10月29日 月曜日
ゲストハウス雪結での一晩は快適であったけれど、窓からの景色と言うものは残念ながら何もない。
そしていつの間に朝になっていたのかもよくわからない。
でも、目が覚めたらば朝になっていた。
そして雨模様だった。
うれしいことにゲストハウスでは朝食用にパンが用意されていた。
バターもジャムもあり、トースターも使える。
コーヒーもある。
パンは地元のパン屋が作っているパンのようで、もっちりしていて美味しかった。
厚切りのトーストを三枚もいただいてしまった。
膝が痛いという妻を部屋に残して、朝の散策に出かける。
[ゲストハウスの立地はビルとビルに挟まれた狭い空間]
まだ雨が降り続いており、時折強い風も吹きつけてくる。
散歩としてはあんまりいい条件ではない。
そんな天気の中、散歩で向かった先はまず豊平川である。
秋になると豊平川にも鮭が遡上してくるという。
鮭の遡上と言うのをこの目で見てみたいと思っていた。
豊平川までは歩いてすぐの距離であったが、川の水量は多く、濁流の様相で、鮭が遡上してくる影などまるで見当違いのようだ。
それでも、川沿いの歩道を隣の橋があるところまで歩いてみる。
雨風はだいぶ強くなり、折り畳みの傘が壊れてしまいそうなほどだ。
[雨降りの中、豊平川沿いを歩く、サケの遡上などどうして見れるでしょう]
狸小路にある業務スーパーに立ち寄って、乾燥ワカメと同じく乾燥ヒジキを買う。
わざわざ北海道まで来て買うものではないかもしれないが、私にとっては、北海道だろうが、東京だろうが、日本で買っておきたい常備食材である。
ドンキホーテも覗いてみるが、入ってすぐのところに、北海道土産の特設コーナーが作られ、中国語と韓国語が飛び交っている。
かつて、中国語圏からの訪日ツアーで立ち寄るのは、東池袋の訪日客専門の免税店と看板を出した土産物店で、薬や乾物などを売っていたようだが、ドンキホーテがこうして観光客を集めるようになってしまうと、商売しずらくなってきていることだろう。
[ゲストハウス近くにはお寺があり、モミジとイチョウが色づいていた]
10時半に宿へ戻る。
チェックアウトは11時。
急いで荷造りをして、大通公園へ向かって歩き出す。
二条市場で売られているカニを見て、こんなに大きなカニは見たことがないと妻は言っていた。
そして、「北海道へ来たのだからカニ食べなくちゃ」とも言っている。
[二条市場から創成川に出るころには天気が回復してきた]
雨は上がって、青空が広がってきた。
大通公園も木々の紅葉と落ち葉で秋らしい。
ここもやっぱりたくさんの観光客。
[さっきまでの天気が嘘のように明るくなった。]
ひだまりの暖かそうなベンチに腰掛ける。
膝が痛いという妻は、もう歩けないとのこと。
昼から向かう定山渓温泉へのバスは大通公園沿いから出発するので、あと2時間ほどベンチで日向ぼっこと言うことになりそう。
しかし、私としては、日向ぼっこよりもせっかく晴れて来たので歩き回りたい。
ベンチに妻一人を残して散歩に出かける。
[ここに座って留守番してもらう]
どこかで北の幸が詰まった弁当でも買って、ベンチで昼ごはんにするのも悪くなさそうだと思い、弁当屋を探しながら歩く。
道庁前にも立ち寄る。
ここも観光客がいっぱい。
ウエディングドレスを着て記念写真を撮っている。
プロのカメラマンやスタッフが何人もいる。
タイや台湾ではこうして結婚式アルバムのための撮影隊はよく見るが、日本でも最近はこんなのがブームになっているのだろうか?
それとも、外国からわざわざ札幌までアルバム撮影のために乗り込んできているのだろうか?
[朝方の雨を含んで、色づいた落ち葉がしっとりして、より鮮やかに見える]
そんな光景を見ていたら、またまたポツポツと雨が降り始めて来た。
妻は公園のベンチに荷物と一緒に残したままである。
急いで戻らなくてはと、小走りで駆け出すが、ブロックごとに信号につかまってしまう。
ポツポツはやがて本降りになってしまった。
[雨さえ降りださなければ、もう少し歩き回りたかった]
ベンチには誰も座っていなかった。
あぁ、面倒なことになった。
周囲を見回しても雨宿りできそうなところは、喫煙者のためのスモーキングルームくらい。
そんなところに入っているわけないし、やれやれと歩いていたら、「おとーさーん」と呼ぶ声がする。
声の方を見たら、地下道の入り口に妻が立っていた。
昼食は地下街で居酒屋ランチとする。
魚力という居酒屋で、ランチの定食類が1,000円以内とお手頃。
掘りごたつ式のテーブルに案内されて、私はホッケ定食。妻は焼きサバの定食とする。
ホッケが大きい。
バンコクのオフィス近くの安居酒屋でホッケを頼んだら、小鯵の干物みたいなものが出てきたことがあるが、やはりホッケの本場である北海道だけあって、お盆からはみ出すくらい大きなホッケで、脂ものっていてとても美味しい。
サバも半身だけれど、新鮮でおいしく、焼きサバだけでなく刺身の3点盛まで付いていた。
札幌の居酒屋、しかもチェーン店でないところが良かったのかもしれない。
雨が降ったりやんだりする中、ほぼ満員の乗客を乗せて定山渓ビューホテル行きのバスは走り出した。
平日、月曜日と言うのに、今日はバスが2台出るとも言っていたので、地震で離れたお客様がだいぶ戻っているのだろう。
札幌市内から定山渓まではたいした距離ではないけれど、市街地の中をしばらく走る際に、やはり信号にしばしば引っかかる。
道はおおむね豊平川沿いのようだ。
午後3時前にはホテルに到着。
今回は少しだけ奮発して、新館の部屋をとってある。
夕食もちょっとだけ豪華なプレミアムダイニング。
部屋は谷に面した広い洋間で、コーヒーメーカーも付いている。
ただし、部屋の中が少しタバコ臭いので、窓と廊下のドアを開けて空気を入れ替える。
窓は安全のためか、あまり大きく開かない。
[6階の部屋だけど、眺めは悪くない]
部屋でのんびりすることもなく、小雨が降ったりする中を散歩に出かける。
温泉街から河童の公園を抜けて、赤い橋を渡る。
公園内や橋周辺でも中国語や韓国語を話す観光客を何人も見かける。
沢に沿った歩道では、私の前を広東語のような中国南部のイントネーションが飛び交う家族連れが歩いていた。
香港からの観光客としては少し野暮ったいので、大陸の人かもしれない。
[南の国から来た観光客の目には感動的な配色と映るんだろうな]
赤い橋からは森の中の土の道を歩いて、日帰り温泉施設の前まで出る。
ここから国道を使ってホテルまで戻る。
国道は拡幅工事をしていた。
小学校の中に郷土資料館があって、昔の定山渓電鉄の資料も展示していると聞いていたので、立ち寄ってみたい気もしたが、拡幅工事で足場が悪く、次回また来た時まで取っておくことにする。
次回とは、来年の6月にまた来ようと思って、先日飛行機の切符を手配したばかりである。
[雨が降っていなければ、もっと気持ちよさそうなのに]
最上階の温泉に入る。
屋上には露天風呂もあるが、時間を区切って男女入れ替え制。
夕方から夕食時までが男性用となっている。
先客が数人入っていて、ゴルフ仲間で来ているらしい。
ずっとゴルフの話をしていた。
以前来た時と比べて、湯の温度が少し低くなっているような感じがした。
気温の影響だろうか。
お湯はおとなしく、無色無臭。
安心して入っていられるけど、北投温泉の瀧之湯や月光荘のような迫力のあるお湯でないのが少し面白くない。
脱衣場には「浴場へは靴を脱ぐこと」と張り紙がしてあった。
中国系のお客さんも多いようだが、このルールは見たところ守られているようだ。
北投温泉の熱海ホテルや韓国と山東省を結ぶフェリーの浴場のようなことにはなっていなかった。
日本に来るには、それなりにマナーを身につけているようだ。
風呂から上がって、夕食まではまだ30分ほどある。
湯上りなのでビールを飲みたいが、夕食のときに飲むべきか、今飲んでしまうか迷ってしまう。
妻が「今飲んだら、買ってあげるよ」というので、喜んでエレベーター横の自販機に向かう。
ビールの自販機にはアサヒの銘柄しかなかった。
北海道に来ているのだから、サッポロビールかなとも思うけれど、今目の前にシルバーグレーのスーパードライを見てしまえば、サッポロでもアサヒでも何でもよくなってしまう。
コインを投入してもらい、ロング缶のボタンを押す。ゴロゴロ、ドタンという自販機から缶ビールが出てくる音を久しぶりに耳にした。
タイにいると、こうして自販機でビールを買うなんてことがまずないものだから。
夕食はプレミアムダイニングという名称で、一般よりちょっと豪華らしい。
確かに座席の配置もゆったりしているし、料理のディスプレーもきれいだが、一般のバイキング会場は巨大なガラス窓から、夕暮れの景色を眺められるのに、こちらは窓のない宴会場のような部屋である。
ズワイガニもあるし、ビーフシチューもあり、ミニイクラ丼など料理の内容も悪くない。
良くないかなと思ったのは、握りずしで、サシミの部分がやたらと薄い。
ちょうど小僧寿しみたいな握りだったことと、ステーキを切り分けてもらったら、脂身だけだったこと。
フルーツがグレープフルーツと冷凍のライチというのはどうかと思う。
でも、ほとんどのものがおいしかった。
うちのタイ人スタッフたちにも食べさせてあげたい。
デザートにはソフトクリームもあって、自分でくるくるとガラスの容器に受け取ろうとしたが、上手く三角形にならなかった。
息子が子供のころ、バイキングとかでアイスクリームがあると、料理より先にアイスコーナーへ走ってしまい、何度叱っても改まらなかったが、こうして北海道でソフトクリームを食べてみると、なるほどアイスクリームというのはおいしいものだと再確認した。
夕食後にも温泉に浸かる。
こんどは、露天風呂が女性に開放されている時間なので、本館地下の大浴場に向かう。
大浴場への連絡通路は大きな温泉プールの中を抜けており、プールで遊んでいる人もいる。
うーむ、この季節だから考えもしなかったけれど、水着を持ってくるべきだった。
本館の大浴場には様々な種類のお風呂もあったが、成分表などを見ると、ほとんどの浴槽の湯が循環ろ過式で、源泉かけ流しというわけではないようだ。
また、「湯温調整中」との札をかけて、使えない施設もいくつかあった。
お湯の温度は、だいたいどれも少しぬるめの感じだった。
また、風呂から上がったら何か飲みたくなったけれど、満腹なのでもうビールは飲みたくない。
ホテルからちょっと歩いてコンビニでウイスキーのミニボトルを買ってくる。
ジョニ黒とすこし奮発。
[定山渓ビューは温泉の入り口に建つ立派なホテルです]
ストレートでクイクイとやりながら、妻の足裏のマッサージを30分ほどしてあげる。
素人のマッサージだから、健康に良いとかなさそうだけれど、まぐれでも、こうしたマッサージで妻の膝の痛みが軽くなってくれたらという思いはある。
それに、もう二度と妻とこうして遠くまで旅行することなどなさそうだ。
寝る前にもう一度だけ、屋上の露天風呂に行く。
夜遅い時間は再び男性に開放されている。
雨は降っていないけれど、星もほとんど見えないし、湯につかっていても、頭から寒さを感じてしまう。
つづく