2月21日 土曜日    天気は晴れ 

 何かの記憶違いだったのかもしれないが、本来毎週土曜日は優泰の補習校の日である。何にさておいても授業を受けさせたいと思っていたのだが、インターの学校で優泰が所属しているチェスクラブのトーナメントがランナー・インターナショナル・スクールで開催され、優泰はそこへ行くのだと言う。私はてっきり今日の午後からのことだと思っていたのに、確認してみると、朝9時からなのだと言う。まったく、残念なことだが補習校を休ませなくてはならない。優泰をミニバイクに乗せてコトコトと空港の滑走路外れにあるランナー学校まで優泰を連れていく。トーナメントの終わる時間は昼の1時だと言う。まったく、中途半端な時間である。

 午前中をK.K.トラベルで油を売っていたが、今日はどうしたわけかお客さんが少ない。特に私を訪ねてきてくれるお客さまがほとんどないのである。忙しいときは身体二つあっても足りないと感じるほどなのに、今日などはいてもいなくても同じに感じられてしまう。そんなわけで、売上もぜんぜん伸びない。たまに西洋人のお客さんが入ってきて「○○はどっちだ」と道案内を頼まれるくらいである。

 午後1時に優泰をランナー学校へ迎える。午後3時半から優泰は歯医者の予約が入っている。しかし、チェンマイの歯医者さんのことであるから、早めに行っても治療してくれるだろうとタカをくくって歯医者さんへ向かった。が、やはりそんな身勝手はチェンマイでも通用しないようで、1時半から3時までたっぷりと待たされてしまった。こんなに時間があったのなら、パソコンでも持参して、何か書類作りでもしていれば良かったと後悔する。
 やっと回ってきた診察だが、今回も優泰は診察台の上ってから抵抗をはじめた。口をなかなか開こうとしない。開いた口に反射鏡のついた器具を入れようとすると、歯医者さんの手を掴んで、抵抗する。「おぃ優泰、じっとしていないか」と注意しても、「だって、何するのか気になるのだもん」と言う。ドリルのスイッチが入った途端にワメキはじめ、どうにも手をつけられないので、左の頬にビンタを食らわせた。しかし、これが失敗であった。抵抗こそは収まったものの、今度は泣きじゃくって、身体が安定しない。さらに困ったことは、タイ人の歯医者さんや歯科助手さんの私への非難が始まった。タイでは子供に手を上げるのはご法度のようである。しかし、だからと言って、このままではいつまでたっても終わらない。歯医者さんも「それじゃまた次回にしましょう」と言う。私は最近の忙しい時間を割いて連れてきているので「時間がもったいないから何とか今日できることは今日やってほしい」と食い下がったが、認めてもらえなかった。時間がないほど忙しいと言うことが理解してもらえないのか、何なのかわからないが、「次回はいつ来られますか」との質問に「今以外に時間がないから私はもう来ません。妻と相談してから次回の予約を妻に入れさせます」と答えた。別に歯医者さんに腹が立ったわけではないが、もう優泰の歯がどうなろうと私の知ったことじゃない。自分でお金を稼ぐようになってから、自分で治療すればイイじゃないかと投げやりな気持ちになった。今度生まれ変わって、また家庭を持つことがあったら、もう2度と一人っ子の息子と末っ子の嫁さんはもらわないことにしようとグチりながら、ミニバイクに優泰を乗せアパートに連れかえった。優泰はまるで自分が勝利したかのように「もう歯医者に行かなくて良いんだよね」と嬉しそうにはしゃいでいる。

 そんなことがあったので、午後からK.K.トラベルにいても気分がムシャクシャする。チェンマイでお金を消費するだけの生活をしていた時と、会社の売上と収益を考えながら仕事をしている今を比べると、お金の価値に大きな差が生じていることがはっきり自覚できる。特に今日のような日は、1日の収益が100バーツにも満たない。こんなんでは店の維持費にもならないのではないか。私の1日は100バーツの価値もないということなのだろうか。もちろん、私の好きで働いていることだから、不満を言っても仕方がないし、すべては自己満足のためにやっていることに過ぎないが、本当にこのところ体力的にヘトヘトに疲れている。四六時中耳鳴りがするような感覚と、立ち眩みがある。こんな状態ではお越しいただいたお客様へ笑顔で接しられないのではないかと心配なる。「誰かのためにやっているんじゃない、自分のためにやっているんだから、嫌なら止めちまえば良いじゃないか」との考えも浮かんでくる。でも、どんなに疲れても私はこれが好きなのである。不満を漏らしながらでも、心の中は、溢れるくらいの満足感に満たされているのである。止めてしまったら空っぽになってしまう。空虚なことほど恐ろしいものはない。

朝食

パンとコーンスープ。

昼食

玉子チャーハン。

夕食

レモンツリーで買ってきた空芯菜炒め、豚挽き肉のバジル炒め、豚肉テンプラ。

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