ネコが死んでしまって、二か月が過ぎた。
あれから、世の中は新型コロナウイルスが爆発的に拡大して、とんでもないことになってきている。
死んだ人がどのくらいいるかとか、どこでどのくらい発生しているかとか、緊急事態宣言とか、ニュースはコロナ一色。
食堂やレストランなどでは店内での飲食が禁止され、テイクアウトだけになってしまった。
ナーン川沿いのレストランでビールを飲みながらの夕食なども不可能になっている。
床屋やマッサージ屋なども営業停止。
ただでさえ眠ったようなピサヌロークの街が、ほとんど死んでしまったかのようだ。
夜10時から翌朝4時までの外出禁止令も発令された。
私の職場や業種など、影響を特に大きく受けており、スタッフは在宅で、私一人オフィスを守っている。
これはこれで、私にとっては好都合でもある。
ピサヌロークで借りている部屋は、日中、それも特に午後がひどい暑さなのである。
天井から強烈な太陽に焼かれた熱を発しているし、西日に当たっていた部屋の壁も熱くなっている。
いちさなエアコンなどでは、とてもではないが対抗しきれない暑さ。
こんな室内気温が何度あるかわからないような部屋に閉じこもっているのは、とてもじゃないが過酷すぎる。
その点で、オフィスは業務用の大型エアコンがあるので、暑さに苦しむことはほとんどない。
しかし、4月11日からはソンクラン休暇である。
タイ政府としては、年初に今年のソンクラン休暇は、コロナ感染の危険がある都市部から国民を地方へ行きやすくするためと称して大幅に延長すると発表していたものの、コロナが拡大して来たら、コロナが全国に蔓延しないように、今年のソンクラン休暇は延期するとの決定が先月あった。
この時点で、会社からはこの期間中は一斉休暇との決定が下された後であり、そのまま私は休暇に突入してしまった。
で、日中の暑さを避けてオフィスへ避難することもできなくなってしまうので、対応策として休暇中はバンコクのアパートへ帰っていることにした。
ピサヌロークでは今月初めから、ビールなどのアルコール販売が禁止されている。
バンコクでも、私がバンコク入りをするのに合わせるかのように、4月10日~20日まで酒類販売が禁止されてしまった。
そういえば、コロナ以外のニュースとして、ピサヌローク県知事の娘が、夜間外出禁止令違反で、検問に引っかかったとのニュースがあった。
その際に「自分は県知事の娘だ」と悪態をついたらしいのだが、外出禁止令違反だけではなく、飲酒運転でもあったらしい。父親が県条例で酒類販売を禁止して、娘が飲酒運転とはタイらしい。
4月11日土曜日の朝7時過ぎにピサヌロークを車で出発。
鉄道もほとんど運休しているし、飛行機も1日1往復にまで減っているので、自分で運転していくよりほかに手立てはない。
バスもピサヌローク市内や郊外の村を結ぶソンテウやバスの姿を見かけなくなっている。
外出自粛要請もあり、県をまたいでの移動は原則禁止ということになっているらしい。
はたして、自分で運転していくからと言って、バンコクまで無事にたどり着けるかおぼつかない。
それでも、車の中にはネコの写真も飾ってあるし、たぶん今頃は極楽浄土で仏様の仲間入りをしているネコが私のことを見守っていてくれるはずだから、なんとかなるだろうと考える。
道は空いている。
交通量が全然少ない。
長距離バスも走っていない。
こんなに交通量が少ないのに、道端では近隣の農産物を売っている。
ピサヌロークからナコンサワンの間は、テーンタイと呼ばれる大きなウリを並べている露店が多い。
テーンタイ、私はなんとなく味がぼんやりしていて好きではないのだけれど、毎度この道を通るたびに、こんなに沢山売られているのなら、このあたりのテーンタイは私が思っているものとは違ってとても美味しいのではないかと思えてくる。
しかし、もともと交通量が少ないので、露店に立ち寄っている車は見受けられなかった。
[この写真はもうバンコクの近くのものです]
空いている道だけれども、いつもよりスピードを落として走る。
時速80キロ以上は出さないようにして、左車線を進む。
この季節、ゴールデンシャワーが花盛りで、とてもきれいである。
特にピサヌロークでは延々とゴールデンシャワーの並木が続いていたりして、目を楽しませてくれる。
タイには日本のように花見をする習慣があるのかどうかわからないが、こんなに天真爛漫に黄色く花を咲かせているゴールデンシャワーの下で宴を開いたら楽しそうだ。
[黄色い花が満開のゴールデンシャワー]
ナコンサワンを過ぎても交通量は少ないまま。
バスは全然見かけない。
これでは車を持っていない地方の人は、町の病院にも通えないのではないかと思えてくる。
ピサヌロークを出てから、ビジット県、ナコンサワン県と走ってきたが、県境で検問などは行われていなかった。
検問所らしいものが作られて、兵隊が配置されていたけれど、停車を求められることはなかった。
私の毎朝のジョギングルート上にも検問風のテントが張られているところがある。
タンボンと呼ばれる集落ごとにこのような検問を設置することを県から要請されてのことのようだが、当初は朝早くから集落の世話役のような人がテントに陣取っていたが、ここ数日は無人のことが多くなっていた。
シンブリ県でスーパー・マクロに立ち寄る。
バンコク滞在中の野菜やパンを仕入れる。
そしてシンブリ県ではアルコール飲料の販売が禁止されていないようで、ビール売り場では堂々と段ボール入りのビールが山積みされていた。
バンコクへ行けば、ウイスキーやワインなどのストックはありお酒には不自由しないのだけれど、やっぱりビールはいつでも飲めるようにしておこうと1ダース入りを購入。
しかも、ちょっと奮発して、チャーンビール25周年記念コールドブリューという銘柄を買う。
まだ一度しか飲んだことがないけれど、普通のチャーンビールよりアルコール度は少し低めだけど、ちょっと重量感のある味で、今までのタイのビールとはだいぶ違うなと言った印象がある。
[シンブリ県ではアルコール飲料販売禁止令が出ていないらしい]
反対車線側、つまりバンコクから地方へ向かう下り車線も交通量は少ない。
ソンクランの時期など、タイの民族大移動とも言うべき状況が出現して、幹線道路の下り線は大渋滞を起こす者だけれど、今年ばかりは全然様相が異なっている。
アユタヤの手前、アントン県では道沿いに雷魚などの川魚を食べされるレストランが並んでいる。
車で走っていると見えないのだけれど、地図を見るとハイウェイのすぐ隣にチャオプラヤ川が湾曲しながら流れている。
この辺りではチャオプラヤ川で上がる川魚が名物なのだろう。
大きな張りぼての川魚を飾っているところもあり、ここでネコと写真を撮ったこともあったなと思い出す。
しかし、今はネコもいないし、店も営業していない。
[これは去年の5月の写真です 平和で幸せでした]
アユタヤ、バンパインと過ぎて、バンコクが近づいてくる。
少しは交通量も増えてきたが、渋滞とは程遠いくらい快調に流れている。
検問所も設置されていない。
バンコク市内は市内バスも電車もちゃんと走っているようだ。
タイの中でも、バンコクだけはいつも優遇されているような気がする。
午後1時半前にバンコクのアパートに到着。
スピードも出さずに走ってきたけれど、道が空いているのでスーパーで買い物をした時間を含めても6時間で到着できた。
ガソリンもいつもより燃料メーターの下がり具合が少なかったように感じる。
バンコクのアパートは、天井からの熱も、西日もなく、二面に開いた大きな窓から風が吹き抜けるので、暑さをほとんど感じない。
この幻のソンクラン休暇は、アパートの部屋でビールでも飲みながら昼寝でもして過ごそうと思う。
[久しぶりにバンコクの部屋へ戻ったら鉢植えが全滅してました]