ワタノータイパヤップ学校の新学期初の授業がある。今学期から私は3年生と4年生でそれぞれ1時間ずつの時間を割り当てられた。学校側では当初大学の受験で日本語を選択するための日本語クラスが4年生(高校1年に相当する)にできるので、週6時間のカリキュラムのうち、1時間を担当するように指示され、さらに初歩の日本語クラスとして2年生(中学2年)を担当するように言われていたが、私は昨年1年間教えてきた2年生、つまり今度の3年生を引き続き教えたいと希望して、3年生の授業を受け持たせてもらった。たった1年かじっただけで、このまま勉強したことを忘れられてしまうより、継続して日本語を学んでもらい、日本語と日本に関する興味と関心を維持し続けてほしいと考えたからである。
11時からの授業。この4年生は私が教える以外に5時間も日本語の授業があり、私以外の時間はパンチャー先生という若いタイ人女性が担当される。ラチャパット大学で日本語を専攻したそうで、日本語能力検定が3級だそうだ。日本語の3級と言うのは、私が彼女としゃべった感じでは、何とか意思疎通が日本語でできるレベルと言った感じで、英語だったら高校卒業レベル英語力だろうか。すでにパンチャー先生の下、何時間かの日本語を勉強してきたからか、生徒たちはひらがなで「あ〜ほ」までを学んでいた。私にとって今日が初回なので、私は「あ〜ほ」のひらがなを使った形容詞+名詞を勉強した。たとえば「おおきいうし」「あかいはな」などである。タイ語は修飾語が名詞の後ろに来る言葉名ので、日本語や英語とは反対であることを学んでもらう。「あかい」「あおい」「ちいさい」「おいしい」「たのしい」などと言った形容詞と「はな」「いぬ」「うた」「ねこ」「いえ」と言った名詞を組み合わせるゲーム的なこともしてみた。
昼食には学食に入ってみる。数千人の生徒を擁する学校にしては規模が小さい気がする。そしてなにより料理のバラエティーが乏しい。麺類と汁かけ飯の類ばかりで、中高生にはちょっと寂しい気がする。ショッピングセンターのクーポン食堂よりもバラエティーに欠ける気がする。私も生徒たちに混じってご飯に2種類のオカズをのせてもらう汁かけ飯を注文した。支払いは事前に買っておくクーポンでとなるのだが、これで15バーツであった。値段は高くはないが、町の大衆食堂や簡易食堂と比べて格段に安いと言う気はしなかった。混雑する食堂の中で、職員専用席は一段高いところにあって混雑を避けられるが、私は生徒と同じテーブルに着いた。ちょうど英語科のガイ先生が男子生徒2人に現在完了形の説明をしながら食事をとられていたので、そこに混ぜてもらった。
この男子生徒もそうだが、前学期と比べて、校内に男子生徒数が増えた気がする。数年前まで女子高であったワタノーでは高学年は圧倒的に女生徒が多い。その高学年が卒業して、男子生徒の比率が高くなっている新一年生が入学してきたわけだから、当然男子生徒のパーセンテージが上がっていくのだろうが、それ以上の増え方のような気がする。理由はそれ以外にもあるのかもしれない。たとえば男子生徒は学期途中での脱落者も多いので、まだ全員が顔を揃える新学期の時期のみ比率を押し上げているのかもしれない。
午後の授業。私の希望した3年生のクラスは、何かが間違ったのか、前学期まで教えていた生徒とは別のクラスを担当することになっていた。教室の前で以前の生徒たちに取り囲まれたので、どうしたのかと聞いてみると、日本語は1年間しか勉強できないのだそうだ。つまり、他の生徒にもなるべく均等に機会を与える必要があるからなのだろうが、私にとってはとても残念である。そして、生徒たちに日本語のクラブを作ってほしいと依頼された。私も彼らと一緒に勉強を続けたいのだが、学校の方針では仕方がないであろう。
それと、私はこの元の生徒たちを見て驚いたことがある。前学期まで毎週顔を合わせていた時は気がつかなかったのに、この2ヶ月ほどの休みが明けて、生徒たちから子供っぽさがだいぶなくなっている。男子生徒はたくましくなっているし、女生徒は女性らしくなっている。背丈もだいぶ伸びたようだ。このくらいの年頃の子供と言うのは本当に成長が早いらしい。