ソンクランの水掛祭りも中日である。この水掛も日中日が高くなってからでなくてはほとんどおこなわれない。そのため、午前中などはほとんど普段の休日と変わらない。そんななかで、お客様が来店。日帰りトレッキングツアーとクッキングスクール、そしてスコタイ経由のバンコク行きの航空券の手配をおこなう。このうち航空券に関して、本日できることは予約のみで発券は休み明けまで待たなくてはならない。まったく、店を明けていながら、切符を発券できないと言うのはもったいない話である。もっとも、スタッフが私しか出社していないから仕方ないことなのだが、このソンクラン・タイ正月休みは日本の帰省ラッシュ並に各交通機関の混雑は激しく、切符の入手が困難である。にも関わらず、タイの人たちと言うのは、事前の手配と言うものが、あまり好きではないらしく、バンコクなどからの観光客の人たちは、帰りの切符を持たずにチェンマイに来ている人たちが結構沢山いる。その人たちが、「明日のバンコク行きの切符がほしい」と言ってカウンターにやってくる。もちろん満席ではあるのだが、航空端末を根気良くたたいていると、ときどきキャンセル待ちが取れたりする。が、せっかくキャンセル待ちを取っても発券ができないのだからどうしようもない。みすみす商売チャンスを逃している。
本日も午後から優泰たちをK.K.トラベル前の水掛合戦に参加させるために、アパートまでビートルで迎えに行く。もう酷い渋滞で、特にラム病院前では200メートル進むのに１時間もかかってしまった。３時過ぎに迎えに行くからアパートのエレベーターホールで待っているように言っておいたのに、アパートに着いた時は４時を回っていた。それから再び優泰たちを乗せてK.K.トラベルまでUターンである。特にこの渋滞、堀の内側よりも外側の方が激しい。アパート前からもう大渋滞で、ほとんど進まない。はじめはエアコンをかけていたが、途中でバッテリーが心配になって、エアコンを止めた。
ラム病院近くの交差点も大渋滞である。信号があってもほとんど機能しておらず、溢れた車は交差点内でさまざまな方向を向いたまま動けなくなっている。私のビートルもその渦の中に巻き込まれ、身動きが取れなくなっていた。そして、動けずに止まっていたところ地震でも起こったのかと思うように、大きな音とともに車体が揺れた。一瞬祭りに興奮した連中がビートルによじ登ってきたのかとも思ったが、そうではなく、ビートルのお尻に赤い乗合ピックアップトラックが食いついていた。チェンマイは本当に運転の下手な連中が多い、たぶんこの運転手もヘタクソナのだろう。ビートルのテールランプは粉々に壊れ、ランプもつかなくなった。車体には傷がつき、ビックアップトラックの赤いボディーペイントがこびりついている。相手の運転手は、「マイペンライナ(大丈夫だよ)」と気楽なことを言っている。こっちとしてはちっとも大丈夫なんかではない。ビートルのプラスチック部品は交換するしかないし、古いビートルのこの手の部品は結構高いのである。私は相手の運転手の元へ近づき、抗議しようと思ったが、「しょうがないジャン、渋滞してんだから、ソンクランだからさ、マイペンラーイ」と取り合わない。抗議している私に対しても容赦なく水がかぶせられる。しかも交差点の真中である。我ながら、こんなところでずぶ濡れになりながら抗議しても、何にもならないと諦めた。とにかくソンクランは祝いの祭典であり、この期間中に腹を立てたり怒ったりすることは厳禁とされているので、泣き寝入りするしかない。まったく、祝いの祭典のはずが、こっちは泣きっ面の祭典である。休みが明けたら修理に出さなくては、、。またまた痛い出費である。
K.K.トラベルにたどり着いたのは、６時過ぎであった。私はまだ今日の残務整理が残っていたので、濡れた衣服のままデスクワークをしていた。ところが、デスク上に置いておいた書類が散乱している。そして、いつくかの予約カルテがなくなっていることに気がついた。外で水掛合戦をしている経営者の親戚連中に「書類を知らないか？」と聞くと、「知らないよ」と言う。が、何人もに確認していくと、やはり犯人はこの酔っ払いながら水掛をしている親戚連中であることが判明した。「電話のメモを書くために使っただけだよ」と言う。人の書類をメモ用紙代わりに使うとは何たることかと思ったが、今日は怒ってはいけない日。「で、そのあと書類をどうした？」と聞くと、「もう用事が済んだから捨てたよ」とシャーシャーとお答えになられる。まぁ、私の書類はすべてパソコン上にデータとして残してあるから大事はないが、マイペースな人たちに囲まれて仕事をこなしていく事は大変難しいことをまたも思い知らされた。まぁ、これが日本人経営の会社と日本人が使われる会社の違いなのだろう。