お母さんの滞在許可の新しくするためにメーサイへ行く。今回は時間も無いので日帰りドライブである。朝7時には出発したいと思っていたが、例によって例のごとく、出発は遅れて7時半になった。朝食は途中でお母さんお気に入りのホームメイドで食べることになるので、今後更に遅れが予想される。
今回のドライブ日帰り旅行、人間3人以外に小鳥のピョンも同行する。もう十分に成長したと思えるのだが、いまだに自分で餌を突ついて食べることができず、2〜3時間ごとにクチバシの奥に挽肉団子を放り込んでやらなくてはならない。そのため1羽でアパートに置いておく訳に行かないのである。日帰りとは言え、往復で500キロにも及ぶドライブにこんな雛鳥が耐えられるのかと少し心配もしたが、最終的には、ときどき腹を空かせて餌をねだる以外は大人しく籠の中でじっとしていた。
先日、ビートルのスパーク・プラグを交換したこともあり、エンジンは絶好調である。雨季に入ったため気温もそれほど暑くなく、オーバーヒートの心配も無いので、山道でもグイグイと登る。パワーもだいぶ良くなったようで、今までと同じ感覚でアクセルを踏んでいるとスピードが出過ぎてしまう。そしてカーブを曲がるたびにキキキとタイヤが鳴る。ビートルの調子が良いので、大変快適なドライブである。運転していても楽しい。もっとも、このビートルのような古い車の面白さは時々故障をしてダダを捏ねるところにもある。しかも、重大な故障以外は構造がシンプルなので素人でも修理ができてしまう。それでも、こうした家族旅行のときはやはり、故障もせずに走ってくれる方が快適で良いに決まっている。
と、喜んで走っていたのだが、メーアイと言う町を過ぎたあたりで、突然エンジンのパワーが落ちた。アレレ、と思っているうちにエンジンは止まってしまった。路肩にビートルを止めてエンジン・ルームを覗いて見る。アララ、ガソリンがキャブレターまで流れてきていない。どうしたんだこりゃ、、。燃料フィルターにもガソリンが溜まっていない。なんとなく、酷暑期になやまされたガソリン沸騰のトラブルと症状が良く似ているが、その時と比べて気温は低いし、エンジン・ルームもガソリンを沸騰させるほど熱くなっていない。どうしたのだろうかと首を傾げていたらしばらくして染み出すようにガソリンが廻ってきて、何事も無かったかのようにエンジンは復活した。
「ちょっとトイレ」と言われてタートンの集落にあるメーコック川の船着場にビートルを止める。トイレと言われなくても、そろそろピョンのエサの時間であった。この船着場からは毎日12時半にチェンライ行きの定期船が出ていて、私も一度乗ったことがあるが、なかなか景色も良くて、お薦めのボートツアーである。まだ船の時間には間があるからか、乗船客の姿は無く、乗船客目当ての山岳民の衣装を着けた土産物売りの婆さんが数人暇そうにしていた。もっとも、今日はほとんど雨が降ったり止んだりの天気なので、屋根もろくにないボートツアーに参加する人はそれほどいないのかもしれない。
その後、メーサロンへのT字路で検問に引っかかった。パスポートの提示を求められ、なかなか厳しくチェックをしている。迷彩服のような出で立ちだから、国境警察かもしれない。まだ若い検問係りは雨の中、パスポートの写真を張り替えていないかとかイロイロと調べてから「コープクンカッ」と敬礼してパスポートを返してよこした。降り頻る雨の中、上官からの命令なのだろうか、、タイとしては珍しい律儀さであった。
メーサイの国境に到着したのは午後1時になってしまった。まずはワントンホテルの昼食バイキング。ピョンも一緒に連れて入る。お母さんが「小鳥を連れていたらダメって言われるんじゃない」と心配していたが、入り口で咎められることは無かった。ウエイターたちも小鳥に関心を持っているようながら、別に平気なようである。周囲の西洋人団体客などは、今年猛威を振るった鳥インフルエンザを気にするだろうかと少し気がかりだったが、取り越し苦労であった。
毎食挽肉団子ばかりを食べているので、たまには野菜も食べさせようと、キャベツの千切りを食べさせてみた。はじめの一口は幼虫と勘違いしたのか、嬉しそうに飲みこんだが、気に入らなかったのかそれ以上は食べようとしなかった。
お母さんは3ヶ月ごとにメーサイからの出国を繰り返している。そろそろ、連続タイ滞在も1年となる。メーサイ通いを1年続けているからだろうか、今回は出国係官からパスポートのコピーを提出するように言われてしまった。そろそろ次回あたり「ちゃんと滞在目的にあっビザを取りなさい」と指導されるかもしれないなぁ。もともとはビザも取っていたのだが、お母さんのように韓国人の場合、ビザ無しでも90日間の滞在が認められる。ビザを取っても3ヶ月しか滞在できない。延長には1900バーツの手数料と、再入国も数千バーツの手数料がかかるのでノービザに切り替えてしまっているのだが、そろそろ年貢を納めないと行けないのかもしれない。
そのお母さん、ミャンマー側に滞在すること3分足らずですぐにタイ側に戻ってきた。
帰り道も快適なドライブであった、途中までは、、。メーアイを過ぎたあたりでエンジンのパワーが下がり始めた。そして、ウィアンパパオまでたどり着いたところで、とうとうエンジンがストップしてしまった。あぁまたかぁ、、。まぁさっきと同じでしばらく待てばガソリンが染みあがってくるだろうかと思い待ってみたがダメである。エンジンも冷えているのにどうしたのだろうか?スターターを回してもガソリンが廻らない。ガソリン・ポンプが故障したのだろうか?やはり、未知の故障は楽しくない。沿道の村人が見に来て、いじくる。腕に覚えがあるそうだ。ガソリンが汚れていると言う。そう、確かにさっきメースアイでガソリンを入れたあたりから調子が悪くなったような気がする。そのガソリンが「汚れ」ていたのだろう。
燃料パイプを引き抜いたりして、なんとか復活。今晩はラジオの日なので、大急ぎでチェンマイへ戻らなくては、、。復活後は、エンジンもすこぶる快調で、山道をグイグイ進んでくれる。山道を抜けてチェンマイ郊外のドイサケットに達したのは7時少し前、飛ばせばお母さんと優泰をアパートへ送ってからでも、なんとか間に合うかもしれない。緩やかな下り坂を時速120キロで駆け下る。10分後にはチェンマイ外環道の交差点手前までたどり着いた。ところが、ここで再度エンジン・トラブル。今度は手伝ってくれる村人はいないし、お母さんや優泰では役に立ちそうも無い。が、原因は燃料の汚れにあるわけで、燃料パイプを外して、口でパイプをくわえてガソリンを吸い出す。口の中にガソリンが溜まりむせ返す。やっぱり楽しくない。が、なんとかこれも復活。もう、急いでも間に合わない。とにかくお母さんと優泰をアパートに送り届けなくては、、。
7時半、番組のスタート時間にアパートに到着、急いで放送局に向かった。ところが、放送局の手前1キロ半ほどのところで三度エンスト。オート3輪のタクシー運転手に手伝ってもらって、これも復活させたが、運転手が言うには「ガソリンに水が入ったんだろうなこれは」との事であった。8時過ぎ、またまた遅刻でスタジオに入る。