12月22日 月曜日    天気は晴れ

 土曜も日曜日もなくK.K.トラベルに詰めているので、月曜日だからと言っても別段憂鬱になることもない。サラリーマン当時は月曜日が大嫌いであった。特に営業会議なんかがあると、ずる休みをしたかったほどだ。だいたい営業会議など、数字のスリ合わせだけをしていればよいと思うのに、数字の上がらない理由を探すことばかりの営業マン(私もです)が会議をしたって、何の意味もないのに、精神論をたれて、満足感でも味わっているのか、会議をすることに意義を感じている上司がいたりして、毎度うんざりしていた。でも、もうそんな生活からも遠くなってしまっている。

 本日の業務は日本のビザ申請が中心である。この週末に日本へのツアーを申し込んできた家族のビザを申請しなくてはならない。出発は来週だし、今週末には日本の役所は御用納めとなってしまう。さらに明日は天皇誕生日でビザ申請先の領事館業務もお休みである。タイ人が日本へ観光旅行をするに当たってはビザが必要なのだが、これがなかなか大変な作業なのである。ツアーへ申し込んできたのは市内で金屋を営む華僑系のタイ人親子4人で、子供たちに「日本へ行きたいよぉ」とせがまれてツアーに申し込まれてきたそうだ。必要書類だが、住居証明や預金証明、在職証明などさまざまな書類を求められる。
 ここの日本人係官は大変親切なのだが、タイ人の男性スタッフはあまり親切ではなかった。まず、K.K.トラベルの女性スタッフが申請書を提出したところ、「オタクはビザ申請の経験がないんだから、ツアーを主催しているバンコクの旅行社がビザを申請するのが筋だ」と門前払いをされてしまった。こっちだって時間があれば、バンコクの旅行社にやってもらいたいけど、時間がないからこうして頼んでいるのである。それにビザ申請の方法に関して、日本大使館のホームページにもそんなことはちっとも触れられていないではないか。うちの女性スタッフは、ツアーにも申し込んできた家族がいる前で、まるで小馬鹿にしたような言い方をされたことで、面子を失い、顔色が変わっていくのが見て取れた。こりゃ不味いと判断し、スタッフを後ろの席に引き戻し、私が交渉させてもらうことにした。このタイ人男性スタッフに再度私から依頼したところで、ラチが開かないと思われたので、日本人の係官に応対に出ていただく。とにかくこちらとしては、ビザが発給されるかどうかよりも門前払いをされてはカナワナイのである。旅行会社の使命とは「世界各国の人々の交流に便宜を提供し、世界平和に貢献することなり」との信条を私は持っている。こんなビザのことで、ツアー出発前に、日本に対するイメージダウンをされてはたまらない。特に、日本人の係官から門前払いをされたのではなく、同族であるタイ人スタッフからまるで見下されたように言われたのでは、私としてもトリナシように苦労したが、日本人係官が事情を聞いてくれて、「ではもう一度、ビザ窓口に書類を出してみて下さい。でも、ビザが出るかどうかは、別問題ですからね」と助け舟を出してくださった。
 日本人係官が指示してくれたのか、窓口に再度行ってみると、係りがタイ人の女性スタッフに代わっている。彼女とはワタノー学校の授業に関して支援をしていただいたりしており、面識がある。応対も先ほどのタイ人男性スタッフとは段違いである。まぁ、話し方が、私に対する時と、うちの女性スタッフに対するときとで、違いがあるのは、難しいタイ語のわからない私に対する配慮と、役所言葉で応対すべきタイ人同士の場合との違いであろう。嫌な感じはちっともしないし、ナァナァで処理したりせず、きっちり書類に目を通している姿は、やはり日本式の仕事はアソビがないと感じさせてくれる。
 ところでこの家庭の場合は、在職証明でケチがついた。金屋の登記は家族の父親の名義になっているし、預金証明は、家族の兄と共同名義になっている。つまり、個人分としての財産の証明がないというのである。共同名義としても、現金の預金金額だけで数百万バーツ、さらに株など、さすが子供にせがまれて日本ツアーへ申し込んでくるような華僑系タイ人というのは、お金を持っているものだ。金屋をやっているから、これらの財産以外に貴金属宝石類はどれだけあるか解らない。私なら、さっさとビザでも何でも出して、「今後ともよろしくお願いします」と名刺の一枚も手渡すところだが、、。やはり、ルールで決められたとおりに処理をしていくと、こんな書類一枚でも不備は不備なのだろう。仕方がないかなぁとも思われたが、でも、役所の仕事などというのは、法にのっとって進めて行くもので、それが行政機関の基本なのだろうが、法というものは、法を作るに至った精神こそが大切であって、文章化された法の解釈よりも、法の目的を重視すべきだと思う。ビザに多くの必要書類を求めるのは、申請者が日本入国にあたり、目的を偽って入国しようとしているのではないかを明確化させるためのものであろうし、日本に入国させて問題のない人物かを判断するのに必要な書類を求めているのに過ぎないのではないだろうか?であるならば、このような豊かで円満なタイ人家庭が日本へ旅行することに、どんな問題があると言うのであろうか?問題などなく、問題なのは書類上と言う名の問題だけではないのだろうか?いずれにしても、申請書だけは受理してもらえた。あとはこの金屋の主人が、どのような個人的資産を裏付ける書類を用意してくるかである。

 領事館では3時間も立ちっぱなしだったので、さすがに足が痛くなった。が、そのあと追い討ちをかけるように足を痺れさせる事態に至った。現在、優泰はムエタイ・ジムに通って、身体を鍛えているが、来週からは寺院に預けて寺院での生活体験をさせるつもりでいる。その預ける候補の寺院へK.K.トラベルの経営者に連れて行ってもらう。この経営者は熱心な信者で、寺院への寄進を欠かしたことがない。住職とも懇意だそうで、そんな彼女に紹介してもらえれば安心である。寺はトンパヨム市場からハンドン方向へ向かったランポン寺という五百年の歴史がある瞑想の寺院である。経営者に導かれて住職の前におずおずと進み出て、正座をしながら住職のお話を伺う。タイでは正座ではなく、横座りのような姿勢を取るのだが、私は日本人なので正座が良いと思っている。この寺にも日本人で瞑想に来ている人が一人いるそうである。また、優泰を来週の月曜日の朝から預かっていただくことに対しても、快く了解をしてもらえた。30分ほど正座をし、呪文のようなお経を唱えてもらって、退室しようとしたら、足が痺れきってしまった。チェンマイに来てからと言うもの、正座などすることがなかったから、たかだか30分ほどでもこのザマである。

朝食
お茶漬け。
昼食
豚肉のカレー煮込み。
夕食

ビーフシチューとパン。

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