5月18日 火曜日 天気は曇り 夜ににわか雨
10日ぶりにトゥム君が出社してくる。彼は日本語検定の3級レベル。仕事として使ってもらえるレベルではないが、いてもらえればそれなりにこちらも便利である。日本がまだまだでも、タイ人であるからタイ語は問題ない。つまり、私が行っているタイ人との折衝を彼に引き継いでもらえれば、私の業務もかなり軽減できるはずである。が、あくまで「はず」であって、実際には折衝すべき内容を指示したり、結構大変である。日本語が多少出きることと、業務知識を持ち合わせていることとは関係がないのである。
ギフトさんは今週は航空予約端末の研修に参加して不在である。いていただかないと私のストレスもだいぶ軽減される。そして、研修後はきちんと端末操作をしてくれるものと期待したいが、普段から確認をしたりする作業が苦手な性格なので、こっちも怖くて予約カルテを手渡したくない。
朝8時過ぎに、西洋人旅行者がやって来た。「今度の金曜日まで時間があるから、どこか静かなところへ行くツアーに参加したい」と言う。西洋人旅行者と言っても、白い服を着て、頭には白くて丸いキャップをかぶっている。ユダヤ系か、なにか宗教的な意味があっての服装に違いない。宗教的となると、グループツアーに参加するにも制限が付いてくる。そこで、「宗教はどちらですか」と聞いてみた。すると実に答えにくそうな顔をしている。キリスト教徒なら「クリスチャンだ」と即座に答えが帰ってくるものだから、彼はキリスト教と以外であろう。それと、答えにくいと言うことは、宗教に関連して、なにか差別的な扱いを受けた経験でもあるのだろう。私はこりゃプライバシーにかかわる質問をしてしまったなと反省し、すぐ「食べ物のタブーはありますか」と質問を改めた。「完璧なベジタリアン」との答えが、明るい表情で返ってきた。玉子もダメなら、ナンプラーと言う魚で作った醤油もダメである。となると、一般のツアーでは対応が難しいだろう。「歯が痛いので、運動はできない」「静かなところへ行きたい」「空気がクリーンでなくてはいけない」「お金はない」と次々に条件が飛び出してきた。消去法で消していくと何も残らなくなってしまいそうである。
「仏教の寺院に入ることに抵抗がありますか」と質問をした。チェンマイには外国人も受け入れてくれる瞑想寺がある。そこに滞在してもらえば、完全なベジタリアンで通せるだろうし、運動も要らない。静かでクリーンである。「お寺、お寺は大好きだ」と言う。ならばワットラムポーン寺が良いだろうと推薦した。ここはK.K.の経営者が熱心な信者だし、寺側でも受け入れてもらえるだろう。しかし、まだ経営者はオフィス上の住居で寝こんでいる。「お寺に入れるよう段取りを取ってみるから、2時間後にまた来てほしい」と伝えて、一旦お引取り願う。
きっかり2時間後、白装束の西洋人はやってきた。本日は佛日で、受け入れられないが、明日からならと言うことで了解いただき、彼は大変喜んでいた。段取りをつけてあげたのだが、彼は手間賃を払おうとする気配もない。この手のサービスは無料と心得られているのかもしれない。そこで、「お寺ではちゃんと寄進をするように」と釘をさしておいた。ちゃんと寄進してもらえば、熱心な信者であるK.K.の経営者も喜ぶであろう。が、ビジネスから考えると、今後はこの手の「お寺修行体験ツアー」と言うのも成り立ちそうな気もする。
午後にワタノータイパヤップ学校へ打ち合わせに行く。新学期も始まり、今学期から私は水曜日を担当することになった。つまり明日からである。間際ながら、簡単に何時にどこの教室で、何年生を対象にするかを確認した。私の希望で昨年度担当したクラスを今年も引き続き担当させてもらう。せっかく1年間やったのに、ここで辞められてしまっては、勿体無いと思うからである。それ以外に4年生の大学受験コースも一部手伝うこととなる。こちらは私は補助であって、タイ人の先生が担当してくれる。私としては責任も軽く気楽である。本当は、その先生と授業の内容やカリキュラムについて打ち合わせをしておくつもりだったが、結局何もできないままスタートとなってしまった。タイの先生も教壇に立つのは初めてだし、学校としても受験用の日本語コースははじめて、生徒の学習能力だって未知数なのだから、まず半年くらいは手探りが続きそうである。
夕方前にK.K.トラベルに戻るとトゥム君が、「アー、サタケ、サン、、日本から電話がありました。レンタカーがほしいそうです。7人乗れるスポーツライダーを22日から、イイデスカ」と言う。この報告ではちっとも「イイデス」とは言えない。レンタカーの予約をしても、それをどこに配車するのか、お客さまの連絡先は、車種だってスポーツライダーは2輪駆動と4輪駆動の別がある。これでは私は予約のしようがない。「これだけじゃ、ダメだよ」と注文をトゥム君につけると「アー、お客さまは、サタケさんに、また電話を、すると、思います」とトゥム君は答えた。しかし、夜まで待ったが、電話はかかってこなかった。一応車の空きだけは確認しておき、電話が来たらすぐ対応できるように準備をしておいた。業務知識を持つことと同時に、自分でも何をすべきか考える習慣を早く身につけてもらいたいと思う。