最近よく「日本へ帰られちゃうんですか」とか「まだしばらくはいるんですよね」と言ったことを言われて、答えに窮することが多い。私としてはまだまだここにいたいのだが、物理的に立ち行かなくなってきているのだから仕方がない。日本に残したボロ屋も無人のまま放置して、朽ちかかっているだろうし、にもかかわらず住宅ローンは確実に私の口座から毎月大きな金額を削っていく。固定資産税なんてものまで加わってくるし、生命保険や損害保険もバカにならない。年金だって自動引き落としである。チェンマイでの生活に直接関係無い経費が、私たちが帰国後に暮らしていくためのわずかな蓄えを減少させる。この長い不景気で、帰国しても再就職のメドもすぐには立たないだろうし、1日も早く帰国して就職活動をしなくてはいけないのだが、「チェンマイで3年間遊んでいました」とは、就職面接で答えられない。「これをやってきました」と答えられるものがほしいと思って、K.K.トラベルで尽力しているのだが、どうやらどれほど尽力しても、「これをやってきました」と言えるだけの結果が上がってこない。結果が上がらなくさせているのは、私を手放そうとしない経営者の作戦かもしれないが、まぁそこまで頭が廻る人ではないし、ダラダラ・スタッフが足を引っ張っているだけとも考えられるし、本当のところは、私自身に十分な能力が無いだけと言うことかもしれない。
そのスタッフの中でも、私の最大の失敗はギフトさんを雇ってしまったことだと思う。苦労を惜しむことのない小屋がけ食堂の娘さんだし、チェンマイ大学も出ているので、私ははじめ施設秘書に採用したのだが、ちっとも仕事を覚えようとしない。施設秘書は解任したものの、まだ経営者直々に再雇用されて現在に至っているが、勤務態度は変わらず、女性雑誌をながめたり、ネットサーフィンをして1日を過ごしている。簡単な仕事くらい覚えてやってほしいものなのに、「できない」「わからない」で私に作業が廻ってくる。しかも、横で見て覚えようとしてくれれば良いものを、まるで関心を示さない。
本日は西洋人の男性が、イギリスに電話をしたいと言って入ってきた。国際電話サービスも業務のひとつで、電話機を貸して、通話時間相当の料金を頂戴するものである。私は書類作りの事務作業をしており、そのくらいのことならとギフトさんに対応させてしまった。ギフトさんは何度もダイヤルを回すが、電話がつながらないらしい。「なにしてんだ?電話のかけ方もしらないのかぁ」と思って、私が代わりにダイヤルしてみた。なんと先方は留守番電話であった。たとえ留守番電話でも、電話がつながったからには電話会社に電話料を支払わなくてはならない。が、何度もダイヤルをしては「おかしい」と言って切っていた分まで、お客に請求するわけには行かない。こちらは大赤字である。仕方ないから「1回分だけの通話料金を請求しなさい」とギフトさんに指示した。後で集金伝票をきちんと書くように指示したら、「自分は何も話していないから、お金は払わない」と西洋人は言って出ていってしまったと報告を受けた。私はまったく呆れてしまった。既に発生している経費の赤字は仕方ないとしても、お客にしっかりした説明もできないようでは、「役立たず」としか言いようが無い。その後も、男性スタッフ見習とのおしゃべりに興じたままで、まるで会社に損害を与えたことに対して反省の色が無い。今後は日本の会社流に会社に損害を与えた場合は「始末書」を書かせるようにすべきかもしれない。でも、まぁ無理だろうなぁ、、、。
夕方から、インペリアル・メーピン・ホテルのパーティーに参加する。このメーピンホテルが正式にタイの国のホテル格付で4つ星と認定されたそうである。昔からメーピンホテルは4つ星ホテルとして知られていたが、どうやらそれは自称4つ星ということだったのかもしれない。たぶん、チェンマイにいくつもある4つ星ホテルの多くも実のところは自称4つ星に過ぎないのかもしれない。そして晴れて公認4つ星と認められたことを祝して関係者を集めての祝賀パーティーが開催され、私もお呼ばれしたのである。パーティーは盛大なものであった。着飾った来賓客や晴れやかな顔をしたホテル関係者で、大きなホールは一杯であった。立食形式ながら料理もふんだんに用意されており、飲み物もタイでは高級なワイン付きでである。ビールも生ビールである。ステージではフレスリー・ショーなども披露された。まぁ顔も声も似ていなくて、ハワイのそっさくさんによるプレスリー・ショーとは大きく異なったが、、、。まぁ似ていたのはステージ衣装と、タレントさんの体型ぐらいかなぁ、、。テレサテン・ショーもあり、こちらはちっとも似ていなかった。テレサテンと言えば、このメーピンホテルを定宿として、そしてここで発作を起こして死んだのあり、このメーピンホテルとは縁が深いと思うのだが、こうした祝賀のパーティーの余興に、テレサテン・ショーを組むとはあまり縁起の良くないように感じるのは、日本人的な感覚に過ぎないのかもしれない。タイ人感覚からすれば、世界的な大スターの定宿だったことを、アピールする絶好の機会だったのかもしれない。パーティーでは10時過ぎまで楽しませていただいた。メーピン・ホテルは客室こそ広くは無いが、立地の良さや機能性などで、間違い無くチェンマイを代表するホテルのひとつであろう。オープンして15年にしてようやく4つ星に公認されたのがむしろ不思議なくらいである。