9月29日 月曜日    天気は晴れ

 朝一番、ワタノー学校の車で県庁へ向かう。事前に何のために県庁、しかも教育省の部門に呼び出されたのかはっきり判らないのだが、生徒のテスト結果を持ってくるように言われていた。さて、いったいどうなるのかなぁ、いつものように「お飾り」でいいのかなぁと半分不安があったのだが、県庁4階で面会した担当者は日本人であった。国際協力事業団から派遣されている若い方で、タイ北部の日本語教育に関しての指導助言をされているそうである。で、私へは、後期の授業に関して、「授業計画を提出するように」とのことであった。と言っても、突き放すような言い方ではなく、学校へ授業計画を提出するのはルールであり、そのためにはこのような形で作ったらどうだろうかと言う助言であった。なお、学校内での日本語の授業の位置付けや、前期の授業の授業内容などについても質問を受けた。基本的には正直にありのままの状況を説明した。日本語の授業は二年生と四年生に対して、週一時間であること、学校の行事でしばしば休講になってしまうことなどの問題点についても言及した。どうやら、週一時間の枠しかない学校はワタノーしか北タイではないようである。他の学校(ハイスクール)では最低でも4時間あり、熱心なところでは8時間もあると言う。ハイスクールの6年間で、これだけやれば日本語力も結構つくであろう。大学の入試科目で日本語を選択することも可能だと思う。しかし、パヤップ大で日本語を教えられているO先生から以前に助言をいただいているのだが、ハイスクールの限られた時間内で日本語を教えると言うことは、日本語をマスターさせるということよりも、むしろ日本語と日本への関心を醸成することを目標にすべきだと思っている。タイの生徒たちがもともと持っているテレビや雑誌などから受ける日本への漠然とした憧憬を、言葉や日本人(私)と接することで、興味の方向性を具体化させて、さらに生涯を通じて日本への関心を持ちつづけてもらえるようになってほしい。日本語の能力そのものは、大学ででも、語学学校ででも習ってもらえば良いのではないだろうか?受験対策として日本語を教えている他校では、高学年になるにつれて、本気で勉強する生徒とついて行けずに投げ出してしまった生徒の二極化してしまっているらしいではないか、自分としては、投げ出されて日本への関心を失ってしまう生徒を絶対に出したくないと考えている。そんなことを担当者に説明させていただき、理解をしていただいた。実際には、これ以上の時間を持たされたら、私は授業に責任をもてないと言った事情もあったのではある。

 昼からは茨城県から中学3年生の息子さんを連れた親子と面談する。息子さんは小さい頃から英語を勉強していて、中学校を出たらば、留学をしたいという希望をもっているそうで、海外各都市の留学事情を調べに回っているそうで、チェンマイもその候補のひとつだそうである。仮にチェンマイでの留学を考えたときに、入学先は当然現地校ではなく、インターナショナルスクールとなる。その学校情報を聞きたいと言うのが面談の趣旨である。以前にもメールで問い合わせを受けていたのだが、単純に英語力を伸ばし、数年後には更に海外の上級学校への進学を希望するのであれば、チェンマイという環境はベストとはいえない。既存のインターナショナルスクールと言うのは、あくまでも海外からチェンマイに赴任した家庭の子弟教育の機関である。そのため、上級学校の進学を目指そうとすると必然的に大きな壁にぶつかる。上級生になると、受験のために母国へ帰国するなどが一般的であり、進学には有利でない。進学さえ考えなければ、学校内には多くの国々から生徒が集まり、コスモポリタン的な雰囲気があって、そんな環境で勉強するのは、受験勉強以上の経験になるとも思えるのだが、本人は上級学校への進学が目標なのだから、方法論としては妥当でなさそうだ。唯一郊外に新しくできたプレムセンターは、赴任者子弟の教育ではなく、広く世界から国際人になるための生徒を募集すると言った、従来とはまったく違った教育方針を採用している。親御さんは息子さんと一緒にチェンマイでの生活を考えているようなので、チェンマイでこの親子の目的に合致しているのはプレムしかなさそうなのだが、しかし何よりも学費が高い。日本の医科大学並みの学費である。せっかく物価の安いチェンマイに家族で来ても、これでは欧米への留学よりも割高になってしまう。自分も常々子供の学費のやりくりに頭を悩ませているので、金銭的な負担のことを考えてしまう親御さんの気持ちは痛いほど良くわかる。

 夕方からは、また別の方と面会する。ご夫婦で北タイを旅行されているそうで、私のホームページをご覧になられて、私に関心を持たれたそうで、私に合ってみたいということで、私はこのご夫婦が滞在しているチェンインホテルを訪ねた。1時間半ほどチェンマイでの話や私の個人的な話、そしてご主人は大手の通信機器メーカーに勤務されていたそうなので、タイの通信事情などについて話をした。私を尋ねてこられる方の大半が、「失業中」とあるのにどうやって暮らしているのかと質問されてくる。「忙しそうにされているから、収入はちゃんとあるんでしょう」と聞かれる。答えは「収入は得ていません、銀行の貯金を切り崩しながらの生活です」と答えているが、それが事実である。いくら忙しくしていても、私は原則的には対価を求める気がしない。対価とは一体いくらなのだろうか?日本でなら、一本の半日仕事で「一万円」いただきますと言えるだろうが、タイの手間賃作業など一日働いても「100バーツ」が良いところだろう。日本人だからと言っても、私の場合その道のプロたるタイ人以上の能力があるわけではない。しかも、こんな「はした金」のために不法就労、資格外活動で検挙されるような危険など冒したくない。だから、私が仮に忙しくても、それは私が興味を持ったことだから、やっているだけのことである。興味の無いことだったら、ヒマなときでもやる気は起こらないだろう。
 このご主人からは日本からの手土産としてパソコン用のチップを2枚いただいた、しかし、私のパソコンのラップトップのため、このチップは使えない。まぁいただいておけば、そのうち誰かのパソコン修理を依頼されたときにでも使えるかもしれない。ありがたく頂戴をする。

朝食
ご飯とありあわせ。
昼食
もち米とナムプリック。
夕食
ご飯と餃子、韓国風の湯豆腐。

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