タイの大型ホテルの朝食は一般的にバイキング式であり、まぁホテルの内容に比例してバイキングで並ぶ品数や内容もさまざまである。このパクチョン・ランドマークホテルも大型ホテルであり、稼働率はあまり良くないようだが、ある程度の宿泊客があった。しかし、朝食はバイキングではなくセットメニューだと言う。こうしたとき困るのは優泰の扱いである。バイキングであれば子供の一食分くらい請求を受けることもないが、この手のセットメニューになると、伝票に一食分ずつ付けられるので、たとえ8歳の子供であっても一食は一食として請求されてしまう。そして、ここでは一食が120バーツなのだそうだ。その120バーツの内容とは、目玉焼き2個、ハム半切れ、ソーセージ1本、コーヒー、ジュース、薄く小さいトースト2枚、マーガリンとジャム。まぁホテルのメニューだからこんなものなのだろうが、やはりバイキングの方が嬉しい。それに野菜が何もない。栄養のバランスが取れないではないか、、。お母さんと優泰はこのアメリカンブレックファストを食べたが、私はエビ粥の朝食セットを食べた。
朝食後、カオヤイ国立公園に入る。深い緑に囲まれているからか、それとも標高があるからか、国立公園のゲートを過ぎたあたりから気温が下がり、だいぶ涼しくなってきた。高原のさわやかさと言った感じだろうか、日陰にいると風が冷たく感じるくらいである。
公園内の奥にはいくつかの滝があり、ハイキングコースがあることになっている。私はそのうちのスワット滝からクルアイマイ滝入り口までの約4キロのコースを歩いてみることにした。この滝の周辺の舗装道路周辺ではサルを何匹も見かけた。タイの町や寺院でも場所によってはサルを良く見かけるし、サルを見て感動することもないのだが、ここのサルたちは餌付けされたサルではなく、野生のサルである。こちらは車に乗っているから良いものの、ハイキング中にバッタリであったりしたら肝を冷やしかねない。
サルといえば、姿は確認できなかったが、テナガザルの吠え声も聞こえた。サルの仲間の声とは思えないような、まるで鳥の鳴き声のような声であった。
スワット滝は、季節だからか水量も多く、迫力のある滝であったが、私たちはタイ人のように滝を見ただけで感動すると言うことはなく、ましてや滝壷で泳ぎたいと言う衝動も起きない。3分も眺めていれば、退屈してしまう。その3分以内に、公園内の掃除人のおじさんが、「あそこにグリーンスネークがいるよ」と教えてくれた。
グリーンスネークは長さが1メートルにも満たなく、太さも親指ほどと小さな蛇なのだが、毒があり、噛まれると結構大変なことになるらしい。蛇は草の茎に絡まるようにして寝ていた。この蛇も住宅地でも、良く見かける蛇で、珍しさを感じない。でも、もっと本格的な毒蛇に出会わないかもしれないと思うと、なんだかハイキングがサバイバルに感じられてきた。
カオヤイ国立公園は、タイで最も有名な国立公園であり、観光客も多いのだが、ちょっと整備され過ぎている感じもする。滝壷ギリギリまで舗装道路が整備されていたりする。そのせいか、せっかくハイキングコースがあっても、歩く人はほとんどいないようである。私たちの歩くコースもほとんど獣道並で、ハイキングなどと明るく楽しいものではなかった。遭難者のサバイバルである。矢印があるわけではなく、道も下草に隠れたり、沢で消えていたりと、いやはや大変である。もっとも大変なのは、このような山道を歩いたことのなく怯えきっているお母さんを励まし、なだめながら歩かせることである。暗く、少しぬかるんだ山道を歩くこと20分ほどしてお母さんが悲鳴を上げた。見ればお母さんの脛に山ヒルが2匹ほど吸い付いていた。
「あぁ、あれ」と優泰が叫んだ。見れば体長が1メートルを越える巨大なトカゲが、黄色と黒の縞模様の身体を左右にくねらせながら、ノッシノッシと茂みの中に逃げこんでいくのが見えた。やはり、こんなのもいるんだなぁとちょっと感動する。
途中の沢を渡るところでは、橋の代わりに巨大な倒木がかけられてあった。その倒木の橋を渡っていると、ちょうど真中あたりに黒い糞があった。見た感じが猫科の動物の糞のようである。山猫でもいるのだろうか、飼い猫の糞などと比べると各段に大きい。それにしてもどうしてこんな倒木の上など、目立つところに糞をしたのだろうか、、。
糞と言えば、とんでもなく巨大な糞も多数見かけた。糞の様子から、水牛か象の糞のようだが、まさかこんなジャングルに水牛がいるわけないし、野生象のものだろうか、、、。野生動物の宝庫と言っても、こうして森の中に入ってしまうと、確かに野生動物は沢山いるのだろうとわかるが、実際にその姿まで確認するのは難しいようだ。
4キロほどのコースに約1時間半ほどかかり、心配した毒蛇に遭うこともなく、お母さんばかり何度もヒルに吸いつかれ、オオトカゲは2回見かけて、クルアイマーイ滝入り口の駐車場にたどり着いた。この間に、ハイカーには1人も出会わなかった。タイ人はハイキングなど嫌いなのだろうか?
今晩もお母さんのリクエストで、ホテル隣のテキサスへ行く。そして、お母さんは2晩続けてフィレ・ミニヨンステーキを注文して食べた。確かにここのステーキは美味しい。値段はちょっと高いが、日本だったら、めったにステーキなど食べられないのだから、今のうちに食べ貯めしておいてもらおう。
朝食 |
パクチョンランドマークホテルのエビ粥の朝食セット。 |
昼食 |
国立公園内のカフェテリアで鶏肉とアスパラの炒め物、タイ風さつま揚げ。 |
夕食 |
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