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イギリス旅行 (中編)
8月12日 (土) の続き
ロンドンから乗り込んだバスはほぼ定刻の午後1時半にピーターバラに到着した。
ピーターバラを英語で書くと、Peterboroughとなる。この字ずらだけ見るとピーターボローと読んでしまいそうになる。
サイモンとガーファンクルの大ヒット曲スカボローフェアのボローもboroughとなっているから、ピーターボローでもおかしくないとは思うんだけど、英語は難しい。

ピーターバラ到着
[ロンドンから格安な料金で運んできてくれた黄緑色のバス]

そのピーターバラのクイーンズゲートバスターミナルでバスから降りる。
そこからここでの宿までは1キロ少々、さっそくキャリーバッグを引っ張りながら歩きはじめる。
日本のガイドブックなどでもたぶん紹介されていないような田舎町で、歩いてみるとかつては多少にぎわったこともあったかもしれないけど、いまは廃れてしまった地方都市と言った感じ。
歩いている人の様子もロンドンとは違う。
年配者が目立つ。
若者もいることはいるけれど、失業していてフラフラしているのではないかと思える連中がたむろしていたりする。
あんまり雰囲気がイイとは言えないなと言うのが第一印象。
日本の地方都市とも共通するかもしれない。

ローズマリーゲストハウス
[この宿に2連泊]

ここでの宿はローズマリーゲストハウス。
棟割住宅の小さな宿。
ドアのベルを鳴らしてしばらく待つと招じ入れてもらえた。
玄関口からリビングのようなところへ通され、そこがレセプション兼食堂兼オーナー家族の居間になっているようだ。
年取った犬も一匹イスのクッションで寝ている。
宿泊代金は前払いしてあるので、何も手続きなしですぐにカギをもらえた。

部屋は2階にあり、表に面した部屋であったけれど、とても狭い。
シングルベッドが一つあるだけでほぼ部屋が一杯になってしまっている。
それでも、冷蔵庫はあり、電子レンジや湯沸かしもあってコーヒーも飲める。
シャワーとトイレもとても狭いけど、部屋に付いているだけでもありがたい。
これで1泊が30ポンドほどだからロンドンでのドミトリーベッドと同じ金額。
しかも朝食が付いている。

シングルルーム
[シングルベッドの三面が壁に接するほど狭い部屋]

時刻は午後2時。
少し曇っているが雨は降っていない。
このピーターバラは宿賃が安いところを見つけたから来ることになったけれど、事前に調べてみたらかのトーマスクック社の本社が置かれていた時期もあるらしい。
やっぱり過去には栄光があったようだ。
そして街の南側にネイネイ川という川が流れていて、その川に沿ってかつてネイネイ渓谷鉄道と言うのがあったらしく、その廃線を利用してボランティアが週末を中心にSLを運行させていると言う情報も得ていた。
ネットでその運行スケジュールを調べてみたら、今日は午後3時前後に列車の運行があるらしい。
さっそく出かけてみることにする。

宿を出て、しばらく歩くと大きな大聖堂が現れた。
巨大だし、ゴシック風で尖塔がいくつも並んで、ものすごく迫力がある。
ピーターバラには大きな大聖堂があるとは調べていたけれど、こんなに巨大とは思わなかった。
しかも12世紀の建築だという。
12世紀と言ったらまだタイではスコータイ王朝成立以前。
スコータイの遺跡とかよりも古い時代に、こんなバカでかい建物が作られていたとは驚き。

ピーターバラ大聖堂
[ちっぽけな街にこんなすごい建造物があるとは驚き]

もっとじっくり見ても良さそうだけれど、汽車の時間があるので先を急ぐ。
大聖堂敷地の表門をくぐったら、そこは広場になっていた。
そう、先日ブリュッセルのグランパリ広場のように、石畳の広場を囲むように中世風の建物が取り囲んでいて、グランパリの豪華さはないけれど、なかなかいい雰囲気。
ピーターバラに着いたときは、さびれてしまって「あんまり雰囲気がイイとは言えないな」と感じたけれど、大聖堂からこの広場まではなかなかいい感じ。
その広場からまっすぐ南へ向かってプロムナードが伸びており、土曜日ということでなのか、小さなイベントをやっていたり、音楽が聞こえてきたり、華やいだ雰囲気が漂ってる。
さびれた感じなど感じられない。
なんだかピーターバラに来てよかったなと思えてきた。

街の中央広場
[ピーターバラのグランプラスだ]

ネイネイ渓谷鉄道のピーターバラ駅は、街はずれ、ネイネイ川を渡った向こう側にあった。
駅にたどり着いたらちょうど緑色のSLが古めかしい客車を引いてホームへ入ってくるところだった。
時刻は14:50。
なかなか幸先良さそう。

タンク式機関車
[ピーターバラ渓谷鉄道で運行されているSL]

ボランティアの駅員たちも昔風の服装をしている。
このSLはポーランドから来たようで、動輪は赤色、車体は深緑色に塗られている。
運転室の横にプレートがあり、それを見てみると1959年製となっている。
ポーランドでは1959年頃でもSLを製造していたということにちょっと驚く。
当時のポーランドは社会主義だったし、石炭も産出してたからなのかもしれない。
動輪が4軸のタンク機関車。
ネイネイ渓谷鉄道には色いろな種類のSLを保存しているらしく、大型で流線型をしたSLも写真投稿されているのを見てきたけれど、いま目の前にいる機関車は小型で愛らしい。

ポーランドで戦後作られたSL
[タイのSLも緑色が多いことを思い出した]

この駅が終点になっており、ここで列車は折り返して元来た方向へ戻っていくことになる。
SLは客車から切り離されて、反対側へ連結しなおされる。
この駅にはターンテーブルはないようなので、SLは後ろ向きとなっている。
そして、15:10に出発していく。

連結切り離し
[機関車の切り離し、ピンリンク式連結器]

連結
[切り離したSLは先頭へ回って再び連結]

SLが走っている姿を写真に撮りたいと思い、駅を出て線路沿いの遊歩道を歩く。
そのうちに汽笛が聞こえ、SL列車はお尻側を前に向けた姿でこっちへ向かってきた。
私の前を歩いていた女性も汽笛を聞いて振り返り、SLの写真を撮ろうとしていた。

バック運転
[SLは後ろ向きで客車を引いてくる]

石炭が良いのかあまり煙を吐いていない。
それでも、SLが前を通過したら周辺に靄がかかったような感じになった。
SLは何両もの古い客車を引いているけれど、お客さんはあんまり乗っていないようだ。
ボランティアが運営していて、お客さんもボランティアみたいなものなんだろう。
しかし、イギリスにはこうしたボランティアが運営する鉄道がいくつもあるそうだから、イギリス人と言うのはこの手のモノがよっぽど好きなんだろう。

旧式の客車
[出自もバラバラな旧式の客車をつらねたSL列車]

この鉄道沿いと言うかネイネイ川沿いにはたくさんのトレッキングルートがあるようで、明日はそうしたトレッキングルートを歩きながらSLが走る姿を写真に撮りたいと思っている。
でも、その前に少しだけ今日のうちに歩いてみる。
さっきのSLが本日の最終便なので、もう今日はSLに出会うことはないけど、緑のトンネルのような遊歩道を歩くのは気持ちがイイ。
このネイネイ川沿い一帯が自然公園のようになっている。
花も咲いているし、プラムのような実やベリーの実も見かける。

緑のトンネル
[線路沿いの遊歩道は緑のトンネル]

しばらく歩いたところで、公園から出て、自動車の走る道へ出た。
ところどころに集落があり住宅が並んでいる。
イギリスはガーデニングの本場でもあるから、庭などよく手入れのされているお宅もある。

道端で見かけた住宅
[イギリスの人は庭自慢が多いのだろう]

のんびり歩きながらピーターバラの街へ戻るが、途中でいくつかのスーパーへ立ち寄った。
このあたりの物価の見当をつけたいと思ったのと、夕食にどんなものを買って食べるか参考にしたかったから。
LiDLという大型スーパーは、昨年オランダから船でイギリスに来た時も利用させてもらった。
店内でパンを焼いていたりした。
モノの値段はフランスやベルギーよりもさらに少し高いような気がした。
特にワインは高い感じ。
ロンドンでシードルを買ったテスコにも立ち寄ったし、他にもAsdaというスーパーにも入ってみる。
ここには自社ブランドのインスタントラーメンがあった。
これも去年イギリスでSPARというコンビニのようなスーパーでカレー風味のインスタントラーメンを買い、それを焼きそば弁当風にして昼食に食べたら結構おいしかったので、今回も明日の昼食に使えそうなインスタントラーメンがないかと物色したけれど、日本や韓国のブランドのラーメンはとても高く、またタイやインドネシアのブランドはイギリスまで来て買いたいと思わない。
結局どのスーパーでも中を見て回るだけで何も買わずに店を出てしまった。

LiDL
[郊外型大型スーパーLiDL]

歩いている途中で広場の裏側にも古い教会があるのを見つけた。
さっきの大聖堂とは比べものにならないくらいのサイズだけれど、これもなかなか趣のあるイギリスらしい教会。
この教会の周辺の建物もどこか中世風で面白い。
その建物の奥に入ってみると、ガラッと変わってモダーンなアーケード形式のショッピングセンターになっている。
この中を歩くと全然さびれた印象はない。

中央広場裏の教会
[この教会も歴史的に古そう、ピーターバラは結構すごいかも]

時刻は6時を回ったけれど、まだまだ明るくて夕方と言う気がしない。
これまでピーターバラの街の南側を歩いてみたけれど、こんどは北側へ向かって歩いてみる。
宿を出て右側へ進んでいくと、住宅街になる。
ただし、さっき見たようなガーデニングがステキな家はめっきり見られなくなり、狭い前庭にはゴミが散らかっていたりする家が目立ってきた。
このあたりは低所得者が多く住むエリアなのだろうか?
住人も北アフリカ系の顔立ちの人が多いようだ。
しかし、だからと言って治安が悪そうにも思えない。

2キロほど歩き、電車の線路を越えたところにもスーパーLiDLがある。
広い駐車場を備えたスーパーで、隣接して娯楽施設などもある。
そこへ入って今晩の夕食などを買い求めることにする。

店内の品ぞろえは、さっき入ったLiDLやAsdaの方が良いようだ。
野菜なんかも、ちょっと新鮮さで劣る。
イギリスの細いニンジンは塩ゆでして食べると美味しいので買おうかと思ったけれど、部屋にある湯沸かしポットでニンジンを茹でたりしたら不味いかと思いあきらめた。
未加工の食材類は値段的にそれ程高くないけれど、お惣菜のような類は値段が張る。
部屋にはレンジもあるので冷凍食品と言う手もある。

結局、冷凍のピザ、フランスパン、菜っ葉の袋詰め、小ぶりの桃、冷凍のスパゲティー、そしてワインを一本買う。
これだけ買えば、今晩だけでなく明日の昼食まで賄えそうだ。
もう少し野菜ものを食べたいけれど、キャベツなどもあんまり良いものがないのであきらめた。
レタスは比較的安くて、新鮮そうだったけれど、なんだかレタスって歯ざわりだけで、栄養価が低いようなイメージがある。

スーパーでそろえた食料品
[これ全部で12ポンドほど]

宿への帰り道、宿のすぐ近くの家の出窓でネコが寝ているのを発見。
今回イギリスで最初に見つけたネコということになる。
宿に戻ったのは夜8時過ぎ。
だけど、まだまだ全然明るい。

イギリスのネコ
[ネコが出窓で背中を向けて寝ている]

夕食にはピザをレンジでチンしてみたけれど、冷凍のピザはレンジではなく、オーブンで焼くべきもののようだ。
ピザの生地がパサパサで半生のような感じ。
ピザにはバンコクの空港ラウンジで分けてもらったチリパウダーを振りかけて食べる。
このピザを1枚食べただけでほぼ満腹となってしまった。
ワインは特売もので4.99ポンドであったけれど美味しかった。
スペイン南部の赤ワインで、切れがあるスッキリした飲み口のワインだった。
これはボトルの半分くらい飲んでしまった。

スペイン産の赤ワイン
[南スペインのCorbieresと言うワイン、飛行機の中で飲んだワインよりずっとおいしい]

楽しみにしていた桃は、まだ硬くてガリガリとした歯触り。
甘さも、香りも乗ってないので、しばらく放置して追熟させることにした。

8月13日 (日)
ピーターバラ渓谷鉄道の起点はワンズフォードという駅。
そこから昨日のピーターバラ駅へ今日は3本の列車が往復することになっている。
なので起点のワンズフォードまでまずは行って、そこから線路沿いにピーターバラへ歩いてくれば、合計で最大6回もSL列車と遭遇できる計算になる。
が、そのワンズフォードまでどうやって行くかが問題で、昨晩は夜中までその計画を立案していた。
ワンズフォードから数キロ先までピーターバラからバスが出ていることになっているが、時刻を検索しても出てこない。
よくよく見たら日曜日は運休となっている。
イギリスのバスは日曜日に走らないというのは一般的なのかもしれない。
では、そこまで歩いていくとすると、GoogleMapで調べると距離が11マイル、所要3時間33分と表示される。
11マイルと言ったら約18キロ。
けっこう遠い。
それに3時間半もかかるとなると、始発の10時の列車を追いかけるには、宿を朝6時くらいには出なくてはならない。
せっかく宿賃に含まれている朝食を放棄してまで、そんな遠くまで歩きたいとは思わない。
そこで、ピーターバラ周辺のトレイルマップを睨んで、少しでも近道はないだろうかと探ってみる。
GoogleMapにはトレイルは表示されないので、だいぶ迂回した距離程になっている。

さんざん考えた結論として、ネイネイ自然公園の中にあるオーバートンという駅まで行き、そこからなるべく線路伝いにワンズフォードへ行ってみることにした。
SLがオーバートンへ来るのは10:40となっているので、宿を8時に出れば間に合うはず。
朝食もゆっくり食べられるというものだ。

その朝食だけれど、朝7時に階下へ降りたら私が一番乗りだった。
狭い朝食会場にはテーブルが2つ。
周りにはアイルランドの地図や写真などがたくさん貼られている。
たぶんオーナーはアイルランドの出身なのだろう。
こうした壁の写真などを見ているとアイルランドに対する興味がわいてきて、いちど行ってみたくなる。

アイルランドだらけ
[この宿屋、壁と言う壁がアイルランドで埋め尽くされている]

ここで出される朝食はアイリッシュ・ブレクファスト、つまりアイルランド風の朝食ということらしい。
初めにパンは「白がイイか、茶色がイイか」と聞かれた。
茶色と答えて、しばらくするとブラウンブレッドのトーストが2枚出てきた。
そして3杯くらいありそうなコーヒーに、オレンジジュースもジャグで持ってきてくれた。
アイリッシュブレックファストは一つの皿に盛りつけられているが、そのボリュームが凄かった。
ベイクド・ビーン、ハッシュポテト、ソーセージ2本、ベーコン数枚、目玉焼き2個、キノコのソテー、ベイクド・トマトそしてよくわからない腸詰2種。

アイリッシュ・ブレクファスト
[ヘビー級の朝食プレート]

どれも美味しいのだけれど、サラダとか生野菜はない。
そして動物タンパク系が多い。
私の2週間分くらいの動物タンパクがこの一皿に入っている感じ。
「よくわからない腸詰」というのは、なんとなくフランスのブデンにも似ている気がする。
これは金子光春のベルギー滞在中の話の中で何度か出てきて、白ブデンと血を入れた黒ブデンがあると言ったようなことが書かれていた。
アイルランドにもブデンのようなものがあるのだろうか?
それともアイルランドもスコットランドもケルト人の土地だから、スコットランドのハギスのようなものがアイルランドにもあるのかもしれない。
結局なんだかわからないし、質問した答えが、材料に私がとても聞いたら食べられなくなってしまうようなものが含まれている可能性があるかもしれないので、怖くて聞けなかった。
肉食人種は血や内臓系などをよく食べるけど、私は聞いただけで血の気が引いて気分が悪くなってしまったりする。

物凄いボリュームだと感心していたら、隣のテーブルに70歳くらいの老人男性の二人組が座った。
そして、私と同じアイリッシュブレクファストのプレートを食べ始めた。
驚いたことに、彼ら二人はそれぞれの皿を私よりも早く平らげてしまった。
西洋人の胃袋と言うのは、いったいどんなに大きいのだろうかと感心してしまった。
私はこの一皿を食べただけで超満腹。
胃がとても苦しくなった。

予定通り、8時には宿を出発。
曇り空で、雨が降ってきても不思議ではなさそうな天気。
昨日食材を買ったLiDLへの道をそのまま更に先へ進む。
住宅街が続く。
庭付きで駐車場もある中流家庭のような家が続き、あんまり人通りもなく静かだ。
車もあまり走ってない。

しばらく住宅街の中の道を歩いていくと、迷いネコの張り紙があった。
ネコの名前はロキ、7月16日から行方不明になっているらしい。
飼い主はさぞ心を痛めてネコの帰りを待っていることだろう。

迷いネコの張り紙
[ロキや~、どこにいるんだ]

歩き始めて約1時間。
なんだか100年前そのままと言った感じの郵便局があった。
白い土壁に茅葺屋根。
それがどうも現役の郵便局らしい。
丸いポストも赤い。
今日は日曜日なのでやっていないようだけれど、中をのぞいてみたくなる。

現役の郵便局
[ロングソープ郵便局]

この郵便局の先からトレイルを歩くことになる。
幅1メートルくらいの道で、舗装されていたり、土の道だったり。
今日は1日こうしたトレイルを地図を頼りに歩くことになる。

ゴルフ場の脇を歩いていくと看板があり、ロングソープフォートレスと書かれている。
読んでみると、このあたりは今から2,000年前にローマ帝国の要塞があった場所なのだそうだ。
ヨーロッパではときどきこうしたローマ時代の遺構を見かけるが、2000年前に島国のイギリスにまで軍隊を駐屯させていたローマ帝国と言うのは、いったいどれほどの国力があったのだろうかと感心する。
そして、どうやらその土地の人たちは、こうしたローマ帝国に支配されていた歴史を誇りに感じているような雰囲気がある。
自分たちの土地はローマ時代から文明の下にあったのだと。

ローマ軍要塞の案内板
[2000年前の遺構など世界遺産級ではないのだろうか]

ゴルフ場の先でハイウェイがあり、そこに歩道橋がかかっている。
その歩道橋を渡ればもうネイネイ自然公園。
ここも緑が深く、川が蛇行しながら流れている。
緑が深いと言っても、日本やタイのように雑草が生い茂っているという感じではなく、いや雑草なんだろうけど、それが乱雑になることなくきれいに茂っている。
川沿いの景色などは北海道の原生林か湿原を流れる川を見るようだ。

ネイネイ川の支流
[水面は鏡のように周囲の緑を映している]

自然公園の中をどんどん進んでいくと、だんだん開けてきて、バーベキューができるような広場なんかがあったりする。
子供向けのアスレチックなんかもある。
そして、フェリーメドウの湖に面したところが公園の中心になっているようで案内所や売店がある。
そして、子供向けのミニトレインがあった。
とても小さなSL風の機関車があり、遊覧用の客車を引いて走るようだ。
SLの向きを変えるターンテーブルなんかまである本格施設だけれど、SLは上記で走るのではなく、形こそSLに似せているけどディーゼルエンジンの音が響いていた。

ミニトレイン
[線路は200メートルくらい続き、そこを往復する]

カフェもある。
この公園には犬連れで散歩をしている人が多いけれど、なんとこのカフェには犬用のメニューまで掲げていた。
犬たちはこんなカフェに入るのが好きなんだろうか?
イギリスの犬たちは、タイの犬たちと違って行儀がいいので、食事のマナーもちゃんとしているのかもしれない。
しかし、私からすると犬に何ポンドもするカフェメニューなど贅沢すぎるように思える。
まぁそれだけイギリスの人たちは犬を家族の一員として扱っているのだろう。
それに比べると、イギリスでのネコの存在はあんまり目立たない。
街中でもネコカフェのようなモノはまだ見かけていない。

カフェ
[お犬さま用メニューにご注目]

この周辺はキャンプ場になっているようで、それもテントを張るキャンプでなくキャンピングカーによるオートキャンプ場。
ときどきトレーラーのキャンピングカーがキャンプ場に出入りしている。
夏の短いイギリスで、こんなキャンピングカーを個人所有している人が多いというのは、イギリス人はレジャーにかけるお金の割合が大きいということだろうか、それともお金持ちが多いのだろうか。

10時過ぎ、最初の目的地オーバートン駅に到着。
この駅も綺麗に手入れされていて、駅のホームには花壇があったり、お茶が飲めるような施設があったりする。
駅にたむろする人たちは乗客なのだろうか、年配者が多い。
駅構内には、古い鉄道車両がたくさん、そして雑然と係留されている。
寝台車や木造の客車など、どれも手入れが行き届いていると言った感じではない。

オーバートン駅
[駅の花壇もボランティアによるものなのだろう]

この駅に一番列車が入ってくるのは10:40の予定。
まだ30分ほど時間があり、駅で汽車を待つより、先へ歩いて行って、牧草地か丘陵地かわからないけど、SLが客車を引いて力走しているシーンを見てみたい。
駅からまた地図を頼りに、トレイルを歩き始める。
地図上では線路に沿ってトレイルが続いているように見えるけれど、実際にはトレイルは緑のトンネルの中で、線路との間には木々が茂ったりして、近くに線路があるとは気が付かない。

ちょっとした丘を登りつめたところで、線路を越える石造りの跨線橋があった。
もう少ししたら列車がこの石橋の下をくぐっていくはず。
ここで待って、下を走るSLの写真を狙うことにした。
上手くして煙突の真上から石炭の煙と蒸気にまみれた写真が撮れるかもしれない。

ところがどうしたことか、やって来たのはSLではなく、正面から見たらタレ目のディーゼル機関車に牽かれた列車。
この鉄道のホームページにも、整備都合でSLがディーゼル機関車になったり、レールカーになったりすることもあると書かれていた。
たぶん、昨日走った緑色のSLは調子が悪くなって、今日はディーゼル機関車が代行することになったようだ。
このディーゼル機関車もSLに劣らず博物館級の年代物だけれど、やっぱり写真の被写体とするにはSLの方が好ましい。
まぁ、せめて昨日のうちに少しでも走っているSLの姿が見れていて良かった。

旧式ディーゼル機関車
[SLではなくディーゼル機関車に牽かれた列車がやって来た]

今日は列車が3往復することになっているし、一番列車までにSLの整備が間に合わなかったけど、2時間後の2番列車からはSLが走るかもしれない。
それにとにかく昨夜計画を立てて、今日はワンズフォードまで歩く気になっている。
だから、そのまままた先に向かって歩き出す。
トレイルは玉ねぎ畑の横を延々と貫いている。
ちょうど収穫期のようでトラクターが玉ねぎを掘り返している最中。
土から掘り出された玉ねぎがゴロゴロと地表に現れてくる。
そしてあたり一面が玉ねぎの臭いに包まれる。
それにしても広い畑で、歩いても歩いてもトレイルは玉ねぎ畑の中。

玉ねぎ畑
[北海道の農場を見ているようだ]

畑がようやく尽きた先には小川が流れている。
鉄道線路は小川を鉄橋で渡っているが、タイとは違って人が勝手に鉄道橋を渡ることはイギリスでは認められていないだろう。
でも、この鉄道橋以外に橋は見当たらない。
トレイルの地図を調べてみると、小川沿いに牧場を下って行くと小川を渡れるようになっている。
牧場には馬たち放牧されて草を食んでいる。
この馬たちは足首のところにフサフサとした毛が生えていて、競走馬ではないようだ。
そんな馬たちの中を小川に沿って進み、小さな橋を見つけて渡る。

牧場
[馬たちの奥に石組みの鉄道橋が見える]

小川を渡った先もまた牧草地の丘陵になっている。
草の中の道なので、どこが本当のトレイルなのか判別付きにくい場所もある。
そのうちさっきの一番列車の折り返し便がやってくる時刻になったので、トレイルから外れて牧草地の中を線路の方へ向かって進む。

当然ながらディーゼル機関車に牽かれた列車で、ディーゼル機関車なので前も後ろもなく、正面向いて客車を引いていた。
SLだったら丘陵地で煙を吐きながらバックで登ってくるような姿だったろうと想像する。

一番列車の折り返し便
[牧草の茂る丘を列車が登ってくる]

ワンズフォード駅手前でもまたネイネイ川を渡らなくてはならなかったけれど、今度は鉄道橋にしっかり歩道も併用されていた、迂回することなく渡ることができた。
橋の手前には古い貨車が何両も留め置きされている。
現役で使われている訳ではないだろうけど、これらもあんまり手入れされてなく、かなり朽ちている。
ボランティアで運営しているので、資金的にも厳しいのだろう。

古い貨車
[貨車の整備まで資金が回らないでいるようだ]

そのワンズフォード駅は堂々とした駅舎を持つ駅で、構内には整備工場もありたくさんの古い車両が係留されている。
ここからワンズフォードの集落まで数キロ離れていて、周辺にはほとんど民家もないけれど、こんな大きな駅舎があるということは、かつてこのあたりも何かで栄えていたのだろう。

ワンズフォード駅
[ネイネイ川を渡ってすぐが鉄道の基地となるワンズフォード駅]

駅構内に係留されているのはSLや作業用車両、レールカーなどあり、鉄道博物館のような感じになっている。
昨日走っていた緑色のSLもその中にいたけれど、罐に灯が焚かれている様子は見えないし、整備士がいじくっている様子もないから、今日はディーゼル機関車に任せて、寝てしまっているようだ。

車両基地
[昨日運行していた緑色のSL、今日は動かす気配なし]

緑色のSLは休眠中だったけれど、さらに小さな黒いSLがいて、こちらは罐に火が入り盛んに煙を吐いている。
しかし、本当に小さな機関車なので、とてもじゃないけど、ここの客車たちを引いて走るには非力だ。

車両基地
[奥に煙を吐いている小さなSLが見える]

そうこうしているうちに本日2番目の列車がやって来た。
やはりさっきと同じタレ目のディーゼル機関車。

2番列車
[今日はディーゼル列車しか走らせないみたいだ]

今日は駅の中でイベントを開催するようで、DJが入って、バンドが1950~60年代風の音楽を演奏したりしている。
年配者向けのイベントのようだ。
この鉄道を維持するためのパトロンがこうした年配者ばかりだとすると、将来的に財政はますます厳しくなるのではないかと思われる。
子供向けに機関車トーマスのようなペイントを施した汽車を走らせたりもしたみたいだけれど、子供ではパトロンになれないだろう。

駅のホームに古い客車が留め置かれていて、車内に入れるようになっていたので覗いてみたらば、中には鉄道模型のジオラマがあった。

鉄道模型のジオラマ
[よく出来ているけど見学者は誰もいなかった]

このワンズフォードの先にももう一つ駅があるのだけれど、そこまでの途中に線路はトンネルの中をくぐっていくようになっている。
当然ながらトンネルに中にトレイルはない。
地図とならめっこしたが、少し迂回したところにトレイルがあり、丘を越えて隣の駅まで行けそうに見える。
たったいま2番目の列車が出たところなので、次の列車まで2時間もあり、そこまで行っても走ってる列車は見られないけれど、毒食わば皿までの心境で、奥にある駅まで行こうと歩き始めてみた。

しかし、歩き出して少ししたところで高速道路にぶつかってしまった。
トレイルはこの高速道路の向こう側から始まっている。
ここを横断しなければトレイルにもたどり着けない。
日本の高速道路と違ってフェンスで仕切られているわけではないので無理やり横断しようと思えばできないこともなさそうだけれど、やっぱりそれはルール違反になりそう。
さりとて、歩道橋なども見当たらない。
これでは無理と諦めて、もと来た道を引き返すことにした。

ネイネイ川のほとりを歩き、牧草地の中を歩き、ひたすら来るときと同じトレイルを歩いて2時間後にオーバートン駅まで戻て来た。
ここで、本日の三本目の列車と出会う。
牽かれている客車の車内は往年の1等車なのだろうか、ゆったりしたソファーのような席や、個室仕立てになっていたりして豪華にも見える。
キッチンもあって、車内で軽食も食べられるようだ。
キッチンカーでは自家発電機が唸り声をあげていた。
それでも、乗客はあんまり乗っていない。
乗っている人は年配者ばかり。
このオーバートン駅から乗り込む人もいて、中には車いすの人もいた。

オーバートン駅
[客車のドアは手動の外開き、乗客は年配者が多い]

朝食のボリュームがすごかったので、お昼を過ぎてもほとんどお腹が空かない。
それでも時刻は3時になっている。
このまま何も食べなくても良さそうな気分だけれど、せっかくカバンにフランスパンに菜っ葉の袋詰め、小分けしたワインとコーヒーを持ってきているので、自然公園の縁にあったベンチに腰掛けて昼食とする。
フランスパンに菜っ葉を挟んで食べるというヘルシーメニュー。
コーヒーは冷めているけど、フランスパンとはよく合う。
自然の中で飲むワインも美味しい。
ふと菜っ葉の入っているパッケージを見てみると"1 of your 5 a day"と書かれている。
これはどういう意味だろう。
1日に必要な野菜の1/5という意味だろうか?
この一袋が250グラムだから、1日にこの5倍の野菜を食べるというのは馬じゃないんだからちょっと考えにくい。
今朝の朝食にも生野菜はなかったし、この土地の人がそんなに生野菜を日常的に食べているようにも思われない。
では、このパックの1/5が1日の野菜だよってことだとすると、摂取量が少なすぎるが現実に近い気もする。

カット野菜の袋
[野菜を食べよう]

オートンメア駅で本日の最終列車を見送る。
さてこれでネイネイ渓谷鉄道もお終い。
もうひと駅、線路沿いに歩いてネイネイ鉄道のピーターバラ駅近くでネイネイ川を渡って市内へ戻ることにする。

最終列車
[腕木式の信号がある、使われているのかよくわからないけど]

宿の近くにあるポーランド系移民のやっている小さなスーパーに入って缶ビールを一本買う。
スーパーにはポーランドのビールが何種類も並んでいる。
ポーランドのビールなどいままでまだ飲んだことがないので、飲んでみようかと言う気になったが、旧共産圏のビールは馬の小便みたいだと書かれていた本で読んだような気もしたので敬遠して、無難なフランスのビール1664というのを選んでしまった。
しかし、あとで調べてみたらばポーランドはビール大国で、ポーランドのビールは旨いと書いてある記事をネットで発見してしまった。

そのフランスビールを持って大聖堂近くの広場へ行く。
ベンチに腰掛けてビールを飲む。
良く歩いたし、ここの雰囲気も良いい。
フランスの1664というビールも旨い。
時刻は6時を回っているけれど明るく、広場ではスケートボードの練習をする若者がいた。

広場でビール
[1664というビールもすっきりして乾いた喉に嬉しい]

大聖堂の脇にはイチジクの木があり、手は届かなかったけれど大きな実がなっていた。
イチジクも食べたい果物なのだけれど、これまで見てきたスーパーでは見かけなかった。
イギリスではイチジクを売ったり買ったのする習慣がないのだろうか。

イチジク
[日本のイチヂクより数倍大きい]

夕食には昨日買った冷凍のスパゲティーを部屋備え付けのレンジで温めて食べた。
粉チーズはないけれど、唐辛子の粉末はあるので、盛大に振りかけていただく。
赤ワインも飲む。
この日に歩いた距離29.2km 48,994歩。
ずいぶん歩いたような気もするが、フルマラソンコースよりも3割も少ないようだ。
(後編へつづく)

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