8月22日 土曜日
週末の2日間、仕事が入らず、休みとなった。
じっとしているのももったいないけど、お金を使うのはもっともったいない。
あまりお金を使わずに、2日間を過ごす方法を考えた。
「そうだチェンマイへ行こう」、それも鈍行の三等車に乗っていこう。
ホテルも個室が取れる安ホテルをさがして、374バーツでネット予約。
朝7時に下宿先をでて、朝市で餡饅と豆乳を買う。
先日も同じ朝市で餡饅を買おうとしたら、ちょっと時間が遅くなって餡饅は売り切れていた。
今回はまだ朝早いので、売り切れの心配はなかったけれど、先客が大量に買い占めて、私の分がなくなるのではないかとヒヤヒヤした。
でも、無事にゲット。
15バーツ也。
[この餡饅が素朴ながらもやたらと美味しいんです]
続いて駅近くにある別の朝市へ。
ここではパートンコーという中国風揚げパンを買う。
ここのパートンコーも人気が高いらしく、行列ができている。
買う人も、一度にたくさん買い込むので、なかなか私の順番が回ってこない。
列車の出発時刻は07:29だから、あんまり時間がなくてハラハラする。
諦めようかと思ったところでやっと私の順番になり、パートンコーを10バーツ分(5個)購入。
そのまま駅へと走る。
[ピサヌロークからチェンマイまでの切符]
ピサヌロークからチェンマイまでの運賃は65バーツと大変に安い。
鈍行なので所要時間は7時間以上かかるけれど、バスで行っても所要時間に大差はないだろう。
距離にすると360kmほど。
ホームには同じ列車を待つ人がたくさんいる。
ちゃんと席に座れるかドキドキしながら3両編成のディーゼルカーに乗り込む。
[3両編成の鈍行]
ピサヌロークで降りる人も多かったので、無事に席を見つけることができた。
しかし、シートは硬いプラスチック製。
クッションなどないので、座布団を持ってくるべきだった。
以前、ピサヌロークからバンコクまで鈍行に乗って行ったことがある。
あの時は鈍行でも2等車だったので、リクライニングシートだったから、時間がかかるのとエアコンがないだけで比較的快適な移動だった。
今回は、同じ鈍行でも3等車、硬いプラスチックのシート。
さらに乗車中は常にマスクの着用を求められる。
チェンマイ行きの鈍行は、1日1往復があるだけ。
チェンマイまでいくつ駅があるか知らないけれど、停車する駅を一つずつ写真に撮ってみるのも面白いかと思って、写真を撮り始める。
[大きな建物はトップランドホテル]
最初に止まった駅はバーンテンナームという駅
ピサヌロークから4.5kmとある。
次は6.2km先のバーントゥーム駅。
[バーンテンナーム駅]
バーントゥームの駅は田んぼの真ん中にあり、稲が伸び始めて青々としている。
今年は雨が少なくて、生育が例年よりも遅かったようだ。
この辺りでは、田植えをせずに直播きのところが多い。
[バーントゥーム駅]
さらに5.3km先がクウェーノーイという駅。
ピサヌロークは昔の名前をソーン・クウェーと言ったそうで、それはクウェー・ヤイとクウェー・ノーイという2つの川があったからだそうで、クウェー・ヤイは現在のナーン川。
現在、これら2つの川はピサヌロークのずっと北の方で合流しているけれど、むかしはピサヌローク市内で合流していたのかもしれない。
[クウェーノーイ駅]
そしてポンピラーム駅は、ピサヌロークを出てから最初の町らしい駅で、乗り降りする人が何人かいた。
クウェー・ノーイから9.2km。
[ポンピラーム駅]
8.7km走ってノーントム。
[ノーントゥム駅]
9.5kmでバーンブン。
[バーンブン駅]
4.6kmでバーンコーン。
[バーンコーン駅]
久々の町に入ってピチャイ駅。
ピチャイは18世紀にミャンマーと戦った英雄の名前から来ていてるのでしょう。
ピチャイは猛将として知られましたが、トンブリ王タークシンが臣下だったチャクリーに処刑され、チャクリーが王に即位した際に、「二君に仕えず」とチャクリーへの忠誠を拒否したため、処刑されています。
転身がお家芸のような風土にあって、潔さを備えた武将だったようです。
[ピチャイ駅]
だいぶ雨も降り始めてきました。
ピチャイを出て、雨の中6.4km進んで、ライオイという小さな駅に到着。
ライオイとは、サトウキビ畑という意味ですが、駅の周りはサトウキビではなく、一面のトウモロコシ畑です。
トウモロコシの収穫が終わったら、次はサトウキビでも栽培するのでしょうか?
[ライオイ駅]
4.3kmでバーンダーラー駅に到着。
ここからはサワンカロークへの支線が分岐しています。
一日一本の列車が走っていたのですが、どういう関係かわかりませんが、現在は新型コロナウイルス対策で運休しているのだとか。
[バーンダーラー駅]
私が座っている座席は、船で行ったら左舷側で、これまでずっと私の座っている側にホームや駅舎があったけれど、このバーンダーラー駅からは駅舎が反対側に移ってしまった。
これまで駅ごとに窓から写真を撮っていたけれど、これからは駅の写真を撮ろうとすると、席を移動しなくてはならない。
駅ごとに車内をウロウロとして駅の写真を撮るほどの意味もないと思い、もう駅の写真はやめることにする。
ウータラディットを過ぎて、次のシラアットに到着。
しばらく停車して動き出したかと思ったらバックし始めた。
どこへ行くつもりかと思ったら、燃料の補給らしい。
燃料は後ろから一両ずつ入れていくので、全部で3回入れることになる。
燃料計のメーターを見ていたら100リットルずつ入れていた。
朝出発する時に入れずに途中で入れるのはなぜだろう。
それとも、もう朝入れた分は使い切ったのだろうか?
[燃料補給]
シラアットを過ぎてしばらくすると山の中に入っていく。
小雨にけぶった山里が、美しい。
なんだか昔話の世界に出てくるような景色で、タイではないみたいな気がする。
絵が描けるのなら水彩画でスケッチしたいところだけど、絵心はないし、車窓の景色はどんどんと流れて、やがてトンネルに入った。
[懐かしさを感じる風景です]
出発してから2時間以上が経過して、硬いプラスチックのシートに座っているのも限界に達した。
これ以上座り続けるのは無理かもと思いながら、立ち上がって通路を行き来していたら、すぐ後ろの車両にはシートにクッションが付いているのを発見。
すぐに後ろの車両へと引っ越しする。
[硬いプラスチックのシート もう限界]
後ろの車両には、ネコをカゴにいれて旅している男性が乗っていた。
カゴの網目から中を覗くとブチのネコがいる。
それに仔猫も何匹かいる。
親子なのだろう。
母ネコは、緊張しているのか私が覗いたら、最初威嚇をしてフーフー言っていた。
[私もネコと旅がしたい]
通路側の後ろ向きシートで、軟らかくはないけれどクッションがあるシートなので、もう尻の痛さは感じない。
これならリタイヤ(途中下車)せずにチェンマイまで行けそうだ。
クッションのある車両と無い車両で、乗車率は変わらないようだけど、地元の人は硬い椅子でも尻が痛くならないのだろうか?
デンチャイを過ぎて、右側に大きな川が近づいてきた。
ここから下ってシーサッチャナライやスコータイ(新市街)の方へ流れていくヨム川らしいが、とんでもなく増水している。
濁流は木も畑も呑み込み、水面にはいくつものコブを作りながら線路と並行して流れていく。
スコータイでいつも見ているヨム川とは全く別の川のような水量だ。
[濁流となったヨム川]
ケーンルアンという駅では、駅舎のすぐ後ろで怒涛が渦巻いている。
ここで上り列車と交換があり、随分と長く停車する。
ケーンルアンとは「大きな瀬」という意味だと思うけれど、今の状態は瀬などと言う情緒とはかけ離れた、災害級の激流となっている。
この駅だって、いつ川の中に呑み込まれるか分かったものではない。
[ケーンルアン駅で遅れてきた上り列車と交換]
お昼の時間になっていたので、通路を行き交う売り子から紙包に入ったバミーを買う。
バミーは中華麺で、ラーメンのようなものだけれど、買ったものは汁なし。
和え麺みたいなもので、マナオを絞り、唐辛子入りの酢をまぶしていただく。
タイの人は砂糖も振りかけるが、私は遠慮しておく。
薄切りのチャーシューとルークチンと呼ばれる肉団子が入っていた。
不味くはないけど、唐辛子入りの酢だけでは、今ひとつ味に深みがでない。
ちょっと濃い口のタレでも付けてほしいところだ。
これは20バーツ也。
[一口サイズのバミー]
これだけではまだ十分にランチを食べたという気になれず、何かもう少し食べたいと思って通りかかる売り子のカゴを覗くが、お菓子やゆで卵くらいしかない。
私が覗くと売り子は買ってくれるものかと思って期待をさせてしまう。
それなので、ちらっとカゴの中を覗いては、目を伏せる。
[車内販売のカゴの中]
久しぶりで大きな街、ランパーンに到着。
駅舎もホームも堂々としている。
下車した乗客も健康チェックを受けさせられている。
ネコを連れた男性もランパーンで下車していった。
[緑のカゴにネコの親子が入っている]
ランパーンを過ぎて、あとひとつ峠を越せばチェンマイ。
ランパーンから乗り込んできたのか、物売りの顔ぶれが変わった。
チェンマイの郷土料理ともいうべきサイウア(チェンマイ・ソーセージ)ともち米を売りに来た。
サイウアは好物である。
ハーブの効いた独特のクセがあるけれど、食べつけると旨い。
もち米との相性もいいけれど、タイ・ウイスキーとの相性がもっと良い。
しかし、車内での飲酒は禁止されている。
[サイウアや鶏の香り揚げ]
サイウアは炭火で炙って、まわりがチリチリと焦げかかっているくらいのが美味しいと思っているが、私が買ったサイウアには焦げ目が付いていなかった。
サイウア一本20バーツ也
もち米一袋10バーツ也
これでほぼ満腹に至る。
タイの鉄道でもっとも標高が高いクンターン駅に到着。
以前はタイの鉄道に乗っていて、列車にカメラを向ける人などほとんど皆無であったのだけれど、最近はたぶんインスタの影響でか、列車を被写体に選んで写真を撮っている人を多く見かけるようになった。
このクンターン駅でも、駅の手前にトンネルがあったりするものだから、携帯電話で写真を撮る人ばかりでなく、大きな一眼レフを構える人が何組もいた。
「撮り鉄」はタイにも発生し始めているようだ。
[駅の構内に犬がいるのもタイらしい光景]
チェンマイには30分ほど遅れて午後3時過ぎに到着。
チェンマイでも下車したら体温チェックを受けさせられた。
以前ならバックパックを背負った外国人観光客があふれていた駅も、タイ人しかいなくなってしまった。
駅前で客待ちしているトゥクトゥクやソンテオの客引きも、いまひとつ威勢が良くない。
[ピサヌロークから7時間半かけてチェンマイ到着]
つづく