8月18日 土曜日
今朝になったらテレビは各チャンネルともちゃんと映るようになった。優泰にもITVでウルトラマンを見せることができて、一安心した。
天気も良く、来週末は東京に行っていてチェンマイを留守にするので、日帰りのドライブに出かけることにする。どこに行きたいといったものもないし、ガイドブックに出ていて面白そうなところは行き尽くしたので、どこへ行こうか決まらないが、チェンマイの南西方向には行ったことがないので、そちらへ向かうことにする。チェンマイの南西にはドイ・インタノンというタイで最も高い山があり、車でも登れる道もついているようだ。実際にビートルで登れるかどうかはわからないが、とにかく出発する。
チェンマイから南西に向かう道は広く、とくにハンドンの街までは4車線のハイウェイであった。そこから先も道路拡幅工事中である。もっとも工事中であるため、土埃がひどいのには閉口したが、、。道筋はメーピン川を遠くに望みながら、これといった峠道もなく、なだらかなまま続いていた。しかし、タイの最高峰と思われるような大きな山は見えてこないし、「登山口」などといった標識も見当たらなかった。
チョムトンの街中を過ぎたが、どこからドイ・インタノンへ入れば良いのかわからず通り過ぎてしまう。戻るのも面倒なので、そのままハイウェイを直進する。チェンマイを出てから約2時間ほどでホットの街に入った。このまま進むと峠を越えてメーサリアンの町まで行けるが、そんな遠くまで行く気になれないので、ドイ・タウ(直訳すると「亀山」)方面と書かれた標識で左折する。道は細くなり民家もほとんどない寂しい道であったが、舗装の状態は良い。12時を少し過ぎたところで、ドイ・タウという集落に入ったが、何も変哲もない集落であったが、右へ折れる道があり、「水辺へ3キロ」と書かれている。よし、水辺とやらへ行ってみようと、右折する。
水辺とは湖であった。入り口で大きなコンクリート製の亀が出迎えてくれた。湖畔にはハウスボートが沢山浮かび、それぞれが食堂になっているようだ。客引きの子供たちに誘導されながらそんなハウスボートの1軒に入る。
ハウスボートは竹を組んだ筏の上にテーブル席や茣蓙を引いた座卓席がある。小さなエンジンも付いており自走もできそうだ。どのハウスボートも客の入りは悪いようで、となりのハウスボートに3人連れのタイ人グループがいるだけであった。メニューを眺めてお母さんと優泰にはありきたりの料理を注文。つまり豚挽き肉のバジル炒め載せライスとチャーハン。しかし、私はせっかくこんな山奥の湖まで来たのだからとここの名物料理を作ってもらうことにした。名物料理とはライ魚を魚型の鉄鍋でキャベツやシイタケ、生姜などで炒めたものであった。ご飯も頼んだらお櫃にいっぱい盛ってきてくれた。ライ魚は見かけはとてつもなく悪く、その面構えは魚類界の悪役にぴったりであるが、味はとても良いし、身も良くしまっているのにほぐしやすく、小骨も少ない。つまり、姿さえ見なければ、食べるには大変好都合な魚だ。が、この食堂ではちゃんと一匹丸々鍋に入っている。そして、案の定、お母さんはこの魚を食べたくないと言い、優泰もそれにつられる。巨大な雷魚は結局私一人が食べることとなった。私たちの座った茣蓙の上には熊蜂の巣でもあるようで、巨大で毛むくじゃらの蜂が盛んに飛びかすっていた。そのうちの一匹がお母さんに近づいたとき、お母さんは湖に轟くような悲鳴をあげた。
湖面にそよ風が吹くと大変気持ち良く、時に霧雨のような雨も降ったりした。この食堂でのんびりと食事をして、店を出たのは2時半になろうとしていた。帰りは、東回りのルートを取る。このルートはドイ・タウから50キロほどのところで、トーンとランプーンを結ぶ国道にぶつかり、比較的なだらかで、交通量も少ないルートである。ガソリンを満タンにして、いざチェンマイへ。お母さんも優泰も昼寝をしている中ひとりハンドルを握る。時々にわか雨にも見舞われたが、快適なルートであった。ランプーンまであと18キロのところで、ランプーンを迂回するスーパーハイウェイを経由するルートを取ったつもりであったが、スーパーハイウェイに乗るすぐ手前で、本来右に折れるところを左に入ってしまい、ランプーンの街中へ迷い込んでしまった。先日も洪水で難渋したのだが、今回もまた洪水に巻き込まれてしまった。ユーターンしようと警察署の前庭で旋回したものの、洪水の水位はますます高く、あわれビートルは床上浸水をしてしまい、床が水浸しとなってしまった。もちろん排水設備などビートルにはないので、運転中もズボンの裾を捲り上げていなければならない羽目に陥ってしまった。それに、洪水から日がたち、生活廃水も大量に流れ込んでいるのか、水がかなりくさい。
アパートへは5時過ぎに戻り、私はビートルの床掃除をした。カーペットを引き剥がし、水道で洗い、脱水する作業はまったく骨の折れる作業であった。「晩御飯の時間だ」とお母さんが7時過ぎに迎えにくるまで、作業を続けたが、まだ床は濡れたままであった。晩御飯はレトルトカレーであった。
この湖、後でわかったことだが、大変大きい。プミポン・ダムというダム湖であり、奥行きは100キロ以上もあるそうだ。メーピン川の水を堰き止めているからか、水はミルクコーヒーの色をしていた。