7月18日 金曜日    天気は晴れ

 タオ島最終日。船の出港は午後からなので、午前中はのんびりしていたいところだが、どう言うわけかタオ島の多くの宿屋がチェックアウトの時間を日本風に午前10時としている。こんなことなど日本風にして欲しくはないが、たぶん、タオ島へ来る船の時間が午前10時頃に集中しているから、出て行く人はそれまでに出て行ってもらって、新しい宿泊者を確保したいと言うことなのだろう。そのため、我々も10時には荷物をまとめて、チェックアウトをしてしまい、宿屋のプールサイドで過ごすことにする。とにかく、ここのプールサイドはとても涼しくて快適なのである。

 昼ご飯も宿屋の食堂で簡単に済ませる。これもタオ島の均一価格なのか、オカズのせご飯は、最低が50バーツとどこも決まっているようで、オカズの内容がタイ料理の範囲ならば、ほとんどどれも同じ価格である。今回私は生唐辛子炒めライスを注文した。優泰は卵焼きのせご飯。どちらも50バーツである。エビチャーハンも同じだ。まったく能のないことである。宿屋の親父さんは13年前にチェンマイに住んでいたことがあり、当時チェンマイでラジオの番組を持っていたそうである。私も今チェンマイで番組を持っているよというと、とても懐かしそうにしていた。「チェンマイは気候がいいからなぁ」と言うので、「いやいや、この宿は涼しげでもっとイイじゃないか」と言うと少し照れていた。初めはこの宿屋の主人とカミサンの愛想はあまりよくなかった。一概にタイのビーチリゾートにある小規模宿泊施設は、ケチケチ旅行をする西洋人たちが多く利用していて、彼らのあつかましさに慣れてしまったのか、同化してしまったのか、宿屋側の人もすれている人が多い。客を客扱いしないと言うか、投げやりな感じのするところがあったり、変に媚びていたりする。私はその手のは嫌いなのだが、二泊目ともなり、ようやく宿屋の人間も気心が知れてきたような気がする。

 2時発の船を待つ桟橋前は、大きな背負い荷物を持った若い西洋人で一杯であった。たぶん百人はくだらないだろう。もう乗船する前から憂鬱な気分であったが、実際に乗船してみると、エアコンの効いた船室に入ってくる西洋人はほんの少ししかおらず、ほとんどがデッキで日光浴をしている。狭いデッキに大荷物と一緒なので、デッキ上は当に足の踏み場もない混雑である。しかし、船室はガラガラで涼しく快適であった。むしろエアコンが効きすぎて寒いくらいであった。帰りの船もやはり遅れた。航行速度はそれほど遅く感じなかったが、5時頃に本土側のチュンポンの港に到着すると聞いていたのに、実際に接岸したのは6時近かった。まぁ、今晩はこのチュンポンに宿泊するつもりだから、多少遅れても気にならないが、、。

 チュンポンではパラドンインと言うちょっと古いけどしっかりしていそうなホテルに泊まる。このホテル、先日タオ島旅行をされたチェンライ・J.Travel社長夫妻が汽車を待つ時間利用し、快適でしかも素泊まり(ご休憩か?)350バーツと安かったとメールをくれていたので、私はその金額に釣られてここに泊まることにした。まぁ旅行会社の経営者夫妻と我々のような一介の日本人とでは料金が違うのは当然だが、それでも450バーツであった。しかも、朝食まで込みになっていると言うから、むしろ安いくらいだ。チェックインの際に「ホタルツアーは扱っているか」とフロントに確認をする。往路でサムットソンクラムでホタルを見逃しているので、チュンポンで敗者復活をしたいと思ってい。ウェブで調べるとチュンポンでもホタルツアーがあるらしい。しかし、ここの従業員はそんなツアーなど知らないと言う。ホタルなど昔はいたが、もういないのではないかと心細いことを言う。まぁ、しかたないか、、。

 久しぶりにバスタブに湯をためて風呂につかり、7時半に夕食に出かけることにした。キーを預けにフロントに寄ると、先ほどの従業員が「ホタルツアーはカバナリゾートが募集している」と情報をくれた。「出発は7時半だけど、今日はお客がいなくてツアーキャンセルになった」と教えてくれる。なんでも、4人以上集まらないと催行しないそうで、参加費は一人400バーツだそうだ。まぁ残念だけどしょうがないさ、、。それより、私の軽い質問に対してここまで誠実に調べてくれたことがとても嬉しくなった。
 が、ホタルなどツアーに参加しなくても見られるのではないかと思い、タクシーでもチャーターして捜しに行こうと考えた。街中を歩き回ってタクシーを捜したが、タクシーはおろか三輪車も乗合ピックアップも走ってやしない。一回りしてあきらめかけたところでバイクタクシーを発見。ライダーに「ホタルが見たいのだが」と相談したところ「そういゃー、昔はホタルがいたもんだよなぁ」と言い出し、ライダー仲間で相談を始めた。そして、数年前にワットタノン寺近くでホタルを見たと言う証言が得られ、町から10キロ以上はなれているその寺まで、もしホタルがいたら200バーツ、見られなければ150バーツで往復すると言うことで話がまとまり、優泰を含めて3人で小さなモーターバイクにまたがって、ホタル探しバイクツアーは出発した。

 まるで人気のない真っ暗な田舎道で、とつぜんクリスマスツリーを見るようであった。ホタルである。大きなランプーという木の枝に何百匹も密集してホタルがとまり、しかも一斉に点滅するのである。チカチカと、チカチカと。感動である。もちろんツリーではないのでゴテゴテとした飾りがあるわけではなく、その光はまるで星である。そう、そして空には満点の星も瞬いている。優泰もこれにはたまげたようで、「すごいね、すごいね」を連発している。この一本の木に密集して一斉に点滅するホタルがいることは戦時中にこのあたりに駐屯されていた旧日本兵の戦友会をタイへ案内したときに聞いたことがあった。もう15年も前のことであって、そのころは、そんなホタルがいるなんて半信半疑であった。それがここ数年になって、バンコクやクアラルンプールあたりではこのクリスマスクリーのホタルが観光名所になっていて、ツアーまで組まれるようになったのである。当時半信半疑だった私も、実際に現在も存在し、見られるとなったらば、なんとしても見てみたいと思っていたので、実物を見た感動はとても大きかった。なるほど、これは凄い。これなら観光名所になるはずだ、、。しかし、バイクタクシーに案内してもらったポイントは、まだ観光地化しておらず、マングローブも茂る湿地帯で、田舎道は舗装さえされていなかった。ライダーも「まだいたんだねぇ、でもさ、こうこのすぐ先は海でよ、これからリゾート開発すんだよ」と教えてくれた。

朝食
コンビニで買ったカップラーメン。
昼食
宿屋の食堂にて生唐辛子炒めライス。
夕食
チュンポン市内の簡易食堂にてサトー豆と豚肉炒め、焼き豚とパッカナ菜の炒め物。

 

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