6月11日 火曜日
朝は5時に目を覚ます。
6月、夏至も間近の北海道は、夜の明けるのも早いようだ。
さっそく起き出して、今朝も温泉巡り。
まずは鹿の湯本館の大浴場から。
早朝にもかかわらず、若干の先客あり。
ミストサウナもジャグジーも停止したまま。
6時になったら、次は橋を渡って対岸、昨晩も行ったミリオーネへ。
昨晩は夜だったけど、朝の露天風呂は気持ちがイイ。
こちらも若干の先客あり。
[定山渓温泉、月見橋から眺めた豊平川上流]
ミリオーネからの戻り道で「北海道三景之碑」というものが立っていた。
大正時代に小樽新聞と言うのが公募して北海道三景を選定したようなのだけど、定山渓温泉が広い北海道にあまたある景勝地の中のベスト3に入っていたというのもすごい話。
たぶん、当時はまだ開拓時代で、北海道内でも物見遊山で観光客が行く場所など限られていたのだろう。
[この碑が建てられて100年くらいになるのだろう]
宿の入り口近くの土産店前で変な自販機を発見。
ペットボトルや缶入りの飲み物に混ざって、缶入りおでんと缶入りラーメンが並んでいる。
おでんの缶があることは聞いたことがあるけど、ラーメンなんて初めて。
おでんなら缶詰でも違和感ないけど、ラーメンなんて缶の中で伸びたりしないんだろうか?
とても気になる。
値段は300円。
なお、ラーメンの本場サッポロでありながら、売られているのは熊本ラーメンというのもなんかチグハグ。
[自販機で売ってるラーメンはカップラーメンだけではないようだ]
7時になって、朝食バイキング。
昨晩あんなに食べまくったけれど、朝は朝で胃袋が泣きだすくらい色んなものを食べてやろうと思う。
朝食会場は昨晩と同じ。
夕食は二交代制で、座席指定だったけれど、朝食は自由とのこと。
しかし、昨晩と同じ席に着席する。
隣りは台湾からの女性グループのようで、こちらも色々と運んで来ては楽しそうに食べている。
朝食のバイキングも美味しそうなものがたくさんある。
サラダがキャベツの千切りとオニオンスライスくらいしかないのは残念だけど、
湯豆腐、切り干し大根、浅漬け、焼き鮭、きんぴら、コロッケ、納豆。
続いて、バターコーン(冷凍かな)、厚焼き玉子、昆布巻き、ふかしカボチャ、イカの塩辛。
ソーメンもあります。
出汁茶漬けなんてものもある。
カレーも、このカレーは昨晩のキーマ風カレーとは別で、昔のライスカレー風。
そして、「イチロー選手も毎日食べてる朝カレー」などとも書かれてる。
果物はグレープフルーツと冷凍のライチ。
いやはや、朝から盛大に食べたので、今日はランチ抜きでOKだね。
札幌市内への戻りのバスは10時発なので、朝食を終えてもまだ1時間半くらい時間がある。
この時間に、また温泉巡り。
お向かいの定山渓ホテルへ。
昨晩は大浴場が女性用になっていたけれど、この時間は大浴場は男性用に解放されている。
ちょっと古びた大浴場で、傷みも目立つけれど、お湯もイイ感じだし、露天風呂もある。
こちらもサウナとかは停止中で、すでに清掃が始まっているようだ。
さらに、花もみじの展望浴場へ。
展望のある浴場だけれど、下界を眺めるのに、お湯につかったままと言うわけにはいかず、湯から上がるなりして、外をのぞきこまなくてはならない。
温泉も、最近はやりのインフィニティ・プールのように、インフィニティ展望露天風呂なんてあったりしたら人気が出そうな感じがする。
いや、もうあるのだろう。
良いお部屋に泊めてもらったけれど、ほとんど部屋にいることなく、温泉巡りから戻ったら急いで身支度してチェックアウト。
昨日の夕方から、いったい何回温泉に浸かったことだろう。
札幌へ戻りのバスは、来る時より一回り小さいバスで、座席もだいぶ狭かった。
このバスも車内で飛び交っている言葉は韓国語と中国語ばかり。
浴場でも韓国語は随分と耳にしたけれど、中国語はあまり聞かれなかった。
こうしてバスに中国語を話す人たちがたくさん乗っているのに、浴場では声が聞こえなかったのは、温泉に入る習慣がない人たちなのか、それとも普段は大きな声で話しても、浴室では静かになる人たちなのだろうか。
札幌到着後、ゲストハウスへ立寄って、ちょっとメールのチェックなどしてすぐに外へ飛び出す。
昨日は札幌の西へ歩いたので、今日は北へ向かうことにする。
北にはモエレ沼公園と言うのがあるらしいので、そこまで歩いてみることにする。
地図で見ると直線距離で10キロくらいらしい。
まだ正午前だし、2時間半も歩けば着くだろう。
豊平川に沿って歩く。
サイクリングロードになっているようで、歩きやすいが、なんだか鼻がむずむずして、鼻水がしきりと垂れてくる。
天気は晴れているが、少し風も吹いている。
[豊平川沿いのサイクリングロード]
どうやら花粉症アレルギーのようだ。
さわやかな季節で、あちこちでルピナスが咲いている。
このルピナスの花粉にはふた昔以上も前にニュージーランドで泣かされたことがある。
あれは南島だっただろうか、ルピナスの先満ちている山の斜面をリフトに乗っていた時に発症し、鼻水、くしゃみ、涙に、目の痒み、あの時はあまりの辛さに、すぐにでも日本へ逃げ帰りたかった。
そのルピナスに北海道で再会してしまったようだ。
[道端のルピナス、素敵な花なんだけど、花粉に泣く]
JRのガード下をくぐり抜け、そろそろ河川敷を離れて、住宅街の中の道へ進路変更したいのだけど、サイクリングロードと土手とは離れていて、途中が結構ワイルドになっていて歩けそうにない。
かろうじて土手へ上がっても、土手下への道路へ降りる階段とかも見当たらない。
強引に背の高い雑草の生い茂る中をかき分けて、車の走る通りに出る。
その通りも渡って住宅地の中を北へ進む。
住宅地と言っても、個人の住宅はあまり多くなく、集合住宅や物流関係の事務所が多い。
行き交う人はほとんどいない。
平日昼間の住宅地なんてそんなもんなんだろう。
学校は中学校などがある。
制服の学生が歩いてたりする。
今日は火曜日だけど、もう下校時刻なんだろうか。
少年鑑別所があり、刑務所もあり、高い塀に囲まれて中が見えない。
見張りは立っていないけど、監視カメラはいくつも塀の上に取り付けられている。
この刑務所から通りを挟んだ側もやはり住宅地で、戸建ての住宅が並ぶ。
住宅でもアパートでも、庭に灯油のタンクが置かれている。
北海道では灯油とは屋外に置くものらしい。
たぶん、東京で使っている石油ストーブとは別の暖房器具なんだろう。
札幌の街は碁盤の目のような形になるよう道路が整備されているようだけれど、そのためかやたらと交差点が多く、信号がある。
困ったことに押しボタン式信号は、ボタンを押してもなかなか青にならない。
東京ならボタンを押せばすぐに信号が変わって、道を渡れるのに、ここでは2、3分くらい待たされる。
車の往来もそれほど多くなく、ボタンなど押さずに渡ってしまいたい気分である。
家などの建物の密度が薄くなってくると、工事関係の事務所や資材置き場、作業の車を置いた駐車場が多くなってくる。
なんとなく、埼玉県あたりと共通する景観になってくる。
やがて乳製品の大きな工場が見えてきて、川沿いの道に突き当たる。
ダンプカーが行き交う殺風景な道である。
川沿いの道の右手には、残土置き場のようなものが見える。
それもかなりの高さまで積み上げられ、真っ黒な色をしている。
札幌の中心地は、キレイだ綺麗だとはしゃいでいたが、郊外へ出たらばこんなもんかと思っていたのだけれど、この残土の山をよく見たら、残土ではなく「雪」であった。
冬の間に除雪をした雪をこんな街はずれに捨てに来ていたのだろう。
とんでもない量の雪が6月になって、しかも埃をかぶって真っ黒になりながら残っている。
つい先日の北海道は気温が39℃まで上がったというのに、まだこんなに雪があるなんて、いったい冬の間どれほどの雪が捨てられていたんだろう。
[真夏以上の暑さも耐えて、真っ黒になった残雪の山]
モエレ沼公園は綺麗な三角形をした丘を中心とした公園になっていた。
湿原地帯にあると案内にあったので、湿原を木道かなんかで歩けるようになっているのかと思ったけれど、運動場と美術館がある普通の公園であった。
[モエレ沼公園]
乗用芝刈り機が野原を回って雑草を刈っている。
雑草と言っても、可憐な花を咲かせており、東京モノの目にはお花畑で無残にお花を刈り取っているように見える。
関東では見かけない薄紫色のシロツメクサやマーガレットなどがどんどん刈られ、それまで野の花でパステル画のように柔らかな色合いだった場所がみるみる緑一色に変わっていく。
この芝刈り機から吐き出される埃でも花粉アレルギーが過剰反応してしまう。
[もうすぐ芝刈り機で刈り取られる運命の野花たち]
綺麗な三角形をした丘へはテニスコートの裏から登れるように道が付いていた。
他にも登っている人がいるが、行き絶え絶えと言った感じで、難儀そうに登っていた。
高さ自体が大したことのない丘なので、登り始めて5分もかからずに頂上へ。
頂上は、遮るものが何もないので、かなり強い風が吹いていた。
見晴らしは良いし、反対側から続々と団体観光客が登ってくる。
[モエレ沼公園の丘の上から]
さて、そろそろ丘を下って、公園内の美術館でも見学してみようかと、斜面を下り始めたところで携帯電話のベルが鳴る。
ピサヌロークのスタッフからで、仕事上でのトラブルで不都合が起きているらしい。
新人で、社会経験もなく、どう処理すべきかも考えられないくらいパニックになっている。
その対応のために、30分くらい時間がかかってしまう。
このトラブルで、イライラが募って、なんだか美術館など見学する気分ではなくなってしまった。
ただ、美術館へ行けばWiFiが使えて、カバンに入っているノートPCから、より詳細な指示をスタッフに送れると思ったのだけれど、美術館のロビーではWiFiが提供されていないようだった。
やっばり外国人観光客の多い札幌の中心部じゃないとWiFiは飛んでないらしい。
美術館でWiFiが使えずさらにイライラが増してしまい、そのままモエレ沼公園を出て、札幌市内へ向かって歩き出す。
公園からダンプカーの行き交う川沿いの道へ出てすぐに、サッポロさとらんどとか言う施設があった。
大変に広大な施設で、牛や羊もいるような観光牧場のようにも見える。
ここにも立派なビジターセンターがあったけれど利用可能なWiFiは飛んでいなかった。
ヒースやラベンダーの丘とかがあるように園内の案内図には書かれていたけれど、花はシーズンではないのか咲いていなかった。
その代わり、バーベキューなどの施設にはたくさんのグループが来ていた。
観光牧場にバーベキューは付き物だと思うけど、さっきまで可愛いと写真を撮ったり、撫でてやっていた羊や子牛を、同じ敷地内でバーベキューにして食べてしまうのだから、なんだか随分と残酷な感じもする。
[観光牧場のようなサッポロさとらんど]
札幌市内までの帰り道、ほとんど民家のないようなところをしばらく歩き続け、ようやく住宅地のようなところへ入る。
住宅の庭にはサクランボが実っているところも散見された。
サクラを庭木に植えている住宅は多いけど、サクランボがこんなに見事に実を結んでいるものは見たことがない。
普通のサクラとサクランボのサクラとは種類が違うのかもしれない。
[住宅の庭に実ったサクランボ、つまんでみたい衝動が起きた]
住宅地を歩いていると、公園も多い。
そうした公園に「キツネにエサを与えるな」との立て札があったりする。
こんな民家が多いところにもキツネが出没するとは知らなかった。
キツネを見てみたいような気もする。
[東京では、ネコやハトにエサやるなの立て札はあるけど、キツネはないだろう]
ようやく、JRの苗穂駅近くまでやってくる。
この近くにサッポロビールの工場があり見学コースもあって観光名所になっているらしい。
ただ案内には「試飲は有料」とも書かれている。
以前に見学したことのあるワイナリーやウイスキー工場では無料の試飲があったように記憶するが、とにかく試飲も有料となっている。
見学できるのは正確には工場ではなかった。
昔の工場を改装して、ビールの資料館になっていた。
サッポロビールの創成期からのストーリーが説明され、麦芽を発行させる巨大な釜や、ろ過する道具なども展示されているが、ビールの製造工程の見学はなかった。
古い宣伝ポスターが貼り出されていたり、それなりに見ごたえのある資料館となっており、自由見学は無料だけれど、ガイド付きは有料ともなっていた。
来場者は韓国人観光客を中心に、アジアからの観光客が、日本人見学者より多いようだった。
[ビール工場の赤煉瓦はビールのサッポロビールの資料館になっていた]
サッポロビールの隣には大きなショッピングモールがあり、こちらは日本人ばかり。
このショッピングモール内にはWiFiが飛んでいて、やっとネット接続ができた。
PCを取り出し、資料を作ってピサヌロークへ送信する。
ちょうど夕方の買い物時間になっていたこともあり、スーパーは随分とにぎわっていた。
総菜売り場を覗いたら、お寿司の詰め合わせなどがあった。
こんなもんでも買って、夕食は簡単に済ませようかとも思ったけれど、せっかく札幌まで来てスーパーの総菜売り場で買った寿司と言うのも残念な気がしたので、そのまま何も買わずにショッピングモールを裏口から出る。
ゲストハウスに戻ったら、もう7時近くになっていた。
今晩のベッドを確認させてもらい、夕食を食べに出かける。
さっきスーパーでお寿司を見たので、お寿司を食べたいと思っている。
ススキの近くの小さな寿司屋に入って、いくつか握ってもらう。
食べ終わってから考えると、マグロやイカやアジなど、北海道らしいネタを何も注文せずであった。
それに稲荷寿司なんかも食べてしまっていた。
それでもサッポロビールは3日目にしてようやく飲むことができた。
お寿司も食べたけれど、北海道で食べたいものは他にもあって、ホッケは食べておきたかった。
しかし、居酒屋に一人で入って、焼いたホッケでお酒を飲むには、ちょっと気が引けるので、こんどはスーパーの総菜コーナーでホッケを買って、ゲストハウスへ持ち帰り、ウイスキーをチビチビやりながら食べることにする。
大きなホッケが食べたかったけれど、売っていたのは小ぶりのモノばかりであった。
今夜の同室者はタイ人の姉弟であった。
大阪からスタートして北海道まで観光してきたそうで、去年も日本へ遊びに来たそうな。
タイではチャンタブリの出身とのこと。
タイの若い人も毎年日本へ観光旅行来れるなんて、豊かになったものだ。
もっとも、タイと日本の物価の差も小さくなり、航空運賃も安くなっているからできることなのかもしれない。
[随分と歩いたもんだ]
***続く***