3月19日(土)
何年ぶりかで海へ行くことにした。
日帰りで、海辺で過ごす時間は短いけれど、海で泳ぐことにした。
2年前にネコが死んでしまってから、どこか遠くへ遊びにいく気があまり起きなくなっていた。
どこへ行ってもネコとの思い出があるし、1人で出かけても面白くないと思っていた。ネコにすまないなとも感じていた。
しかし、2年が過ぎて、少し1人ででもどこかへ行ってみたくなってきた。
行き先はホアヒンの先にある軍の海水浴場、スアン・ソンプラディパット。
タイ国鉄の海水浴列車を利用していく。
前回ここへ行ったのは2017年3月だったので、5年ぶりという事になる。
切符はインターネットで買えるようになったので、前々日にエアコンつきの2等車を予約する事か出来た。
エアコンはなくてもかまわないし、エアコンが寒すぎるはずなので、海水浴に行くのに防寒着を用意しなくてはならないけど、3等車だとシートが固いプラスチック製だったりして長時間の乗車にはきつ過ぎる。
朝6時半出発の海水浴列車、出発時間は昔と同じようだけれど、帰着時間が夜遅くなっている。
もどりは21:40バンコク着で、以前より2時間くらい遅くなっているようだ。
それにこの海水浴列車、カンチャナブリの方へ行く行楽列車と併結して行くのだけれど、帰りはバラバラに戻るスケジュールとなっている。
スケジュールをよく見てみると、行きも帰りも所要時間が延びいてる。
だいたい片道で1時間くらい余計に時間がかかっている。
海水浴場のあるスアン・ソンプラディパット到着が11:33の予定で、5時間以上もかかる事になっている。
これは実際に乗ってみて分かった事だけれど、ラチャブリあたりから工事区間が多くにってノロノロ運転が多くなっている。
たぶん複線化工事もしているのだろうけど、駅も新しく改築中のところばかりになっている。
どの駅もホームの高さを高くして新しく作っている。
ナコンパトムで観光休憩が約30分ほど設定されており、駅から数百メートル離れた大仏塔へ参拝できるスケジュールが組まれている。
スコータイ王朝成立以前、先住民モン族のドゥヴァラバディ王国の昔から仏塔があったとされる町で、駅前からもその仏塔の威容は真正面に迫ってくる。
そんな仏塔へ参拝する事なく、駅前の食堂でワンタン麺をすする。
朝食の代わりというわけだけれど、ここのワンタン麺はあっさりしたスープで、なかなか美味しく、以前にも食べたことがある。
小粒のワンタンもしっかり入っていて、気に入っているのだけれど、値段は50バーツ。
以前がいくらだったかは記憶にないのだけれど、このところタイの物価値上がりが激しくなっている事は、肌身で感じている。
とくに食べ物については、値上がり幅が大きくなっているように感じる。
タイの列車で冷房車の窓にはスモークが入っている。
かなり濃い目のサングラスをかけているような感じで、しかも窓ガラスの汚れもあるから、車窓の眺めはあんまり綺麗に見えない。
私は窓側の席だったのだけれど、窓はちょうどドアの戸袋にあたるようで、戸袋内は誇りだらけで、げんなりしてしまう。
車窓を楽しむのならエアコンのない車両の方が良さそうだ。
さて、この海水浴列車の戻り時間は海水浴場発が16:28でバンコク着が21:40と夕食時間にかかっている。
普通の列車のように車内販売も回ってこないし、食堂車もない、駅売りの飲食物を買うことも出来ないという事で、車掌たちが弁当の注文を取りに回ってきた。
チャーハンでもガパオライスでも50バーツという事で、私は弁当ひとつでは食べたりないかもしれないと思って。イカのガパオライスと、もうひとつ玉子チャーハンを注文した。
11時半を過ぎ、少し遅れてスアン・ソンプラディパットに到着。
もう何度か来ているので、ビーチまでの歩き方はよくわかっている。
まごまごしているほかの乗客を尻目に、さっさとビーチへ向かって歩き出す。
ここも駅の改築が行われており、改築工事の関係でか、駅の位地が少し動いていた。
天気は晴れ。
少し波があるけれどたいした事はない。
ちょうど引き潮時間帯なのか、波打ち際が遠くなっている。
つまり、ビーチがやたらと広い。
ビーチ沿いをスタスタと歩いてマットを敷く場所を探す。
モクマオウの木陰で適当なところを見つける。
[浜辺の先に見える丘の向こうがホアヒンビーチ]
ビーチに来ている人たちには西洋人の姿を多く見かける。
バンコク在住者か、それともホアヒンあたりのリタイヤ組みだろうか、年齢層は比較的高い。
ここのビーチは静かだし、物売りもいなくて、清潔。
ちょっとした穴場だと思う。
そうした穴場を見つけるのが西洋人たちは上手なようだ。
さっそく海に入ってみる。
遠浅なので、腰の辺りまでの深さになるにはだいぶ沖のほうまで歩いていかなくてはならない。
ごく浅瀬では、海水の透明度がとても高くて、まるで真水ではないかと思うほどだったけれど、少し深くなってくると透明度は落ちてきて、底がかすんで見えなくなった。
汚れているというよりも、砂か土を巻き上げてしまって透明度が落ちてしまっているのだと思う。
水の底が見えなくても、底は砂だけのようで、石や異物などが足の裏に当たることもない。
タイの人たちは波打ち際で水遊びをするばかりで、泳ぐ人はほとんどいないようだ。
なので、沖の方でのんびりとプカプカと仰向けになって浮かんでいても誰にも邪魔されないし、誰の邪魔にもならない。
[白砂青松と言いたいところだけど、松に見えるのはモクマオウ]
久しぶりで海で泳いで見ると、やっぱり海の水はしょっぱいのと、波があるので息継ぎのタイミングが上手く合わせられないことを思い出した。
そして、もうひとつ大事なことを思い出した。
海で泳ぐと日焼けをしすぎてしまうこと。
サンクリームや日焼け止めなどを使わないので、30分も海に入っていたら肌がチリチリし始めてきた。
まいど日焼けのし過ぎでひどい目にあっている。
数日間は火傷のような症状で、夜寝てても痛くて目が覚めてしまうことの繰り返し。
今回も、ひどいことになりそうな予感がする。
少し海から上がって、日陰で少し休憩。
砂浜には小さなカニの穴が一面に広がっている。
その穴の周りには、無数の小さな砂団子が取り巻いている。
じっとして穴の周りを見ていると、穴の中から砂団子を抱えたカニが出てくる。
大きさは1センチにも満たない小さなカニたちが、あっちでもこっちでも、穴から出たり入ったりしている。
少し大きな穴には、やはり少し大きなカニが出入りしている。
波打ち際には貝殻も少し落ちている。
砂を掘ったら貝も出てくるのだろうか。
[蟹は甲羅に似せて穴を掘る]
タイの人たちは、Tシャツを着たまま海に入る人がほとんどで、上半身裸というのは西洋人くらいしか見当たらなかった。
私も以前サッタヒープの海軍ビーチで泳いでいたら、公共の場所ではちゃんとシャツを着るようにと叱られたことがある。
もっとも、シャツを着て泳げは、日焼けで痛い思いをしないで済むという事もあるが、シャツ着たまま泳ぐというのは、どうにも違和感がある。
午後1時過ぎには早くも撤収。
マットをたたんで、シャワーを浴びにいく。
シャワーは有料で1回15バーツ。
実質、海辺にいた時間は一時間少々だと思う。
半日がかりでやってきて、一時間くらいで撤収というのも勿体無い話だけれど、日焼けの後遺症が深刻になり過ぎないようにしないといけないし、何より午後2時を過ぎたらばビールを飲めなくなってしまうのではないかという恐怖心から撤収を急いだ。
1時半にビーチのレストランに入る。
先客は数組だけで、空きテーブルが目立つ。
ほとんどが外国人のようで、タイ人客はほとんどいない。
タイの人たちは弁当持参で、ビーチで飲み食いしている。
私が陣取っていたマットの横でもタイウイスキーのソーダ割りを飲み交わしているグループがいた。
注文した料理はヤムウンセンと鶏とカシューナッツ炒め。
以前いくらだったかの記憶はないのだけれど、メニューではヤムウンセンが180バーツになっている。
ずいぶんと値が張っているという印象を受けるが、タイの海辺ではヤムウンセンが食べたくなる。
ビールは別のカウンターでセルフサービス。
チャーンビールで80バーツなのは、比較的良心的といえるだろう。
[タイはビールの販売制限時間があるのが困る]
180バーツのヤムウンセン、味の方は、可もなく、不可もなしと言った、妥当な味付け。
強いて言えば、エビがもう少し新鮮な感じだったら良いのにと言ったところ。
辛さは、以前とんでもなく辛かった印象があったけれど、今回は比較的マイルド。
鶏とカシューナッツ炒めも、ちょっと味が濃い目ではあったけれど、それなりに美味しかった。
[180バーツのヤムウンセン、ちょっと高すぎだな]
2本目のビールを取りにカウンターへ立ったところ、ハトたちが私の皿を突きにテーブルへたかっていた。
そして戻ってくる私に驚いたのか一斉に飛び立ち、鶏とカシューナッツの皿をひっくり返してしまった。
まだ、ほとんど箸をつけていないのに、テーブルの上に中身が飛び散ってしまった。
仕方なく、テーブルに散らかった鶏肉や野菜類を集めて処理していたら、係りが来て皿を下げて行った。
あぁぁ、これまだ少し残っているから食べようと思っていたんだけどなぁと思ったけれど、呼び止めるのも恥ずかしいのでそのまま下げさせて、ヤムウンセンで2本目のビールを飲んでいたら、先ほどの係りが新しい鶏とカシューナッツ炒めの皿をもって来てくれた。
二重請求にでもなるのではないかと気になっていたけれど、支払い時の伝票には1皿分しかチャージされていなかった。
[平和の象徴のハトもここではギャングと紙一重]
食事を終えても、まだ帰りの列車には時間がある。
食堂でそれまで休憩をさせてもらう。
海風が心地よく、2本のビールを飲んで、少し酔ってもいる。
もう一本ぐらいビールを飲んでしまいたいところだけれど、あんまり飲んで、酔っ払ってしまったら醜態なので、ほどほどにしておく。
[白いテーブルがまぶしい]
4時過ぎに席を立って、駅へとふらふら歩いていく。
途中で頭に大きなカンムリのようなものの乗った鳥を見かける。
今まで見たことのない鳥だ。
[この鳥の名前、調べておかないと、、、]
駅まで、数百メートルほどだけど、午後の日差しはとても強く、ビールを飲んだからか、余計に暑く感じる。
目の前に蜃気楼でも浮かんできそうなくらい、目がチカチカする。
10分前に駅に着いたが、すでに列車はホームに待機していた。
車内に入るとエアコンが効いており、やっぱりエアコン車でよかったと思う。
他の乗客たちもすでに大半が戻ってきており、定刻の16:28には動き出した。
ホアヒンの駅を出て少ししたら車掌たちが注文済みの弁当を配り始めた。
全然空腹でもないし、今すぐ食べる気にもならず、弁当はそのままにし、私はビールの酔いも手伝って、すぐに眠り込んでしまった。
なんどか途中で目が覚めたりしたのだけれど、目が覚めたときは大体がどこかに停車中であった。下り列車との交換のために停車しているのだと思うが、動き出す前にまた眠りに付いてしまった。
もうすっかり暗くなってからやっと目が覚めた。
このときもやはりどこかの駅で停車中なのだけど、黒塗りの窓ガラスから外は何にも見えない。
そして、エアコンが効きすぎて、寒くてしょうがない。
海水浴で使ったバスタオルを引っ張り出して、毛布代わりに被って震える。
8時半を回り、バンコクの近郊までやってきた。
どうして弁当を2つも注文してしまったのだろうか、そのまま持ち帰るにも荷物になると思い、空腹ではないけれど、玉子チャーハンを食べてしまうことにした。
もともとチャーハンなどは冷めてしまうと味が落ちるものだけれど、このチャーハン弁当はとてもまずかった。
油も悪いようだし、米も悪いようだ。
そして、やたらとニンニクを入れてあり、ニンニク臭がキツイ。
まずいチャーハンを食べるたびに、ピサヌロークにあった空飛ぶ空芯菜食堂のチャーハンを思い出す。
あそこのチャーハンは冷めても美味しかった。
定刻の21:40を少し過ぎてバンコクに到着。
エアコンで冷え切った身体にムワッとまとわり着くようなバンコクの蒸し暑さが、かえって気持ちよく感じる。
あぁ、あったかくて生き返る。