家がある。
ちょっと華やかな建物があったりすると、だいたいがペンションのような宿屋だったりする。
丘の上には教会がある。
30年前は牧場の中を歩いたものだった。
牧場や緑の丘にはトレイルがあり、散策できるようになっている。
こんなところをトレッキングしたら気持ちよさそうだけれど、こちらはキャスター付きの荷物を引きずっているので未舗装の土の道や牧草の上は歩けない。
舗装された細い自動車が行きかう道を歩くことになる。

宿屋
[INNと書かれたペンション風の宿屋]

30分ほど歩いてソーリー村。
ピーターラビットを書いたベアトリクスポターの家があったヒルトップ農場に至る。
ここは第一級の観光地であるのだけれど、ポターが推奨したナショナルトラスト運動が定着しているのか、もともとの景観を崩すような宣伝物などはまったくない。
土産物屋なども見当たらない。
ここには花の咲く鉢植えで飾られたペンションがあり、ポターの博物館がある。

ソーリー村
[ソーリー村、どこも美しすぎる]

30年前も母とここまで歩いてきた。
もう午後も遅い時間だったけれど、まだ昼食も食べていなかった。
小さなペンションに入って、何か食べるものはないかと尋ねたら、ちょうどお茶の時間だというので、今でいうアフターヌーンティーのようなものをいただいた。
母はスコーンと言うものを始めて食べたが、美味しいねぇと言っていた。
私はこんなものじゃ少しも胃にたまらないなと感じながら食べた。
あの頃と風景は変わっていないようだけれど、観光客の姿は今の方が何倍も多い。
観光客と反比例して、以前はよく見かけた野兎を、今回は一匹も見かけていない。

ソーリー村のペンション
[あの時入ったペンションがどれだったのかはっきりしない]

そろそろ太陽も西の方に沈みかけてきて、木立ちとかの影がだいぶ長くなってきた。
エストウェイトウォーターからホークスヘッドまでの道はメンテナンスが今一つなのか、舗装がガタガタなところが多い。
路面が滑らかでないとキャリーバックを引っ張るのに要する労力が何倍にもなるので、少しでも路面の良い側へと、小道を左右に揺れるようにして歩く。
車はほとんど走って来ない。

湖水地方の道
[どうして、どこもかしこも綺麗なんだろう?]

7時少し前。
なんとかギリギリ日没前にユースホステルに到着。
ここはBooking.comというホテル予約サイトから予約したのだけれど、ここと明日のウィンダミア・ユースホステルの2泊分でタイバーツで2,342バーツであった。
それぞれの宿がいくらずつだったかはまとめてカードを切ったのではっきりしないが、明日の宿は個室で、今夜はドミトリーと呼ばれる相部屋だから、今夜の宿は一泊当たり700バーツくらいではないかと思う。
つまり今回の旅行で一番安い宿ということになる。

YHA Howkshead
[ホークスヘッドのユースホテスル入り口]

しかし、まるで地方の郵便局みたいなしっかりした建物で、庭も広い。
庭ではキャンプをしている人たちもいる。
今夜の部屋は8人くらい収容できる部屋で、すでにいくつかのベッドには荷物が置かれていたが、みんなまだ外へ出ているのか部屋の中には誰もいなかった。

ユースホステルの宿泊棟
[レセプションのある宿泊棟以外にキッチンやラウンジは別棟にあり、キャンプ場もある]

さて、今日はたっぷり歩いたので、まずは街で買った缶ビールで乾杯とする。
冷蔵庫で冷やしていないけれど、気温が高いわけではないし、それにこの常温で飲むフォスタービール、なかなか美味しい。
ビール本来の味や香りを感じられというほどのビール通ではないけれど、タイでは絶対に感じられない常温ビールのうまさを感じた。

フォスタービール
[ファスタービールで乾杯]

ビールを飲んだら続いて夕食。
キッチンへ行ってみると、たくさんの人でごった返していた。
みんな食材や調味料持参で、料理をしている。
サロン風のところでは盛大に食べて、飲んでいる。
ユースホステルなんかに泊まるのは、高校生の時以来だから40年ぶりということになるが、このキッチンで調理をしている人たちは、ほとんど40歳以上と見受けられる。
若者と言える人は子供を除いてほとんどいない。
それに日本のユースホステルも今は昔のように飲酒禁止とは違うかもしれないが、ここではみんな盛大にビールを飲んだりワインをつぎあったりしている。

そんな中で、私一人、電子レンジで質素なピザを温めて食べる。
ビールも飲む。パンもかじる。
久しぶりに温かいものを口にした。
しかし、周りの本格的なテーブルと比べて、なんてささやかな夕食なのだろう。
周りと比較できてしまうというのは、人生の幸せを奪うことになるのかもしれない。

使った皿を洗っていると、スパゲティーのミートソースが入った鍋の中身をゴミ箱へ惜しげもなく捨てている女性がいた。
きっと食べきれなかったのだろう。とても美味しそうな匂いをキッチンの中にまき散らしていたが、こうして捨ててしまうとはもったいない。
捨ててしまうのなら、私が鍋を洗うから食べ残しを分けてほしいと言いたいくらいだった。
しかし、どのように英語で伝えたらいいのか、頭の中で構文を考えているうちにゴミ箱のふたは閉じられてしまった。

夜9時、外に出てみると丸い月が山の稜線から登ってくるところだった。
やっと念願の湖水地方へたどり着けた。
月に向かって手を合わせて感謝する。

月夜
[今宵は十五夜、お月見の晩であった]

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