1月24日 土曜日    天気は晴れ

 週末は忙しい。優泰を補習校に連れていったり、K.K.トラベルのカウンターを守ったり、予定としては夕方からはムエタイ(タイ式キックボクシング)のジムへも行きたいと思っている。時計を気にしながら市内をミニバイクで走り回ることになる。

 K.K.トラベルで仕事をしているのは、基本的には快適だし、お金にならないことを除けば、個人的にはさして不満もないのだが、スタッフたちについては、頭の痛いことが多い。問題はスタッフたちの会社への帰属意識が希薄なこと、つまりモチベーションの問題である。
 今日はこんなことがあった。私としてはK.K.トラベルを三流の旅行代理店に踏みとどまっていてもらっては困るのである。「チェンマイにK.K.トラベルあり」と言われるくらいになるまで育て上げたいと思っていて、紹介するホテルやツアー会社など信用のおける一流どころを選びたいと思っている。しかし、スタッフたちには、その辺がわかっていない。今日はある西洋人観光客からレンタカーの手配依頼が入った。本来ならば車両の整備状況、料金などで安心できるチェンマイ最大手のN社を紹介しているのだが、スタッフはそれを守らない。知り合いの中小レンタカー会社を勝手に紹介してしまう。タイ人の社会では、「だれだれと知り合いだから」と言ったことがしばしば登場する。これは知り合いだから良いサービスが期待できるとは限らない。たいていが個人的な目先の利益にとらわれたものである。つまり、スタッフは個人的に知り合いの業者にお客様を斡旋することで、個人的なリベートを受け取れるのである。これでは会社にとって金銭的にも信用でもマイナスだし、そしてお客様にも不利益が障じる。こんなことは、本当にいい加減な旅行社がやることである。私としては、正直なところ、K.K.トラベルは好きだが、このようなスタッフたちの体質は嫌いである。もっとも、これはK.K.トラベルだけの問題ではなく、どこでもありえる一般論ですけど。

 他にも、今日はスタッフから相談を受けた。彼女はマネージャー格で、別の市内大手の旅行社からヘッドハントしてきた、スタッフの中では使える方で、しかも元の職場から顧客まで連れてきてくれてK.K.トラベルにとっては大切な存在である。その彼女が言うのに、以前の顧客が元の職場に航空運賃の見積もりを取ったらしいのである。このお客様は仕事で毎年同じようなルートで、世界中を講演しに回られている。それが、今回見積もりを取るにあたって、従来担当していた彼女はもうK.K.トラベルに移籍してしまっているので、別の担当者に見積もりを依頼したらしい。そうしたらば、昨年と比べて見積価格が下がっていたのである。定価の国際航空券の場合、航空会社から旅行会社へ支払われる手数料は7%である。その手数料分をお客様に還元して、旅行会社では低下よりも数パーセント安く見積もるのが常である。実質的に旅行会社が受け取れる手数料など2〜3パーセント程度に過ぎなくなるのだが、彼女は以前その還元額を、顧客に出していた見積もりと、社内で計上した売上とで、違った額にしていたらしい。つまりその差額をポケットに入れていた訳である。それが、担当者が変わったことで発覚してしまったらしい。
 そんなことを私に相談してどうなると思っているのか知らないが、本人はちっとも悪びれたところがない。さも、当たり前のことのように言う。私は自分自身の売上などの出納はすべてデータベースに入れて処理をし、その記録をすべてログとして残しているが、他のスタッフたちは、メモ帖である。しかも、出納金額なども修正液で消して書きなおしたりしている。日本でなら考えられないことである。仮に修正するなら二重線で消して、修正印(サイン)を取りつけるべきであろう。それが、まるでおこなわれていない。修正液はタイでは大活躍で、役場に提出される書類なども修正液だらけである。しかもコピーだってまかり通ってしまうのである。考えようによっては、便利だが、いくらでも不正ができてしまう温床にもなってしまう。不正がはびこってはモチベーションなど上がるはずがない。もちろん、スタッフたちにも言い分があるだろう。1ヶ月にもらう給料が3000〜5000バーツ程度では、とても暮らしていけない。経営者も目先の人件費が気になるから、給料を上げる気がない。「ニワトリが先かタマゴが先か」である。

 では、そんなことを言う私は、そうした環境に毒されていないかというと、徐々に毒され始めているのだろう。3時過ぎに、あるチェンマイにあるインターネット・情報サービス会社からアプローチを受けた。この会社は、ネットを通じてタイ全国のホテルの予約サービスをおこなっており、サーチエンジンで"chiangmai"を検索すると、トップに出てくるようなサイトを持っている。そこから、日本人マーケットを開拓したいので、協力してほしいと依頼される。ホテルの予約に関して、粗利の半分を支払うと言う好条件である。金銭的に行き詰まっている私にとっては、渡りに船である。しかし、「ハイ、ありがとうございます」と承諾してしまっては、現在のK.K.トラベルと競合してしまうし、背信行為でもある。日本なら「AかBか」の選択を迫られるところだろう。タイだったら「AもBも」かも知れない。公務員も弁護士もアルバイトに精を出すお国柄である。もともと、このアプローチをしてきた事務所は、私と懇意の間柄のタイ人が紹介してきたものである。むげに断ることもできない。日本的にもできないし、タイ式も気持ちの上で納得できない。そこで、私としては第三の道として「AとBとで」と言う道を考えてみることにした。私という個人が協力したらば背信行為だが、会社同士でおこなえば、ジョイント・ベンチャーとポジティブに考えられる。お互いが持ち合わせているものと、不足しているものを補い合うと言うことができるのではないだろうか、、。そのためには相手側を良く知らなくては、、。

 ムエタイには行けなかった。K.K.トラベルの経営者から、「5時からの結婚式に代理で参加してほしい」と言うのである。「手土産は用意しておくから」と言うのである。結婚式と言うのは、私も良く知っているキリスト教関係者であるフィリピン人とタイ人のカップルである。まぁ、知り合いだし、お祝いに駆けつけるのは、当然かもしれない。でも、本心としては優泰とムエタイに行きたかった。が、経営者からの命令であればし方あるまい。私は代理と言う立場で結婚式に参加した。私の存在はK.K.トラベルの一無償スタッフと言う立場だけでなく、経営者にとって、大変使いやすい秘書のようなものかもしれない。

朝食

野菜てんぷらそば。

昼食

パッタイ。

夕食

韓国風お好み焼き。

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