食べたものが、上からと下からの両方から、食後1時間以内に出てきてしまうので、食べるのがもったいなくなる。それでも、やたらと空腹である。
何やら優泰の顔に沢山のブツブツができている。巨大ニキビかジンマシンかと思われるが、見た感じ、これはどうやら水疱瘡らしい。こりゃ面倒なことになった。早く病院に連れていくべきだが、今日は日曜日で、昼過ぎまでワタノーの補講がある。お母さんに3時ごろまでに戻ってきて、それから病院に連れていくからと言って、アパートを出た。しかし、とても気になることがある。お母さんが「じゃ、午前中はちょっとぐらい外出してても大丈夫?」と聞いてくる。どこへ行くのかと聞くと「優泰がハリーポターの映画が見たいって言っているから、映画見に連れて入ろうと思うんだけど、映画ならじっと安静にしていられるでしょ」と言う。冗談じゃないですよ。そんな子供が集まるような映画館へ水疱瘡のウイルスを撒き散らしに行くなど言語道断である。「絶対ダメ」と厳禁したつもりだが、こっそり抜け駆けと言う手段は何度も経験させられているので、安心できない。
ワタノーでの補講をしようと学校で9時からの生徒を待つが、どうしたことか一人しか来ない。これでは授業をしても仕方がない。私はあっさりと休講を宣言して、11時からの次のクラスまでの時間に優泰を病院へ連れていくことにした。
国立のスアンドーク病院は結構込んでいた。まぁ日曜日だから仕方がないのだろう。診察待ちロビーには人が溢れて、ベンチに空きもほとんどなかった。ここで待たされること1時間。日曜出の小児科医に優泰を見せたところ「母子手帳」を見せるように言われた。タイで母子手帳を見せろと言われるとは思ってもおらず携帯してこなかったが、予防接種の記録を見たいと言われる。優泰のこの症状は水疱瘡であるが、現在国際的に水疱瘡は子供が小さいうちに予防接種を受けるようになっていて、発祥しないはずだと言われるのである。ポリオや日本脳炎などのワクチン注射のために赤ん坊だった優泰を何度か保健所へ連れていった記憶はあるが、水疱瘡がそのワクチン注射に含まれていたかどうかは不明である。が、現にこうして水疱瘡の症状が出ていると言うことは、接種を受けていないのだろう。
小児科医から何項目かの注意事項を聞き、「自分は日曜出だけで、平日は自分のクリニックにいるから、何かあればクリニックに来なさい」とクリニックの連絡先と営業時間を書いてもらった。ただ、ここの営業時間も毎日夕方からとなっているので、きっと日中はまたどこか別の総合病院で診察をされているのだろう。優泰の診察治療費は100バーツそれと看護サービス料が50バーツであった。薬代は5日分を出してもらったがこちらは700バーツ近い金額であった。この100バーツの診察料では、一体いくらお医者さんの取り分となるのだろうか?まぁ、大したことがないだろうから、お医者さんとしては少しでも自分のクリニックに来てもらって、全額丸どりしたいのだろう。
病院で時間がかかり過ぎ、時刻は12時近くなってしまった。また私自身も体力を相当に消耗してしまい。11時からの補講は無断休講としてしまった。K.K.トラベルには1時間半ほど顔を出して急ぎの用件を処理したが、食事を取れていないせいか、椅子に座っているだけでも辛い。
小鳥の名前は色々と案が出たが、結局「ピョン」に落ち着いた。そのピョンは相変わらずまだ自分で餌を突ついて食べたり、水を飲んだりできない。すべて私がクチバシをこじ開けて、口中に肉片を押し込んだり、シリンダーで水を流し込んだりしなくてはならない。それでも、だいぶなついてきて、私の声が聞こえると、チーチーチィと雛が親鳥を呼ぶような声を出して、餌をねだる。でも、結局自分では食べようとしない。甘えん坊なのだろうか?また、どう言う加減か、私の頭に載るのが大好きである。お母さんはピョンが私の頭に載ると、そこから飛び立って自分に向かってくるのではないかと恐れおののき、「お父さんヤメテヨぉ」と叫ぶ。はじめ、だいぶ私の髪が伸びて、まるで鳥の巣状になっているから、巣だと思って登って来るのか思って、夕方、髪をばっさりカットしてみた。しかし、やはりまだ私の頭に上りたがる。「○○は高いところが好き」と言うが、それかもしれない。
その髪を切った床屋だが、いつも通っていた盲人マッサージの隣にあった床屋がなくなっていた。店主も代わって飲食店のようである。上手ではないが、私はそれほど下手でもないので、毎度通っていたのだが、なくなってしまうと他にどこへ行ってイイかわからなくなる。住宅街の中をミニバイクで走った。はじめに見つけた店は、客が待っていた。私は疲れていたし、待たされたくない。「待つの(ローマイ)?」と聞くと、私の発音が悪かったのか、「ロー、ロー、ローディーマーク」と言う。この場合のローとは私が言いたい「待つ」と言う意味ではなく、ハンサムなと言う意味である。しかし、順番待ちが3人目であることから、ハンサムよりすぐ切ってもらうほうがイイので、私は別の店を探した。次に見つけたのは、開店したばかりのような店で、ガラガラであった。ヨシヨシ。これは良いぞ。と、その床屋に入ってみると、バリカンを握っているのは、以前盲目マッサージの隣で営業していた床屋の女主人であった。先月引っ越してきたのだそうだ。