2月28日にルーイ県、プールアにあるシャトー・ド・ルーイへ立ち寄る機会があった。
シャトー・ド・ルーイと言えばかつてタイを代表するワインとして脚光を浴びたことがある。
ちょうどタイでワインがブームとなり始めた20年ほど前になるだろうか。
フランスのミッテラン大統領のお墨付きをもらったという噂もある。
ミッテラン大統領は九州の焼酎「森伊蔵」にもお墨付きを与えており、日本で森伊蔵のブームが巻き起こった。
タイのワインブームは、そろそろワインがタイに定着し始めたこともあり、ワイン、ワインと騒ぐより、インスタなどへの投稿に中心が移り始めている。
いまでもあるかもしれないが、かつてタイではワインは白も赤も関係なく冷蔵庫で冷やしたものである。
そして、タイでのビールの飲み方と同じように、ワインに氷を知れて飲んだりする。
もう、何年も前になるけれど、パタヤへ社員旅行に出かけ、夕食にワインが付いていた。
ホテルはハードロックという外資系ホテル。
しかし、給仕たちのワインの配り方は、ピッチャーでワインを注いで回るというものであった。
そのピッチャーにはワインだけでなく氷もたっぷり入っていた。
タイのような熱帯では、ワインの保管も問題が起きやすい。
以前務めていた会社が閉鎖となり、事務所内を整理をしていたらロッカーから頂き物のワインが出てきた。
たぶん支店長が、隠していたものと思われるが、さっそく栓を抜いて飲んでみることにした。
しかし、ワインはすべて酢になっていた。
しっかりとワインセラーで温度管理しないと、ワインもダメになってしまうのだろう。
シャトー・ド・ルーイをバンコク市内のアトランタホテルのダイニングでいただいたことがある。
このホテルは1950年代に建築されたバンコクで最初にプールのあるホテルとして開業したらしいのだけれど、現在ではバンコクで最も古めかしいホテルだと思っている。
しかし、そこに味があって、私が好きなホテルなのだけれど、そのダイニングも宿泊者以外立ち入り禁止で、騒がしくなく、ムードも良かった。
[いい雰囲気です、この日はたしか私の誕生日だったかも]
値段はボトルで確か700バーツくらいだったと思うけれど、すっきりした味わいの白であった。
当時、いまもそうだけれど、バンコクでワインはやたらと高い。
日本ではテーブルワインとして大容量パックやボトル1000円以下のワインでも、平気で高級ワイン並みの値段を取る。
このアトランタホテルは、料理もワインも良心的な値段だった。
シャトー・ド・ルーイはボトルにニワトリのイラストが付いているのもタイらしい。
タイでブドウがどの程度栽培されているのか知らないが、むかしはブドウなど輸入果物で高級品。
当時は国内栽培などほとんどしていなかったのではないかと思う。
隣国ミャンマーでは30年以上前にブドウを食べた記憶がある。
そんなシャトー・ド・ルーイ、ピサヌロークから車で3時間くらい。
タイを代表するワインということもあり、日本人のワイン好きをターゲットにしてシャトー・ド・ルーイのワイナリーとプールアをめぐるツアーなどできるのではないかとも考えた。
国道沿いにシャトー・ド・ルーイの販売所があり、ワインだけでなくルーイ県の土産物などを売っているらしいが、そこは素通りして、未舗装の細い脇道へ入り込んでワイナリーを目指す。
脇道の両側はブドウ畑ではなく、ドラゴンフルーツの畑であった。
そして、脇道の奥にブドウ棚が見えたが、ブドウは枯れて、相当に朽ち果てた印象。
そこから少しの場所にワイナリーはあった。
無人かと思ったら、販売所があって女性販売員がひとりいた。
隣はワイナリーになっていたが、日曜日なのでお休みとのこと。
[説明板などあり、平日なら見学できそう]
試飲ができるということであったけれど、試飲に供されるのはパイナップル・ワインでブドウ100%のワインは試飲できないらしい。
何種類かのボトルが並べられているし、壁にはシリントーン王女が来訪された際の写真も飾られている。
しかし、この売店も寂れている。
ワインを並べているけれど、エアコンもないので、温度管理ができていない。
白ワインだけは冷蔵庫に冷やしてあるが、赤ワインはたぶん30度を超える常温に置かれている。
荒廃したブドウ畑について販売員に聞いてみると、もう4年前からブドウの栽培はしていないとのこと。
ここで生産しているワインに使うブドウは他から持ってきているのだそうだ。
[品ぞろえはこれだけです]
国道沿いのショップにはもっと品ぞろえがあるのかと質問したが、「タイ人はワインを買わないので、あまり置いてない」とのこと。
そうそう、見栄っ張りのタイ人はレストランでワインの栓を抜くけれど、自宅でワインを飲む人は少数なのだろう。
かつての栄光はどこへ行ってしまったのかと思うような、没落ワイナリーの印象がある。
あとでシャトー・ド・ルーイに関する最近のブログなどを検索したけれど、あまり良い評価はされていないようだ。