バンコクに戻って、3月14日にはオンラインツアーをチャチュンサオのワット・ソートンから中継する。
このワット・ソートンはゴシック建築の聖堂を思わせるような尖塔をもつ寺院で、参拝者の多さではタイでもトップクラスの有名寺院。
ただ、有名なのはタイ人の間で有名という意味で、日本人にはあまり知られていない。
日本人の場合、チャチュンサオを知っている人は少数だけれど、チャチュンサオにある「ピンクのガネーシャ」だけは有名になっている。
おのお寺は門前市場が面白かった。
参拝者目当ての土産物を売る屋台の集まったような場所なのだけれど、このワット・ソートンでは参拝者は卵を寄進して願い事をすることになっているそうで、やたらと玉子が売られている。
数十個単位のケースでみんな買って行っているけれど、お寺の方では寄進された卵をどうしているのだろうか?
とても坊さんたちだけで食べきれる量ではないし、参拝者へ茹で卵にしてふるまっている様子もない。
考えられるのは、卵を市場の業者へ下取りに出しているのではないだろうか?
どこの有名寺院でも門前でお供え用の切り花を売っているけれど、仏像へお花を供えたらすぐに係員が来て花を回収している。
本来なら大量の生ごみが寺院から出されるはずだけれど、そうな様子はないので、きっとまたお供え花販売業者に払い下げているのだろう。
[ワットソートンはタイ人の間では大変有名なお寺]
卵以外に、これはこのあたりの名物なのだろうけど、カノム・ジャークと言うのがたくさん売られている。
これは笹の葉状の椰子の葉で餅米とココナッツで作った餡を包み、炭火で焼いたもの。
味は炭火焼なので香ばしくて、甘い餅米がなんとなく和菓子にも似ている。
市場内を歩いていると、売り子によく声をかけられる。
中には試食をさせてくれる屋台もある。
3月18日 (月)、タイでの生活もあと2週間を切って、ほんとうにもうこれが最後になるはずなので、タイ北部へのドライブ旅行に出る。
予定では、ウタイタニ県のサモートン温泉経由で、ナコンサワンとカンペンペット県境にあるドークラック・リゾートに一泊、それからミャンマー国境のメーソットに泊まり、ミャンマーとの国境になっているモエ川沿いに北上して、メーホンソン県のメーサリアンに宿泊、メーサリアンの次はメーホンソン、チェンマイと北部をぐるっと回って来るプランを考え、チェンマイまでのホテルは事前にネットで予約をしてからバンコクを出発した。
初日のサモートン温泉もドークラック・リゾートも、ネコとの思い出の場所。
サモートン温泉はウタイタニの奥地にある湖の中島に湧く天然温泉で、以前はバンガローがあって宿泊もでき、なんどもネコと一緒に出かけたものだ。
[湖と言っても農協用貯水池ではあるが、静かに湖畔であることには変わりない]
週末は温泉のある中島ではバンガローが満室のことが多く、温泉近くの農家がやっている小屋に泊まったりもした。
しかし、このバンガローは数年前から閉鎖されてしまった。
どういう理由かわからないし、建物も残っているけど、宿泊ができなくなっている。
キャンプはOKだけれど、キャンプをするような趣味はない。
そして、農家の小屋での宿泊も、廃業してしまったようで、サモートン温泉への宿泊ができなくなっている。
入浴施設はまだかろうじて健在で、直径が1メートルくらいの丸い湯船のある個室浴場を利用できる。
湖畔の温泉で、周囲の景色も良いのだけれど、温泉浴室には窓がないので、景色を眺めながらの入浴という訳にはいかない。
[硫黄分などがないのでシャンプーも泡が立つ]
ドークラック・リゾートは、ネコと実質最後の旅行になった場所で、本来ここに宿泊する予定ではなかったのが、バンコクからピサヌロークへ向かう途中で寄り道し過ぎて、やむを得ず一泊した場所。
もともと宿泊する予定にしていなかったので、十分な量のキャット・フードを持っておらず、夜になったらもうネコが食べられるものがなくなってしまっていた。
荒涼とした土地で、民家もほとんどないし、商店もないからキャットフードなど売っているような場所もない。
[ドークラックリゾート]
周囲が真っ暗になってから飛び込んだこのモーテル風の宿には、ネコたちが何匹もいた。
そして、そのネコたちのキャットフードを少し分けてもらって、私のネコは飢えをしのぐことができたいという縁があった。
今回は日没前にドークラック・リゾートへ到着。
宿の周辺、歩いて行けそうなところに食堂などはなく、宿にも食堂はないが、庭に東屋がある。
その東屋で持ち込んだ調理器具と途中の市場で買った食材を使って夕食を作って食べる。
この宿に何匹もいたネコたち、いまは一匹しか残っていないそうで、その一匹も、人見知りする性格らしく、私の前に姿を見せてはくれなかった。
3月19日 (火)、朝食にはやはり前日に市場で買ったマンゴーやパパイヤを買っておいたので、それらを食べる。
パパイヤはタイの在来種で、やたらと巨大で、長くてイメージとしてはスイカサイズのズッキーニ。
色合いはオレンジの部分と緑の部分が混ざり合ってて、あんまりきれいな感じはしない。
最近では田舎でしか見かけなくなってきており、バンコクあたりではハワイのパパイヤに似た品種が主流で、サイズも1キロくらいの重さまで、色はオレンジ色の一色とだいぶ見た目が改善されている。
しかし、田舎のパパイヤは、ちょっと臭くて癖があるけれど、食べ慣れると美味しい。
そして安い。
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ドークラック・リゾートを出発して、国道1号線に合流する交差点の近くでマプラーンを売っていたので買う。
マプラーンはマンゴーをぐっと小さくしたような果実で、見た目はビワに似ている。
しかし、種はビワと違ってむしろプラムに似たような種になっていて、種の周りの果肉は繊維質になっている。
このマプラーン、タイ人は皮を剥かずに食べる人も多い。
あまり大きくない実なので、いちいち剥くのが面倒なのだろう。
でも、やっぱり剥いて食べた方が美味しい。
あと、このマプラーンの改良種で、もう少し大きなマヨムチットという果実もある。
味の方は、マンゴーに似ていながら、マンゴーより上品だとされ、バンコクあたりでは高値で取引されたりするけど、この交差点で売られているのはバンコクに出荷して値が付くような上物ではないので、値段も安い。
そして、いちいち皮を剥くのが面倒に感じられるような代物。
[街道沿いで買ったマプラーン]
国道1号線から左に折れてメーソットへ向かうところでバンジャークというガソリンスタンドに入る。
私はこのバンジャークのメンバーになっていて、ここで給油するとガソリン1リットルに対して1ポイントのポイントが付く。
このポイントを貯めると、バンジャークのクーポンなどと交換できる仕組みになっている。
もっとも、5ポイントで1バーツ相当だから、大したことはない。
そのバンジャークのガソリンスタンドに併設されているのがインタニンと言う名のカフェ・チェーン。
インタニンとは紫色の花を咲かせるオオバナサルスベリとかバナバと呼ばれる植物(木)のこと。
そのインタニン・カフェでもバンジャークのクーポンが使えるのだけれど、クーポンとは関係なく、アユタヤ銀行のメンバー特典で、たぶん1か月に一回くらいの無料のカフェ・クーポンが利用できるようになっているらしいので、今回はその特典を利用してみる。
注文したのはアイス・タイティー。
むかしはタイの屋台なんかで出されていたアイス・ミルクティーなんだけれど、最近のカフェブームに乗って、このローカル飲料も人気急上昇。
煮出して濃いめに淹れた紅茶に練乳と砂糖をたっぷり入れたもので、色はオレンジ色をしている。
もともと私はカフェなんかへ入る趣味がないし、この手のアルコールを含まない飲み物にお金を出してまで飲みたいと言った感覚がないから、これまでほとんどタイティーなど飲んだことがなかった。
今回は無料クーポンが使えるので、試しということで一杯もらってみる。
大きめのカップの中には大量のかち割り氷を入れて、そこに濃いめの煮出し紅茶と練乳(甘くなかったのでただのミルクかもしれない)を注ぐ。
ガロシロは入れないでもらった。
甘くないので、むかし屋台で飲んだドロドロに甘いタイティーとは別物のような味になっているけど、氷がまだ解けないうちはや66gueaf[q['s[ たらと濃いので、しばらく放置して、氷が解け始めてから飲むのが良さそうだ。
[最近はなんでもプラカップになっている。数年前のプラスチック削減プロジェクトはどうなったんだる]
メーソットへの峠道、以前はミャンマーへ物資を運ぶ海洋コンテナのトレーラーが列をなして走っていたけれど、ミャンマーのコロナ後も軍事政権への反発で経済がマヒしているからか、トレーラーの数がめっきりと減っている。
そんな峠の途中に、ムソー族と言う山岳少数民の市場がある。
数年前までは道端の粗末な小屋が並んでいるだけの場所だったけれど、繁盛したのか大きなマーケットへと変わっていた。
売り物はムソーの人たちの栽培している野菜類が中心で、山岳地ならではの野菜や果物が目立つ。
値段もバンコクあたりの半額程度と大変安い。
[数年前に比べてずいぶんきれいになった]
メーソットではまずモエ川の国境市場へ行ってみる。
ここからは翌日またオンライン・ツアーの中継を予定しているので下見をしておく。
現在、タイからミャンマーへ陸路で国境を越えられるのはタイ人とミャンマー人で通行証を持つ人だけに制限されており、日本人含めて外国人は渡れない。
そのせいか外国人の姿は中国人さえ見かけない。
ミャンマー人は盛んに行き来している。
国境の橋を渡って来るだけでなく、橋の下には渡し船もある。
モエ側は大きな川できなく、また周辺の景色が美しいという訳でもない。
むしろゴミが散乱していて良い環境ではない。
そのモエ川の近くに国境市場がある。
売っているものは衣類から家電、宝石までデパート並みの品揃えだけれど、どこにも高級感などない。
ミャンマーのモノも売っているけれど、中国製の製品が目立つ。
[大きな市場だけど寂れた印象がある]
この国境市場よりも川沿いに遊歩道みたいな歩道があり、川側が鉄条網で張られている。
私はモエ川の中心がタイとミャンマーの国境線だと思っていたのだけれど、どうも国境は川の東側に寄っているらしく、この歩道の端が実質的な国境らしい。
鉄条網で仕切られた先、モエ川までの川べりにもバラックが立ち並びミャンマー人が住んでいる。
[この土地はミャンマーなんだろうか?]
そんな歩道に沿って戦後の闇市のような古材を寄せ集めて作った露店が並んでいる。
売っているものは洋酒やタバコが中心。
ワインやウイスキーばかりでなく、タイのビールもたくさん売られている。
それらはタイでの市販価格の半額ぐらいの値段になっている。
店はミャンマー側にあるのでミャンマー価格、または免税価格となっているのだろうけれど、タイ側に向いてタイ人向けに売っている。
堂々たる闇貿易、密貿易、税関逃れ、、、こんなことが許されてよいのだろうか?
国境警備はちゃんと巡回している。
しかも、物々しい自動小銃まで持っている。
でも取り締まっている様子はない。
[いでたちは物々しいけど、乗り物がスクーターと言うのがアンバランス]
売り手と買い手の値段交渉は鉄条網越しに行われ、交渉がまとまると買い手は国境越しにタイバーツの現金を売り手に手渡す。
これも国際送金ということになるのだろうか?
そして売り手は商品を黒いビニール袋へ入れて買い手に手渡す。
黒いビニール袋へ入れることで、中に何が入っているのか見えないようにして、一応は買い手が密輸品を持っていることをカモフラージュしているけれど、こんなに堂々とやっていると、黒いビニール袋をぶら下げている人は、密輸品を持っていることを示しているようになってしまう。
[こんな密貿易が黙認されているのが不思議]
こんな密輸商店とは別に、スイカや手長エビなどを売る店もある。
これらもミャンマーから持ち込まれたものだろうと思われるけれど、タイでは見かけないような巨大スイカが売られている。
ミャンマーではこんなに大きなスイカがあるのだろうか。
タイとミャンマーでは気候が似ているので、ミャンマーでできる農作物ならタイでもありそうだけれど、タイでは見たことがない。
ひょっとしたら中国からミャンマーを経由して運び込まれたものなのかもしれない。
手長エビはタイにもいる。
しかし、大きな手長エビはとても値段が高い。
ミャンマーではまだ天然の大手長エビがたくさんいるのかもしれないし、養殖にしても人件費が安いのだろう、タイの価格と比べてだいぶ割安で売られている。
市場の近くにはそうしたエビや海産物を食べさせる食堂があった。
[巨大なスイカと巨大な手長エビ]
宿はメーソットの住宅街の中のゲストハウス。
ここにチェックインする際に問題が発生した。
宿泊登録にパスポートを提示しなくてはならないのだけれど、カバンの中にパスポートが入っていない。
パスポートはいつもカバンの内ポケットに入れて持ち歩いているのだけれど、その内ポケットのチャックが開いたままになっている。
パスポートの出し入れ以外で内ポケットを開くことはまずないはずなのに、どうしたんだろう。
宿には事情を説明してチェックインだけはさせてもらうが、部屋に入っても気になる。
前年にイギリスへ行った時にも同じカバンの内ポケットに入れておいた非常金袋がなくなっていたことがあった。
それはたぶん大英博物館の周辺をお上りさんよろしくボケっと歩いていた時にすられてしまったんではないかと思うのだけれど、その時のことが思い起こされる。
[パスポートの有無など関係なく日は沈む]
この期に及んでパスポートがなくなるといろいろと不便なことが起こる。
日本へ帰るのにも面倒が起きるし、これからやるべきタイの年金手続きや車の売却などにも大きな支障が出てくる。
まったく困ったものだ。
このままタイ北部の旅行を続けるのも不可能判断して、翌日以降の宿をキャンセルする。
予約サイトからの前払い予約のため返金は望めないけれど、先方にも迷惑をかけるのでキャンセルの手続きだけはしておく。
3月20日 (水)、バンコクに戻ることにする。
本来ならパスポートを紛失したのがメーソットなら土地の警察署に届けて、紛失なり盗難の証明をもらうべきなのだけれど、バンコクにパスポートを置き忘れてきた可能性も捨てきれないので、警察への届け出はしなかった。
その代わり、せっかくメーソットまで来て国境だけ見て帰るのではもったいないので、近郊の温泉へ足を延ばしてみる。
車で30分ほどのところにお湯が湧いている。
メーソッドの温泉には昔チェンマイへ住んでいたころに一度立ち寄ったことがある。
当時はまだ入浴施設など整備されておらず、温泉卵を作れる程度だった気がするが、今回立寄ったらばなかなか洒落た入浴施設ができていた。
個室ではなく、広い屋根付きの施設の中に木製の風呂桶がずらりと並んでいる。
お湯は各自が勝手に湯桶に流し込むと言う形で、洗い場などはないけれど、簡素なシャワールームが別にある。
朝早く行ったけれど、すでに先客が気持ちよさそうに入浴中。
[この風呂桶はタイで作ったんだろうか]
建物自体は屋根はあるけれど壁がない吹きっさらし。
つまり、周りの景色が見渡せる露天風呂とおんなじ。
片面は駐車場を向いているので、景観は良くないけれど、反対側は田園風景が広がっている。
正直なところとても気に入った。
お湯の泉質はたぶん単純泉なのか無色無臭。
その日の源泉は温度が51.3℃と表示されてて、水でうめないと熱くて入れない。
[源泉かけ流しの半露天]
バンコクには日が暮れてから戻り付いた。
そして、ベッドの横には赤いパスポートが置かれてあった。
[私バカよね~]