9月3日 水曜日    天気はくもり ときどき小雨

 以前から計画しようと考えていながら、ちっとも計画が進んでこなかったものは沢山ある。そんな中に小屋がけ食堂で日本風のメニューを組み入れることがある。慢性的な赤字体質の小屋がけ食堂の財政を改善させるには、日本風のメニューを入れることが得策と考えたのである。と、考えただけで、止まっていて計画を立てなかったのであるが、突如計画もなしのブッツケ本番で、実施することにした。最近は多忙を極めているので、時間があるときに、とにかくやってしまおうと言うわけだ。本日作るのは「親子丼」である。

 朝一番から市場へ買い出しに出る。タマネギ、ワケギ、鶏肉、お米、玉子、、。これらはムアンマイ市場でそろえる。なんと言ってもここの市場は新鮮だし、良質で値段も安い。スーパーの野菜類は綺麗に洗われて冷やされているので、清潔で良さそうに見えるけれど、意外と新鮮ではなく、そして値段が高い。ムアンマイ市場でそろえた食材はどれも満足のできるものであった。しかし、ここだけでは食材が揃いきれず、タニン市場へも買い出しに行く。タニン市場は小売が専門のような市場であるので、細かいものはここの方が便利だ。ここでは竹輪などの練り物を買う。私の考えでは、丼モノ単品では寂しいので、竹輪や麩などを入れたお吸い物も付け加えたいと思っていた。

 ここまでの段取りをこなすだけで9時になった。続いて急いで「小屋が食堂の親子丼」を告知するビラを作成する。パソコンで適当にプリントアウトし、コピーを取る。そしてそのビラをYMCAの前で配布する。今日は週に3日あるタイ語教室のある日である。そこに通ってくる日本人をターゲットにしているので、彼らが登校して来る授業開始直前の9時40分に校舎の前に立ってビラを配る。ビラ配りなどという作業は生まれてはじめての経験である。受け取ってもらえるかどうかドキドキしていたが、通ってこられる日本人の皆さんは気持ちよく受け取ってくださり、私の説明にも耳を傾けてくださる。私がビラを配り始めたのが遅かったのか、配れたビラは10枚少々しかなかったので、果たしてどれだけ効果があるかは予測できない。仕込みは20食分なの、宣伝ビラの数がこれしか捌けていないとなると、最悪は売り切れなかった分でホカ弁風に仕立てて、夕食時前を狙って売り歩かなくてはならないだろう。

 10時過ぎから、仕込みに入る。恥ずかしながら、丼モノのツユを作っている時間も無いし、食堂のおばさんに作り方を教えることも困難なので、市販の麺ツユを使ってしまう。ご飯は一升釜で炊き、涙を滴らせながらタマネギを刻む。ムアンマイ市場のタマネギは冷蔵庫に入ったりしたことの無いものなので、刻むたびに催涙ガスが猛烈に襲ってくる。YMCAの授業が終わるのは12時なので、お客さんが来るのは12時過ぎと考えて仕込みを急ぐ。米はちゃんと炊けるであろうか、、。お米はタイ米6割、モチ米4割の割合でブレンドする。水加減についておばさんと意見が対立する。モチ米を炊くにはもっと水を入れるべきだと言うが、日本風に炊くには、モチ米のことは考えなくても大丈夫と私。でも、本当は自信がないのである。さらに、心配なのは一升飯を炊いても、もしお客さんが来なかったら、どうしよう。タイ料理が定番のこの小屋がけ食堂では、使い道が無い。心配だなぁ。

 最初のお客さんは11時半に来られた。日本人女性であった。まだ料理の準備ができていなかったので、10分ほどお待ちいただいた。その間にタイ人の学生さんも来て「親子丼」を注文してくれた。味のほうは、お世辞ながら「あぁ、うん美味しいですよ」と言って貰えた。なおかつ、私がご飯の売れ残りを気にして作った焼オニギリ三つもお土産に買っていかれた。
 12時過ぎになると怒涛のようにYMCAから受講生さんたちがやって来てくれた。日本人が同じ受講生仲間の西洋人を連れて来てくれたりと、狭い調理台は大忙しとなった。お客さんの中には調理師の免許を持っていると言う人もいたりして、こんな素人の作ったものなど食べていただいてよいものかどうか気にもなったが、それよりも注文をさばくのにてんてこ舞いである。が、途中で仕込みが足りなくなってきた。キチンと計算された盛り付けではないので、丼によそる量がまちまちになり、とうとうご飯も足りなくなってきた。ご飯については炊き上がりまでに時間がかかるので、タイ人のお客さんには普段出している安いタイ米のご飯で勘弁してもらった。

 嵐は1時間もしないで過ぎ去り、ひと段落つきそうなところで、再び弁護士さんとチャーンプアク警察署へ出頭する。昨日の件を受けての書類処理をおこなう。

 夕方に再び小屋がけ食堂に行き、今日の出来具合を確認する。仕込み分はすべて完売した。ただし、学生さんには大盛りにしたりしたので、全部で18食分くらいで終わったようだ。最終的な売上が約600バーツ。純然たる材料費に300バーツほどかかっている。それと私の自宅の冷蔵庫から持参した麺ツユの実費などを差し引くとたぶん200バーツくらいの粗利が残ったものと思われる。苦労した割りにはと言う気もするが、おばさんは満足顔である。今後のことを考えてリンピンスーパーへ麺ツユの買い足しに出かけたが、チェンマイのスーパーで売られている麺ツユの価格があまりに高いのにビックリしてしまう。300mlビン1つで150バーツほどする。もしも今後ともこのように高い麺ツユを使って提供したら赤字間違いなしである。
 ちなみに私個人は、麺ツユの提供から、ビラのコピー代などを含めてすべて持ち出しである。それでも、朝から夕方まで楽しませてもらった金額としては安いくらいだったであろう。

朝食
ご飯とキャベツとソーセージの炒め物。
昼食
お母さんが食べ残した親子丼。
夕食

インドネシア製即席ミーゴレン。

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