1月15日 水曜日    天気は晴れ 

 座ったままなので、寝ていても辛い。熟睡には程遠く、ウトウトする程度で、夜を明かした。午前8:30にスラタニ到着。約30分ほど遅れている。スラタニは外国人観光客に人気の高いサムイ島への玄関口で、ここでは通常沢山の外国人客の乗降を見かけるのだが、寝台車ではない座席車だけのこの列車は外国人には人気がないのか、ホームに降り立つ外国人客の姿を見かけない。この特急には食堂車が連結されておらず、車内販売もない。窓が開かないので駅の立ち売りから何か買うことも出来ない。そろそろ空腹を覚える。車内サービスで何か配られるのを待つのみ、、。そして、やがて配られたのは、小さなトレーに乗っかった茶菓子であった。ちょっと朝食にしてはさびしいくらいである。

 この南本線からの車窓も、なかなか面白い。スラタニ周辺はココナツ椰子の畑が広がるが、さらに南下すると、ゴム園になる。どちらも整然と植えられていて、よく手入れがされている。また、石灰質の奇妙な形をした岩山がニョキニョキと立っている。南中国の桂林に似ている。タイのパンガ−湾も、これに似ていて、海の桂林などと呼ばれているから、さしづめここは、ココ椰子やゴムの海から突き出ているので「緑の桂林」と言ったイメージである。

 11:00パッタルン駅を出たところで、食事のサービスが来る。電子レンジで暖めただけの簡単な食事で、温めむらもあるし、美味しくはないが、空腹なので綺麗に平らげる。美味しくないだけではなく、内容も貧弱であった。おかずの絶対量が足りないのである。それでも、パイのようなお菓子を付けているのは、どういう了見なのだろう、、、。12:30に30分の遅れを維持したままでハジャイに到着。駅前からまっすぐ伸びる通りを歩いて、ペナン行きの乗り合いタクシーを探す。昔はこの通り沿いを歩くとペナンへ向かう乗り合いタクシーの客引きが盛んに声をかけてきたものだ。それがどうしたことか、ちっとも声がかからない。オンボロのベンツタクシーも止まっていない。もう、乗り合いタクシーなんて制度はなくなってしまったのだろうか、、。幾つ目かの交差点で「ペナン行き」の看板を見つけた。ワゴン車である。 12:30発のペナン行きがまだ出発していなかった。早速それに乗り込み、ペナンを目指す。

 サダオと言うところで国境を越えてマレーシアに入る。ワゴン車の相客は他に四人いた。西洋人が二人とタイ人が二人。西洋人の一人はフランス語なまりの英語を話すスイス人で、もう一人は無口なのか機嫌が悪いのか、一言も口を開かなかった。タイ人はおばさん二人で、私に出入国の手続きの仕方などを尋ねてくる。マレーシアに入るとゴム園から、油椰子の畑にまた作物が変わっていた。快適なハイウェイを走り、長い橋を渡ってペナンに渡る。ペナンに入ると道は入り組み、交通量も多くて走りにくい。それにやたらと交通規制が多く、直進禁止の道ばかりで、まるで迷路に迷い込んだかのように、右に左にとぐるぐると回る。今晩の泊まるあてもないので、運転手氏と同じ簡易宿泊所に泊まることにした。簡易宿泊所は市内の中心コムターと言うペナン一の高層ビルの近くにあり、立地は便利なところにあった。名前は愛吾大旅社となっているが、木造の古い簡易宿泊所で、便所や水浴び場は共同である。宿賃は一泊20リンギットと言うから、約700円ほどか、、タイの水準から言ったら高いが、マレーシアなら格安な部類であろう、、。

 時計の針をマレーシア時間に直すために一時間進めて、17:30とする。部屋の扉は観音開き、部屋は広くはなくて、スプリングの歪んだベッドと傾いた机があるきり、やはり観音開きの鎧戸の窓があるが、窓にガラスは入っていない。まぁ寝るだけなら不自由はない。それと宿屋の主人も人が良さそうだ。さっそく、スーツを脱ぎ、スポーツシャツに着替えて待ち歩きに出発する。ペナンに来たのは何度目かだが、島の中心都市ジョージタウンを歩くのはこれが初めてだ。宿屋のあるコムター周辺は切妻式で二階が路上にせり出した南中国式の古い建物の商店が並んでいる。漢字の看板も多く、何だか昔の台北の町を歩いているような感覚になる。ところが、港側に向かってさらに歩くと、両替商が目立ち始めて、インド人街となった。ヒンディー文字やタミール文字の看板が増え、店から流れてくる音楽もやたらと甲高く、妙にコブシの利いたインド歌謡曲。タンドーリチキンを目玉にしている食堂や艶やかなサリーの店が並ぶ。ロンドンあたりのインド人街のようにシーク教徒も目立たず、 インドと言っても、陰気な北インドではなく、南インドのマドラスあたりに良く似た陽気さを感じられるインド人街で、インド人たちの肌の色はこれ以上黒くなれないのではないかと思うくらい真っ黒である。

 空腹ではあるが、お金の持ち合わせもあまりないので、何か安くて腹持ちの良いものはないかと、探しながら歩く。そして見つけたのが、多分ペナンで一番安いと思われる食事、ナシレマクの屋台である。一食が1リンギット。ご飯に炒りジャコを乗せ、チリペーストをかけ、半身のゆで卵を添えただけの典型的なマレー料理である。マレー料理ではあるが、この屋台は中国人の女の子がやっていた。椰子葉飯と書かれていたのが、ナシレマクの中国語表記なのだろう。ジャコは香ばしく、適度な甘みとチリの刺激のあるソースは絶品であった。が、これ一食では食べたりないので、今度は本格的な屋台街に飛び込んで、ワンタンメンを注文。看板には香港雲呑麺と書かれていて、ずばり香港風の極細、ゴワゴワ麺であった。このやたらと腰の強いゴワゴワ麺ははじめ抵抗があるが、なれると実に美味しい。私はチリペーストを和えて食べるのが好きなのだが、この屋台にはチリペーストが用意されていなかった。大盛りが3リンギット。

朝食

車内でサービスの茶菓子。

昼食

サービスの車内食。小さな揚げ物三つと鶏肉と野菜の炒め物。

夕食
ナシレマク、ワンタンメン。

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