10月2日 火曜日
新しい部屋ではじめての朝を迎えた。この部屋が風通しが良いためか、それとも10月に入って涼しくなったためか、昨夜は少し涼しく、タオルケット無しでは寒いくらいであった。
リンピンスーパーで買ったライ麦のパンで朝食を食べて、優泰を学校に送る。出発が少し遅れて遅刻を覚悟していたが、何とか時間通りに学校へ送り届けることができた。
午前中はYMCAで英語のテストがある。少し勉強でもしようかと思ったが、テキストをぱらぱらとめくっただけで、やる気がうせてしまった。まぁどうにかなるだろう。
YMCAのテストはどうにかなったと言えばなったし、どうにもならないところはどうにもならなかった。勉強しておけば良かったと感じられたのは唯ひとつ、花束の数え方が分からなかった事だ。が、分からないのは仕方ないし、さっさと解答用紙を提出して11時には教室を出る。お母さんはYMCAの宿泊者用みやげ物コーナーで、山岳民族の人形を模ったブローを2つと、民芸風に編んだペンケースをひとつ買った。
アパートに戻るとまだ時間があったので、ロータスへ買い物に出かける。今回のお目当ては蛍光灯である。新しい部屋は窓が多く日中は十分明るいのだが、夜は間接照明ばかりで、天井からの蛍光灯に慣れた生活をしてきたものには暗すぎる。特にキッチンでは、暗くて包丁の刃先すら覚束ない。まずはキッチンに蛍光灯を取り付ける事が先決と考えた。
蛍光灯は剥き出しタイプのものが安く売られていた。但し、スイッチが付いていないので、スイッチは別売で購入する。また、部屋のドアにはカギがひとつしかついていないので、チェーン式や南京錠式のカギを購入する。
ロータスの帰りに最近気に入っているカウマンガイ(鶏肉載せご飯)の専門店に立ち寄ったが、なんとお米が品切れになってしまって、本日の営業は終了したとのことであった。しかたなく近くのカウソイ(チェンマイ名物のカレーラーメン)の店に入るが、油が鼻につくほどコッテリしており、少々胸焼けしそうだ。カウソイも店によって味付けにバラエティーがある。あっさりした味付けのところもあるし、ここのようにコッテリしたところもある。さしずめここは日本のラーメン屋にたとえるとギトギトの九州ラーメンだろうか、、。
学校へ優泰を迎えに行き、アパートへ戻ると今日も優泰は宿題である。私はキッチンへ蛍光灯の取り付けをおこなう。蛍光灯のフレームを固定するのはボルトとナットではなく、木ねじを薄い金属穴に通しているだけで、2つのねじのうちひとつは穴がバカになっていてねじの役目を果たしていない。更に別売で買ったスイッチは、ちっともスイッチの作用をしないので分解してみると、スプリングやポイントがバラバラになっていた。それに、どのパーツもチャチで、心もとない。タイの電気製品について、ひとつ悟ったような気がした。タイの電気製品の設定はある程度技術を持っていないと素人には無理だと言う事。また、プロとしての知識を持ってしまうと、安全性や耐久性に不安が生じて、とても設定などできなくなるだろうと言う事だ。幸い、タイには職人的で知識豊富な電気工事屋が少なく、みんな素人に毛の生えた程度だから、なんとか成り立っているのだろう。
今日の夕食もタイスキのコカに行く。今日は野菜をふんだんに入れた鍋にし、鍋が煮立ったところに玉子を2つといて流し込んだ。こうした食べ方は初めてだがなかなか美味しかった。ここのマネージャー格でいつも優泰に優しくしてくれている女性から日本語を教えて欲しいと依頼を受けた。私もどうせ毎日暇なのだし、軽い気持ちで来週から毎日1時間ずつ教える事を引き受けた。