10月3日 水曜日
朝食には久々にパートンコーを食べようと考えていたが、目が覚めたら雨が降っている。これでは買いに出るのは億劫だし、それに雨だとパートンコーの屋台が出ていない可能性も大きい。ということで、朝食は釜揚げうどんと言う事になった。薬味の長ネギと生姜をたっぷりと入れた。お母さんがほうれん草とソーセージの炒めものを作ってくれた。
優泰は今日も学校へ行く支度が遅く、これは遅刻ものだと思ったが、出発する時には雨も上がっており、その上なぜか道が非常に空いている。ものの5分ほどで学校に着いてしまった。普段は校門まで長い渋滞があるのに、どうしたことか一台の車も詰まっていない。隣のプリンスロイヤル学校はどうやら休みのようだ。そのために車が空いていたのかもしれない。なんたって生徒数が6千人というし、ほとんどの子が乗用車で送り迎えされているのだから、6千人分の車がないだけで、今日のようにスイスイになってしまうわけだ。
アパートへ戻り、銀行へ今月の生活費を両替に行く。このところ為替相場に日銀が円売りをして介入しているようで、先日と比べ両替率が劣る。それでも、もう手持ちのバーツが底をつき始めているので、両替しないわけに行かない。とりあえず5万円の旅行小切手を両替する。
キッチンにあるホットプレートは、前の人があまり綺麗に使っていなかったのか、油でベトベトになっており、洗剤で擦ったくらいではとても葉が立たない。こういうしつこい油汚れには、シンナーが一番である。ガソリンが簡単に手に入るが、ちょっと危険だ。さて、シンナーをタイ語でなんと言うのだろうか、辞書を調べたが出ていなったので、ペンキを薄める油と書かれたビールビン入りの液体を買っておいた。そのビンの栓を開けてみると、シンナーとは匂いが違う。無色の液体だが、なんとなく軽油や灯油のような匂いで、揮発性も弱いようだ。しかし、油汚れを取るには十分に威力を発揮し、表面上はみるみる綺麗になったが、隅の方やヒーター周辺はなかなか取れない。それに内部にもずいぶん油が染み込んでいるようで、これは分解清掃が必要だと判断した。
このプレートはトルコ製であったが、タイ製に劣らずなかなか安直な構造になっていた。そしてネジ類も変則的な止め方をしており分解するのに一苦労した。解体してしまえば清掃は簡単だったが、組み上げは分解以上に骨が折れた。まぁそこまで努力した甲斐があり、仕上がった時にはピカピカの新品のようになった。私も自分ながら満足したが、お母さんも満足してくれた。
昼食に昨日食べられなかったカウマンガイを食べに行く。今日は12時前に行った事もあり、当然売り切れではなく、カウマンガイにありつく事ができた。お母さんは揚げた鶏肉、私は茹でた鶏肉を食べる。飲み物にはチャーイェンという練乳入りアイスミルクティーを飲む。
昼食後サイアムテレビという大型電気店(エレクトリックプラザとも言う)へ洗濯機やガスレンジを見に行く、洗濯機は二層式の2.2kg洗いのものがコンパクトで、アパートのトイレの横に入りそうだ。ちょっと脱水機が小さいのが気になるがメーカーは東芝製だし、モーターは3年保証だと言う。価格も4千バーツを切っていて妥当である。ガスレンジはどれも業務用かと思うほど火力の強そうなものばかりだったが、一番安直なものが500バーツほどである。家で料理する機会は少ないし、安直なもので十分だ。お母さんは電気式のオーブンレンジも見たいと言うので、オーブンレンジも物色。MATSUという如何にもタイの会社が日本風の社名をつけて売っていそうなレンジとシャープのレンジが色違いで、形状がそっくりである。驚いた事に、説明書もインクの色こそ違うがまるで同じである。これはどちらかがOEM提供を受けていると考えられるが、値段だけはシャープの方が何十バーツか高い。結局どんなものを買おうか相談しただけで、購入は後日となった。
1時にお母さんをダンス教室に送り、私は一旦アパートへ戻る。パスポートやその他必要書類のコピーを取りに自転車で近所まで出かけてきて、書類を郵送するための封筒を探したが引っ越したばかりで何をどこに仕舞い込んだか分からなくなり、結局時間切れでお母さんをダンス教室へ迎えに行く時間となってしまった。
ダンス教室でお母さんを載せ、学校で優泰を載せて、今日もリンピンスーパーに行く。今晩の夕食には餃子を食べたいので餃子を2パック買う。餃子のパックの中には食紅で赤く印の付けられたものがある。いったいこれは何だろうかと比較するが、10個入りの餃子のうちの4個ほどに食紅がつけられている。再度良くラベルを見るとラベルに手書きでチェーと殴り書きがされている。チェーとはタイ語で精進料理を指すのであり、たぶん肉を使っていない餃子ではないかと勝手に解釈する。なお、私たちが買った2パックには、このチェーは書きこまれていなかった。
アパートに戻るとお母さんから今度は電気式のホットポットの油汚れを落とすように依頼される。これも表面のアルミ製本体にびっしりと油汚れがこびりつき、本来銀色のはずがオレンジ色から茶色に見えるありさまであった。しかし、このポットはホットプレートのように石油では汚れはびくともしなかった。どうもアルミの表面が劣化して荒れており、目には見えないくらいの無数の窪みができ、そこに油汚れが染み込んでいるようだ。こうなったらアルミの表面から磨こうと、ビートルからコンパウンドを持ってきて、ゴシゴシと擦る。力を入れて何度も擦ると、真っ黒な劣化したアルミ表皮が油汚れとともにとれて、白っぽくすべすべした本来のアルミの色が戻ってきた。
ホットポットの汚れ落としを終えて、プールでひと泳ぎする。このところ少し体力が落ちているのか、プールを二往復もすると息が切れてしまう。優泰が学校に行くようになってから朝の運動をしていないし、きっとそのせいだろう。
夕食には餃子を焼き、小屋がけ食堂で五目野菜炒めと豆腐のスープを作ってもらい、晩酌には冷凍庫でギンギンに冷やしたチャーンビールを飲む。最高にうまい!
食後、ベランダに出てメコンウイスキーをチビチビやりながら、街灯に照らされた裏通りを行き交う人達や、ドイステープ寺院の夜空に浮かんだ明かりを眺める。真っ暗な山の中に、横一線に明かりが点っているさまは、まるで夜空にUFOでも出現したようだ。