週明けの月曜日。今朝からまた優泰の学校への送り迎えをしなくてはいけなくなった。先日まで送迎を引き受けてくださっていた台湾の指導員さんも仕事が忙しくなったということで、送迎ができなくなられた。そして、また私が朝と午後の送迎をしなくてはならない。
何をボケっとしていたのか、ミニバイクでアパートを出てしばらくしてからノーヘルであったことに気がついた。戻るべきかとも考えたが、登校時間の関係もあるので、優泰をまずはそのまま学校まで送ってから、一旦帰宅してヘルメットを取りに戻ることにした。チェンマイでもノーヘルの取り締まりは厳しくなっていて、一斉検問に引っかかると罰金が課せられる。私は罰金が惜しいので、ヘルメットを取りに戻ってから、K.K.トラベルに出社した。
出社してみると、昨日は会社を休んだにもかかわらず、デスクの上には何のメモも残されていなかった。どこからも電話がかかってこなかったのだろうか?誰も訪問者がいなかったのだろうか?ちょっと俄かに信じがたいが、8時過ぎになって出社してきた私設秘書のギフトさんに、連絡事項は何も無かったのかと確認すると「ありません」と答える。でも、彼女本当に昨日は私の代わりに店番をしてくれていたのだろうか?確認してみたいが、聞き出す勇気が無かった。
午後に優泰の学校に呼び出しを食らっている。授業時間終了後に担任の先生を訪ねる。お母さんは同席せず、私一人で優泰の行動に関する問題事項の指摘を受ける。まぁ精神年齢が幼すぎることと、歯止めが利かない性格なのは私も知っていることで、先生から学校での問題点を指摘されても、私としては「申し訳無い」と頭を垂れるばかりである。しかし、ひとつだけ私としても気が収まらないことがあった。先週の水曜日の弁当事件に関して担任の先生が私たち宛に書かれた手紙を優泰は私たちに渡さず、どこかに無くしてきたと言うことがあった。翌日、優泰に「先生にもう一度書いていただくようにしなさい」と言い聞かせたのだが、優泰が先生に伝えたのは「お父さんが先生の手紙を読まずに無くしたから、もう一度書いて」と言うものであった。ヤギの郵便屋さんの歌詞ではないが、いったいどうしてこんなことになるのか、、。他にも確認すると、先生から呼び出しを含めた手紙の何通もが私たちの手元に届かないうちに紛失していることが判明した。もともと弁当事件も優泰が嘘をつくことが原因で、その朝も「もう2度と嘘はつかない」と誓約書を書いて張り出したばかりであったのに、、、。残念な結果である。
夕方前、K.K.トラベルに若い白人男性と、タイ人女性のカップルが訪れて、「タオ島へ行きたいから手配をしてほしい」と言ってこられた。男性の方はまだ20歳前後らしく、女性の方は20代半ばと言った感じであった。そして、女性はあまり英語が上手ではなく、私に一方的にタイ語で話し掛け、男性側に話すゆとりを与えない。どうやら、女性はいわゆるエスコートガールと呼ばれる類の商売をしているらしい。以前なら私はあまりこの手のカップルにかかわりを持ちたくないと感じていたが、まぁこれも商売なので、まずはどんな相手にでも誠意を持って説明案内をさせてもらった。タオ島の宿の情報や行き方、鉄道切符など、ほぼ話がまとまってきたところで、女性側が、「水代も入っているわよね」とタイ語で言ってきた。私はとっさに「紹介したホテルの冷蔵庫には毎日2本ずつビン入りの飲料水が補給されてますよ」と大まじめに答えたらば、他のスタッフから大笑いをされてしまった。この女性が言っている「水代」とはこの女性に対するコミッションのことであるらしい。はじめに彼女がタイ語でまくし立てていたのは、このコミッションのことであったらしく、「いったいいくらほしいのですか」と聞くと「売上の30%」と言うではないか。私はこの旅行の手配をお断りさせてもらった。経営者が血相を変えてやって来て、「そんなの男性への代金を水増し請求して、彼女の水代を捻出すれば言いだけじゃないの」と私にクレームをつけたが、その場では「私は宗教上の理由から嘘が禁止されていますので」と返した。
この「宗教上の理由」と言うのは、タイでは大変に便利な言葉だと私は思っている。タイの国民が守るべきこととして、国王を敬うこと、国家を愛すること、そして宗教を尊重することと言うのがある。つまり、この場合の宗教とは、国王と同列に扱われる神聖なものなので、「宗教上の、、」と言うだけで、物事が収まってしまう。もっとも、後でスタッフと経営者を前に私は、なぜこのような水増しとコミッションが問題であるかと説明した。
スタッフは旅行者など一見客だと思いこんでいるが、旅行者たちはあちこちで色々な旅行に関する情報を交換しており、どこどこでボラレたなどと言う情報はあっという間に広まってしまい、K.K.トラベルの信頼を失墜させられかねない。しかも、我々が女性側へのコミッションを捻出するために行ったことでも、そんなことは男性側には判ってもらえない事である。だから、この手のことに荷担するのは、会社に対する背信行為と同じだと訴えたのだが、はてさて、どこまで理解してもらえたのやら、、、。