朝食に優泰がサンドウィッチを作るからと言うことで、朝から台所でガチャガチャ音がしていた。そして、できあがったサンドウィッチは「はぁぁ」と溜息が出そうになるのを、アクビで誤魔化さなくてはいけないようなできであった。なんと、パンにキュウリのスライスがはさんであり、それにマヨネーズを塗りたくってあるだけである。しかも、あてがいぶちは、サンドウィッチ2切れのみ。ちょっと内容的にも質的にも私には食べたりなかったのでチキン・ラーメンにお湯を注いで食べる。
9時に同じアパートのIさんから、「車を買いたいから付き合ってよ」と言われていた。しかし、この表現には正確さを欠くところがあり、正しくは「交渉してよ」であろう。まずは、サハパニットとと言う大手のディーラーへ行き、販売担当者と交渉する。目的の車はトヨタ・ソルーナ・VIOSのオートマチック。「安くしてよ」と軽いタッチで交渉をはじめた。はじめは数千バーツ引いただけの価格を提示してくる。しかし、こちらは事前情報として5万バーツ程度の値引きが可能であろうとの情報を掴んでおり、強気である。それに先方は重大なミスをしている。私がタイ文字を読めないと言う先入観があるようで、原価らしきものがほとんど丸見えの書類を広げている。
約30分ほどの交渉で5万バーツの値引きと、登録料、強制保険、任意保険、窓のフィルムなどすべて込みにさせた。しかし、私はまだまだ行けそうな感覚を得た。担当者は、いちいち価格に関して上司とコンタクトを取っている。と言うことは、その上司の更に上役にパイプを作れば話は早いはずである。こうした時にだけはK.K.トラベルの経営者は役に立つ。うすうす感づいているのだが、チェンマイで事業をしている中国系の人たちは、どうも我々の知らないところで、かなり強固な結びつきを持っているようで、それはバンコクの華僑の進出を容易に受け入れず、かなり堅い砦を築いているようだ。あとで、K.K.トラベルで経営者へ打診してみることにする。
その次にIさんが現在借りているレンタカーの処理である。Iさんはアパート近くのレンタカー屋でタイ人の紹介を受けて1ヶ月のリース契約をしている。その契約の期限まではまだ2週間もあるのだが、先ほどのディーラーで確認したところ、今日発注すれば、今週中には納車されると言うことで、来週1週間のリースが不要になる。そこで、このリースを早期に解約して、少しでもリース料を返してもらおうと考えた。しかし、レンタカー屋は、1ヶ月以内なら、1日単位のリース料が適用になり、むしろ「追加料金をもらうくらいだ」と強気である。まぁ、K.K.トラベルでもレンタカーの紹介をしているし、契約期間を勝手に縮めてもお金が返って来ない事は、私だって百も承知である。そこをなんとかと食い下がり、「痛み分け」と言うことにして、月単位を日割りにし、早めた日数分の半分を返金してもらうことに話しがついた。
K.K.トラベルへは10時過ぎに出社し、カウンター業務に就く。「安静に」と言われているが、朝から忙しく、ちょっとした仕事をしてきたので、疲れる。が、例の中国人コネクションの件を経営者に相談すると、トヨタのディーラーであるサハパニットの経営者は、K.K.トラベルの裏にあるSPホテルの経営者と親戚で、ここを通して話しをつければうまく行くはずと言う。そして、サハパニットの経営者へ電話を入れ、「後でウチのタローが行くから、私の面子を立ててよね」と言ってくれた。
が、ここまでは頼り甲斐があるのだが、「タロー、ちょっとこの企画書作ってよ」と言って来た。企画の趣旨を聞くと、1週間でアンコールワットまでのバスツアーだと言う。30人の参加で、予算は込み込みのひとり3000バーツだと言う。おやおや、1週間で1人3000バーツと言うことは、1日の予算が500バーツにも満たないではないか、これではホテル代は愚かバス代もでやしない。どうして、こんな仕事を拾って来てしまうのか、首を傾げるが、毎週女学生気分で通っているMBA仲間の紹介だと言う。こうした収支計算も何もない商売をしていてどうしてMBAの取得ができるのか疑問である。
夕方前に、再びサハパニットに行くむ。朝の販売担当員が「決心がついた?」と聞いてくるので、「私が決心がついたのではなく、お宅のサグォンさんの決心がついたか確認しに来たよ」と答えた。「えぇ、サグォンを知っているの?」と言うので、「さっき、更に値引きすることで了解を取り付けたが、いくら値引きするかを聞きそびれたもんでね」と私もイヤらしい。
しかし、販売員はなかなかここの経営者に取次ごうとしない。直属の上司らしき男性に何度も相談している。そして「これ以上の値引きはできないんですよ」と言う。「いや、ほんのちょっと気持ちだけで良いんだけど」と押しても、できないの一点バリである。なかなか取次がないので、私も痺れてきて、K.K.の経営者に電話をして、サハパニットの経営者へ電話を入れてもらった。5分ほどすると、小柄な開襟シャツの男性が降りてきた。サグォンだと言う。「ミス・ジュン(K.K.の経営者)のことは良く知っている」と言う言葉から、再度交渉が始まるかと思ったら、あっけなく値引きに応じてくれた。こちらも原価らしきものを見ているし、先方の採算ラインもだいたい判るので、これが限界だろうとすぐに判断がついた。納車も土曜の朝と言うことで決まり、手付金を支払った。
夜、11時近く「ごめぇんねぇ」とIさんがやってきた。聞けば部屋の鍵を閉じ込みしてしまったそうだ。そして、明日の朝一番でチェンライへゴルフに行く約束になっているから、どうしても今晩中に部屋へ入って準備しなくてはならないと言う。私は工具の水道レンチ1本とドライバーセットを抱えて、Iさんの部屋の玄関ノブに取りかかった。しかし、なかなか鍵は解除できない。しばらくガチャガチャやったが、無理と判断し、ノブごと破壊することにした。明日のゴルフへ行くときには、補助の鍵だけで出かけてもらうことにする。それにしても、安静にしていなくてはならないはずなのに、我ながら良く働いた1日だった。病気が治ったら、Iさんにご馳走してもらおう。
朝食 |
優泰が作ったと言うサンドウィッチ。 |
昼食 |
クオッティオうどん。 |
夕食 |
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