ソンクランの水掛祭りが、もう完全に始まってしまっている。もともとルール無視が横行する水掛合戦だが、今年は開始日まで無視されているようだ。
本日もスタッフに対するグチから始めます。スタッフのカウンターでの昼寝について、昨日より積極的に注意をしていくことにした。まぁスタッフたちから煙たがられても、もうこの際だから、関係なく、ビシビシやっていこうと思う。それがチェンマイのビジネス・スタイルに合わなくても、押しとおしてしまおう。
本日も、カウンターに臥せってスタッフが昼寝をしている。「オイ、オイ、ここは仕事をするところだよ、寝ているなら書類の整理くらいしたらドウかな」と注意をしたところ、「マイサバーイ(調子が悪い)、頭が痛いんだ」と答えた。どうやらチェンマイではこのマイサバーイも免罪符用語のひとつで、これを口にしたらすべてが大目に見られてしまうところがある。まぁタイ人がどれほど「サバーイ(快適)」にこだわっている民族かを象徴しているのかもしれない。が、もう免罪符用語も受け付けないことにしようと私は決意しているので、「具合が悪いなら、裏へ行って休んでいなさい」と促がした。K.K.トラベルの建物2階以上は経営者の住居となっており、キッチンが裏にある。従業員たちは、1日に何度もこのキッチンで何か食べたりしながら油を売っている。だいたい、9時過ぎに出社してきて、カウンターに就くのではなく、裏のキッチンで朝食を食べ始め、それに1時間くらい時間がかかる。昼も然り、午後のおやつも然りである。にもかかわらず、「裏はエアコンがなくて暑いから、もっとマイサバーイになる」と言って裏へ行くことを拒んだ。
そのマイサバーイのはずの彼も、昼過ぎになって店の前でも水掛け合いのバカ騒ぎの嬌声が聞こえてくると元気に外へ飛び出して、大はしゃぎ、ずぶぬれになって戻ってきた。おかげでカウンター内は水浸しである。もっとも、水浸しにしたのは彼だけではない。チェンマイの水掛合戦の最激戦地を楽しもうと、経営者の親戚たちも集まってきていて、その子供たちがカウンター内を遊び場と心得てはしゃぎまわっている。もう、完全に仕事ができる状態ではない。私のストレスは最高潮に達しつつある。私はなんとしても今日中には4月からの各航空会社の航空運賃表をホームページにアップしなくてはならないと考えているし、アップする前に仕入れ原価と販売価格、他社との料金比較など、書類にまみれながら神経をすり減らしている。しかも世界的に有名なお祭り騒ぎの中心にあって、一人黙々と作業をしている自分が心底バカらしくなってくる。自分の為に働いているのだと言い聞かせても、「なんで」と何度も自問してしまう。
夜、U先生に誘われて道楽と言う居酒屋風の日本料理屋へ行った。今日はストレスで押しつぶされそうになっていたので、誘ってくださったU先生には申し訳ないが、相当に浮かぬ顔をしていたことだろう。私はチェンマイに住んでいても、K.K.トラベルのカウンターに来てくださる日本人の方以外とはほとんど接触がないので、ここの日本人社会の動向にはまるで疎い。U先生はチェンマイに常時住んでいらっしゃるわけではないが、実に情報に精通されている。どこどこの誰それがチェンマイを引き上げるそうだとか、あそこの日本風定食屋さんは経営権を手放したがっているようだとか、、。もっとも、U先生は噂を垂れ流されるような方ではまったくなく、学者だけあって、きちんと検証された情報しかお話になられない。お付き合いになられている日本人もまじめな方が多い。その先生がこう現在のチェンマイ日本人社会を評された「末期的ですね」。本当である。ただ物価が安いと言う言葉に踊らされてやってくる新参日本人、その日本人相手に無認可の商売を志す先住日本人、そしてそれをただ回りで煽りたてている日本人、、。どこにもタイ人の顔が見えない。私はチェンマイの魅力は、仕事の面では困りモノのチェンマイ人そのものにあると思っている。いい加減な連中ではあるが、根は悪くない。心もやさしい。たぶん、バンコクや他の都市と比べても、これほど良い人たちが集まっている町は少ないのではないだろうか?永らく都であったこと、生活水準もそれほど低くなく、そして出稼ぎ者の比率がバンコクなどより低く、チェンマイ人がチェンマイを愛していることが、チェンマイを良い町にしているのだと思う。そのチェンマイの人たちは、今の日本人がチェンマイで繰り広げているドロドロを知ったら、きっと残念に思うことだろう。