12月23日 土曜日
週末土日の二日間仕事が休み。
一時帰国後、肩の痛みや手のしびれの症状がかなり改善されてきていたのだけれど、バンコクで仕事を再開して一週間と経たずに再び以前の状態に戻ってしまった。
年末年始の繁忙期を前に、温泉にでも入ってこようと思い、早起きをしてアパートを出発。
ネコも車に乗せて、久々のドライブ。
行先はウタイタニ県のサモートン温泉。
ここの夕方の景色は、大変気に入っている。
山小屋風の宿泊施設は、私には少し割高に感じられるが、温泉に入り放題となるので、それを勘定に入れれば妥当なところ。
今回は温泉でのんびりして、もうじき正月も近いので、小豆でも煮ようと考え、鍋やコンロなども車に積み込む。
小豆や砂糖などは途中の市場ででも調達する計画。
ちょっと用事があって会社に立ち寄り、あとはスパンブリを素通りしてサトウキビ畑が続く中を北へ進む。
どこかに市場があれば小豆を買うために立ち寄りたいと思って、集落に差し掛かるたびにきょろきょろとしてみたが、田舎過ぎて集落の規模が小さく、市場らしいものは見当たらなかった。
ちょっと大きな町に入ってここならばと、国道を外れハンドルを右に切る。
ダーンチャーンと言う町で、たぶん郡庁所在地にでもなっているのだろう、町としての体裁を持っているし、ちゃんとした市場もあった。
市場の中では、肉や魚、野菜などが台の上に並べられて売られている。
乾物や雑貨を扱う店も入っている。
豆を置いている店もあったが、小豆は見当たらない。
小豆よりも大きな赤インゲンはある。
私は小豆をタイ語でトゥアデーンと言うと思っているので、「トゥアデーン」「トゥアデーン」と聞いて回るが、出てくるものは赤インゲンばかり。
バンコクのスーパーでは小豆はビニールパックに入って普通に売られているので、簡単に手に入ると思っていた。
でも、スーパーで売っていた小豆は、あんまりきれいな粒ではなかった。
それで、市場で買いたいと思ったのだけど、田舎の市場では小豆が売られていないとは思わなかった。
何軒か回って、結局見つけられず、代わりに緑豆を買った。
砂糖はココナツシュガーを500グラムを25バーツ。
緑豆も中華圏では小豆のように煮たり、餡にしたりしているから、今日は温泉に着いたら、これをコトコトと煮て、夜食にしよう。
再び国道に出て走り始めると、本日開店らしいスーパーがあったので覗いてみる。
やはりこのスーパーにも小豆はなかったし、売っているものの品ぞろえや展示方法も田舎らしかった。
温泉への入り口にあたるバーンライの村でガソリンを補給する。
ガソリンスタンドも田舎風。
それでもクレジットカードは使えた。
そろそろオイル交換もしなくてはならないはずで、ちょうどいい機会だから、このスタンドでオイル交換をしようと思ったのだが、このスタンドではオイル交換のサービスはしていないらしく、近くのガレージを紹介された。
ガレージも田舎丸出しで、ガレージの中では農作業用のトラクターが整備を受けていた。
ガレージの主人が整備を担当し、その娘が助手兼経理を担当している感じで、まだまだ助手としては駆け出しのようで、ひとつひとつ父親に確認しながらの受け答えである。
オイル交換は10000キロまで走れるというオイルで1200バーツ。
いつもはもっと安いオイルを入れているが、10000キロまで交換不要なら、むしろ割安かもしれない。
作業は30分もかからずに完了。
ちょうど昼時であったが、バーンライの村には食事をしたくなるような食堂が見当たらない。
なにかお祭りのようなものが開催されているのか、縁日のような出店が並んでいるけれど、衣類や雑貨、お菓子ばかりで、食事になりそうなものがない。
結局、味気ないけど、衛生面だけは無難なトムヤム味のカップ麺をコンビニで買って食べる。
また、温泉に浸かった後に飲もうとビールも大瓶を一本仕入れる。
このパーンライの村まではバンコクから乗り合いバンも通っているようだけれど、この先のサモートーン温泉までの30キロほどの区間には、公共交通機関が存在していない感じだ。
何度も来ているが乗り合いトラックのソンテウさえ走っているのを見たことがない。
車でなければ来れない温泉と言うことになる。
しかし、公共交通機関のないような田舎道でも、ところどころに集落はあり、まだどうしてこんなところに作ったのだろうかと思われるリゾートと名乗る簡易宿泊施設もある。
丘陵地帯の中を走っており、疎林が続いたり、耕作地ではパイナップルの栽培が盛んにおこなわれている。
ときどきサトウキビを満載したトラックとも行違う。
温泉のある湖(貯水ダム)が見えてきた当たりの道端でスイカを売っているのを発見。
温泉に入って、冷えたスイカを食べるのも良さそうなので、小粒のスイカを二つ買う。
スイカはひとつが10バーツ。
他にもパイナップルや台湾ナツメなども売られていた。
台湾ナツメは大きくて、見た感じがちょっと小ぶりの青リンゴのように見える。
12時過ぎ、小豆を探したり、オイル交換をしたり、寄り道ばかりで時間がかかったが、ようやく温泉に到着。
さっそく、今晩の空き部屋の有無を聞いてみる。
「部屋はあいてますか?」
「はい、何人ですか?」
よかった、ここは週末は満室になっていることが多く、事前に予約をしておくべきなのだが、計画性がないためいつも出たとこ勝負になっている。
「一人です」
「30バーツ」
え、ちょっと安すぎ。
前回は800バーツだった気がする。
30バーツと言うのは、宿泊ではなく、個室の浴室のことではないだろうか?
もう一度念を押してみると、やはり宿泊ではなく、浴室利用料金のことらしい。
あらためて、宿泊したい旨を伝えたのだが、どうも半年ほど前から事情があって宿泊を受け付けていないらしい。
ここまで来て、宿泊もできないとは、なんということだ。
「近くにリゾートがありますよ、きれいで1200~1400バーツくらいで泊まれるようですよ」
と教えてくれる。
しかし、そのリゾートは温泉に近いといっても、温泉を引いているわけではない。
私がしたいのは、温泉三昧なので、近いだけでは意味がない。
「ここならテントでキャンプもできますよ、今の季節なら夜も涼しいですよ」
とも提案してくれるが、テントにネコとキャンプなどとんでもない。
それにやっぱり温泉三昧にならない。
どうしたものか、まずは30バーツ払って、個室の温泉にでも浸かって、次善策を考えてみることとする。
一人用の個室も何度か利用している。
三畳くらいの個室に、直径1メートル歩かないかくらいの、円筒形の浴槽があり、そこに温泉水を貯めて入浴。
シャワーはあるが、シャワーは冷水のみ。
風呂いす、手桶や洗面器もない。
温泉の湯は熱いので、水で埋めながらでないと熱すぎる。
浴槽が狭いので、膝を抱えるようにして入浴。
温泉でありながら、手足を伸ばして入れないのは残念。
お湯は無色透明で、硫黄のような臭いもほとんどなくて、ほぼ無臭。
北投温泉のように石鹸が泡立たないなんてこともなく、普通に石鹸が使える。
さて、これからどうするか。
緑豆を煮る計画は、ひとまず中止せざるを得ないだろう。
リゾートと名の付くところへ行けば、緑豆を煮れるかもしれないけど、温泉のないリゾートに大きなお金を出してまで宿泊したいとは思わない。
テントでのキャンプも、たぶん無理。
ネコが狭いテントの中でじっとしててくれる道理がない。
つまり、今夜は宿泊するのは諦めるしかないということだ。
温泉で手足を伸ばしたければ、グループ用の個室になら小さな温泉旅館の浴槽くらいのものがある。
しかし、料金もちょっと高い。
宿泊できないとなると、日帰りと言うことになるが、ここまで時間とガソリン代かけてやってきて、30バーツの個室で一回入浴しただけで帰るというのも寂しすぎる。
湖畔の簡易食堂で、タイ料理をつまみながらビールを飲むのも楽しみにしていたが、日帰りではそれも無理だろう。
では、きっき買ったビールはどうしよう。
まだ、コンビニの冷蔵庫から引き抜いて1時間と過ぎていない。
結論として、この場で温泉に入りながらビールをラッパ飲みすることとなる。
ビール一本とは言え、飲んでそのまま運転して帰るわけにもいかないので、車の中で昼寝をし、夕方2度目の入浴をしてから家路に就くことにした。
1時間ほどで第1回目の入浴を終えて、車に戻り、車内で昼寝をしようとするが、小型のヤリスでは横になれるだけの広さがない。
シートを倒しても、足元が不便。
後ろのシートもごろ寝できるほどのスペースがない。
むかし、チェンマイで乗っていたビートルは、後部座席が皮張りのソファーのようで、木陰で昼寝するには最高だった。
それに私のビートルはエアコンの効きは悪いが、その代わり扇風機が付いていた。
助手席でシートを倒し、足をハンドルの方へ投げ出して、身体を捩らせた体制で数時間の休憩。
熟睡こそできなかったけれど、少しは眠れたようだ。
夕方になって、車から這いずり出てきて、温泉公園内を散歩する。
何棟かの山小屋風宿泊施設は、確かに誰もおらず、長いこと使われずに放置されているように見える。
公園内にはテントを張ってキャンプをしているグループが何組もいる。
キャンプ場としては、入浴施設もトイレもあって、悪くなさそうだ。
ここの夕暮れ時の景色はとてもきれいで、カイツブリが鳴きながら飛んで行ったり、夕靄がたなびき、一番星ができたり、ほんとうに静かな景色で気に入っており、この景色のなかに身を置くことも今回の楽しみの一つにしていた。
[こんなきれいな夕景が見られるのも乾期の今だからこそだろう]
[空には細い月も昇っているし、一番星も光りだした]
6時に2度目の入浴をする。
狭い浴槽で、ゆったりできるわけではないので、1日にそう何回も入りたくなるというわけではないけれど、せっかくはるばる来たのだから、2回くらいは入浴しないとと言うケチな発想から入浴している。
この浴室の天井裏はハトの巣になっているようで、夕方になって巣も戻ってきたハトたちが浴槽の上でバタバタと騒いでいる音が漏れてくる。
[30バーツを払うと管理人が浴室内にホースで水撒き、、これが掃除と言うことらしい]
2度目の入浴を済ませると、もう周囲はだいぶ暗くなっている。
湖畔の簡易食堂では、夕食を楽しんでいるグループが何組かいる。
私もここで夕食を食べたいところだが、食べれば飲みたくなる。
しかも、たっぷり飲んでしまうだろう。
未練を断ち切って、そのままバンコクへ帰ることにする。
[奥に見えるのが湖畔の簡易食堂]
温泉公園を出発してすぐに、車を止めて、空を見上げたら満天の星空。
空一面、隅から隅まで小さな瞬きで埋め尽くされている。
これはすごいぞと写真に撮ろうとするが、こんなに明るく輝いているはずの星たちが、携帯電話のカメラには全然写らない。
[これが満天の星空に向けてシャッターを切った結果]
バーンライまでの道は、街灯もなく、集落もひっそりしてて、車もほとんど走っていない。
真っ暗な中で、見えるのはヘッドライトに照らされた前方何十メートルかだけ。
カーブも多いので、運転は慎重に時速40キロほどでゆっくりと走ったので、バーンライの村に着いたら夜8時になっていた。
この村を過ぎると、次の町ダーンチャーンまで1時間はかかり、時刻は夜9時になってしまうだろう。そうするともう食事ができるところも店じまいしてしまうだろう。
なんにもなさそうなバーンライの村で何か食べて行こうと、道端に出ていたバミー屋台に車を横付けする。
屋台の向かい側にはコンビニもあり、近所の若者だろうか、バイクでやってくるグルーブもあるし、家族連れでテーブルを囲んでいる光景も見られた。
私はワンタンとチャーシューの入ってバミーを注文する。
味は良かったが、タイの麺類の特徴でもあるのだが、スープがアツアツではない。
タイ人たちは総じて猫舌なのか、バミーにしてもクオッティオにしても、どうもフーフーと吹かなければ食べられないようなものにタイでは出会ったことがない。
値段は50バーツくらいかなと予想していたが、30バーツであった。
バンコクではいまどき30バーツでワンタンメンを出しているような屋台などないだろう。
バミーを食べた後は、ひたすら夜道を走り続ける。
スパンプリのガソリンスタンドに併設されたコンビニで喉が渇いたので炭酸飲料を買う。
2本で15バーツとポップが出ていたので、これは安いぞと喜んで冷蔵庫から2本引き抜き、レジに並んだがレジ嬢は「20バーツ」と言う。
15バーツと書いてあったよと言っても、受け付けられず緑色の20バーツ札をレジにしまい込んで、5バーツはもらえなかった。
バンコク郊外はどんどんと新しい道ができたり、立体交差になったりして、道が変わっているらしい。
私はラムイントラあたりで、本来曲がるべきところを行き過ぎてしまったことに気が付かず、スカピバーンの通りあたりまで行ってしまってUターンしてもどったりしたため、アパートにたどり着いたのは午前零時を過ぎていた。
バンコクでは途中で2回も飲酒運転取り締まりの検問が張られて、車が詰まっていた。
罰則はまだまだ日本と比べて緩いものの、タイでも飲酒運転の取り締まりをすることがあるようだ。