8月19日 木曜日 天気は曇り ときどき雨
朝6時にオンボロ貨客船はタオ島の桟橋に接岸した。観光客のほとんど乗っていない船なので、桟橋に下りても、ほとんど客引きに出会わない。数少ない島のタクシー運転手が声をかけてきた。トロピカーナ・リゾートまで100バーツと言う。安い金額ではないような気もするが、そのままタクシーに乗車する。タクシーと言ってもピックアップ・トラックで、チェンマイのように荷台に屋根がついているものではなく、剥き出しの荷台である。
6時過ぎのトロピカーナ・リゾートはまだ寝静まったままであった。フロントにも誰もいない。海辺のリゾートは朝寝坊のようだ。そのまま施設内のレストランまで進んで、そこで我々も休憩を取ることにした。従業員が出てきたのは7時過ぎになってからであった。そして、部屋へ通されたのは9時過ぎになってである。
朝食のアメリカンブレックファストは薄く小さいパン2枚、目玉焼き二つ、トンカツ、コーヒーと不思議な取り合わせである。野菜類は何も無い。ジュースもつかない。しかし、この意味不明のトンカツがとても美味しいのである。パンにはさんで食べるとカツサンドの味である。
そう言えば、昔、有楽町に勤務していた頃、しばしば誘われて、銀座のバーでお酒を飲み、カツサンドの出前を受けた覚えがある。あのカツサンドは美味しかったが、ここタオ島のカツサンドもなかなか捨てたものじゃない。
気候から言うと、タオ島のあるシャム湾側は、この季節が乾季と言うことになっているはずなのだが、どうしたわけか曇っている。そして、しばしば雨も降ってくる。雨の降り方は、なんとなく沖縄の台風直前の雨の降り方に良く似ていて、風が強く、サザーァと降っては、一呼吸置くかのように途切れ、しばらくしてまたザザーァと来るのである。今回は海水浴が目的ではないし、リラックスするためだけにタオ島に滞在しているので、自家発電のため夜間しか電気が無く、日中はエアコンはおろか、扇風機も使えないトロピカーナ・リゾートでは、この雨と風によってだいぶ涼しくしてくれる。気温も27度にもならないのではないだろうか。とても涼しくて快適である。快適なので昼寝が良く出きる。もっとも、携帯電話だけは遠慮会釈無く、何度も私の快眠の邪魔をしてくれた。携帯の電波も届かなければ、完全なリラックスも夢ではなかったかもしれない。
リゾートから外へ出ることも無く、目の前のビーチに降りることも無く、日暮れとなり、夕食の時間となった。夕食もリゾート内の食堂で、ちっとも能が無いが、ヘルペスのせいで12日もアルコールを断っていたのだが、とうとうその禁を犯すときが来た。リラックスにはアルコールも大切なのであると言う勝手な理由で、中国焼酎をストレートでグビリとやる。そうそう、この喉の焼ける感覚こそが焼酎の醍醐味だったよなぁと思い出す。考えてみると、二十歳を過ぎてから、これほど長期間アルコールを断ったのははじめてである。過去の最長記録は、昭和の天皇陛下が崩御されたとき、喪に服す意味で1週間飲まなかったのが記録であった。それを大幅に越える記録であるから、15年ぶりの記録更新である。この記録はたぶん当面更新されることが無いだろう。