3月6日と7日の2日間でナコンサワンへ泊りがけで出かけてきた。
その後編(3月7日分)
翌朝
ホテルにチェックインした時には、朝食はないけれど、パンとコーヒーなら用意してると聞いたのだけれど、インスタントのコーヒーはあったが、パンは用意されていなかった。
その代わり、ちいさなケーキ風お菓子が置かれていた。
そのなお菓子とコーヒーを飲んでいたら仔猫がいた。
お腹を空かせているようで、お菓子を少しちぎって与えたら夢中で食べた。
スポンジの部分よりクリームの付いたところの方がネコは好きなんじゃないかと思い、クリームの多い部分を与えてみたけれど、クリームはあまり好きではないようだ。
[もともとケーキが好きなのか、それとも空腹でなんでも食べちゃうのかどっちだろう]
朝はゆっくり目に出発して、最初に向かったのがブンボーラペット。
ブンボーラペットはタイ最大の淡水湖で、渡り鳥の越冬地としてバードウォッチャーに人気のスポット。
6年前にネコと一緒にここで小舟に乗っている。
大きな湖だけれど、水深はそれほど深くないようで、あちこちに島影もあり、そうし場所には薄桃色の蓮の花や、赤ピンクの睡蓮の花が群生していたし、小舟を進めると、無数の水鳥たちが一斉に飛び立ったりして、ネコは舳先に立ってそれを眺めていた。
今回も、そんな光景を眺められることを期待していたのだけれど、前回小舟を雇った場所には、小舟もなければ人影もなかった。
そのかわり、土煙を巻き上げてダンプカーが行き交っていた。
船は結局ブンボーラペットのビジターセンターで借りることができた。
10人は乗れる遊覧ボート。
いまひとつ風情に欠けるのだけれど、安定性と居住性は良い。
さっきのダンプカーもそうだけれど、どうやら猛烈な勢いでブンボーラペットは干拓工事が行われているらしい。
あちこちでショベルカーが土を掘り、ダンプカーが土を運び、ブルドーザーが土を均して、湖沼を埋め立てて行っている。
6年前に見た景色が一変してしまっている。
こんな景色だったら、観光客もわざわざ600バーツも払って舟遊びをしようなんて気にならなくなってしまうだろう。
[どうして環境破壊をしてまで干拓工事が必要なんだろう]
土が剥き出しの岸と、その上は雑草などの生えた干拓地が沖の方まで続いている。
そうしたところにも、蓮の花が咲いていたりする。
蓮は泥の中からきれいな花を咲かせるが、しかし、こんな掘り起こされたり、埋められたりしている場所だと、なんだかかわいそうな感じがする。
[ところどころにハスの群生がある]
もう渡り鳥たちは北の国に帰った後なのか、渡り鳥は見かけなかった。
カワウやコウノトリ、セイケイなどはたくさんいたけれど、一斉に飛び立って、空が見えなくなるくらいに埋め尽くされる光景は見られなかった。
[カワウ、コウノトリ、セイケイはたくさんいた]
しかし、こんな自然条件の中で、ワニを発見した。
タイで野生のワニを見たのは初めてである。
前回来た時もワニなど見かけなかった。
こんなに盛大に自然破壊が行われていても、ワニが棲んでいるとは、さすがはタイで一番大きい淡水湖だと思う。
そんなワニも我々のボートが近づくとすぐに泥水の中に潜り込んでしまった。
[ワニを発見]
ボートから降りて、野生のワニの次は、飼育されたワニのショーを見ることにした。
ショータイムは11:30からとなっていて、我々がワニ・ショーの開場へ到着した時は、すでに10分ほど過ぎていた。
入場料は30バーツと安い。
会場内は小さな子供連れが多く、そんななか初老に近い中年男子二人で乗り込む。
開始時間は過ぎていたけれど、まだショーは始まっておらず、ワニと格闘するはず係員は、11:45になって登場。
野生のワニと違って、飼育されているワニは巨大で、よく太っている。
しかし、敏捷性はちっとも感じられない。
ショーのハイライトはワニが大口を開いているところへ、係員が頭を突っ込むというものなのだけれど、もともと敏捷性を感じられないワニなので、いまひとつ緊張感が伝わってこない。
ここまでおよそ10分ほど、このあと「観客の皆さん、大きく開いているワニの口めがけてコインを投げ入れましょう」というものになってお終い。
なんだか、30バーツのショーだとこんなこんなのかなって感じだった。
その点では、サムットプラカーンのワニ園で行われているショーは、迫力もあったし、コメディーも効いてて面白かった。
[ハラハラドキドキにはちょっと欠けていた]
ワニのショーのあとは、また49バーツを払って水族館を見学する。
あんまり魚にも興味がある方ではないのだけれど、せっかく来たからと言うので覗いてみる。
土地柄か淡水魚中心で、色合いは地味。
ナマズの種類はたくさんあって、へんてこりんなのも多い。
ハイライトはトンネルのような水槽で、マンタのように大きな淡水エイが天井をのうのうと泳いでいく。
しかし、水槽内の水が濁っているからか、ガラスの仕切りから離れると魚たちの輪郭がすぐにぼやけてしまう。
[もう少し、透明度が高いと良いのだけれど]
水族館の2階には野鳥展示室のようなものがあったので、覗いてみたけれど、作り物の鳥が展示されているだけで、展示スペースもあまり広くなかったので、ちらっと見ただけですぐに退室してしまった。
ブンボーラペットは、残念ながら事前の期待値が大きすぎたためか、ちょっとガッカリな印象であった。
[水族館の建物は船の形をしている]
フンボーラペットに続いて、ナーン川とピン川の合流地点へ行ってみる。
チャオプラヤ川の発祥地点である。
この合流地点にパーサーンという建造物ができている。
弓なりのデザインで、木材を多用しており、モダーンな印象があるけれど、特別何かがあるといった建造物ではない。
インスタ好きのタイ人ならこれをバックにして写真でも撮るのだろう。
[パーサーンを斜め後ろから見たところ]
昼食にはナコンサワンの旧市街、市場のあるあたりで、レーキーという華僑食堂に目星をつけていた。
マレーシアや香港あたりにありそうな小さな店だけれど、店構えからしても、安くて旨そうなものを食べさせてくれそう。
[何の変哲もないお店]
お昼を回った市場街は、閑散として、気怠さが漂っていたけれど、レーキーはほぼ満席に近く、空きテーブルが一つしかなかった。
安食堂ながら、エアコンもあり、店内もきれい。
日曜日の午後だからか、家族連れも何組か来ている。
注文したのはコーシーミーという餡かけ焼きそば。
コーシーミーと言うのは福建語から来ているそうで、漢字で書くと鶏絲麺と書くらしい。
これは好物で、バンコクのモンティエンホテルのコーシーミーを始めて食べた時に感動してしまった。
また、雲吞スープも注文。
そして、この店の料理も間違いなく美味しかった。
値段も高くない、庶民的な価格。
庶民食堂とはいえ、調理人はいい仕事をしている。
前夜の中華もうまかったけれど、昼も旨いものを食べることができて、満足。
[鶏とタケノコのトロミ餡がかかった焼きそば]
[具がタップリのワンタンスープ]
午後からはナコンサワン市内のお寺巡り。
このナコンサワンには、ちょっとした丘が、街の北側にいくつかあり、丘の上にはお寺がある。
何十年も昔、チェンマイからバスでバンコクへ向かってくると、ナコンサワンの街の入り口で、丘の上に金色の仏塔が光っているのが印象的だったことを記憶している。
あれから、何度も見てきているけれど、その仏塔のある丘には今日まで登った経験がない。
[昔から気になっていた]
最初に向かったのは、ナコンサワンタワー。
丘の上にあり、ナコンサワン周辺を360度見渡せる展望台になっている。
もっとも、展望タワーと言っても高さは32メートルしかないそうだから、わざわざ登らなくては見られない景色などは期待する方が間違っているかもしれない。
入場料はしっかりとられて20バーツ。
展望台には先客2人あり。
景色を楽しみに来ているというより、エアコンが効いていて静かだから、二人だけの時間を過ごすために登ってきたと言った感じであった。
展望台からの眺めは、やっぱりわざわざ登るほどのことはなかったという印象。
川の合流地点やブンボーラペットが良く見えれば、フムフムと思うのだろうけど、実際に見えるのは、特徴の薄い大きな田舎町でしかなかった。
[特別タワーに登ってみたくなるほどの景色ではない]
このナコンサワンタワーの隣に、昔から気になっていた丘の上の金色仏塔があった。
仏塔はワットチャュラマニーというお寺にあり、タワーから歩くと最初に大仏の横を通り過ぎることになる。
この大仏も仏塔もきっきのタワーから見えていた。
[タワーはエアコンが効いていることが一番の魅力だったかも]
ワットチュラマニーはなかなか俗っぽいお寺であった。
600年の伝統がある古刹ということだったけれど、キンキラキンのお寺で、礼拝堂の中に安置されている仏像の背後には電飾まで施されている。
[この手の電飾付き仏像はミャンマーでは一般的]
さらにその奥に幅の広い階段が続き、金色の仏塔へ至るようになっている。
仏塔の入口手前に、何体もの仏像が並んでいるけれど、明らかにヒンズー教の神様の像も混じっている。
タイではヒンズーの神々も釈迦の守り神ということになっているから、矛盾はないわけだけれど、アランゴダーイのなんでもアリといったイメージ。
[これがナコンサワンで夜に輝いていた仏塔]
仏塔の下の部分は2階建ての建物になっており、やはり礼拝室を兼ねて、いくつもの仏像が並んでいるけれど、この礼拝室の中でちょっと変わった読経(?)が拡声器から流れて、館内に響き渡っていた。
読経と言っても、ものすごく早口で、まるでラジオで株式市況を読み上げているように聞こえる。
タイのお経だからパーリ語なんだろうけれど、よくもこんなに早口でよどみなく読み上げられるものだと感心してしまう。
[奥のお坊様が株式市況か競馬中継かと言ったテンポでお経をあげられている]
仏塔の中にはスコータイ風の黄金仏が安置されており、膝の上におろした右手の指の長さが、人差し指から小指まで、横一列に長さがそろっているので、ピサヌロークの仏像によく似ている。
仏像のスタイルも他の仏像が坐禅を組んでいるのに対して、この仏像は降魔印を結んでいる。
そして、仏像の置かれている場所の天井はドームになっており、ドーム一面に色鮮やかすぎるくらいに釈迦の一生が描かれている。
[600年の歴史ある寺院だけど、どこにも古さを感じさせない]
続いて、隣の丘にあるワットウォラナートバンポットへ登ってみる。
ナコンサワンタワーやワットチュラマニーへは車で登ってしまったけれど、こちらのお寺は麓から階段が一直線についているので、階段で登ってみる。
階段にはモザイク風にタイルが貼られており、蓮の花などが描かれている。
登り口の両側にある該当には金色をしたカエルのオブジェがある。
この丘の名前、カオコップ(カエル山)と言うらしい。
どうしてカエル山なのかは、現在まで未確認。
[カエルのオブジェはこれ以外に巨大なのが境内にあった]
[今回の旅行は階段が多い]
長い階段を上り詰めたところが境内になっていて、やはり金色の仏塔がある。
この仏塔の前後左右に身体が緑色をした坐禅仏が安置されているのだけれど、まるで刺青でもしているかのように身体に模様が付いている。
[模様と言い、色使いと言い、ちょっと違和感のある仏像]
礼拝堂にもいくつも仏像が並んでいて、若い女性たちが拝んでいる。
そして、拝み終わったら、横に置かれた仏像に抱きついて、その仏像を持ち上げようとしている。
確認はしていないが、どうやら、この仏像を持ち上げられたら、願い事が叶うということらしい。
仏像は鉄製のようで、かなり重そう。
タイではよくゾウをかたどった重りを指一本で持ち上げたら願いが叶うってのもあるけど、ここでは仏像を「片腕だけで」持ち上げるってことのようだ。
※ほんとうは2回チャレンジして、1回目に持ち上げられ、2回目は持ち上がらなければ、願いが叶うのだそうです。
[たしかに、重たい仏像]
しかし、若い女性が仏像に抱き着いたりして、問題ないのだろうか?
[ちなみにこの女性は持ち上げられなかったようです]
さて、Iさんがバンコクヘ戻る列車の出発時間が近づいたので、ナコンサワン駅に向かう。
バンコク行きの特急列車は、ほぼ定刻通り16:20にやってきて、Iさんはバンコクへ向かって帰って行った。
私もピサヌロークへ直帰して良いところだけれど、昨日見ないで終わったカオノーのコウモリをやっぱり見ておきたいと思う。
[帰りの特急も珍しく遅れてない]
ふたたびカオノーへ、こんどは一人で向かう。
カオノーに到着したのは5時半。
まだ日没までには1時間ある。
何もしないで待つのも時間がもったいないので、もう一度カオノーへ登ってみることにする。
昨日登っているので、登り方は心得ている。
階段、ハシゴと、ちょっと息が弾むけれど、休憩も取らずに一気に頂上まで上り詰める。
なんと20分で登頂成功。
昨日は麓にしかいなかったサルたちが、今日は頂上にもたくさん出没している。
不意に現れた私に驚いたのか、サルたちが逃げるのだけれど、とんがった岩の先や細い木の枝を軽々と飛び移っていく。
サルたちには高所恐怖症と言ったものがないのだろうか。
[サルたちは何の目的で山頂まで登ってくるのだろうか]
まだ日没には少し早いけれど、山頂で西の空が赤く染まっていくのを眺める。
このまま夕陽が沈むのを頂上から眺めていたい気もするけど、そうすると当初の目的であるコウモリが見られなくなってしまう。
それに、日が暮れて、暗くなってから足場の悪い崖の上を歩くのはおっかない。
[夕陽を背景に立っている仏像と座っている仏像]
6時10分過ぎには下山を開始する。
やっぱり、下りは楽で、15分ほどで麓に到着。
そのままコウモリを見られる場所まで車を進める。
もうすっかり夕方。
車を運転しながら空を見上げたら、もうコウモリたちの飛翔が始まっていた。
[運転中の車からもコウモリの大群がはっきり確認できる]
車を適当な場所に止めて、コウモリの川を見上げる。
コウモリたちはカオノーの隣り、カオゲーオにある洞窟から噴き出してきている。
ピサヌロークのヌーンマプラーンもすごいが、ここのコウモリたちも数では引けを取らないのではないだろうか?
しかし、残念なのはここのコウモリたちの飛行高度が高くて、ヌーンマプラーンのように手を伸ばせば届きそうな感じにはならない。
[コウモリの飛翔は延々と続く]
コウモリの飛翔は延々と続き、あたりがすっかり暗くなってしまった。
もう十分にコウモリも見たので、ピサヌロークへ帰ることにする。
ピサヌロークまで150kmほどだけれど、田舎道だし、スピードも60キロくらいに抑えて、のんびり帰ることにする。
2日間ではあったけれど、久しぶりに旅をしたなって感じの旅になった。