10月20日 土曜日
今日から1週間優泰の学校は休みである。この機会にビートルでドライブ旅行に出る。ビートルの準備はほぼ万全。欲を言えば、クラッチトアクセルのワイヤーを交換しておきたいと思っていたが、先日修理屋でワイヤー交換の話をしたところ、「まだ切れていない」とのことであった。こちらとしては切れる前に交換すべきと考えたのだが、どうやら発想が違うらしい。まぁ今回の旅行中に切れない事を祈るだけだ。
朝食には昨夜の残り物で済ます。優泰には玉子と残りご飯でチャーハンを作り、お母さんにはお粥。私はマカロニの残り物。そして、朝9時半にアパートを出る。天気は良く、ハイウェイも順調だ。チェンマイ近郊では何度か交差点で信号待ちをしたが、概ね時速70キロから80キロほどで快調に走っている。交通量もさほど多くなく、路面の状態も良い。そしてなによりもビートルのエアコンの調子が良く、外は暑くても車内は涼しい。せっかく設置した扇風機だが回すと肌寒く感じるほどだ。1時間ほどでランパーンへの峠道を越え、1時間半後の11時にはアジアハイウェイ1号線に合流。明るい森の中に伸びるハイウェイを走って、12時すぎにトーンの町についた。市街はハイウェイから谷側に降りたところにあり、旧道を抜けてみるが食事をするのに適当な食堂が見当たらない。田舎町にふさわしい小屋がけ食堂風はいくつもあるが、ゆったりくつろげそうな感じではない。ふたたびハイウェイに上がると、ドライブイン風がいくつもあり、そのうちの比較的こじんまりした1軒に入る。店は料理があらかじめバットに入っていて、それをご飯に添えてくれるスタイルであった。また、クオッティオうどんを茹でてくれるコーナーもあった。
昼食後もハイウェイを走り、タークを過ぎるあたりから山が遠ざかり、平野が広がり出した。そして路面が荒れ出した。ちゃんとした舗装がされているのだが、走行車線側には所々にクレーターや地割れがある。追い越し車線側はきれいだ。たぶん積載超過の大型トラックのせいだろうと思われる。時速80キロで走っていると、ときどきクレーターの発見に遅れ、車をバウンドさせてしまう。追い越し車線側を走れば、クレーターなど気にしなくても良いのだが、こちらは時方に注意しながらでないと、すぐに追いつかれて、また走行車線側に追いやられる。ガソリンメーターがほとんど空っぽを指しはじめ、そろそろ給油をしなくてはと思っているが、町も村も沿道には現れない。ガソリンスタンドもない。次の町はカンペンペットと標識があるが、そこまではまだ20キロ以上ある。ちょっと心細いが、速度を一定に保ちながらガソリンを節約して走る。
カンペンペットの入り口でガソリンを500バーツ入れて満タンにする。お金を支払うとプラスチックの小さなボトルをくれた。ボトルには果物の絵がかかれている。何だろうかとキャップを開けると、あまり良い匂いはしないし、茶色くドロドロした液体が入っていた。どうやら口に入れるものではなさそうだ。「これは食べ物か」とスタンドの色白の女性に聞くと「木が食べるもの」と答えてくれた。どうやら果樹への栄養剤なのだろう。このような田舎ではスタンドのプレゼントにはこんなものが喜ばれるのだろう。感心していると、この栄養剤をもう一本くれた。
ナコンサワンには5時半に到着した。街の地理は皆目見当もつかないが、大きくて立派なスタジアムがあり、街の規模も大きい。宿屋はどこかと探しながら走り、チャオプラヤ川の岸に至る。川岸は市場になっており、その中に迷い込み、雑踏の中をノロノロと這い出し、表通りに出たところで、安っぽい作りながら大きな宿屋を発見。裏には大きな駐車場もあり、そこに泊まることにした。一泊320バーツと格安で、清潔そうに見える部屋にはツインベッド、エアコンとお湯のシャワーがあった。
シャワーを浴びて夕食に出かけようとするが、街の地理がわからず、フロントで「ここらで美味しいものを食べさせる店はどこか」と尋ねる。川沿いに行けば美味しい店が沢山あるというので、市場を抜けて川沿いに歩くと、確かに美味しそうな店が沢山ある。しかし、どれも店構えのある店ではなく、屋台である。お母さんは屋台での食事が苦手であり、特に屋台の明かりに誘われて虫たちも盛んに飛び交っているので、とても「ここで食べよう」と言い出せる状況ではなかった。もちろん、美味しそうな屋台は沢山あり、ステーキの屋台など、チェンマイではあまり見かけないメニューもある。
表通りに戻り、さんざん食べ物屋を探した後、デパート風の建物に入り、そこの2階に入っていたタイスキの店で夕食とする。インターという名のチェーン店であった。鍋は電熱鍋で、コカのガスコンロ式に慣れた私としてはちょっと物足りなかったが、ここのシンハビールはふるっていた。まず、グラスの下3分の1ほど水を入れてそのまま凍らせてしまったようで、グラスの下に氷が張っている。更にビールも凍らせているようで、グラスに注ぐとシャーベット状のドロドロしたビールがボトリボトリと出てくる。これ以上冷えたビールはないだろう。味のほうは、既に解けた液体のビールは味が濃く、凍ったところは味が薄いと言った摩訶不思議なビールであった。タイスキの味はコカの方が味が良かったが、値段はここの方がちょっと高く、300バーツを超えてしまった。