午前中、ワタノー学校での補講をおこなう。生徒たちも4月に入って完全に学校へ登校することがなくなったようだが、それでも学校以外の施設で勉強を毎日しているらしい。正直なところ、タイの生徒たちが真剣に勉強に取り組んでいるのかわからないのではあるが、こうして受験勉強を経て大学生になっているはずの、大学生たちの平均的なレベルはあまり高くないように感じられる。確かに優秀な学生もいるのだが、今一つと言うのが私の印象である。
昼からK.K.トラベルに入る。昨日面接をした就職希望者は本日もやって来た。暑い盛りの4月の午後なので、お客も少ないが、雰囲気だけでも馴染んでもらおうと、カウンターに3時間ほど座ってもらう。本当は接客でも少し見ていてもらおうかと思ったが、なんとお客様は一人もいらっしゃらなかった。本日の私の売上は、1日トレッキング1組とバンコク行きの汽車の切符2枚だけであった。お客様が少ない理由は、暑さだけではなく、昨日から表看板に「4月9日まで不在にします」と日本語で書きこんでおいたからである。そんなことは不在当日に掲げれば良いのかもしれないが、早めに告知して、色々な手配の依頼を受けている分をクリアにさせておかなくてはならない。不在中に懸案事項が残ってしまったら、「休み」にならなくなってしまう。
本日最後の仕事はソンクラン休み中のサムイ島旅行の切符やホテル利用券のお届けであった。急なお申し込みであったが、大変運も良かった。この休み期間中はサムイ島に限らず、バンコクを基点にしてリゾートへ向う交通機関の手配は大変難しい。それが、私が空席の検索をかけた時にバンコク航空の臨時便が引っかかった。おかげでウマウマと飛行機の切符手配ができてしまった。今年はタイの景気が良いからか、リゾート地はどこもタイ人観光客で予約が一杯らしい。チェンマイはソンクランの水掛祭りで大変有名だし、年末年始の休暇の時はパンダ見物の家族連れが沢山チェンマイに押しかけたから、このソンクランも史上最大の観光客をチェンマイは迎えることになるのでは確実だろう。
そのソンクランの水掛祭りに際して、私はK.K.トラベルは休業するものとばかり思っていた。K.K.トラベルは旧市街を囲む堀に面していて、ソンクランの水掛祭りが最も激しい場所に位置する。店を開けるなど無法だし、街中が興奮状態になっているときに、一体どんな仕事をするというのだろうか、、。が、経営者が説明するのには、ソンクラン明けの20日には販売した航空券代の支払いがやってくる。明日から私が5日間休む関係で売上が落ち込み、支払期日に現金がショートする可能性があるから、ソンクラン中に巻き返さなくてはならないという。しかし、もともと航空券代の大半は、事前にお客様から集金した預り金であるはずなので、支払期日前に売上が落ち込もうが、支払い自体に影響を与えるものではないはずである。が、悪びれずに説明する経営者が言うには、運転資金としてお金のほとんどを使ってしまっていると言う。月初に私が、売上高に対して粗利が少なすぎると心配していたのに、経営者は「マイペンライ」とお気楽だったのは、それまで毎月大幅に売上が伸びてきて、半月遅れでやってくる支払いを差し引いても、相当のお金が残っていたのだろう。しかし、これは完全に自転車操業で、売上が落ち込めば、支払いができなくなってしまう。素人でも判る結果を、どうしてわからないのだろうか、、。まぁ、資金がショートしたところで、経営者は資産家の母親の支援を仰いで切りぬけるのだろうが、稼ぎをあげているものとしては、なんだか面白くない。ソンクラン前にはボーナスでももらえるのではないかと期待していたが、甘かったようだ。
なお、この件は、K.K.トラベルの経営者が特に問題があるわけではなく、タイ人の気質全般に共通していて、あるお金の支払い目的を考えることなく、あるお金をみんな使ってしまおうとする特徴がある。酷い例では、頭金相当さえ用意できれば先々の支払いのことなど考えずに不動産や自動車を購入してしまう人が沢山いる。
イヤ、この手の気質はタイ人特有なものではないのかもしれない。私が以前勤務していたインターネットの会社も、同様の自転車操業と、ITベンチャー・ブームを背景にした資金集めで、売上が伸びていたときは勢いがあったが、通信許容量を無視して拡大し、飽和状態が近づいたとき、資金ショートを起こした。当時私は飽和状態に対する対策と、売上が低下した時のことをシュミレーションして何度も説明をしてきたが、いい気になっていた経営者は、まるで取り合わず、自滅していった。私は早々と辞職させてもらったので、怪我はなかった。ひょっとしたら、経営者なんて、このような性格を持ち合わせていなくてはビジネスなどできないものなのかもしれない。そして、そんな感覚を持っていない私はいつまでたっても下働きなのだろう。