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バンコク-ピサヌロークで寄り道
9月7日 土曜日

昨日までにバンコクでの仕事を終えたので、バンコクからピサヌロークへ戻る。
しかし、昨晩溜まっていた洗濯物を洗濯しておいたので、朝はまずアイロンがけを行う。
アイロンがけは得意ではない。
洗濯屋さんなどは、どうやってたくさんの洗濯物にアイロンをかけることができるのだろうか?
5枚ほどのワイシャツとたった一本のズボンへアイロンをかけるだけで1時間以上の時間をつぶしてしまった。

アイロンがけも終わって、ピサヌロークへ向けて出発しようと思ったら、ネコに狂犬病の予防接種を受けさせるのを忘れていた。
毎年8月に予防接種を受けに行っていたのに、もう9月である。
またの機会にしようかとも迷ったのだけれど、やっぱり次も忘れてしまうだろうから、思い出したときにやっておかなくてはと動物病院へ向かう。

ネコは動物病院が大嫌い。
フーフーとトラのように毛を逆立てて怒っている。
ちょっとでも触れようものなら、攻撃してきそうだ。
目の光り方が野生の肉食野獣そのものになっている。

それでも、タオルに包んで、身動きできないようにしたところで腰のあたりにブスリと注射。
あっという間にお終いである。

予防接種を終えたらば、もう11時になっている。
いまからまっすぐピサヌロークへ向かえば、夕方には到着できるだろうけど、このところやたらと疲れているので、ちょっとのんびりしたい。
さっさとピサヌロークへ帰って、明日ゆっくりすればよいもののだけれど、ピサヌロークへ着いてしまえば、またピサヌロークでのことが気になってのんびりできない。

今回は、明日も休ませてもらうこととして、ピサヌロークへ直行しないで寄り道していくことにする。
疲れているときには、温泉が一番。
私がタイで一番気に入っている温泉はサモートーン温泉。
ウタイタニ県の山の中にあり、湖の中に突き出た岬のようなところに湧く温泉で、とにかく景色がいいし、お湯の質もイイ。

しかし、残念なことに、昨年から温泉施設内のバンガローが修繕か何か知らないけれど、宿泊できなくなっている。
あれから1年以上過ぎてるし、もう営業再開しているかもしれないと思い、今日はサモートーン温泉に行ってみることにした。

スパンブリへの街道へ向かう道路は、渋滞をしていた。
バーンブアトーンあたりでもうお昼になっていたけれど、この辺りではあんまり食事をしたくない。
もう少し落ち着いたところがいいなと思いながらハンドルを握っているうちにスパンブリを過ぎて、時刻も1時を回った。

田舎道へはいってすぐに、大きな合歓の木の下にテーブルを並べて店開きしている食堂があった。
村人たちがテーブルを囲み、世間話なんかしている牧歌的な店。
こんな感じの食堂、旨いか不味いかは別問題として、嫌いではない。
こんな田舎でどんなものを食べさせるのかわからないけれど、
「バジル炒め」ならまず当たりはずれがないはずなので、鶏肉のバジル炒めご飯を注文。
「辛いの食べられるのかい?」と店の女主人が聞いてくる。
「食べられさ」と答えたが、出てきたバジル炒めはこれでもかってほどに唐辛子が入っていた。

午後3時、サモートーン温泉に到着。
さっそくバンガローに泊まれるかと確認したところ、「泊まれない」とつれない返事。
ここのお湯もいいし、景色も良いのだけれど、入浴施設としての個室の浴室は今ひとつである。
浴槽が直径1メートルくらいしかない。
そしても周囲の景色が良いのに浴室には窓がない。
つまり小屋の中でただお湯の張られた浴槽にはまり込むだけ。
料金は30バーツと安いし、泉質も良いのだけれど、入浴時間は一回30分と制限までつく。
「30分なんかじゃ短すぎるよ」と抗議したが、
「30分で十分だよ」と言い返される。

しかし、どうせここには宿泊できないのだから、さっさと入浴して、どこか景色の良さそうなところに今晩の宿を確保しなくては。

私が入浴している間、ネコは車の中で留守番。
ネコもシャンプーしてやりたいけど、30分の制限時間じゃ時間が足りない。

さっさと入浴を済ませて、温泉の係員に「もう少しのんびり入りたかったよ」と不満を言ったら、
「どうせガラガラだから、もっとゆっくり入っててよかったのに」と言われる。
そんなの、先に行ってほしいよな。
でも、ものは考えようで、
この温泉手前にオンボロのリゾート(タイ式簡易宿泊所)があったから、今晩はそこに泊まることにすれば、もう一度ゆっくり入浴できるだろうし、それも悪くなさそう。

しかし、残念なことにそのオンボロリゾートも営業していなかった。
ほとんど廃業したかと思えるように朽ち果てていた。

こうなったら、どこか探さなくては、、、。
地図を見ると、この北20キロほどのところに、タップセーラーという大きな湖(ダム湖)があるらしい。
地形から見て、山に囲まれて景色も良さそうに思われる。
まっすぐ向かう道はなさそうなので、ラーンサックという村を経由していく。

ふつうなら街道沿いにモーテル風のリゾートと呼ばれる簡易宿泊所があるものだけれど、この辺りは車の通行量も少ないし、人口密度も希薄なようで、宿泊施設そのものが見当たらない。
それでも、タップセーラー湖あたりへ行けば、風光明媚そうなので、宿泊施設くらいあるだろうと希望を持つ。

が、なかった。
湖周辺は、ほとんど民家もなく、何となく開拓村のような集落が点在する程度。
未舗装の道をピックアップトラックが砂埃を巻き上げて走ってくる。

湖畔に出た。
やっぱり何もない。
西日をバックにして、遠くに水牛の群れが見える。
湖の中から、まるで水陸両用車のように岸に上がってきて、そのまま草原の中を歩いている。
なかなか絵になる景色だけど、そんな景色だけを眺めても仕方がない。
湖の対岸に朱色の屋根のような連なりが見える。
あれは湖岸のリゾートではないだろうか、ちょっと行ってみるかとまた車で未舗装道を進む。

タップセーラー湖
[西日で逆光の中、水牛の群れが湖から出てきた]

と、いきなり空へ向かって、白い線が伸びていくのが目にとまった。
少し遅れて、ヒュルルルと音が聞こえてくる。
なんだろう、花火にしては白い煙が長く尾を引きすぎている。

バンファイという竹筒ロケットらしい。
どうぞよろしくお願いいたします。
道端にも「バンファイはこちら」と道しるべが出ている。

バンファイはもともと東北タイの雨乞い祭りのようなものだけれど、こんなところでもやっているらしい。
道しるべに従って走ってみたが、バンファイ会場はすでに取り片付けの最中であった。
時刻も5時を回っている。

タップセーラー湖
[大きなダム湖だけれど、深い山の谷にあるわけではないので、大きな用水池のようにも見える]


朱色の屋根のような連なりはやはり宿泊施設であった。
公的機関の経営する貸別荘のような施設であったが、宿泊料は1000バーツ、しかも本日は満室とのことであった。
どうやら湖畔ではオフロードバイクの大会が開催されているようで、その会場になっているらしい。
これでは仮に泊まれたとしても、静かな湖畔は望めず、騒がしくうるさい一夜になりそうだ。

こうなったら、カンペンペットの温泉に向かって走ってみるかと考える。
2時間も走れば到着できるのではないかと甘く考えていたけれど、あっという間に日没。
真っ暗な田舎道をひたすら走っていると、眠気が襲ってくる。
それに空腹も覚えるが、ときどき通り過ぎる集落には食堂のような店は見当たらない。

メーウォンという村で、やっと食堂らしい店を見かけた。
もうカンペンペットの温泉なんかに今から行こうなんて気は薄れてしまっている。
さっさとどこかに宿を確保して、ビールでも飲みながら夕食にしたいという気持ちが勝っている。
だから食堂を見つけても、ビールを安心して飲めるように宿探しが優先されなくてはならない。

メーウォンの村を抜けて、少し走ったところで、貸別荘を見つけた。
貸別荘と言ってもモーテルとほとんど変わらない。
真っ暗な中に車を乗り入れて、誰もいないのかと思い、引き返そうとしたら中年女性が出てきた。
「ここには泊まれるのか」と聞いたら、
「500バーツ」という。
そして「なんだこれは?」とぞんざいな口の利き方で、後部座席の窓から私と女性とのやり取りを見ていたネコを指さす。
「ネコさ」と答えたところ、
「ダメダメ、動物なんかお断りだよ」と言ってまた奥へ引っ込んでしまった。
その感じが良くないので、仮にネコのことがなくても泊まりたくないなと思った。

さて、どうしたもんかとそのまま進んだら、ドークラック・リゾートという小さなモーテルを発見。
入口の犬は吠えてたが、中に入ると何匹ものネコたちが歓迎してくれた。
一泊350バーツで、エアコンもWiFiも冷蔵庫もあるとのことで、即決。
モーテルの仔猫たちは、中庭の木によじ登ったり、追っかけっこをしたりと大はしゃぎしている。
ここならうちのネコと一緒に泊まっても不快な思いをしなくても良さそうだ。

時刻は夜8時を回っている。
宿にはカップ麺はあるが、食事施設はないそうで、この先を5分くらい行ったら何か食べるところがあるかもしれないと宿の女主人に教えられて、向かってみる。

2キロほど進んだところに交差点があり、その周辺に店がちらほら並んでいるらしい。
すでにみんなシャッターを下ろして真っ暗なので、どんな店なのかわからないが、食事ができそうな店は見当たらなかった。
ならば、もう少し先へ進んでみるかと、また2キロほど進むと、また別の交差点があったけれど、やはり食堂などはなさそう。
だったら、さっきの交差点で交差する道へ入ってみたらなんかあるかもしれないと、元来た道へ戻ってみる。

言われなければわからないような、薄暗い食堂があった。
粥屋のようである。
ヤムに空芯菜炒め、そして白粥にビール。
この程度のものはできるらしい。
ヤムはヤムママーという即席麺のヤム。
空芯菜炒めはピサヌロークで食べ慣れているのが絶品なので、ちょっと味が劣るけど、
ビールは同じ味で、疲れた体に染みわたってくる。
いや、こんな超田舎の集落で、日没後にこうして夕食と冷えたビールにありつけただけでも幸せである。

田舎食堂
[こんな店で、こんな料理でも、ビールといただくと旨いんですよ]



9月8日 日曜日

朝を目を覚ます。
こんなモーテルにも宿泊客が結構あるようで、ほとんどの部屋の前には車が止まっている。
中にはバイクが止まっている部屋もある。
あんな夜道をバイクで走るなんで、ずいぶんと怖かっただろう。

このモーテルの中庭には、壁がなくて吹きさらしの小屋がある。
テーブルがしつらえてあって、ここにモーニングコーヒーが用意されている。
モーニングコーヒーといってもスティック入りのインスタントで、湯沸しポットも置かれている。
コーヒーカップは小さいけれどスティックは大きい。
タイの人が大好きな3in1というタイプで、コーヒーもミルクも砂糖もみんな一緒に入っている。
この一袋を小さめのカップに入れてお湯を注ぐ。
これが本当にコーヒーなのだろうか、ココアの間違いではないかと思うくらいに甘ったるかった。

モーニングコーヒー
[朝の景色も悪くない]

せっかくここまで来たのだし、このあとピサヌロークへ直行しないで、カンペーンペットのプラルアン温泉で朝風呂をしてから帰ろうかと考える。
しかし、準備が悪く、ネコの餌を持ってくるのを忘れていた。
ネコの餌皿はすっかり空っぽになっている。
どうりで昨晩はネコが何か言いたげに私の眠りを何度も妨害してたが、餌がほしかったのかと納得する。
当座どこかのコンビニでネコの餌でも仕入れるとして、今何か食べさせてやりたい。

ちょっと悪いとは思ったけれど、このモーテルで飼われているネコたちの餌皿から餌を一つまみ失敬する。

泥棒ネコ
[ネコの餌をかすめ取るなんて、泥棒ネコにも劣る行為をしてしまった]

左手に山並みが続く田舎道を北上する。
灌木林と荒地と畑と開拓村。
そんな集落の中で、目立つのは携帯電話屋。
派手な広告看板だけはバンコクの本部から送られてくるものを掲げているのか、色の乏しい村の中でやたらと目立つ存在になっている。

メーピン川を渡ってカンペーンペットに入り、旧道をさらに北上。
少しお腹が空いてきたので、何か食べたいと思う。
道端でトウモロコシを売っている露店がいくつか見えた。
トウモロコシでもかじりながらというのも悪くないなと思い、次に見かけたら買おうと思ったのに、もうトウモロコシの露店は現れなくなってしまった。

旧道沿いなので時々集落がある。
集落にはお寺がある。
開拓村だと、ほとんどお寺を見かけることがないから、お寺があるのは古くからある村の証拠なのだろう。
そうした集落の雑貨屋ではクオッティオを食べさせるところも多い。
でも、この手の副業クオッティオはあんまり美味しくないとの先入観がある。
やっぱり専門店で食べたいけど、田舎の集落では望み薄かなと思っていたら、意外にもありました。
ちょっと行き過ぎてしまったので、Uターンして戻る。
スープの大鍋からは湯気が上がっているのだけれど、店は無人である。
すぐ裏が農家のような民家なので、覗いてみるが人の気配がない。
困ったもんだ、と思って待っていたら、トイレで用足しでもしてたのか、ようやく女主人の登場。

クオッティオ・トムヤムを注文する。
やはりこのあたりはスコタイ・ヌードルの本場だから、正調のクオッティオ・トムヤムが食べられるかと期待する。
ここも吹きさらしというか、風通しがよすぎるというか、屋根はあるけど壁で囲まれていない建物になっている。
それでも小奇麗にしてあり、雰囲気は悪くない。
メニューには「辛いのや、ピーナッツが食べられない人は事前に申し出てほしい」と書かれている。
最近はタイ人でも唐辛子が苦手な人がふえているらしいし、ピーナッツアレルギーなんてのもあるのだろう。
そんなことを書いているくらいだから、集落の常連相手の店ではなく、私のような一見客相手の店なんだろう。
となると、ちょっと味が心配になったけれど、やっぱり専門店だけあって、美味しかった。
トムヤムにちょっと砂糖が入りすぎている感じもしたけれど、あくどさまでは感じなかった。
これで30バーツだったから、一見客相手でも、まっとうな食堂だったようだ。

クオッティオ専門店

[奥に張り出されているのがメニュー]

プラルアン温泉では大浴場へ直行する。
大浴場内には先客のタイ人が一人あり、お湯の温度は40度とかなりぬるめ。
温水プール並といった感じ。
タイのタイ人と混浴するのは初めてのような気もするが、彼は黙ってお湯に浸かっているだけ。
前回北海道の温泉で体験した韓国人との混浴のように、風呂で泳ぐなんてこともない。
ここの大浴場には、浴場内に洗い場もなければ、手桶もないし、洗面器だったない。
入浴前には露天のシャワーを浴びることになっているが、浴びせ湯もなしにプール同様に浴槽にドボンしてしまうスタイル。
タイ人の彼が露天シャワーへ行ったので、私は大浴場の管理人に「お湯がぬるい」と訴えた。
「そんなことないよ、タイ人には熱い」と言い返してきたが、ごり押しして湯の栓を開いてもらった。

ゴボコボとお湯が出てきて、少しずつお湯の温度が上がってくる。
放っておくと、風呂の表面部分だけ熱くなってしまうので、お湯を手でかき混ぜ続ける。
まだまだ適温には程遠かったけれど、これ以上になるとタイ人には無理かもしれないと思ったころ、
「もういいだろう」と管理人が声をかけてくる。

シャワーからタイ人の彼が戻ってきて、浴槽に足を入れたとたん「ウォッ」と声を上げた。
やっぱりタイ人には熱いらしい。
それでも42度にもなっていないと思うのだけれど、
「熱くないのか」と彼が聞いてくる。
「表面だけさ、下はぬるいから、かき混ぜれば大丈夫」と答えたが、彼は3分も入っていたら、出て行ってしまった。

大浴場
[壁の絵はコ・ローイと言う場所だそうで、さっき走ってきた道沿いにあった場所のようだ]

続いてやってきたのはスペイン人かイタリア人か、言葉がラテン風発音の西洋人の親子。
男湯なので当然、父親と息子というペア。
息子ははしゃいでいる。
女湯の方にはタイ人の彼女でもいるらしく、"I miss you"などと英語で呼びかけたりしている。
彼らには、このお湯も当然熱くないようで、たぶん私と同様に少しぬるいくらいに感じているようだ。
「写真に撮ってくれ」とスマートフォンを渡される。

小一時間ほど入浴して、ピサヌロークへ帰ることにする。
バンコクからピサヌロークへたまには寄り道も悪くないと思った。

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| 日常 | 11:51 AM | comments (0) | trackback (0) |

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