6月25日 火曜日
ミャンマーで調べることがあったりして、ピサヌロークから車でメーソットへ向かう。
日帰りなので、早朝の出発。
自分で運転していくのは、メーソットまでで、メーソットの空港には別に手配をしたバンが待っていて、国境を越えたミャンマーのミャワディまで運んでくれることになっている。
ピサヌロークからメーソットまでは距離にして240キロほど。
3時間半くらいで到着できそうな気もするけど、途中に山道もあるので、日帰りでの往復はかなりハードになりそうな予感。
通い慣れたスコタイへの道を走り、遺跡のあるあたりを大きく迂回するバイパスで抜ける。
道はよく整備されていて、走りやすいのだけれど、スコタイを過ぎてタークに近づいたあたりで、学校の登校時刻とぶつかり、学校前の横断歩道ではしばしば横断する子供たちを待ったり、学校へ入る車列に道を閉ざされたり、時間を食ってしまう場面が多くなった。
タークを過ぎて国道1号線と分離すると、峠道に入る。
想像していた通り大型トラックが多い。
コンテナを積んだトレーラーがノロノロと坂を上っている。
この峠道も道路の拡張などの工事がガンガンと進められている。
勾配は大変急なところがあったり、カーブもきついので、トンネルでも掘れば、輸送力改善の効果が高いと思うのだけれど、タイの道路と言うのはトンネルがないような気がする。
鉄道トンネルはあるから、トンネルが作れないということはないだろうけど、不思議だ。
[道幅も広げられているけど、坂とカーブはキツイ]
メーソットまではいくつものアップダウンがあり、峠を越えたと思っても、またすぐに峠になってしまう。
道幅が広げられている部分が多いので、大型のトレーラーを抜かすのに苦労はないが、下り坂ではトレーラーがものすごい速度で坂を下ってくるのには驚いてしまう。
メーソッドの街外れの交差点では、トレーラーがバイクを轢いたようで、トレーラーにたくさんある車輪の下にバイクが巻き込まれていた。
どちらの不注意かわからないが、バイクは即死であろう。
まだ開通していないはずの第二友好橋への標識があり、立派な取り付け道路は完成していた。
メーソットの空港は田舎の空港としては随分と立派で、真新しい建物であった。
プロペラ機が数便バンコクと往復しているだけではもったいないくらいである。
コンビニやファーストフードも入っているようだけど、いったい一日にどれだけの来店者と売り上げがあるのだろう。
[真新しいターミナル内は閑散としてます]
この空港で国境の向こうまで行けるバンに乗り換える。
よくわからないのだけれど、現在のルールでは、タイの自家用車ではそのまま国境を越えることはできないらしい。
大型のバスもやはりだめ。
旅行者を乗せたバンで、しかも車両がリースなどの担保になっていないことが国境を越えられる条件らしい。
国境を越えても、ミャワディ周辺しか行動範囲は許されていないようで、遠くまではいけない。
[メーソット空港で乗り換えたバン]
バンで最初に向かったのは、まだ未開通の「第二友好橋」。
現在の国境であるモエ川にかかる橋も、なかなか立派な橋ではあるが、トラックなどのチェックや書類手続きなどで、随分と不便があるらしい。
そこで、もっと広い敷地で、作業ができるような新しい橋を作っているとは聞いていたが、それがどの程度完成しているのか気になっていた。
先ほど見た、真新しい第二友好橋への取り付け道路ではなく、モエ川沿いの旧道から現在の橋よりモエ川の上流にかかる第二友好橋へ向かったのだけれど、これが良かった。
昔ながらの狭くて曲がりくねった田舎道なのに、大型コンテナを積んだトレーラーなどが次々にやってくる。
バンのドライバーによると、橋ではなくモエ川を船で渡して、ミャンマーへ送るのだそうだ。
小さな川で、コンテナごと運べるような船などありそうにないから、コンテナから物資をばらして、小舟でミャンマーへ送っているのだそうだ。
対岸のミャンマー側にはカレン族の税関があるとも言っていた。
カジノもあった。
大きくはないが、国境の向こう側、ミャンマーなのでカジノも合法的なのだろう。
ここも小舟でモエ川を渡るだけなのだが、タイ側にもミャンマー側にもイミグレーションなどなさそうで、だれでもフリーパスのように見える。
ゴールデントライアングルにもカジノがあるが、一応はミャンマー側のイミグレーションがあり、入国料を取られて記憶がある。
[この川を渡ればカジノがある]
タイ側の第二友好橋はほぼ完成しているようで、建物も立派なのが立っており、既に内装工事も終わっているのか、静まり返っている。
柵がめぐらされた施設に入るには、ちゃんと正面から進まなくてはならないようで、正面から橋に向かうと、守衛の詰め所があり、そこの守衛に「いつ開通するのか」と質問してみた。
「タイは完成したが、ミャンマーがまだだから、いつかはわからない」とのことであった。
[タイ側の第二友好橋のゲート]
その後、同行のタイ人スタッフに簡易国境通過証を発行してもらいに行く。
空港から国境へ向かう中間地点にあるのだけれど、田舎の保健所のような建物。
タイ人はここで30バーツを払って通行証の発行を受けるらしい。
ここから国境まではまだ距離があるのに、国境へ向かう大型トラックが延々と行列を作って並んでいる。
こんなに順番待ちの列が長かったら、国境までたどり着くころには日が暮れてしまうのではないだろうか。
[こういう施設は国境のすぐ近くにあった方が良いと思うのだが]
バンも国境を通過するための書類を作るのだけれど、これは国境の橋のたもとで行っていた。
延々と続くトラックの行列とは関係なしで、バンは行列への横入りが認められているらしい。
さっさと、国境手前100メートルくらいのところに割り込んでしまった。
しかし、橋への行列は、牛歩の歩みどころではなく、蝸牛の歩みみたいなもの。
私はバンから降りて、歩いて国境へ向かう。
タイの出国審査を受け、歩いて橋を渡る。
橋の中間で、左側通行から右側通行へとクロスさせる部分がある。
[ここで車線が入れ替わる]
橋の下では、小舟で国境を超える人たちの姿が確認できる。
小舟での越境には、出入国手続きなどはないようだ。
ミャンマー側の入国審査は、狭い部屋で行われた。
くたびれたシャツを着た係官が、審査をするが、入国カードもその場で書かされる。
写真も撮影される。
係官は、あんまり英語を得意としないようだ。
昔のミャンマーは、イギリスの植民地であったこともあり、流暢な英語を話す人が多かった印象があるが、いまは英語をあまり教えていないのだろうか。
タイの出国手続きからミャンマーの入国手続きまで、だいたい20分くらいの時間がかかった。
ちょうどバンも国境の橋を渡り終えたところだったようで、うまい具合に合流できた。
まずは、ミャワディトレードゾーンへ向かう。
ミャンマーに入ってみると、タイ側よりも国境の街の雰囲気が濃い。
活気もある。
しかし、薄汚れ、埃っぽく、雑減として、秩序が乏しく感じられるのは、インフラの遅れが原因なのだろうか。
川を一本渡っただけで、まったく違った世界に来たようなイメージになってしまう。
タイ側には、ミャンマー文字の看板などたくさん見かけたが、ミャンマー側ではタイ文字をほとんど見かけない。
[ミャワディのメインストリート]
建物が密集しているのは、国境から数キロほどのところまでで、そこから先は田舎なのだけれど、のどかな雰囲気の中で、あちこちで大掛かりな土木工事が行われていた。
このアンバランスな感じも、発展途上を感じされる。
ミャワディトレードゾーンもちっとも近代的ではなく、税関らしいところでトラックの積み荷の検査をしている。
出入りしているトラックのナンバーはすべてミャンマーのもので、タイのナンバーなど一台も見当たらない。
たぶん、タイからのトラックは国境を越えた後、積んできた物資をミャンマー側のトラックに積み替えてしまうのだろう。
このトレードゾーンも英語がほとんど通じないので、係官に質問しても要領を得られない。
税関の施設内も、舗装されているのは一部だけで、泥んこの中をトラックが出入りしていた。
新しい第二友好橋が完成したら、この税関も新しい橋の方へ移転するのかもしれない。
[税関らしいピリピリした感じは全くない]
お昼の時間になったので、昼食とする。
街はずれ、街道沿いのレストランで、こぎれいだけどエアコンはない。
レストランの向かい側には、新しいがホテルが二軒並んで建っている。
できますものは、簡単な洋食と中華、飲茶もあるらしい。
そして、タイ料理に、少しだけミャンマー料理。
大きな店だけれど、他に来店客は内容で、どんな人たちが食事をしに来るのかよくわからないが、ビールの広告ポスターがたくさん貼られているところを見ると、夜の営業がメインなのかもしれない。
[レジェンド・ミャワディ・レストラン]
何をどう頼んで良いかわからない。
メニューもあるけど、言葉が通じない。
タイ語も通じない。
片言の英語を話せるマネージャーが出てきて、やっと意思疎通が叶う。
注文したのは、13,000チャットのコースメニュー。
中華とタイとミャンマー料理のミックスだそうだ。
ウエイトレスが何人かいて、お茶を注いでくれる。
笑顔で、言葉は通じないが、一生懸命サービスに努めていることは感じられ、印象は良い。
で、出てきた料理の味も良かった。
最初は「ミャンマー料理なんて油っこくて、まずいから食べたくない」と言っていたドライバーも、一緒のテーブルに着かせて同じものを食べさせたら、「うまい、うまい」とよく食べていた。
[こんな料理がなんだかんだと10皿くらい出てきた]
ミャンマーのスープだというものは、マイルドなトムヤムのような味で、とても美味しかった。
中華風の総菜類も、いい味付けだった。
今一つだったのが、タイ料理モドキのヤムウンセン。
結構満足度が高い昼食となったが、エアコンがない半分オープンエアの環境のため、ハエがいるのが気になった。
[サービスに努めてくれたウエイトレスたち]
昼食後は、タイ側で聞いた「(第二友好橋は)ミャンマーがまだだから、いつかはわからない」というのが、どの程度まだなのかを確認したいので、ミャンマー側の第二友好橋へ向かう。
[右に曲がれば第二友好橋]
で、ミャンマー側も見たところ、完成しているようだ。
道路も、橋も、建物も、立派なものが出来上がっている。
こちらには守衛がおらず、どういうことになっているかわからないが、タイ側もミャンマー側もハード面では橋は完成しているらしい。
ミャンマー側も広い敷地を有し、ミャンマー風の建築による建物など、かなり堂々とした施設になっている。
標識を見ると、バスや乗用車のレーンもあるようだから、新しい橋が開通したら自家用車で越境したり、国際連絡バスなども運行するのだろうか。
[いつ開通するのか余計わからなくなってきた]
で、さらに面白いのは、橋の施設手前の森の中へと続く田舎道があり、そこをひっきりなしに大型トラックが行き来している。
小舟で細々と物資を渡しているようなレベルの物量ではなさそうだ。
いったいどんな形になっているのか、興味津々だけれども、なんとなく危険もありそうな気がするので、見に行くことはあきらめる。
[こんなトラックが森の小径から出入りしている]
これにてミャンマーで確認すべきことは完了してしまったが、まだタイへ戻るには少し時間が余っている。
バンのドライバーにミャワディ市内のミャンマー寺院へ連れて行ってもらう。
この寺と言うのも、国境を越えただけで、タイとミャンマーでは大きく異なるようだ。
お寺の基本となるところは、仏塔があったり、仏像があったりと、共通している部分は当然あるけれど、ミャンマーの仏像は、顔面が白塗りで、口紅を差したように赤い唇、つけまつげで、おめめパッチリ。
しかし、タイのような微笑はあまり感じられない。
[タイの仏像も、ミヤンマーの仏像も、日本人には違和感を感じる]
また、仏像の後ろに電飾が付いているものも多かったり、タイの仏像よりもケバケバ強い印象がある。
それに対して、仏塔は大きな仏塔を中心にして、小さな仏塔が取り囲んでいたりして、なんとなく仏教の宇宙空間を演出したような作りで悪くない。
[ミャンマーの仏塔はなかなか感じがイイ]
寺院の中には仏像以外に、一般の人のような姿をしている像もたくさんあるが、これらは私の勝手な想像だけど、ミャンマーの精霊信仰によるナットではないだろうか。
[狛犬かナットか、、]
それと、ミャンマーでも生まれた日の曜日によって、拝む対象の仏像の形が決まっているようなのだけれど、タイとは対象となる仏像も異なっているようだ。
タイのことは、いろいろと調べてきたけれども、車で日帰りできるような距離にありながら、なんとミャンマーに関して知識がないかを、ごく短時間の寺院見学でも感じてしまった。
で、いちばん印象に残ったのは、空に透明感があったこと。
30年以上前、インレー湖の近くで見上げた空も、ここと同じような透明感のある空であった。
タイとは数キロと離れていない場所で、空の色が全く違うなんてことはあり得ないだろうけれど、ずっと眺めていたくなるような空であった。
国境の橋を渡って、ミャンマー側からタイへ戻ることにする。
入る時より簡単だろうと思っていたらば、さにあらず。
ミャンマーの出国手続きでは、ミャンマーに入国するのにビザを持っていないのはおかしいとケチが付いた。
しかも、英語はほんの片言で、こちらが「昨秋からノービザになったから、こうしてビザなしでミャンマーに入っているんだ」と説明しても、なかなか理解してもらえない。
押し問答にもならないが、そのことを理解してもらうのに、10分以上時間がかかった。
その間に、出国審査室の前を、雇ったバンが通過していくのが見えた。
[出入国審査手続きをしているすぐそばを大型トラックが通り抜ける]
なんとかミャンマーの出国スタンプを取り付けて橋を渡る。
タイ側はスムースだろうと思ったら、これもダメ。
審査窓口は一つだけ。
そして、並んでいるのは数人だけなのだが、いずれもミャンマー人。
ちゃんとパスポートなどを所持して、正規の手続きを踏んでいるようだけれど、所持金やタイでの滞在先などの証明を求められたりしてて、やたらとキビシイ。
つまりそれだけ時間がかかる。
ひとりに10分以上はかかっているだろうか、そのうちに「国境通過証」で、スイスイと抜けていったタイ人スタッフから電話が入る。
「まだ入国審査で並んでるから待ってろよ」と伝えたつもりなのに、5分おきに電話をしてくる。
しかも、頭の痛いことに、所持している携帯電話が、まだミャンマー側の電波を拾ってしまうため、すぐ目と鼻の先にいるスタッフからの着信が、国際電話のローミング扱いとなっている。
くだらないことで出費となってしまい面白くない。
[新しい橋になったら、もう歩いては渡れないんだろうな]
結局30分以上かかって、タイへ入国できる。
あとは、空港へ戻って、空港の駐車場に止めてあるマイカーに乗り換え、ふたたび峠を越えてピサヌロークまで運転が待っている。
早朝から、夜まで、まったく疲労困憊で、ピサヌロークのオフィスにもどり、残務整理をしてから帰宅。
日帰りミャンマーは興味深かったけど、疲れた。