ワタノーでの補講を午前中いっぱいかけておこない、1時に終わる。が、終わったところで、突然雨となってしまった。雨だからと言ってK.K.トラベルに行かず雨宿りをしているわけにも行かないので、強引にミニバイクで突っ走ったが、当然のことながらずぶ濡れになってしまった。日本で言ったら夕立のような雨であった。もうパンツまでビショビショである。K.K.トラベルのメイドにバスタオルを持って来させたが、バスタオルくらいでは何ともならない。シャツの方は夕方までに乾いたが、ズボンは帰宅するまで濡れたままであった。ミニバイクに乗るときはレインコートを準備しておかなくてはいけない季節になったようだ。
夕方、K.K.の経営者が「経理のことで」と言ってまた相談してきた。さっさときちんとした経理マンを探すべきなのに、「今の経理をやめさせるのは可哀想だ」と言い出す。私は辞めさせるのではなく、それでなくても抜けているところが多いのだから、経理を2人体制にして、ダブル・チェックをさせることと、不正がないかどうか相互に監視させるべきだと主張した。一応は、「ふん、ふん」と聞いていたようだが、「今の経理がメンツをなくしてしまうのではないか」と心配している。まったく人がイイというか、経営感覚が欠如していると言うか、企業で働いた経験のない人間は困る。「タローから言ってくれないか、、」と来た。あーぁ、マタかぁ、こうした役目ばかりが回ってくるんだから、「ならば」と私は条件をつける。その代わり、しっかりした経理マンを採用すること、安い賃金で探そうとしないことなどと、経営者に注文をつけた。が、どうもその辺がわかっていない。「ケン(経営者の一人息子)の友達が、こんど簿記の学校卒業するから、彼を採用すればイイ、もう子供の時から知っているし安心だよ」と言う。「ダメダメ、簿記学校でただけじゃ、素人と同じ、プロじゃなくちゃ、絶対ダメだ」と抵抗したのだが、もう耳には入らない。勝手に採用を決心してしまっている節がある。正直なところ、彼女の一人息子もとんでもない道楽息子で、現在はロンドンの専門学校に留学中と言うが、ほとんど毎月のように帰国しては、チェンマイで友達たちと遊びまわっている。「彼への仕送りだけで、毎月10万バーツなのよぉ」としばしば経営者はスタッフたちへ自慢そうに話している。私にもよく言ってくる。そんな道楽仲間が経理など担当されたら完全に経営がストップしてしまいかねない。にもかかわらず、「後で、ケンから本人に聞いてもらわなくちゃ、給料はどのくらいかなぁ」ともう楽しそうである。
夜、ふたたび経営者から「タロー、これから晩御飯食べにいくけど、一緒にみんなで行かない?」と誘われた。「いゃー、まだ仕事が残っているし、行けないよ」と答えたら、「まったく、いつ誘ってあげても、ちっとも食べに来たことがないんだから、タローはそれで楽しみがあるの?」と言う。「あぁ、私はK.K.がまっとうな旅行会社になってくれることが、私の夢だから、その夢に向かって努力するのは楽しいよ」と答えた。「OK、タローは本当に日本人ね」と言って自慢の青いセリカに友人を押しこんで出ていった。
この会社、簡単に乗っ取ることができるのではないだろうか?もっとも、今のところ乗っ取るに値するような会社ではないが、、。