12月3 月曜日

さて、また月曜日だ。優泰の弁当はパンにプレーンオムレツを挟み、キュウリを剥き、リンゴを入れ、あとはイチゴ牛乳とお菓子。栄養のバランスなどほとんど考えられていない。そう言えば以前添乗員で海外へ出ていると気にこんな感じの弁当にしばしばお目にかかった。ボックスブレックファストの場合もあったし、ランチボックスだった事もあった。パンとリンゴ、クッキーにジュース。良くてハムとチーズくらい。チョコレートなんてふざけたものが入っていたこともあった。中国で配られた弁当はスナック菓子と菓子パンにジュースと頭を抱えるものだった。日本で考える弁当の常識などは他所では通じないのかもしれない。

優泰を学校へ送りこみ、タイ語の単語カードを作る。カードばかり増えて覚えた単語の数はほとんど増えないから、カードを作りながら「覚えなくては、、」といったプレッシャーばかりが募ってしまい逆効果だ。皿を洗ったりして気を紛らわせるが、皿を洗ったところで単語が覚えられるわけではなく、ジレンマに陥ってしまう。

YMCAのタイ語のクラスは今日も参加率が高い。そして私の知らない単語が次々に飛び出してくる。何でこれほど知らない単語が多いのだろうか、、、。そう、私は現在タイにいるにはいるがタイ人と会話をする機会が少なすぎるのではないだろうか。スーパーで買い物をし、優泰を英語の学校へ送り迎えし、NHKのテレビを見ている。これではタイに来ていても、タイ語に接する事がない。せいぜい食堂のメニューを読むくらいだ。そして移動手段に車を使うから、バスの中で地元の人との会話も成立しない。少し生活を改めないとこのままズルズルと行ってしまいそうだ。

昼食にバジル炒めを食べながら、では一体どのように生活を改めれば良いだろうかと考える。単に車に乗らずバスに乗るだけでは、挨拶くらいしか会話をしないだろうし、発展的な会話にはなり得ない。以前アパートの下に出ていた小屋がけバーのような存在があると、便利なのだが、夜になって小屋がけバー以外の本格的酒場をウロツク勇気も資金もない。何か趣味を同じくするタイ人の友人を持つのも良い方法だろうが、そんな友人を見つけるのも、趣味の話をタイ語でするのも大変そうだ。結局みんな面倒になってきてしまう。根本は現在の怠惰な生活がやる気を削いでしまっているのだろう。

優泰を学校に迎える。優泰をピックアップした際に「どうしても欲しいものがあるからお金が欲しい」と優泰が言う。「何が欲しいのかちゃんと説明するように」と言ったが、校門の横で売っているお菓子が食べたいと言ったような事をもぞもぞと言う。まぁ、このところ毎日の弁当にお菓子を入れてやっているが、たまには自分で選んで買いたいのだろうと思って10バーツコインを渡した。しかし、買ってきたものを見ると、私が毎日弁当に入れてあげているウルトラマンのカード入りのお菓子ではないか、、。明らかにこれは優泰の詭弁である。お菓子が食べたいのではなく、お菓子に入っているカードが欲しいから私にお金をせがんだと考えられる。「5バーツだけだったから良いでしょ」と優泰は言ってきたが、私としては釈然としないまま、優泰を日本語補習校に送りこんだ。あとで確認された事だが、袋の中のお菓子は車の後ろに投げられていた、、。

補習校の1時間の授業の間、私は外を歩いてみる。以前からチェンマイの古い車をデジカメに集めてみたいと思っていたのであり、今日はデジカメをポケットに入れてきた。チェンマイには実に多くの古い車が走っている。ビートルもかなりの数が現役で走りまわっているし、それ以外にも珍しい車が多い。さっそくカメラをポケットに町を歩く。さっそく軒下に止まっているトヨペットのコロナハードトップ(車の名前に疎いので違うかもしれない)にでくわす。パチリとシャッターを切り再び歩き出す。しかし、一旦歩き出すと、タイ語の店の看板を読んだりするほうが面白くなって走っている車に目を向けなくなってしまう。それに道は整備不良の車の吐き出す排気ガスでいっぱいだ。約1時間かけて、ただの町歩きを楽しんで、そろそろ補習校にもどろうとした頃、ビートルの部品屋を発見。小さな店ながら新品や中古を含め部品が沢山並んでいる。ゴムやプラスチックなどの補充部品からバネなどの金具類までなかなか充実している。今度時間をかけてゆっくり見せてもらう事としよう。

補習校が終わってアパートにもどるが、気温は28度くらいまであがっいるようだ。日向にいると夏の日差しである。これは久しぶりにプールに入れそうだと、アパートにつくや否やプールに飛び込む。水は冷たかった。ここのプールは「コの字型」に建物に囲まれ、西日しかあたらない。おまけに今の季節は、その西日すらドイステープの山にさえぎられてほとんど届かないのである。水はこのところ誰も入っていないから綺麗なのだが、15分程平泳ぎで泳いで水から上がる。暖かいシャワーを浴びてもまだ体が冷たい。もうこれで今年の泳ぎ収めになるのだろうか、、。

今日の優泰の宿題はまるで幼稚園の子供がやるようなもので、英語の問題でもなく、ただ数字やアルファベットをつないで絵を作ると言ったものであった。いったいどうしてこんな宿題を出してきたのだろうか、、。宿題を終えた優泰はノートに借りたウルトラマンのDVDを見せろと要求してくる。宿題は終わっても今週中に優泰が家で勉強していかなければならないものは沢山ある。しかし、「今日はやりたくない」そうなので、PCでウルトラマンを上映してやる。

6時過ぎまでウルトラマンを見て、夕食に連れ出す。チェンマイ大学の近くに40バーツのバイキングがあったように記憶していたので、そこまで優泰を荷台に載せて自転車をこぐ。しかし、バイキングは昼間だけだそうで、夜はメニューから選ぶのだそうだ。それならここまで来なくても他にもいっぱいあるのだが、来てしまった以上し方がない。オープンエア(吹き抜け)の食堂に入りメニューを見ると、これと言ったメニューはなくごく普通の料理名が並んでいた。しかし、値段はあまり安くない。一品が50バーツくらいからだ。普段食べられないものをと思ったが、値段も気になりオザナリのメニューを注文してしまった。ただひとつエビとカニのすり身を湯葉に包んで揚げた物は、始めてのメニューであった。私はシンハビールを、優泰はファンタ・オレンジを飲み、230バーツの会計を済ませて、再び自転車でアパートへもどる。歯を磨き、早く寝る支度をするように優泰に言ったが、グスグズしてウルトラマンの本を眺めたりして、なかなか言った事をやらず、寝かしつけたのは8時半過ぎになっていた。お母さんがいない間は優泰を怒らないようにしようとしているが、どうやらかなり舐められ始めているようだ。

 

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