4月10日 月曜日
夜明けととともに起き出してジョギングに出かける。
サムイ島は起伏の多い島で、島を一周する幹線道路もかなり急な坂道が多い。
ふだんバンコクで平坦な道ばかり走っているので、坂道になるとすぐに息切れしてしまう。
心臓も「もう限界」と悲鳴を上げるが、委細構わず強引に走り続ける。
心臓は「ムリ、ムリ」と叫び、足の筋肉たちも共同戦線を張って、「そこらで休みませんか」と囁きかける。
昔と違い、サムイ島も車が増えた。
こんな早朝から車やバイクがたくさん行きかう。
以前なら、と言っても30年も前だけれど、島で走る車と言ったらソンテウと言う乗り合いピックアップトラックくらいだった。
当時は今のようなフェリーもなくて、こんなトラックをどうやって島まで運び込んだのだろうかと不思議に思っていた、。
当時からバイクはよく走っていた。
観光客もレンタルでよく利用していた。
ガソリンはタイ・ウイスキーの空瓶に入れたものが道端で売られていた。
これは現在も島のあちこちで見かけるが、ちゃんとしたガソリンスタンドも今はある。
[サムイ島の日の出]
走っているうちに日の出を迎えた。
もう少し眺望の良いところで日の出を拝みたかったが、この道路少しばかり海岸から離れている。
さらに、海岸はどこも「ここはプライベートビーチ、私有地だから入るなよ」と威嚇するように看板が立っている。
看板だけでなく、鉄条網で囲われてたりもする。
タイの海浜観光地は大体どこへ行ってもこんな感じになってしまっている。
プライベートビーチなんて言ったって、ビーチのコマ切れみたいなもので、たとえプライベートでないとしても、広々と長く伸びるビーチの方が価値があると思う。
道端の広告看板にヘンテコリンなマッサージの看板があちこちにあるのを発見。
日本語で「ヌルマッサージ」と書かれており、日本語だけでなく英語も、中国語も、タイ語も、ハングルまで添えられている。
しかし、ヌルの意味がよくわからない。
英語も、タイ語も、ハングルまで「日本式Nuru」となっている。
そして目尻の切れ上がった東洋系の女性が小さな日傘をさして振り返っている絵が付いている。
服装は着物風。
で、その着物がツンツルテン、いやツンツルテンなんて甘いものではなく超ミニ。
実態は何かわからないけど、なんだかいかがわしいマッサージのような印象を受ける。
この看板がやたらとたくさん立てられている。
いい加減走って、ラマイビーチの入り口で引き返す。
ホテルの部屋に戻って、バルコニーのお風呂に飛び込む。
昨晩もここでお風呂をしたのだが、朝の光の中での入浴は、また格別。
さらに差し入れ物モノのスパークリングワインもいただく。
これは一世一代の贅沢な時間を過ごしているような気分になる。
[バルコニーの大きな露天風呂でスパークリングワインを飲みながらの入浴]
朝食会場もやはり中国からの宿泊客が多い。
朝食はバイキングなのだが、中国人好みのラインナップがそろっている。
タイの寸詰まりのパートンコーではなく、物差しのように長い油条、茶葉玉子など、、
いつもなら中国風の食材を好んで選ぶところだけれど、なんだか食傷気味。
それに中国式に長くて大きい油条も、本場のものと大違いで、なんだかパートンコーを長くしただけのような食感。
それでも洋風のものなど、美味しそうなものはたくさんあり、朝から食べ過ぎてしまう。
[いつもなら茶葉玉子を食べたくなるところだけど、中国的なものに食傷ぎみなのでオムレツ注文]
海で泳ぐ、プールで泳ぐ、デッキチェアで昼寝する、文庫本を読む。
昼食の代わりに一昨日ドライブ途中で買い込んだマンゴーを食べる。
せっかく車でサムイ島まで来ているのにホテルから一歩も外へ出ようとしない。
海で泳ぐと岩礁の周りに小魚がいる。
小魚と言ってもイワシくらいのからアジくらいのまでいる。
いままで何度となくサムイの海で泳いできていたけど、魚たちにあったのは初めての気がする。
たぶん、今まではゴーグルを着けずに泳いでいたので海の中が見えなかっただろう。
小魚を追いかけて泳ぐが、追いつかない。
[このデッキチェアで一日の大半を過ごす]
午後遅く、部屋に戻ってみると昨晩差し入れにもらったケーキが消え失せている。
まだほとんど口をつけておらず、テーブルに置いたままにしておいたのだが、どうやらハウスキーピングが捨ててしまったらしい。
うーむ、残念と言うか、勝手に処分しないでほしいというか、こんなのってありなのだろうか。
いや、テーブルの食べかけにアリがたかってはいけないと気を利かせてくれたのだろうか。
[ホテルには二つのプール、下のプールは真水で、上のプールは塩水]
夕刻になり、妻が「日焼けが痛い」と言う。
見れば火傷かと思うほどに皮膚が赤紫色に変色している。
私もなんどか日に焼け過ぎて痛い目にあっているので、なるべく早めに対処してやりたいと思い、サムイ島内にあるバンコク病院へ連れていく。
もともと日焼けであるから、これと言った治療法があるわけではないだろうけど、診察まで時間がかかった割に診察結果は「日焼け」。
処方は「アロエクリームの塗りこみ」だけ。
他にどうしろと言えるものでもないけれど、なんだかそれだけっていった感じだった。
現代医学をもってしても、日焼けが簡単に治せる処方はまだないらしい。
夕食はホテル内のレストランで食べる。
タイ・ヘリテージ・ブッフェディナーと書かれており、ソフトドリンクも飲み放題とのこと。
しかし、内容としては期待外れでもあった。
タイ各地の料理を何種類ずつか並べただけで、品数が全然少ない。
それに、東北部や北部の料理もあるにはあるが、主食であるはずのモチ米はない。
味付けもよく言えば外国人向けにマイルド、実態はピンボケ。
それだからか、せっかくのブッフェであっても、ブッフェを食べている人があんまりいない。
それとソフトドリンクの飲み放題も無意味で、あるものはコーラとファンタなどの炭酸飲料のみ。
私たちは水を注文。
[椰子の葉陰から月光]
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4月11日 火曜日
また朝のジョギングに出かける。
今日はまた長距離のドライブがあり、あまりバテてしまってもいけないと、昨日より少しジョギングで走る距離を縮める。
途中に展望台のような場所があり、波打ち際の岩場まで階段もある。
[展望台から波打ち際近くまで階段を下る]
その岩場へ降りたらば、カニがたくさんいた。
カニは用心深い性格のようで、ちょっとでも近づくとすぐに岩の割れ目などに隠れこんでしまう。
波しぶきを浴びても全然動じないくせに、人の足音には敏感なようだ。
[岩の上でカニが泡を吹いてる]
昨日と同じく朝食をすまし、出発までの間しばし海で泳いでみる。
波打ち際には、ゴミも多いし、プラスチックやガラスの破片なんかもあって、歩くのはあまり気持ちよくない。
なるべく沖の方へ出て、泳いだり、プカプカと浮かんでたりする。
サムイ島も開発と言う名のもとに、俗化してしまったし、私の思い出の中にあった美しかった島とは別の島になってしまったようだ。
またいつか来ることもあるかもしれないけど、もう思い出を手繰り寄せるようにして訪れることはやめた方が良さそうだ。
[静かな朝のビーチ]
10時前にチェックアウトをして港へ向かう。
途中、小雨が降ったりする。
30分ほどで港に到着。
しかし、私はフェリーの出発時刻を勘違いしていたようだ。
12時出港だと思っていたけれど、私が予約していたのは13時の便であった。
窓口に、変更を頼んでみたけれど、まるで相手にしてもらえなかった。
しかたなく、待合室のベンチに座って文庫本を読む。
外は雨が降ったり、止んだり。
[フェリーにはめいっぱい車を乗せる]
帰りのフェリーは「りつりん丸」ではなかった。
どこかの中古船なのだろうけど、どこにも日本語の表示はないし、船の程度も悪い。
座席も中古のバスから外したリサイクル品のようだ。
そして、ちっともエアコンが効いていない。
蒸し暑い。
[空は青く、海も青いが、少し緑がかっている、航跡は白く光る]
本土側のドンサク港には2時半過ぎに到着。
ここから今晩の宿泊地プラチュアップキリカンまでは400キロ以上ある。
やっぱり、もう一便早いフェリーで上陸しておきたかった。
スラタニ市内を迂回するバイパスで道路工事をしていて、ちょっと渋滞気味。
それに信号待ちも多かった。
しかし、そのあとは渋滞することもなく、信号もほとんどないので、普段よりスピードを出して、国道4号線を北上する。
ヤシ畑、ゴム林の続くハイウェイは単調で、ポットに詰めてきたコーヒーをすすりながら走る。
チュンポンを過ぎると太陽がミャンマー国境の山へ沈んでいき、あとは夜道。
プラチュアップキリカンに到着したのは夜8時を回ってしまっていた。
今夜の宿は、ハートトーンホテルと言う海に面した古い大きなホテル。
もう、ホテルと言うより旅社と言った感じの宿であったが、部屋はオーシャンフロント。
目の前に夜の海が広がっているし、海の上には漁火を灯した漁船が並んでいる。
[ホテルの部屋から月夜に広がる海が見える]
夕食にはお気に入りのイタリア料理屋へ行きピザとグリーンサラダを食べる。
ピザはクリスピーで美味しいのだが、グリーンサラダはずばりグリーンサラダで、大きな皿に新鮮野菜が山盛り。
そして、ドレッシングなんてかかっていない。
タイはサラダにやたらとドレッシングをかけてしまうし、そのドレッシングは決まってやたらと甘ったるく、サラダを食べてもすっきりしない。
が、ここのサラダはドレッシングなんてそもそも付いていない。
サラダを小皿にとりわけ、オリーブオイルとワインビネガーを適当に振りかけるだけ。
これが美味しい。
ピザとの相性もいい。
ビールもうまい。
[日焼け痕が痛々しいが、ピザは美味い]
つづく