5月18日 日曜日    天気は曇り   

 どんよりとした曇り空である。このくらいの天気が暑過ぎず丁度良い。ちょっと雨に降られそうな気もするが、曇っているだけでなかなか降らなさうな気もする。たぶん降らないだろうと考えて家族で外出することにした。日本も5月といえば新緑の季節だが、チェンマイも今の季節新緑が美しい。長い乾季の間、葉を落としていた樹木が、雨が降るようになって一斉に大きな葉を広げだした。本日の目的地はシリキット植物園。我が家から車で1時間とかからないごく近いところにある。ビートルの走りもこのところ快調で、アクセルをそれほど踏み込まなくても、時速80キロほどを維持しながら安定して走行してくれる。
 メーリムの先の交差点で左折をする。つい先日までこの交差点周辺にはイチゴ売りの屋台がたくさん出ていたのだが、さすがにもうイチゴは並んでいない。去年と比べるとイチゴの季節が長かったような気もする。去年なら2月にはイチゴも姿を消していたが、今年は4月になっても見かけたりした。しかし、去年と比べてイチゴを食べる機会はずっと少なかった。去年はちょっと物珍しさもあって買って食べていたが、日本のものほど甘味も強くなく、ちょっと硬くて酸っぱいので、敢えて買って食べる気にもならなかった。

 メーサの象キャンプ前を通りかかると、入り口に3歳のメス象「ワンペン」が客を呼び込んでいるところであった。この象はとても芸達者で、ここのキャンプの人気者である。入り口脇にビートルを止めて、9時40分から始まる象のショーを見せてもらうことにした。以前ならこの時間のショーに合わせてチェンマイから大型観光バスが何台も数珠繋ぎになってやって来たものだが、今日は大型バスは2台しか入っていない。あとは小型のバンなどばかりで、それも大した数ではない。ショーが開園してもお客さんの入りは去年あたりの3分の1にも満たないだろうか、、。やかましいほどだった中国人観光客の姿は皆無だし、日本人も団体では見かけない。欧米人もちらほらで、むしろ従来見かけなかったタイ人観光客の方が多いくらいである。これではここのキャンプの経営も辛いだろう。象だと簡単にリストラするわけにもいかないし、ましてや、客入りに関係なく、象たちは大食漢だ。
 タイ人というのは本当に象が好きな国民のようだ。タイなら象などたくさんいるし珍しくもないのに、タイ人観光客たちは象たちのショーに大喜びで拍手を送り歓声を上げている。彼らならもう何度も象のショーを見てきているだろうに、、、。その点では優泰も同様で象たちの動きに大喜びである。もつとも、優泰の場合は、象たちが象使いの命令に従って動いているとは思っていないらしく、「象さんが踊っているよ」とか「あの象さんずるした」などと言う。

 ショーの後、このキャンプで生まれた赤ちゃん象たちを見に行く。キャンプの奥で母親象と一緒にいる子象たちは生まれたばかりとは言え、かなり大きい。今年生まれた子象でさえ、熊くらいの大きさがある。まだ体の大きさと比べると鼻が短く細い。生まれてすぐから人間と接していたからかひとなつこい。バナナやサトウキビを買って与えようとしたら、象のエサ売りはずいぶんとどっさりバナナやサトウキビをくれた。赤ちゃん象はまだバナナやサトウキビを食べられないようで、これらのエサはもっぱら母親象が食べた。2歳ほどの子象も、バナナは喜んで食べるが、サトウキビはまだ硬すぎて食べられないようだ。鼻ではサトウキビの甘い匂いに誘われてか「欲しい、欲しい」と鼻を伸ばして来るが、口に運んでも食べきれないようだ。

 11時過ぎにシリキット王妃植物園に入る。私は植物園前の駐車場にビートルを止めて入場しようとしたが、お母さんが「車でそのまま入ろうよ」と言う。タイのこうした施設の多くが車でも入れるのだが、車も入場料が必要になるので私はわざと入り口前に駐車しようとしたのだが、その目論見は簡単に崩れてしまった。ちなみに大人の入場料は20バーツ、車は一台30バーツである。
 入り口から急な傾斜の道を登っていくとガラスハウスと書かれた看板が出ていた。植物園でどうしてガラスなのだろう。日本の商業趣味丸出しの施設を見習って「ガラス工芸品展示即売・製作工程の見学もできます、旅の記念に手作りランプをどうぞ」的な土産物屋でもあるのかと思って、そのまま進んでいくと、ガラスハウスが見えてきた。それは土産物屋などではなかった。ガラス張りの温室である。規模から言うと東京・吉祥寺にある井の頭公園の熱帯植物を集めた温室くらいの規模がある。しかし、一年中真夏のタイで、一体温室がどんな役割を果たすと言うのだろうか、、。温室の入り口にレインフォレスト(熱帯雨林)と書かれていた。今日は曇りで日差しが弱いとは言え、外気音はすでに30度近くまで上がっているだろう、さぞ温室内は蒸し暑いだろうと覚悟して入ってみると、これが拍子抜けするくらい涼しいのである。温室の中央に落差5メートルほどの人口の滝がしつらえており、水が盛大に流れ落ち、飛沫を飛ばしている。そのために館内が涼しくなっているらしい。
 この大きな温室以外にも、よく東京近郊の農家が園芸栽培に使っているような細長い温室が幾棟もあり、サボテンやベゴニア、そしてタイの幼木などが鉢植えで並べられていた。温室周辺は芝生になっており、あちこちに花壇も整備されて、サルビアやツツジが咲いていた。

 昼食を植物園内の簡易食堂にしてちょっと値段が高めの店に入って食べる。山の斜面にある食堂で調理場は簡易食堂と同じだが、食事をするテーブルは屋外にあって、森の中でのピクニック気分が味わえる。これもタイでの常だが、テーブルで食事をしている人たちの何人かは、ビールやウイスキーのソーダ割などを飲みながら料理をつまんでいる。その光景は日本の花見にも似ているが、タイの場合シーズンに左右されないところが味噌である。私も大きく枝を張った木の下のテーブルでヤムウンセンなどをツマミにメコン・ウイスキーなど飲みたいものだが、昼間はアルコールを飲まないことにしているし、それにビートルの運転もある。口惜しいけれど我慢しなければ、、。

 昼食後、園内を流れる渓谷へ降りて優泰に水遊びをさせる。岩場があって流れは岩の上をすべり、ちょっとした滝のようになっている場所で優泰を水に入れる。はじめは流れが急なのでヘッピリ腰で恐る恐る水に入っていった優泰だが、しばらくするとすっかり流れになれたらしく動きが大胆になってくる。私も水に入りたいところだが水着を持ってきておらず、岩の上から優泰の写真を何枚か撮った。岩から岩へ飛び移りながらシャッターチャンスを狙っていたが、岩にコケが生えていたのか、足を滑らせて私は渓谷の流れの中へ衣服をつけたまま落ちてしまった。ズボンからシャツまでずぶ濡れとなってしまった。この渓谷で遊ぶこと1時間ほどでチェンマイ市内へ戻ることにした。優泰はもう少し遊んでいたかったようなのだが、お母さんが岩に腰掛けて待つのに退屈してしまったようで、「雨が降り出しそうだからもう帰ろう」と言う。

 

朝食

きしめんの味噌和え。

昼食

シリキット植物園内にて生唐辛子炒め。

夕食
焼きサバとグリーンサラダ。

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