ナコンサワンでタク君に運転を代わってもらい、2時間ほど助手席で休憩をとり、カンペンペットから再びハンドルを握る。カンペンペットでガソリンスタンドに立ち寄る、「ハイオク(95)を500バーツ」と係りに伝えたが、なかなかガソリンを入れようとしない。もう一度「ハイオク500バーツだよ」と念を押すと、「どこに入れるの」と聞いてきた。まったくトロイと言うか、こちらはガソリンタンクのあるフードまで開けてあげているというのに、、。さらに、ガソリンを入れ始めたので良く見ると「レギュラーガソリン」を入れ始めているではないか!「おいおい、ハイオクだぜ」と文句を言ったが、まるでピントこないらしく、途中からハイオクを注ぎ始めた。まったく、ガソリンのブレンドなどありがたくない。タイではしばしば遭遇することだが、失敗しても反省したり詫びを言ったりしないタイプの人間がいて、今回もその典型のようだ。もちろん、料金はハイオク以外にレギュラー分までしっかり支払わさせられた。
もう夜明けの時刻である。ここまでまったくエンジン快調。スピードメーターも90-100の間で振れている。トゥーンの町外れで検問で引っかかる。別に何が怪しいわけではなさそうで、停車を命じられ「どこ行くの」との質問に「チェンマイへ帰るところだよ」と答え、「どこから来たの」とまた質問され「チュンポン」と答えたのが間違えであったようだ。「ちょっと、あそこへ止めなさい」と指示された。南部タイではゲリラ活動が活発である。テロ事件も頻発しており、その関連かなぁとも思った。が、どうもそうではないらしい、取り調べ官は「あぁ、トレイだったらあそこだよ」から始まり、「どうやって運転してきた」とか「この車で大丈夫だったのか」とか「何時間かかった」とどうやら興味本意で質問しているようで、車内の捜索をしたりすることもなく、免許のみを確認して「じゃ、気をつけて」と開放してくれた。
チェンマイには予定より1時間早く午前10時に到着。MDマンションにタク君を送ってから帰宅し、ちょっと遅い朝食を食べる。ビールも飲む、焼酎まで飲んで、11時過ぎには昼寝をしてしまう。徹夜のドライブ後に飲む酒のうまいこと、そして昼寝の気持ち良いこと、いゃー、この開放感のためだけでも徹夜のドライブをやる価値があるように思える。目を覚ましたのは午後4時になってである。
結局、今日1日何もすることなく、ダラダラと過ごす。NHKテレビではイラクで起きた邦人誘拐事件を報道していた。誘拐側は自衛隊のイラクからの撤退を求めているらしいが、小泉首相は「テロに屈せず」の姿勢らしいが、家族の心情を考えると、ずいぶんと冷たい言いかたの気がする。日本は日本赤軍のテロ行為に対して過去に何度超法規的手段を取った事だろうか、しかも、今回はテログループの釈放ではなく、人道支援として派遣した自衛隊の撤収させよと言う要求である。そもそも自衛隊派遣に対して、国民の意思を反映して派遣したものでもないし、非戦闘地域に限定して派遣しにもかかわらず、派遣場所でも武力攻撃が発生していると聞く、「テロの要求は断固拒否するが、派遣場所での自衛隊の展開について再検討をする必要もあるので、一旦撤収することも検討する」と答えても良かったのではないだろうか?昔の大本営発表のように「撤退」と言わずに「転進」と表現する方法もあるのではないかと思う。
自衛隊の人道支援に対して、反対する気はないが、気がかりなのは、自衛隊が豊か過ぎて、地元住民とのギャップが大きすぎることである。フセイン政権下での弾圧、戦争、そして泥沼の戦後、そうしたイラク国民の前に現れた豊かな自衛隊は、自分たちの支援に来てくれてはいるのだろうが、その豊かさは、却ってイラク国民に反感を抱かせてしまうのではないだろうか?たぶんこのあたりが、民間のボランティア団体と自衛隊との違いだと思う。太平洋戦争後に日本の復興支援にGHQが果たした役割はとても大きかっただろう。しかし、政府ではなく当時の日本国民が豊かな進駐軍に感謝の念を抱いていたのか、妬みにも似た感情を抱いていたのか、そこら辺を考えて見てから、自衛隊の派遣を考えて見ても良かったのではないかと思う。
夜、10時半過ぎに寝る。今晩は晩酌なし。うすい昆布茶をすすってからベッドに入る。