10月13日 月曜日 天気は晴れ ときどき曇り
夜は涼しくなるはずのチェンライはどうやら夕べは特別だったらしく、夜になっても暑いままであった。夜中に何度も目が覚めて水を飲む。冷蔵庫が無いので口に含んだ水も生ぬるい。
朝は5時過ぎには目を覚ます。外はまだ夜明け前で暗いのだが、あちこちから鶏の鳴き声が聞こえてくる。やっぱりチェンライはまだまだ田舎らしい。もっとも、2年半前にチェンマイへ住み着いたときも、毎朝鶏と犬の鳴き声が聞こえていた気がする。最近は連中の鳴き声で目を覚ました記憶が無いが、連中は鳴かなくなったのか、それとも私が鈍感になったのであろうか、、。
朝8時過ぎにメーサイの国境へ向かう。1時間足らずでイミグレーションに到着し、お母さんの出国手続きをする。タイのイミグレーションは警察の管轄である。イミグレーションのカウンターの奥で女性職員が沢山の花の飾り付けをしていた。聞けば今日は「警察の日」なのだそうだ。どのようないわれがあるのか知らないが、そういえば正装をした職員が多い。警察の日に警察の期間にお邪魔したわけで、出国スタンプを押してくれた白い制服を着た女性職員にクラッカーを一袋進呈する。
国境はいつもの通り往来が激しく、1時間後に帰国するように説明し、お母さんひとりをミャンマー側に送り出す。私たちはタイ側でお母さんの帰りを待つ。その1時間の間に、私は優泰とタイ側の国境市場で買い物をする。優泰には携帯電話型の計算機を買ってやり、カシューナッツを一袋、二十世紀風の梨を3キロほど買い込む。タイ最北のメーサイは午前中だと言うのに、やたらと暑い。痛いくらいに差し込んでくる日差しの中で、市場内を歩き回るのには、正直なところ疲れてしまった。この国境市場への中国人の進出は活発なようで、タイ語よりも声高な中国語があちこちで飛び交っている。物流の拠点になっているのだろうが、なんだか気の休まらない街になってきている気がする。それと子供の物乞いが多い。チェンマイにも物乞いがいるが、彼らとはだいぶ違ってスマートである。ここの子供の物乞いは6歳位の子供が、赤ん坊を背負ったり、抱いたりして、金をクレと私のシャツの裾を引いてせがむのである。見るからに悲惨そうだし、可哀想にも思えるが、その背負っている赤ん坊が泣いている姿を見たことが無い。こんな小さな子供が、炎天下に赤ん坊を背負って町を歩きまわっているのに、赤ん坊がムズガラナイのは不自然である。どの赤ん坊もみんな寝ているのである。なんとなく、赤ん坊に睡眠薬でも飲ませているのではないかと言ったかんぐりさえできそうで、気分が悪い。チェンマイでなら与える小銭も与える気になれない。
11時にはちょっと早いが昼食を取る。市場脇の食堂で、各自勝手に注文して食事を食べる。窓際のテーブルには中年過ぎの男性と20代後半のような女性が食事をしながら話をしていた。男性の声は大きく、しかも、タイ語ではあるのだが、如何にも日本人が発音するタイ語であった。彼もきっと長期滞在の日本人なのだろう。なんだか、半分現地人化するか、タイでの日本人のドロドロしたコミュニティーの中にいる日本人の姿を見つけると、詩人金子光春が昭和初期の南洋の日本人社会を描いた「マレー蘭印紀行」と同じに見えてくる。70年の歳月が流れて、東南アジアの姿は劇的に変貌したが、そこに浮遊したり、沈殿したりする日本人は、ほとんど変化していないようにも思える。チェンマイに持ってこなかったが、マレー蘭印紀行をもう一度じっくり読み返してみたくなった。
12時にメーサイを出発し、帰りは私の運転で往路と異なりファーンを経由する国境回廊のルートを取ることにする。このルートの警戒が特に厳しいのか、それとも今日が警察の日だからか、検問所を警備しているのは警察ではなく軍隊であった。そのため、装備も物々しく、検問所脇には土塁まで築かれている。検問も観光客風情だからスルーパスと言うわけに行かず、ほぼ20キロおきくらいにある検問所でいちいち停車を命じられ、臨検を受ける。もっとも、私は胸からぶら下げている政府広報局発行の身分証がお守りのように、私の身分を告げて兵隊たちは挙手の礼で見送ってくれる。
途中のチェンダオを過ぎたところで3時の休憩をとる。ここまで来ればチェンマイまではあと1時間の行程で、この先はOさんに全面的に運転をお任せして私は後部座席で昼寝をさせてもらう。チェンマイに到着すると突風が吹き、砂塵が舞っていた。スコールが今にも降り出してきそうである。全行程約500キロでガソリン(ディーゼル)を56リットルほど消費していた。
夜、静岡から見えられたKさん夫妻とカムインハウスで夕食を食べる。
朝食
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チェンライの食堂にてクオッティオうどん。 |
昼食
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メーサイの食堂にて鶏とカシューナッツ炒め。 |
夕食
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カムインハウスにて海老のすり身フライ、北タイ風オードブル、五目野菜炒め、豚肉の北タイ風カレー煮込み、ソムタム、パカナー菜のヤム。 |
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