10月6日 土曜日
体調の具合はまだ半分と言ったところだが、起き出せないほどではない。朝食には昨夜の残りの鶏肉や空芯菜の炒め物と残りご飯を食べ、お母さんと優泰は釜揚げうどんを食べる。
だらだらとしていると、そのまま今日もなにもできなくなりそうなので、ビートルに乗って3人で出かけることにする。先日自転車で途中まで行った貯水池の方へ行き、そこでボートに乗りたいと思う。
貯水池一帯は公園になっているようで、入場料がひとり10バーツかかった。しかし、優泰は免除だし、車での乗り入れ料と言ったものもなかった。貯水池はかなり大きくいびつな形をしていた。湖畔の水面には東屋が立ちこめ、休憩したり料理を取り寄せて食べたりできるようになっている。風が吹けばなかなか涼しそうな東屋である。ボート乗り場も1ヶ所あり、ボートは足こぎ式の二人乗りとスワン型のボート、そしてカヌーが一定あったが、この日差しでは足こぎ式の屋根付きが最善である。ボート代は30分までが40バーツ、1時間までが60バーツであった。土曜日であるが他に客はおらず、ひろい池に漕ぎ出した。ただし、貯水池の半分ほどで仕切りがあり、ペットボトルで作ったブイが浮いていて、そこから先には行ってはいけない事になっている。さらにボートに乗るには救命胴衣の着用義務がある。タイと言う国は面白いもので、陸上交通機関では、ノーヘルやシートベルトなどおろそかにされていながら、こんな貯水池のボートでは救命胴衣の着用を求めるのだから、、。
湖畔の景色は美しかった。草や木もよく刈りこんであり、人影も少なく、間近にはドイステップの山すそも伸びてきている。どこかの高原避暑地といっても良いようだが、湖畔に金色の仏様の立像があるところが、やたりタイらしい。景色と若干ミスマッチを起こしているが、この仏様もこの公園の見所の一つとなっているのだろう。
はじめのうちは私とお母さんがボートを漕いでいたが、優泰もやってみたいと言うので、やらせてみた。足漕ぎ式だから、自転車のようにペダルを踏めば良いわけだが、大人二人が乗っているわけで、結構ペダルも重い。優泰も頑張り、ゆっくりではあったが、貯水池を約30分かけて半周させた。
ボートを降りて、アイスクリーム屋さんからココナツのアイスクリームを買い、公園を後にして昼食を取りにアパート近くのカウマンガイの店に行く。この店は何度も触れたが、鶏肉が美味しい。しかし、日曜は休みで、しかも昼間しか売っていないので、優泰に食べさせるには土曜の昼間しかないわけだ。が、優泰はアイスクリームに続き、車の中でもスナック菓子を食べていたものだから、食欲がない。結局お母さんの揚げたカウマンガイを少し分けてもらって食べた。私は茹でた鶏以外にムーサテと言うカレー風味の串焼き豚肉(焼き鳥風)を食べた。この店の出してくれたピーナツ風味のツケダレがとても美味しく、10本近く食べてしまった。
アパートに戻ると、やはりまだ復調していないのが、身体のだるさを感じ、シャワーを浴びて、すこしベッドに横にならせてもらう。少しウトウトしかけたとき、ドアをノックする音が聞こえる。お母さんが出てくれるだろうと思ったが、誰も出てくれる気配がなく、仕方なく起き出してドアを開けると建具屋さんであった。キッチンの棚の修理のための寸法測りに北と言う。お母さんと優泰はというと床の上にマットを引いて昼寝の最中であった。新しい棚は来週の水曜日の午前10時に届けるとのことであった。
建具屋さんも帰り、ふたたびウトウトしかけたところで、またもノックする音が聞こえる。なんだ、なにか測り忘れたのか、、と思ってドアを開けると優泰の友達ノートが立っていた。優泰はいま寝てるから遊べないと言って、引き上げてもらう。
ようやく1時間ほど寝る事ができ、リビングから聞こえる優泰の声で目を覚ました。時刻は4時前であった。お母さんからコインランドリーへの洗濯の依頼を受け、自転車の荷台に小さなタライをくくり付けて大量の洗濯物を運ぶ。
今日はお母さんの誕生日でもあり、コインランドリーで洗濯機が回っている間に、バースデーケーキを買う事にする。が、その前にサイアムテレビへ洗濯機の代金の不足分を届ける。
どこでケーキを買ったらいいか迷い、タニン市場近くのケーキ屋をのぞいたが、中では店番のおばさんが、だらりとテレビを見ており、なんとなくケーキもだらりとした印象を受けたので、リンピンショッピングセンターへ行ってみる。いつもお母さんがクッキーを買う店のケーキをのぞいたが、やたらデコレーションが派手で、優泰なら喜ぶだろうが、お母さん向きではない。同じ建物内にS&Pというレストランが入っており、そこでもショーケースにケーキを陳列していた。値段は他所と比べ倍以上するが、ショーケースには温度計も付けており、温度管理もしているようだ。それにゴテゴテとせず、ちゃんとしたケーキが売られている。これしかないかと思い、奮発してシフォンケーキとあるものにHappy
Birthdayと書いてもらって持ちかえる。
夕食はYMCAの食堂で取ることにしたが、これが失敗であった。昼間は植物も多く自然の光が差し込み気持ちが言いのだが、夜は蚊が多くて閉口した。それもとても大きな蚊で、刺された瞬間チクリと痛い。ウエイターが誘蛾灯を持ってきてくれたが、こんなものではどうにもならないくらいの攻撃であった。私は何匹も撃墜したが、それでも何箇所も刺されてしまい、さっさと食べて逃げ帰った。
アパートに戻り、バースデーケーキに蝋燭をともしてお母さんの誕生日を祝った。蝋燭の火を吹き消す段になって、優泰が吹くのを手伝うと言いながら、「イッセイノセ」と言い終わる前に、ひとりで蝋燭を全部吹き消してしまった。それでも3人でケーキを食べて和やかに誕生日を祝う事ができた。
ケーキの味については、タイのケーキとしてはしっかりした味がしていた。しかし、私はバタークリームより生クリームが好きなのだが、常夏のこの土地には生クリームのケーキと言ったものや、甘い生のイチゴがサンドされているようなケーキはなかなかお目にかかれないようだ。
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